世田谷区立 千歳台福祉園のブログです!

ここでは千歳台福祉園のことを紹介していきます。

障害者だからこその社会貢献

2013年02月15日 12時09分55秒 | インポート

 親の会の機関誌「手をつなぐ親たち」を読みました。厚労省・援護局長の村木さんの記念公演のまとめで、障害者福祉のあり方について頷かされるとともに、考えさせられました。

●障害者基本法「福祉の増進」の削除に触れて
 障害者基本法の改正にあたって、第1条の目的「福祉の増進」を条文からすべて削除した由。それは、この言葉が障害のある人は福祉で見てもらうとの誤ったメッセージを送ってきたというのです。換わって「すべて国民は、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」と共生社会を目的にすることに改めました。「障害のある人は支えられることもあるけれど支える人でもある」との宣言であります。
 ここまで読んで、“我が意を得たり”と頷いたものの、さて、理念としてはともかくも、実際に千歳台の利用者がどのように社会を支えているのか、少なからず躊躇がありました。

●「弱さが生み出す可能性」に触発されて
 そんなことを考えていた折、岡田教授(豊橋技術科学大学)の「弱さが生み出す可能性」というコラム記事が目に留まりました。二足歩行のロボット・ホンダのアシモは歩くとき足を上げ、前のめりになりバランスを崩す、倒れる前に地面に足を着き、地面に支えてもらいバランスを取り戻す。この繰り返しが二足歩行なのだ、そうです。「地面に支えてもらう」との見方が新鮮でした。弱さを自覚することで自らを環境にゆだね、他者と結びつき、そこで新しい価値を生み出すことになっているというのです。

●多くの学生を受け入れて感じること
 毎年40名近い学生を5日から10日ほど受け入れてきた経験からすると、福祉現場に来て障害者と向き合うことで、皆さん普段以上に優しくなります。目の前で、生きづらさを抱えた障害者の実態に触れると、自分に何ができるかを日ごとに考える学生たちが多いのです。相手に求めるのではなく、自分から手を差し伸べなければと感じているようです。単に、できない現実があり困っているから手伝うのではなく、学生自身が普段以上に優しくなっているのです。逆からみると、障害者が学生の優しさを引き出していると言えます。幸せの目的の前では、経済的な価値に勝る価値を生み出していると思うのです。

●優しさを引き出されて
 二十歳前後のころはまだまだ理屈が勝ってしまったり自己中心的な側面が表に出がちであろう。そんな学生の優しさ、情の側面を強く刺激し引き出すことになり、まさに新たな価値を生み出しているのです。競争原理よりも強力原理の大事さを、一人できることよりも助け合うことの価値を、個体能力よりも関係の生み出す力に焦点を充てる見方です。できないからこそ、わからないからこそ、その弱さを基盤にして関係が結ばれ、暮らしやすい社会にする力が生み出されるきっかけになっているのです。ここに障害者が社会を支える土壌があると考えています。

●経験を積み重ねた専門職としての職員は
 彼らとの出会いで自分が優しくなっているだろうか。人と人の関係ではなく、いつの間にか支援の名の下に硬直した関係になっていないか、自戒しながらである。一方で、いつの間にか障害者との関わりを通して育てられている自分に気づかされます。

施設長 村瀬精二