かの有名な句の季節は、まさに今頃です。
この情景はきわめてレアな時間帯をとらえたものであり、其の時間は1年のせいぜい2~3日の20分程度ではないかと思われます(理由は下記を参照)。
ちなみに菜の花はアブラナのことをいう場合と、*アブラナ科アブラナ属に属するものを示す場合があります。
写真は太田川の安芸大橋付近に数百メートル続く、菜の花の群生。おそらく**セイヨウカラシナと思われる。
なおこれより少し上流の川内付近の河川敷には、不思議なことに群生どころか菜の花そのものもほとんど見かけません。
実はこれは近似種であるかの有名な広島菜との交配を防ぐため、川内の農家の人たちが毎年春先に、「カラシナ退治」として抜き取っているからなのです。
先の句の情景は、今年だとさしずめ今月の15日頃に見れたものと思われます。
写真はその15日の満月。
*高菜、広島菜、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリ、小松菜、チンゲンサイまで!
**セイヨウカラシナは、丈夫で川原や荒れた土地にも繁茂するため、河川敷や堤防、空き地に播種し、菜の花畑を作るケースがある。 なお、建設省が堤防強度の低下予防を理由に、除草剤で駆除していた時期がある(Wiki)。
以下引用です。
http://koyomi.vis.ne.jp/doc/mlwa/200904090.htm
*** 与謝蕪村の有名な句
菜の花や月は東に日は西に
は安永三年の三月二十三日に詠まれた句だとされます。
この日付をグレゴリオ暦で表せば、1774/5/3となります。もうちょっと先の
季節に詠まれたことになりますが、この句がその日の眼前の風景を詠んだも
のでは無いことは確実です。理由は詠まれたその日付です。
◇旧暦二十三日
この歌が詠まれた日付は当時の暦で三月二十三日です。
ご存じのとおり当時使われていた暦は新月の日を朔日とする太陰太陽暦です
から、その暦で二十三日の月がどんな月かを考えると、この句の情景がその
日には見えるはずのないことに気が付きます。
当時の暦で二十三日の月というと、ほぼ下弦の半月で有ったことが判ります。
下弦の半月が昇る時刻は、真夜中の零時頃だ
(中略)
つまり、この日に「月は東に日は西に」という句のとおり、日が西に傾く夕
方に月が東の空に昇るというようなことはあり得ません。
つまり、この日の夕方に菜の花畑の真ん中に立ってもこの句の情景は見える
はずが無いのです。
◇チャンスは満月の頃
では「月は東に日は西に」という情景が見えるチャンスはいつ頃かというと、
それは満月の前後。月と太陽の両方が見えることを考えると、満月かその二
三日前が一番のチャンスといえそうです。