この前何気なく近所の本屋の前を通ったら「バイト募集 9:00~13:00 週4回」という張り紙を発見した。おおっ!これはっ!,と思わず張り紙を凝視してしまった。
家から歩いて3分のこの本屋はひととおり本は売っているけれど,いつもしーんとひっそり静まり返っている。しかし,どういうわけか一角にあるエロ漫画コーナーだけは異様に充実しているらしく(品揃えを見たことはないけど)仕事をサボっているらしいサラリーマンたちの憩いの場所になっているようだ。フツーのお父さんがフツーにエロコーナーで立ち読みしている。初めてこの本屋に来たときはそこはかとなく異質の空気を感じたものだ。でも普通の書店にはない不思議な空間がちょっと気に入っていたし,とにかく家の近所なのでたまにワタシも本を買いにいったりしていたのだ(もちろんエロ雑誌ではない)。
そこにバイト募集の張り紙を見て,妙に気になってしまった。本屋でバイトって一度してみたかったんだよなあ。それに,時間帯も9時から13時までだったら,上の子は幼稚園行っているし,下の子は…うーん…なんとかなるさー(←いい加減?)。ああ,でもバイトなんてしたら,いざどこか旅行でも…っていう風になってもなかなか休めないし…。それに,幼稚園のシゴトくらいで「疲れた~」といっているワタシなのに,働くなんてしんどいかな…。
…などとうだうだ考えているうちに数日経って,雑誌を買いにその書店に行ってみるともうその張り紙はなかった。(もう決まったのかな?)と考えつつ,レジに行くとワタシと同年代くらいの女の人が。(この人に決まったのかな?)と思っていたら,その女の人が「あっら!久しぶり!」とワタシに声をかけてきた。「ん?」と思ってレジの女の人の顔を見返してみたけれど,一向に記憶がない。誰だっけ?でも,そんなワタシにお構いなくその女の人は話しかけてくる。「あれ,やせたねー。」(ムスメを見て)「あのとき赤ちゃんだったのに,大きくなったねー。」
…しかし,ワタシはどーしても思い出せない。思い出せないけど,「誰ですか?」とも聞き返せないのでテキトーに話を合わせる。「元気?」「久しぶりィ~」我ながら軽薄な性格だ。見たことあるような顔なんだけど,やっぱりどーしても思い出せない。話題がないので一番聞きたかったことを尋ねる。「いつからここでバイトしてるの?」そうしたら「4日前から。」だって。
そうか。覚えがないけど,バイトはワタシと知り合いのこの人が決まったのか。残念なような,ホッとしたような。どーでもいいけど,レジを打っているその人の手元には乱れた女子高校生のイラストが描かれているエロ雑誌が山のように積まれていた。うーん。やっぱり異質な空間だ。
誰だか全く見当もつかない人に愛想良く「また来るね~」と手を振って,家に帰ってきて,さんざん思い出そうとしたけれどどーしても思い出せない。コレを書いてる今現在もどーしても思い出せない?誰だっけ?変な空間で変な夢を見ていたような…。それともいわゆるひとつの老化現象?