アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

ヒューマントラストシネマをハシゴしてみた

2022-02-14 | インドを描く映画

昨日は、ヒューマントラストシネマ有楽町とヒューマントラストシネマ渋谷をハシゴして、2本の映画を見てきました。まず、ヒュートラ有楽町で『オーストリアからオーストラリアへ ふたりの自転車大冒険』(2020)、そして渋谷に移動して、ヒュートラ渋谷で『シティ・オブ・ジョイ』(1992)、どちらもインドが登場する映画です。

『オーストリアからオーストラリアへ ふたりの自転車大冒険』公式サイト)は、オーストリア在住の2人の自転車青年が、リンツから旅立って、ヨーロッパを横断しロシアから南下、中国もちょこっと通ってインド亜大陸に入り、横断しようとしていたミャンマーが通れなくなったので飛行機でバンコクへ飛び、そこからマレー半島を南下してシンガポールから再び飛行機でオーストラリア西海岸へ。で、さらにオーストラリア南岸を移動してブリスベンに至る旅を追ったドキュメンタリー映画です。もうすぐ30歳という2人の青年、アンドレ(アンドレアス・ブチウマン)とドミニク(ドミニク・ボヒス)は、当初から自分たちの自転車旅を記録することも目的とし、4Kカメラとドローンを持って行ったので、なかなか見応えのある映像が撮れています。ドローンの空撮だけでなく、雨の路面を走る自転車の足元とか、もう1人カメラマンがいたの? と一瞬思うような映像がよく出て来て、時間を掛けて撮ったんだろうな、と感心しました。チラシの表と裏に小さな写真がいろいろ配してあるのですが、画面で見るといずれもが印象に残る景色ばかりです。

そして、途中で人々とも交流していくのですが、カザフスタンでの親切な家族、パキスタンのお巡りさんたちなど、記憶に焼き付く場面もあるものの、あまりにも長い行程における山盛りのエピソードなので、他はちょこちょこっとつまんでの紹介になってしまい、それほど心に残りません。まあ、1年近くかかった旅を88分で紹介しようというのがどだい無理なんですが。それと、彼らは人より自然が好き、というタイプのようで、うるさいニューデリーを出てネパールに入ったらホッとした、というシーンでは、インドのよさがわからなくて残念でしたね、と思ってしまいました。面白かったのは彼らが人々と交流する言語で、2人とも両親がルーマニア出身で、1980年代にオーストリアに移住し、その後彼らが誕生してオーストリアで成長した、というバックグラウンドの持ち主。ですので2人で会話している言語はドイツ語だと思うのですが(すみません、違っていたら教えて下さい)、ロシアに入るとロシア語も「ヘタだ」と言いつつ意思疎通ができるぐらいにはしゃべり、あとは英語はもちろん達者、というわけで、国境をまたぐ長旅もなんのその、で安心して見ていられました。それぞれの土地で2人の名前が「ドミニクか。ここの土地の名前じゃドミニハン(ちょっとうろ覚え)だね」と現地化されて人々に受け入れられる、というシーンが2、3回あって、ヨーロッパを横断するとこうなるのか、と興味深かったです。インドがあまり出て来なかったのは残念ですが、パキスタンでのシーンは面白いので、よかったらご覧になってみて下さい。予告編を付けておきます。

パキスタン篇特別映像公開『オーストリアからオーストラリアへ~ふたりの自転車大冒険』

 

そして、渋谷に移動してのヒュートラでは『シティ・オブ・ジョイ』を。この日5時45分からあるはずだったこがけんさんと松崎健夫さんのトークショーが中止になったことを、ヒュートラのスタッフの方がそれはそれは丁寧に謝って下さっていました。上は来場プレゼントで、これを手渡すチケットチェックの所で謝られ、上映の少し前に会場内でも前に立ってまたお詫びと、「いやー、こっちは映画のオマケのイベント、と思っていたのでいいんですよ」と言ってあげたいぐらいでしたが、こがけんさんファンの人は「近距離でお顔が拝めるはずだったのに」とがっかりだったんでしょうね。松崎健夫さんは映画評論家で、下に画像を付けた劇場用パンフにも「不遇だった映画の今と昔、そして、パトリック・スウェイジの矜持」という解説文を書いていらっしゃいます。製作&初公開当時のことがよくわかって、参考になりました。

パンフにはあと、聖心女子大(その前は恵泉女学園大)教授で、インド関係者にはバングラデシュ関連のNPO「シャプラニール=市民による海外協力の会」や、その前はサマンバヤの会の活動で知られている大橋正明さんが、「この映画は、自分が辿ってきた道」というタイトルで、コルカタやビハールの現状等を解説してくれています。映画の中でも、地元のボスと渡り合いながら診療所と学校を続けていこうとする女医ジョアンが重要な役割を果たしますが、似たような活動を続けてきた大橋さんならではの視点でこの映画に対する分析がなされており、インド亜大陸に興味をお持ちの方は必読です。

CITY OF JOY © 1992 - LIGHTMOTIVE LIMITED - PRICEL.

さらに、音楽ライターの小室敬幸さんという方が、「エンリオ・モリコーネとローランド・ジョフィ 『ミッション』の姉妹作としての『シティ・オブ・ジョイ』」という解説を寄せていらっしゃいます。エンリオ・モリコーネと言えば、私などが思い浮かべるのは『荒野の用心棒』(1964)や『夕陽のガンマン』(1965)の、口笛の入るラテン調メロディー。しかしこの作曲家は、他にもいろんな映画音楽を手がけていたのですね。これからご覧になる方は、BGMにも耳を傾けて下さい。

CITY OF JOY © 1992 - LIGHTMOTIVE LIMITED - PRICEL.

BGMと言えば、この日の上映はオデッサと呼ばれる音響システムによるもので、音がすごくクリアだったせいか、アメリカ人俳優の話す英語もよく聞き取れました。インド人英語は得意なんですが、欧米人の英語は苦手だったのにこんなに分かるとは、と自分でもびっくり。また、オーム・プリーの声は普段にも増して魅力的に響き、さらにはサイクロンが襲うシーンでの雷鳴は大迫力で頭上に響く感じになるなど、オデッサの恩恵を堪能させてもらいました。残念ながら今日からはシアター2になってしまったので、昨日行って正解でした。昨日はイベントが中止になっていらっしゃらなかったお客様もいらしたようですが(チケットを買う時、前の2、3列はもっと埋まっていたような気が...)、それでも全体としてはいい入りで、公式ツイッターにもたくさんのツイートがアップされています。映画の人気が高まって、たくさんの劇場さんでリバイバル上映して下さるといいですね。公式サイトを注目していましょう。

CITY OF JOY © 1992 - LIGHTMOTIVE LIMITED - PRICEL.


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