酷暑猛暑の夏も過ぎ、久しぶりの雨が降ってきて傘を差して水の恵みを感じていたとき、ふと、そう言えば「夜目遠目かさの内」という言葉があったよなぁ、などとボンヤリと空なんぞ見上げていた。
「かさの内」というのは、てっきり、こういうコウモリ傘のことばかりだと思っていたのだが、どうも「傘」ではなくて、編み笠の「笠」のほうだったらしい。
そう言えば、おわら風の盆の踊り子たちが笠を深くかぶって顔を見せないがために、全員が絶世の美女なのではないかと想像させるところがまたいい、などというのが巷談として定着している。
この、「夜目遠目笠の内」というのは、「いろはかるた」の中でも、上方かるたの「よ」の句となっていて、同じ「よ」でも江戸かるたでは、「葦(よし)の髄(ずい)から天井覗く」、大阪(名古屋)版では「よこ槌で庭はく」などとなっている【いろはかるた一覧(江戸・京都・大阪 編)】。
自慢じゃぁないが、これらの「いろはかるた」が言わんとしている意味のかなりの部分が、どうにも理解できない内容ばかりである、というのも情けない。少しムカシの人たちにとっちゃぁ生きていく上での大切な常識だったんだろうなぁと思うと、そういうことさえ知らずに生きてきたオレの今までの人生は何だったんじゃい、とついつい思ってしまう。まぁ、知らなくとも特段の支障っちゅうもんも無かった、というところなのだが・・・・。
あっいや、こういう過去の人生のことばかりではない。たとえば、今、大きな興味を持っているRESAS(地域経済分析システム)などのソフトを駆使して、操作マニュアルにあるような、いろいろな分析や提案をしてみたら楽しいだろうなぁ、とは思うけど、如何せん、突き進んでいく気力体力を維持するだけの自信が既になくなってしまっていることを、触れてみればみるほどに痛感してしまうばかりである。若い頃はこういうのを手作りでこしらえて駆使していたものだったが・・・などと回顧の念が彷彿してくるばかりである。
今でも、向上心の意欲だけはあるものの、どうにも長続きがしない。早く成果を見たいというせっかちなのかもしれず、トシ相応にゆったりと構えるというか、鈍感力を身につける必要がありそうだ。(研究機関とかで腰を据えて取り組むしか付き合う方法はない、と考えているのが本音なのだが。)
閑話休題。
「いろはかるた」は、「色は匂へど散りぬるを・・・」と始まる「いろは歌」 の47文字と、最後に「京」 の字がついた 48文字でできており、当初は江戸中期に京都で作られたようだが、その後、大阪、名古屋、江戸へと拡がったんだそうで、世につれ所につれて「かるた」の中味も変化していったようだ。
で、その「いろはかるた」の、そもそもの「いろは」だが、「いろはにほへと・・・」という、記号の羅列か何かの鼻歌かとばかり思っていた時分があり、それがあるとき、「色は匂へど散りぬるを・・・」という七五調の和歌の一部だということを知らされたときの衝撃は今でも微かに覚えている。
ちなみに、英語の辞書は当然ABC順に並んでいる訳だが、明治24年に辞書「言海」が50音順を採用するまでは、「いろはわけ」という「いろは順」で並べられていたそうで、「言海」が50音順になっていることに対して、あの諭吉さん、福沢諭吉は「寄席の下足札が五十音でいけますか」などと、相当な抵抗感を表明していたというから、見識の高い人物でも世の流れが見えないことは多々あるようである。
で、「色は匂へど散りぬるを」だが、これは諸行無常(この世の中にある全ての事象は、移り変わり行くものであり、同じ状態のまま留まるものはないという意味)を表しており、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」から始まる「平家物語」とも共通している仏教の根本理念の1つである。
また、「色は匂へど散りぬるを、我が世誰ぞ常ならむ」までは何とか理解できていたが、そのあとの「有為(うい)の奥山」とか、「酔(ゑ)ひもせず」などというところが、今までは「何のこっちゃ?」と、わからないままに放っておいて過ごしてきていた。
実はこの「有為の奥山」が、「道もなく越すに越されぬ深山」にたとえた「無常のこの世の中」のことを表しているということが、この「いろは歌」の眼目であろう。
まとめてみれば、「いろは歌」というのは次のようなことを意味している。
様々なものや現象などのすべては、いずれ変化して消え去っていく空しいものだ。
私自身も、この世の誰もが、どんな人生を送ろうと、いつかは消滅していく一瞬の幻想だ。
なので、無常のこの世の中で今日、私は煩悩を克服し空を悟り、
愚かな夢など見ず、希望に酔ったりもせぬ。
・・・・・ぅ~む、般若心経の世界そのもの、といった感じだったんだなぁ。
これからは「いろは」と聞けば「色即是空」と連想することにしよう。ぅん、色即是空を訳せば「色は匂へど散りぬるを」そのもの、であろう。
「傘」の話題に戻ると、新発想の濡れない傘「En Fance“Sharely”(シェアリー)」が話題となっているが、これ、発想そのものはオレ自身も若いときに考えていたことがあった。要は、軸を中心からずらすことで濡れない面積を確保する、というもの。さすがに、開け方、閉じ方までは考えてはいなかったが。
折りたたみ傘、ということが「売り」の1つでもある。持ち運びには小さく、必要なときには大きく、という優れものである。まさに、オトコの1本!
「逆さに開く二重傘Circus」というユニークな傘もあって、車の乗り降りにも濡れることがなかったり、周りの人たちへの配慮なども素晴らしい。開き方を一度でも見たら欲しくなること間違いないだろう。
ユニークと言えば、「ドローン傘」。何しろ、手で持たなくてもいい。体にセンサーを付けて常に追っかけてくれるようにしておけば楽なこと、この上ない。音の問題がどうなっているのかが気になるところだ。
手で持たなくてよい傘「free Parasol(フリーパラソル)」というのも出てるようだが、これでは駆動部分が雨で濡れて実用的にはならない・・・。
イルカ 雨の物語(音量に注意)
ジリオラ・チンクエッティ 雨(音量に注意)
(目の前にいる横並びの積ん読。)