「資格検定情報センター」準備事務局より

各種資格・検定の情報を分析し、信頼性の高さや疑問点の有無を報告します。

TOEIC、英検、国連英検について

2007-06-18 19:04:46 | Weblog
英語の能力をはかる試験には、TOEIC、英検、国連英検などがあります。
ここではあまり知られていないそれらの試験の背景について述べます。

まず、TOEICは経産省、英検は文科省、国連英検は外務省に認可を受けている財団法人によって運営されています。
英語の検定試験は、各省庁の思惑と無関係ではないのです。

経産省、文科省、外務省がそれぞれ自らの利益のために各英語試験に関与していると言っても過言ではありません。


■TOEIC
国際的な資格だと思われていますが、発案者は日本人です。
通産省に勤務していたこともある日本人と雑誌社勤務の日本人が発案し、TOEFLなどを実施しているアメリカのテスト開発機関ETSに話を持ち込んだのがTOEICの始まりです。

経産省管轄の(財)日中経済協会に勤務していた渡辺弥栄司氏(現在は顧問)と雑誌「タイム」のアジア総支配人だった故北岡靖男氏が1974年法人組織をつくり、TOEFLなどを実施していたアメリカのETSと1977年にTOEIC開発について協議を開始しました。1979年に第1回のTOEICを実施しています。

当初はなかなか受験者が集まらず、利益があがりませんでした。
TOEICを運営しているIIBCの会長渡辺弥栄司(元通商局長)の著書には、次のような記述があります。

>ところが、TOEICを普及していくには、文部省(現文部科学省)の障壁が
>あまりにも大きかった。当時、教育産業への参入には厳しい規制があり、
>いとも簡単に潰されかねなかった。
>私は一計を案じ、古巣の通産省を巻き込むことにした。貿易振興・輸出
>増進のために、日本企業に対し英語教育による人材の育成を図るという
>名目で通産省に許可を求めた。つまり、通産省を後ろ盾にすることを考
>えたのである。
>
>「125歳まで、私は生きる!」ソニー・マガジンズ発行 2003年 p114

こうした働きかけがあり当時の通産省から財団法人として認可され、1986年に国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、創立されました。
現在も渡辺弥栄司氏がIIBCの会長を務めています。

日本国内での受験者数は1981年に10万人、1988年に20万人、1992年に40万人、1996年に60万人、2000年に100万人、2006年には150万人を達成しています。

全世界では約450万人が受験していますが、日本人と韓国人の受験者が大多数を占めます。
2004年のデータでは、受験者約340万人のうち、日本人142万人、韓国人183万人で合計325万人、総受験者の95.6%を日本人と韓国人が占めました。
受験者数はやや頭打ちですが、今後数年は150万人以上の受験者を確保すると予想されます。


■英検(実用英語検定)
1963年、英語関係の参考書で知られる旺文社の故赤尾好夫社長が旺文社の敷地内に財団法人実用英語検定協会を設立し、英語検定試験をはじめました。
赤尾好夫氏は1957年に設立されたテレビ朝日(当初は日本教育テレビ)の初代社長でもあります。
当時英語学習といえば「赤尾の豆単」(単語集)、旺文社といえば私設文部省などと言われ、教育界に大きな影響力をもっていました。

文部省との良好な関係もあり、英検は順調に受験者数をふやし、毎年300万人以上が受験するという時代が長く続きました。

ところが1990年からTOEICの受験者数が増え、1990年代初頭には大学生や社会人に限るとTOEICが最も受験者数の多い英語検定試験となってしまいました。

さらに、2000年に入ってからは文部科学省の認定がはずれるという話が広まり、受験者数が一気に減っていきました。
しかし、現在受験者数は下げ止まり、この数年1~5級の全級をあわせて250万人程度をキープしています。
2006年には「文科省認定」が廃止となりましたが、これは文部科学省が民間の資格検定を公にバックアップしません、というだけであって英検自体は何も変わっていません。
「文科省認定」がはずれた現在、英検は「文科省後援」を名乗っています。

なお、レベルとしては、一般的に英検1級はTOEIC900点以上レベル。準1級は730点レベル、2級は500~600点などと言われていますが、人によって差があります。
2級をとっていてもTOEICでは500点以下の人もいますし、英検3級でも500点以上とる人もいます。


■国連英検
1981年から、外務省の外郭団体である「日本国際連合協会」が実施しています。
日本国際連合協会は、戦後国連への加盟を目指して作られた団体ですが、国連加盟後は国連に対する理解を深める団体として活動しています。
事実上、外務省職員の天下り先として温存されています。

国連の名前を名乗っているので国連が関係している英語検定試験だと勘違いしている人も多いようですが、日本の、国連に対する理解を深める活動をしている団体による検定試験であって、国連が関与している検定ではありません。
国連の名前を権威に利用していますが、国連はバックアップしていません。

なぜこのような名称で団体や検定試験を運営することを国連が黙認しているのかいうことには疑問があります。
仮に、どこかの財団法人が「外務省英語検定」あるいは「外交官英語検定」などという名称の検定試験を作れば、外務省はクレームをつけないのでしょうか?
(もっとも、外務省のよいスポンサーであれば外務省もクレームをつけないかもしれませんが)

また、国連英検は当初から講談社ともつながりを持ち問題集も講談社から出していますが、受験者数はTOEICや英検の1%以下と少なく、経営状態が危ぶまれています。
2004年からは外務省からの補助金も打ち切られてしまいました。
現在、公式ホームページでも受験者数を発表していません。