goo blog サービス終了のお知らせ 

musicapple

music + apple = musicapple (笑)

ジョン・キムラ・パーカー

2006年06月16日 | 音楽
第1570回N響定期公演(2006年5月17日)

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮
ジョン・キムラ・パーカー :ピアノ
N響定期5回目。
1984年リーズ国際ピアノ・コンクール優勝の実力者。
ヒューストンのライス大学で行進の指導にもあたる。

曲目

1. プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26
2. リヒャルト・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」Op.30


「シュニトケとの対話」

2006年06月05日 | 音楽
「シュニトケとの対話」アレクサンドル・イヴァシキン編 秋元里予訳 春秋社 2002年 から特に印象に残った一節。

「ところが僕たちは、人生経験から得た一次元の直線の上に立って、理論や概念を作っています。僕は今、理論というものがどれも皆、不快でなりません。どれもその場限りの観点から物を説明しようとするまやかしの一時的な試みだからです。人間は三つの点を見ることはできても、残りの全ては見えない。この残りのことを根拠に全てを導き出そうとすれば、ただ虚偽を倍加するだけです。果てしない現実は論理的な理性には決して明らかにならないものなのですから。それは感じることのみ可能です。人間は、整然とした理論や公式を確立するために、常に何かを切り捨て、歪曲することになるでしょう。ですから、僕はいかなる理論的根拠に対しても否定的態度をとるわけです。実はそんなものはない。」(51ページ、原文ママ。「この残りのことを根拠に」、という部分はおそらく、座標軸を規定するために採用された三つの点によって張られた空間を根拠に全てを導きだそうとすると、といったほどの意味でしょうが、勿論それは不可能だ、ということかな。誤訳の可能性も否定できないので、いずれ原書をあたってみましょう。)

アルフレート・シュニトケは20世紀最大の作曲家の一人ですが、「音楽は僕(シュニトケ)によって書かれているのではなく、聞き取られるのである(39ページ)」という考えからも分かるように、数学者が「数学的実在」と呼んでいるような「音楽的実在」を知っている人なのでしょう。「数学的実在」が、あらゆる理論的枠組みを超えたものであることは、ゲーデルの不完全性定理をまつまでもなく、感性豊かな人には見えるのでもありましょうか。「音楽的実在」はそのようなものでもありましょうか。

「さらに、こんなことも感じます。僕が作っているものは皆、僕がまだ作っていないけれどもすでに存在するものに近づこうとする試みで、僕はただそれを固定すればいいだけだ、と」(73ページ)

「今僕は、全ての時代が共存していて、いつでもそれぞれが独立して姿を現す可能性があるという感じがしてきました」(52ページ)
宇宙を時空多様体として眺めると、このような感じになるのかもしれませんね。

グールドのヤマハ

2006年05月24日 | 音楽
グレン・グールドは、晩年に、
ニューヨークで入手した中古のヤマハのフルコンを愛用し、
バッハのゴルトベルク変奏曲の再録音(1981年)は、
このヤマハのフルコンで録音したことは余りにも有名です。

ところで、このヤマハのフルコンですが、
製造番号は1983300で、1975年製です。
グールドの公式サイトを見ると、ヤマハCFIIと書いてあり、
他のいろいろなサイトを見ても、CFIIと紹介されていることが
多いのですが、ヤマハの歴代機種インデックスにはこのCFII
という機種はなく、同時期に製造されていたのはCFです。

というわけで、グールドが愛用していたのは1975年製のCFでは
ないかと思うのですが、いかがでしょう。

あるいは、歴代機種インデックスの方が間違っているのかな。
CFとCFIIIがあって、CFIIがないというのも変ですし。

デュープレックス・スケール

2006年05月22日 | 音楽
グランド・ピアノの弦は、多くの場合、
手前のチューニング・ピン(TP, 以下記号は全て仮のもの)から
最初のブリッジ(B)を経て、
高音部では、フレーム(F)で角度が変わって、振動の主体となる部分となり、
それが駒(H)を経由してブリッジ(SB)を経て、
ヒッチ・ピン(HP)で終わる構造となっています。

打弦したとき、TP~B, B~F, H~SB, SB~HPの部分が共鳴します。
共鳴は雑音となることもありますが、
これらの部分を積極的に共鳴させて豊かな倍音を生み出す方式は、
スタインウェイ社の特許でデュープレックス・スケールと呼ばれています。
日本ではアリコートと呼ばれることも多いですが、
本来はブリュートナーのように3本弦の他に共鳴する
4本目の弦を張る方式のことをいうらしいです。

上の共鳴部分のうち、TP~B, SB~HPまではフェルトを挟んで
共鳴しないようにしていることが多いですが、
SB~HPではフェルトを挟まないこともあります。

ベヒシュタインの一部で、駒とヒッチ・ピンの間にブリッジが2個
(か、駒とブリッジが1個ずつか、記憶が定かでありませんが)
入っているものを見たことがありあます。


各音に対してこれらの共鳴部分がきちんと共鳴するためには、
長さが厳密に設定されている必要があります。
各音に対してブリッジを独立させると原理的には設定を
厳密にすることが比較的しやすくなり、
独立アリコートと呼ばれファツィオーリで採用されています。
実際的には厳密な調整は難しく、
環境によって容易に変化してしまうため、
独立アリコートの意義には賛否両論があるようです。

国産ピアノを独立アリコートに改造し、
スタインウェイDに付いている様なサウンドベルを取り付けると
素晴らしい音になるという話もあるようです。


ニューヨーク・スタインウェイの鍵盤

2006年05月15日 | 音楽
1984年以前のニューヨーク・スタインウェイの鍵盤は、
現在のものと比較して、独特の形状をしています。

このニューヨーク製の鍵盤の特徴としては、

1)見えている部分(白鍵の上部)の黒鍵は台形ではない(上辺10mm、底辺10.1mmのほぼスクエア型。現在は上辺9.7mm、底辺11.1mmの台形型。)
2)白鍵の下部(実際に指が触れるところ)が少し短い(約48mm。現在は約50mm)
3)白鍵の幅が少し短い(22.1mm。現在は22.5mm。)
4)したがって、黒鍵と白鍵の間の隙間、白鍵と白鍵の間の隙間が目立つ。
5)材質はシュガーパイン

が挙げられます。このような鍵盤の形状のスタインウェイを見かけたら、
1984年以前のニューヨーク・スタインウェイかもしれません。

打弦距離の調整

2006年04月17日 | 音楽
鍵盤の上に付いているネジを回して
打弦距離(人によっては接弦距離ともいう)を調整します。

打弦距離を変化させると、鍵盤の感触が若干変化します。
グランド・ピアノの場合、打弦距離を長くすると、
アフタータッチが浅くなり、短くすると深くなるようです。


このところ記事に一貫性がありませんが、
それぞれ別のピアノに関するコメントです。



『世界一難しい』ピアノ曲を演奏

2006年04月16日 | 音楽
NHKニュースによると、

『この曲は、イギリスの作曲家フィニッシーがおよそ30年前に作曲した「イングリッシュ・カントリー・チューンズ」です。1小節に多いところでは300もの音符が並ぶなど、曲の複雑さから世界で最も難しいピアノ曲とされ、演奏できるピアニストも限られています。16日は、東京・八王子市にある「東京富士美術館」で、ロシアの若手女性ピアニスト、ニカ・シロコラッドさんが、日本で初めてこの曲を演奏しました。シロコラッドさんは、すばやい指使いで鍵盤をたたき、指だけでなく、ときには腕やひじも使いながら、激しい音楽をダイナミックに演奏しました。訪れた人たちは、演奏の妙技に大きな拍手を送っていました。演奏を聴いた30代の女性は「腕や指の動きの速さにびっくりしました。私はピアノは弾けませんが、自分もあんなふうに弾けたらなと思いました」と話していました。また、シロコラッドさんは「この曲を演奏するために激しい練習をしました。弾けると信じて弾くことがこの曲を演奏する秘けつです。少し変わった曲ですが、日本の人たちにも、開かれた心でこの曲のよさを感じてもらいたい」と話していました。』

この記事における『難しい』という言葉の意味は、単に「複雑」ということのようだが、作品演奏の「難しさ」は「複雑さ」だけで決まることはありえないので、このような見方は作品演奏に対する誤解を広めてしまうことになることを危惧するが、しかし一般の見方は概してこのようなものなのかもしれない。それに鍵盤は『たたく』ものではない。


ヤマハGシリーズ

2006年04月12日 | 音楽
ヤマハのグランドピアノGシリーズのアクションは、
Cシリーズと比較して、なんとなく堅牢な感じがしますが、
これは鍵盤に埋め込んである鉛の位置が違うからだとか。
私はがっちりしたアクションが好みなので、
このシリーズ、ぜひ復活してほしいと思ってます。

ちなみに、製造年代は、

G2A 1954 ~ 1967.12
G2B 1954 ~ 1967.12
G2D 1967.12 ~ 1970.12
G2E 1971.1 ~ 1985.9
G2A 1985.9 ~ 1988.3
G2B 1988.4 ~ 1990.9
G2E 1990.10 ~ 1994.9

また、このシリーズのヨーロッパでの相場は、例えば
イギリスでは、G2Eの中古が6750~6840ポンドくらいです。

アラウとボレット

2006年03月14日 | 音楽
NHK BS2放送のクラシック・アーカイブ
クラウディオ・アラウとホルヘ・ボレット

・シューマン 謝肉祭 作品9
ピアノ:クラウディオ・アラウ (1903-1991, チリ)
(1961年ロンドンでの収録)

アラウは私の最も好きなピアニストの一人です。
あたたかく包み込むような演奏。

ナレーションによると、アラウは「チリのモーツァルト」と言われ、
「師のクラウゼは彼をリスト以来の天才と評している」そうです。
「常に自然で柔軟な動作を追い求めていた」とは、なるほど納得
とてもうまい表現と思いました。
「生涯にわたってシューマンをこよなく愛し」ていたそうですが、
そういえば、いつかの来日公演のシューマンの交響的練習曲を印象深く覚えています。
亡くなる前のバッハのパルティータの録音は私のお気に入りです。


・アルベニス イベリア 第2巻から トリアーナ
・ショパン こもり歌 変ニ長調 Op.57
・リスト 半音階的大ギャロップ
ピアノ:ホルヘ・ボレット (1916-1990, キューバ)
(1962年ロンドンでの収録)

ナレーションによると、
「ゴドフスキやローゼンタールからその至芸を継承。
60歳を過ぎてからのリサイタルでピアニストとしての名声を手に入れた」
映画「わが恋は終わりぬ」のリスト役の演奏はボレットだとか。


面白いのは、最後のホロヴィッツの無声映画で、
ショパンのエチュードOp.10-8, Op.25-10の
ホロヴィッツの演奏のスローモーションが見られます。
こういう映像は見たことがなかったです(笑)

ピアノの鍵盤の重さ

2006年02月15日 | 音楽
まず、ピアノの鍵盤の重さを測定するのに、
調律師の方は、分銅のようなものを、
鍵盤の上に載せて測定しています。
大体基準値は47gから52gの間だそうです。

ですが、この測定法では、初動の力しか分かりません。
中間での微妙な力の変化が測定されないのです。
ピアノを弾くときには、初動の力はもちろん、
中間での加速度を微妙に変化させています。
鍵盤自体にある程度の質量がないと、
同じ力でも加速度が付きすぎて微妙なニュアンスが付けづらくなります。
ですから、鍵盤の素材はある程度密度の高いものが必要ではないかと
思われるのです(鍵盤自体の質量による慣性モーメント)。