かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

禁煙したくなったら車を買え?

2015年03月05日 | サポーターの心得
夜の医局でのつづき。

『禁煙しませんか?』と投げかけたところ、「実は、始めたんですよ」という答えが返ってきた。

聞けば、「禁煙フィルター」なるものを使っているという。

新聞広告などで見たことがある。
元野球選手がそれで禁煙したと宣伝に一役かっているやつだ。

医者たるものが、民間療法から試していることに心のなかで苦笑。


「きっかけがありましてね。車を買い換えたんですよ」

彼が語りだした。
ここで重要なのは、まずは「相手に語らせろ」である。

最近、職員駐車場に、今どきめずらしい大型の真っ赤なベンツが停められるようになった。
どうやら、彼の車らしい。

『それは、(ヤニで)汚したくないですよね!』


「それに、同じ年頃の友達たちが、どんどんやめはじめてまして…家族にもうるさく言われますしね」


反応がよかったので、「禁煙フィルター」の仕組みや、いわゆる「軽いタバコ」などについての誤解などについて解説。

禁煙フィルターは7千円するというので、保険適応による禁煙治療のほうが安価であり、エビデンスがあることも情報提供。

「へぇ~そうなんですね!」

行動療法なとについても訊かれたので、彼の役にたちそうなアドバイスを。



話は意外や続き、禁煙外来に通ってきている乳がん術後の患者さん(2月17日既述「離婚のススメ」)の話になった。

「あの旦那さん、ひどいですよね!先生の記録、見せてもらってます。ボクは再建に関わったんですけど、彼女にあんな強い意志があるとは思わなかったなぁ」


先日、左側だけ髪を赤く染めてきた彼女。
禁煙は頑張っていて、子供に「おかぁさんの肌きれいになった」と言われる一方、旦那に車のなかで相変わらずタバコを吸われて気分が悪くなり、非協力的な旦那を見返してやるべく、いっそう「ぜったいやめてやる!」と決意表明していたことを教えてあげた。

「赤髪限定」のライブコンサートに行ってきたらしいが、乳房再建した右側は腕が上がりにくくて、染められなかったため、片側だけの赤髪になったらしい。


「リハビリをあまりしてないのかな。今度言っときますよ」


禁煙治療をしている患者さんが、喫煙している医師や看護師のお手本になってくれることも、実はある。


(禁煙フィルターが効かないことに納得したら)いつでも治療を引き受けることを伝えた。
その夜はおそらくアタシ同様、彼も気分良く過ごしたにちがいない。
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