
上野の国立科学博物館で開催中の「大英自然史博物館展」に行ってきました。
オープン初日から混雑していた様子だったので心配していましたが、整理券対応のおかげで15分程度で入場でき、また入場制限のおかげで展示も比較的見やすい状態でした。
■大英自然史博物館のハイライトを巡る展示
大英自然史博物館(ロンドン自然史博物館)はロンドンにある博物館。自然史系博物館としては世界トップクラスの博物館です。
今回の展覧会の英語タイトルは「TREASURES of the Natural World」。さて、どんな「宝物」たちに出会えるのでしょうか?
序盤はハイライト的に目を引く展示が並びます。
美しい鳥が実物大で描かれたジョン・オーデュボン「アメリカの鳥」や、ガラスでつくられたタコの模型のような美しい作品から、集団交尾したまま窒息死したという三葉虫の化石、所有者に不幸をもたらすといわれる”呪われたアメジスト”など、”珍品”とも思えるようなものまでが並びます。
(縦が1メートル、横が68センチメートルという巨大な本、ジョン・オーデュボン「アメリカの鳥」。)
(「古代エジプトのネコのミイラ」。大英自然史博物館には、250体以上の動物のミイラ・コレクションなんていうものもあるそうです。)
■人物を軸にした”物語”のような展示
大英自然史博物館は、アイルランドの医師 ハンス・スローンの個人コレクションからはじまっているそうです。これにちなんでか、ここから先は自然科学に大きな功績を残した”人物”に注目した展示となっていました。
(ハンス・スローン。コレクションは、種子やお茶の葉、水牛のツノまで、アジア〜中東の珍しいものが集められています。)
例えば、チャールズ・ダーウィンにまつわる展示では、「種の起源」の手稿や始祖鳥の化石に加え、ペットのガラパゴスゾウガメの標本なんていうものも展示されています。
(「種の起源」の手稿。)
(恐竜のような歯やカギヅメと鳥類のような翼と羽毛をもった始祖鳥の化石。始祖鳥が鳥か恐竜か?ということについてはまだ決着がついていないそうです。)
(ダーウィンはもともとは”フジツボ”の研究をしていたそうで、そのときの論文も展示されていました。(第二展示室))
”比較解剖学の父”リチャード・オーウェンのコーナーでは、絶滅してしまった飛べない鳥”モア”の全身骨格や羽毛も展示されています。
(モアの全身骨格標本。絶滅してしまった動物はCG映像で生きていた時の様子が再現されたりもしています。)
(たったこれだけの”大腿骨の破片”を他の生物の骨と比較することで、まだ見つかっていなかった動物の存在を予言するなんて、すごい観察力ですね…)
大英自然史博物館の分館・動物学博物館の元となるコレクションをつくったウォルター・ロスチャイルドは、そのコレクションだけでなく、シマウマに馬車を引かせたり、150歳を超えるゾウガメに乗って散歩したり…といったエピソードにも興味をひかれます。
(ウォルター・ロスチャイルドの写真はおもわず二度見してしまいます。)
■ こんなものまで展示されているの?
個人的に気に入ったのは、「微化石でつくったクリスマスカード」。虫眼鏡で見ないとわからないサイズの化石で「「アーサー・アーランド、1912年のクリスマスに」と書かれています。ロマンチックですね。
(レンズを通してみないと見えない細かさ!)
”科学史上で最も悪名の高い贋作事件”といわれる、捏造された化石「ピルトダウン人の頭骨片と下顎骨」なんていうものも展示されています。
のちに科学分析によって”つくられたもの”であることがわかったそうですが、長期にわたって本物と信じこませてしまったのは、類人猿と人類をつなぐものとして理にかなっていたからなのだとか。”偽物”なのに博物館の所蔵品になっているなんて、なんだか不思議な感じですね。
最後に、展示では地味に感じられたものの、最後まで見終わった後で気になったのが”英国地質学の父”と言われるウィリアム・スミスのつくったイギリスの”地質図”。もともと測量士だったウィリアム・スミスは、手作業で色分けしたイギリス本土全域の本格的な地質図をはじめて完成させたものの、当時はその業績が認められなかったそうです。
でもここまでの展示を見て、いわゆる「宝物」といって連想する宝石や貴金属のような天然資源や化石などの貴重な資料も、みんなもともとは地面の中に埋まっていたものなのだと思うと、この地質図ってまさに”宝の地図”なんだなぁだと思えてきました。
有名な・珍しい「宝物」を見られるだけでなく、身の回りの自然にある「宝物」の存在にも気づかせてくれるような展示でした。
(美しい昆虫の標本も多数あります。)
■常設展もぜひ忘れずに!
なお、今回の「大英自然史博物館展」は”人物軸”中心の展示でしたが、その中で興味のあるものを見つけたら、ぜひ国立科学博物館内の「地球館」にも立ち寄ってみてくださいね。
今度は”時代”や”属性”といった観点でたくさんの所蔵品や詳しい解説に出会うことができるので、より幅広く&深く知ることができます。
(壁一面の鉱物コレクション。特別展にあった”輝安鉱”はこちらでも見ることができます。)
(大英自然史博物館展では、こんな三葉虫の化石の展示がありましたが…)
(常設展では、こんなケース4つにわたって三葉虫の仲間が紹介されています。そのものの化石だけじゃなくて、”這い跡” ”休み跡”といった化石から、”何を食べていたのか?”という解説まで。)
特別展も常設展もみどころ満載なので、ぜひ時間にゆとりを持ってお出かけください。
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会期:2017年3月18日(土)~6月11日(日)
時間:午前9時~午後5時(金曜日・土曜日は午後8時まで)
※4月30日(日)から5月4日(木)までは午後6時まで
休館日:3月21日(火)、4月10日(月)、17日(月)、24日(月)、5月8日(月)、15日(月)、22日(月)、29日(月)
本展は、大英自然史博物館から始祖鳥をはじめとする至宝約370点を厳選して展示します。ほとんどが日本初公開で、ロンドンで常設展示されているのも17点のみ。貴重な標本を間近に見られる絶好の機会です。
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