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映画『ホテルローヤル』を観て

2020年11月25日 | アート

 
 
桜木志乃の直木賞受賞作(2013年)の映画化です。遅すぎる映画化のような気もするし、その割には製作期間が短かいような気もするのですが。
小説は読んでいないので、ラブホテルに集まる人間模様を見つめたドラマだろうという粗雑な予備知識しかありませんでしたが、概ね、そういう作品でした。北海道、雄大な自然、いいなあ、と思うけれど、そこにはやはり人間ドラマがあるんだなあ、ラブホもあるんだなあ、と。

冒頭、廃墟と化した「ホテルローヤル」でヌード撮影をするカメラマン。これをイントロにして時間が行ったり来たりします。
ラブホにも歴史はあります。ヒロイン、ホテル経営者の娘、雅代(波瑠)は美大に落ち、厭々ラブホテルを継ぎますが、やがてホテルから、そして過去の自分からも訣別しようとします。
まるで走馬灯のように現在と過去が交錯するシーンを見ると、限りある生をどう生きるかという問題に改めて気付かされます。そして、知らないうちに再生産をしているのではないか、と。世代を越えて同心円状に繰り返す人生。親もまた、そして子もまた。連綿と、否応もなく。


ホテルローヤルは生の象徴でもあるのでしょうか。性だから当たり前か。
ホテルを生きる糧とする(した)人たち、一夜の宿を求める事情を抱えた人たち。彼ら、彼女らは、寂しい場所にぽつんと立つ宿泊施設とも歓楽施設とも付きかねる場所にやってきます。大湿原の前の異形の館に。そこに見える人生と建前社会のギャップが面白くもあるし、深刻でもあります。

果たして、それに訣別した雅代が新しい自分の生を見つけることができるのでしょうか。赤いセダンを買うだけが明るい将来ではないはずで、この子は何か当てがあるのかなと老婆心ながら心配してしまいます。親と同じような道を辿らなければよいのですが。
こう思うのは、歳をとって人生の儚さの方が気になって仕方がないからなのかな。始まりが終わりであり、終わりが始まりのような、浮世。


『ホテルローヤル』2020年、104分.映画「ホテルローヤル」製作委員会
原作:桜木柴乃、脚本:清水友佳子、音楽:富貴晴美、監督:武正晴.
出演:波瑠(田中雅代)、松山ケンイチ(宮川聡志)、安田顕(田中大吉)他


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