大学の時の言語学の授業で、


「日本言語地図」なるものの存在を知りました。
それは日本語を、アクセント(この場合言葉の「抑揚」、つまり上がり下がり、イントネーション)によって、
「東京アクセント」の地域と「関西アクセント」の地域の、大きく二つに色分けしたもので、
その時のは、鮮やかな青と赤でした。
高知県は東西に長いので、
今『あんぱん』でやっているような、
県の東三分の二くらいの地域の「土佐弁」は関西弁に近く、
西部で話されている「幡多(はた)弁」は、全く反対と言っても良いほどの東京アクセントです。
当時見せられた日本言語地図では、
県の中で実家の地域だけが、しっかり東京方言と同じ色で塗られていたので驚きました。
そして今は当時より研究も進んだのか、
私が見たようなシンプルな赤と青の地図はネット上でなかなか見つからなかったので、
なるべく近そうなものをお借りして来たものがこれです↓

県の東と西では、
言葉のみならず昔からの食べ物や風習も結構違っているのが予々疑問だったのですが、
この言葉の分布具合を見て、
その「境界」がまさに、
「久礼坂(くれざか)」という険しい峠にあることを確信。
昔言葉や文化は、こういう地理的条件のせいで伝播したりしなかったりしたのか。
と実体験に照らして初めて身に染みた、
当時私は無垢な語学生でしたf^_^;
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さて今やっている『あんぱん』は、高知市から北東にある「後免町(現南国市=なんこくし)」の話なので、
語尾や用語はいろいろあるとして、
アクセントは関西弁に近い「土佐弁」です。
私は西の「幡多弁ネイティブ」で、
「土佐弁」は学校勤めをし出してから使い出した「えせネイティブ」に過ぎないのですが、
それでも毎日周りから耳に入る音や用語から判断して、
『あんぱん』の役者さんが使う土佐弁は、
これまでの高知関連のドラマでは一番クオリティが高いと思います。
昔の、県を舞台にしたドラマの方言はひどいものでした。
西部の話なのに、絶対そこで使われることはない土佐弁(「〜しちゅう」、「〜やき」など)で皆が話していたり、
語尾も無茶苦茶なら抑揚も変で、
それが邪魔してちっとも話が頭に入って来ませんでした。
(何のドラマだったかは敢えて言いません(⌒-⌒; ))
『仁』での竜馬役の内野聖陽さんあたりから、本格オッサン土佐弁が出て来て感心しました。
(内野さんは、龍馬役が決まるや、高知の酒場に地元民よろしく入り浸り、地元のオッサンの言葉やイントネーションを徹底的に耳から学んだそうでした。)
『らんまん』の松坂慶子さんなども素晴らしかったですが、
今回『あんぱん』出演者は、
みんながみんな、クオリティ高し。
勿論、郷土出身ということで出演している、
小学校の先生役、樫尾篤紀さんや、
柳井家のお手伝いさん役の瞳水(ひとみ)ひまりさんは、
聞いていて安心な安定感。
でも、昨日ちょっと触れた、嵩の弟役の中沢元紀さん、
この方は実は高知の人じゃないかと思ったくらい、
調べたら何と茨城の方でした( ̄▽ ̄;)
当時の若者が言いそうな言葉からそのアクセントから、
超自然。
言葉を真似する才能のある人は、語学や音楽の才能もあるのでは、
と私は思います。
話はちょっと逸れるけれど、
県出身の演歌歌手、三山ひろしさんは、
歌が上手いのはもちろんなのですが、
英語の歌を歌わせてもその発音がスバラシイ(^^)v
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さて、「音」や「イントネーション」中心に話が長くなってしまったのですが、、、
おぉ、やっぱそれ出しますか、と思う代表的な土佐弁も、回ごとに順次登場して来ている感じです。
①まず、結構このドラマのキーワードになっているらしい「たまるかー!」
これについては正直ちょっと、そこまで大袈裟に言うほどのシチュエーションでもないのに多用されてる感が、個人的にはあります。
(スミマセン、個人の感想なのでf^_^;)
これは「たまるもんか」が元で、
「(そんなことしたら)大変だ」とか、
「(そんなことまでしてくれて)すごく恐縮だ、有り難い!」など、いろんな意味で使われるのは確かなのですが。
②「たっすい」
これは、「頼りない」、飲み物の味などが「薄くて物足りない」ほどの意味から、まあ人の性格などに使うのもありなのかな?
(スミマセン、私100%のネイティブではないのでそこらへんは自信ない。)
しかしこの言葉が、「たっすいがはいかん!」と、まさに◯リンビールさんの高知での販路拡大のキャッチフレーズのまま出て来た時には、
NHK攻めてるわぁ、◯リンビールに喧嘩売るのか、
とちょっとドキッとしましたf^_^;

③「ろいろいする」
ここまで出しますかっ!って感じの土佐弁(^◇^;)
確か第17話で、勉強を教えてもらうためにのぶが柳井家で待っているのに、
自信を無くした嵩は外をうろついていてなかなか帰って来ない。
その時のぶが独り言に言ったのが、
「たかし、どころいろいしゆうがなΣ(-᷅_-᷄๑)」
「ろいろいする」(笑)。
基本的には「外をうろつく」ことだと思いますが、
そこには、「待っている人の心配などよそに、自分勝手に」という感じで、
言う人の怒りや苛立ちがこもっています。
「何かに焦って狼狽える」というような意味もあるかも。
でもそこには、言う人と言われる人両方の、「仕方ないねぇ」のような憎めない諦め感が入っているような気がして、
私の個人的な感覚では、何となく可愛い言葉です。
亡父もよくあちこち出かけては「ろいろい」する人で、
母に怒られていましたf^_^;
この時ののぶの発言では、
語尾の「…しゆうがな」(しているのか)の最後の「な」の高さと力の抜き加減が、個人的にはキュートで最高(*^^*)
④同じく第17話?、兄弟喧嘩の場面。
医者にならないのは兄のためではない、と何度も言う千尋になかなか納得しない嵩が、「ほんとにそうなのか?」と食い下がります。
そして千尋のこの発言:
「しわい!」
「しつこい」ことの「最上級」の感じか。
私も今日、授業中注意しても注意しても私語がうるさい生徒にこれを言って来ましたが、、、
しかし、部活などの都合で他県から来ている生徒も多い勤務校。
地元民以外に言ってもニュアンスが通じず、今ひとつ効果がない言葉ですf^_^;
⑤「おんしゃあ」
これは確か、のぶの祖父の釜じい(吉田鋼太郎さん)が、
のぶのことを悪く言ったヤムさんに噛みついて。
基本は「お前は」ということですが、
時に怒った時に「お前という奴は」「この野郎」のような意味で相手にケンカをふっかけようとする時など。
主にオッサンが使う言葉で、
女性はまず言わないでしょうf^_^;
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今日はここまで。
また長くなってしまいましたが、
なるべくリアタイに近くなるよう頑張ります^_^
一弦の琴・天界の花や初期の作品群。
そこで、土佐弁を知りました。
土地に根付く、独特の言い回し、懐かしさがありますね。
コメントありがとうございます😊
土佐弁も、場所や時代によって、
そして使う人によってかなり違うのだと思います。
(私も知らない言葉が沢山。)
大学で東京に出た時には、
その前くらいに「陽暉楼」とか「鬼龍院花子の生涯」(なめたらいかんぜよ)が流行りましたので、
土佐=恐いところ、みたいな感じで友人にからかわれました😅
宮尾登美子さんや大原富枝さんは、県を代表する女流作家ですね^_^