世田谷区立 千歳台福祉園のブログです!

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新しい価値 その2 「いつもの確認行動、これが何よりの気持ちの落ち着きに」

2013年11月13日 18時53分15秒 | インポート

 彼らの振る舞いを見直してみた。いつものことのなかに、新たな発見がある。新たな視点から意味づけることで付き合い方が変わってくる。肯定的に見られれば、OKな自分を見出すであろう。

●いつもの朝の確認
 朝、通所して来ると事務室に顔を出し、いつもの確認が始まる。給湯室を覗き、食器棚等を見回し、「おやつはありませんでした」「コーヒーの粉しかありません」等と和やかに促される。次にコピーのところへ、窓やコピー機を触って「ここが好きなんだよね」と言われながら、さらに職員のデスクによりペットボトルでもあれば手を伸ばし「あらあら・・・」とやり取りをしていると、いつものホワイトボードに気が向き、眺めながらぐるっと回って事務室内を回るようにして、職員にガイドされながら集会室へ、しばらく床にどかっと座り込んで過ごす。日課が間近になると「そろそろ、行こう」と促されて活動に参加することになる。これが朝の動きである。

●行き慣れたところだからこその確認
 この動きはいつもの千歳台だからすることであり、別のところに行ったらしない。知らないところを「どうなっているのか?」と新たな状況に関心を持って探索するのとは違うようだ。いつもの見慣れたところだからこそ気楽に構えずにごく自然な足取りで入室していける。そして、「こうだよな、やっぱりそうだ」と確認することで、その日その日ごとにこの場に馴染んでいく行為なのだろう。

●グルッと回ると気持ちが落ち着くから
 いつものパターンのようであり、障害の重い方にしばしば見られる行為である、と言われる。しかし、付き合ってみると、この行為は本人の思いの表れと感じる。その心づもりで事務室に向かって行き、穏やかな表情で「そうそう、これだよ」と言わんばかりの顔つきに見えてくる。
 だから、こだわりではない。不安の表れではない。パターン的な行為ではない。思いのある振る舞いと感じられる。こうしたい、だってこうするとやっぱり思った通りだと感じられて気持ちが落ち着くから、という具合に思われる。

●「私はこうしたい」を主体的な行為と受けとめる
 これは主体的な行為であり、受け入れることが主体の実現である。ならば、本人の思いに沿いながら毎朝尊重して確認を積極的に受け止めたい。意気揚々と、自信を持って確認をすれば、思いを分かってもらい、気持ちよく実現が図れる一こまが、日々の楽しみの土壌になっていくであろう。
 障害の重い方の自己実現の対象はこういったことも当然含まれるのだ。主体性とは生産的な領域ではなくても良い、積み上がっていく視点でなくても良い、拡大していく事柄でなくても良い。そこに付き合えば、社会的な視点はおのずと生まれ、人としての豊かさにつながるのだ。

施設長 村瀬精二