千歳台福祉園では、知的障害者の暮らしが豊かになるように心がけています。豊かさは、個別の能力によって決まるものではなく、体制や職員配置によって決まるものでもなく、個別の関係の中に生まれてくるものと捉えています。そこで、「私たちの仕事は対人援助」であると自覚して、基本姿勢をまとめてみました。
1、まず、相手を知ることから始まります。
成育歴、発達段階、障害特性、対人関係等の概略を知るために、関係者から聞き取りや過去の記録に目を通しておおよそ承知して出会います。そして最近の、今日のコンディションなど承知して関わります。過去を知り、今を知り、先々を見通す視点を持って支援に当たれたらと思っています。
2、私たちが出会っている人は知的障害者です。
知的障害者は発達の遅れを主症状とし、分からない、できない現実の中で暮らしています。そのことは「不安」を抱える事態であることを承知して出会います。一方で、知的障害者は感性の障害ではありません。私たちと同様に喜怒哀楽を感じながら日々の事柄に立ち向かっているのです。
ですから、感性を尊重した関わりが求められます。それには、私たちが利用者の「自分のことが好き」との自己肯定感を高める視点で関わることだと考えています。本人が自分のことを好きになるには、関わる側が「あなたのことが好き」のメッセージを送ることに尽きます。当然ですが、邪険に扱ってはいけないのです。
3、私たちが出会っている人の中には自閉症の方がたくさんいます。
自閉症は社会性の障害、対人関係の障害、関心の限局を中核的な障害としています。障害特性から、認識の偏りや同一性保持という行動傾向が強いため、グループの仲間と折り合いにくく、本人も困惑する事態に陥ることがあります。
本人も困惑する事態は、支援する側も対処に悩みます。その状況で現象に着目すると、私たちの真摯な悩みが批難の素地に変わってしまい、直接的な指摘、批難、叱責、また繰り返しの注意などの人格批難になりかねません。
4、対人関係の大事さを自覚します。
概して、幼児は一人では何もできず、親と二人で目の前の困難を乗り越えていきます。人は人との関わりを通じて社会を、人を分かっていくものです。知的障害者も自閉症者も同様です。しかし、障害の分だけ大人との関係が上手く取り結べないだけに、目の前のいろいろな困難を乗り越え難いのです。ですから、対人関係を丁寧に深めることが最善の方法と考えています。
さらに、個別の関係の中に人格はつくられることも当然のこととして受け止めています。大事にされることで自信を、応えてもらうことで信頼を、仲間がいることで楽しさを、見守られていることで安心を獲得していくのです。穏やかで円満な人柄に向けて誠実な関わりに努めます。
5、支援は主体性を揺さぶることです。
支援とは支持したり、規範を示すことではありません。ですから「何度言ったら・・・」は、関わりが支援になっていないから出る言葉だと、自戒しています。支援とは勇気付けて、「やってみよう」との本人の主体性を揺さぶることだと捉えています。
「よく見ればなずな花咲く垣根かな」と芭蕉は「よく見れば」と関心を深めることを前提に、見え方が深まってくると云うのです。もっと関心を持って出会うことにします。これが相手を理解する土壌ですから。