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日本人が書かなかった日本の「中絶と避妊」の歴史

2008-12-07 01:22:11 | Weblog
新潮社が出している月刊フォーサイト12月号に時事通信社編集局編集委員の武部隆氏がティアナ・ノーグレン著青木書店刊の「中絶と避妊の政治学」の書評を書いています。

本当は、この本を読んでから書こうと思ったのですが、そして定価が3990円と高い本なのですが、日本人が見落としていたことや避けていたこと、そして厚生省の役人や政治家たち、製薬会社そしてマスコミが隠蔽していたこと、産科医の利権などを明確にしており、しかも外人が書いているわけで、どうしても紹介したくなり私見も入れて取り上げました。

●「中絶」はベビーブームを終了させるために合法化された。
日本のベビーブームは昭和22年に始まって昭和24年の3年間に800万人の子どもが生まれて、終ってしまいます。
アメリカも同じようにベビーブームが始まるのですが、日本のように3年間では終らずその後も続いています。
日本のベビーブームが終った理由は、昭和23年に「優生保護法」が施行され、翌年の改正により人口妊娠中絶を合法化されたからで、当時は食糧が全くなく、このまま子どもがふえ続けたら大変だということで、日本が世界で初めて社会経済的理由により人口妊娠中絶を合法化した国になりました。

海外、特にカトリックの国では、避妊ですら問題になっており、その辺はシチュエーション・コメディの大家であるデヴィッド・ロッジの小説「大英博物館が倒れる」や「どこまでいけるか」を読むとこっけいなまでに大変だということがわかります(余談ですが三谷幸喜は彼の小説の影響をかなり受けています)。

●ピルの使用は、政治・行政の利権により阻まれた。
そして、日本はピルの使用が平成11年まで許されず、その後もあまり普及していません。宗教的制約がほとんどなかったという事情は別にしても、なぜ母体への影響が大きい中絶が優先され、避妊が忌避されているのか?

そのことをティアナ・ノーグレンは膨大な資料と関係者へのインタビューで日本の「中絶・避妊政策の歴史」をこの本で明らかにしています。

ここでも問題なのは「厚生省」と「医師会」です。
合法化された中絶によって産科医たちは莫大な利権を手に入れ、政治・行政もその利権を守るために動いてきました。
特に厚生省が1990年代にピル解禁を見送る際に挙げた「HIV感染拡大」「体外に排出されたピルが生態系に悪影響を与える」が科学的根拠に乏しい、とってつけた理由でしかないことがこの本に書かれています。

●問題は、国民に眼を向けない政治と行政の指導層や医師会
武部氏はこの本を通じて、こうした政治と行政の姿勢が日本の社会保障制度全体を歪ませており、日本の「エリート」=政治と行政の指導層が、女性を「子を産む道具としか捉えていないと書いています。
厚生省は、売血問題から始まって、薬害エイズ問題、薬害肝炎訴訟、社会保険庁問題、そして患者たらいまわしなど様々な問題を起こしていて、それらは製薬会社への天下りや癒着、医師会重視、政治家のいいなりになっており、本来、国民の健康をかんがえなければいけないのに国民のことなんか全く考えていないなあと悲しくなってきます。