風のたより #36 千葉甫 2019-06-10 13:55:54 | 短歌 LPの最後の曲の消えてゆき陽ざし静かなカーテンの外 窓近く立つ木の静止の影見つつ一錠を服む寝に就く前に 開けていた窓から入って来た風が暖簾くぐって隣室へ行く
風のたより #35 千葉甫 2019-06-08 13:51:45 | 短歌 頭から上半身を呑み込んだCTスキャンの指示をする声 まだ野良になりきらぬ眼をした猫が私を見上げる道に出て来て 理解までワンテンポほど間があってどっちつかずの返事をかえす
風のたより #34 千葉甫 2019-06-06 14:27:45 | 短歌 今ここに私と生きているものの光帯びつつ宙よぎり行く 塀越えて来た蔦の葉が地を這って近づいている眼にするたびに 眠くなるかもしれないと前もって言われた錠剤服んで眠くなる
風のたより #33 千葉甫 2019-06-04 14:01:16 | 短歌 久々に見上げた空の広がりの端から端まで曳く飛行雲 階下から漂う匂いがゆっくりとかたちを成して鶏の唐揚げ 昨年の夏より肌の張り失せたわが腕を見る衣替えして
風のたより #32 千葉甫 2019-06-02 13:57:29 | 短歌 滑らかに音も立てずに秒針の回り続けて行く持ち時間 ぶらぶらと歩いてきた人 店先のメニューを読んでぶらぶらと行く 読んでいて言葉にふっと甦る四十余年前の失言