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辞典を読もう

その日その日に発見した未知の単語や曖昧に認識している言葉の意味をハッキリさせようじゃん。

「不可思議」

2006-11-09 | 
数字の話。ゼロという数字を考えだしたのは昔々のインド人だと聞いたことがある。1、2、3、4、・・・と書く数字自体が、元々インドで使われていたものがアラビアに伝わり、そこからさらにヨーロッパに広がったという。だからアラビア数字というのは実はインド数字だ。で、ゼロというのは便利な数字で、nothingを意味する文字であるけれども、桁を表す文字でもある。1にゼロをひとつつければ10、ふたつつければ100というように。このゼロがいろいろな計算をしやすくしているんだよね、ありがたやインド人。だってゼロがなかったら筆算ができないじゃない。現在でもインド人は数学が得意だ。九九ひとつとっても19×19までを暗唱するのがインド式だという。おっと話が道を外れてきた。ゼロに話を戻して、1にゼロをいっぱいつけていくとどうなるか。書くことは雑作もないだろう。呼ぶのはちょっと知識が必要だ。日頃TVニュースなどで耳にする数字の桁は、いちばん多くても国債残高とかGDPとかの“兆”だ。千兆でゼロが15個? じぁあ16個ついたら何て呼ぶ。これは辛うじて知っていた。“京”だ多分、ケイと読む。一京、十京、百京、千京ときたらその次はもうお手上げだ。
もう20年以上も前のことになるけれど、TVで“COSMOS”という数夜連続の特番が放送されたことがある。番組の内容はちゃんと観ていなかったため正確なところはわからない。たしかカールセーガンという博士さんが、宇宙のこととか進化のこととか、相対性理論の解説とかしていたようにうろ覚えている。よく覚えているのは、その番組のスポンサーが日本IBMであったこと、そしてコマーシャルのひとつに、数の桁を数えていっていちばん大きな呼び方が“不可思議”で終わる内容のものがあったこと。当時、へぇ~と思った。それ以来、不可思議は数の単位として捉えてきた。
ところで最近「不思議」と「不可思議」の違いが気になった。自分としては似て非なるものと思ってきたが。

yahoo辞書で調べてみた。

ふか‐しぎ【不可思議】
[名・形動]
1 常識では考えられないこと。考え及ばないこと。異様なこと。また、そのさま。「―な現象」
2 人間の認識・理解の限界を超えていること。また、そのさま。仏の智慧・神通力などの形容に用いる。不思議。「―な功徳(くどく)」「―力(りき)」
3 数の単位。10の64乗。一説に10の80乗。
[派生]ふかしぎさ[名]
[ 大辞泉 提供:JapanKnowledge ]


念のため大辞林でも。

ふかしぎ2?【不可思議】
(名・形動)
[文]ナリ
[1] 怪しく異様なこと。常識では理解できない不思議なこと。また、そのさま。
・ 宇宙の―を解明する
・ ―な話
・ ―な現象
[2] 〔専門〕 仏 言葉で表したり、心でおしはかったりできないこと。仏の智慧や神通力についていう。不思議。
[3] 数の単位。1080。一説に、1064。[塵劫記]
〔派生〕 ――さ(名)
[ 大辞林 提供:三省堂 ]


それでは「不思議」はどうだろうか。

ふ‐しぎ【不思議】
[名・形動]《「不可思議」の略》
1 どうしてなのか、普通では考えも想像もできないこと。説明のつかないこと。また、そのさま。「―な出来事」「成功も―でない」
2 仏語。人間の認識・理解を越えていること。人知の遠く及ばないこと。
3 非常識なこと。とっぴなこと。また、そのさま。
・ 「花山院とあらがひごと申させ給へりしはとよ。いと―なりしことぞかし」〈大鏡・道隆〉
4 怪しいこと。不審に思うこと。また、そのさま。
・ 「明くればうるはしき女に―を立て、いかなる御方ぞ、と尋ね給ふに」〈浮・五人女・三〉
[派生]ふしぎがる[動ラ五]ふしぎさ[名]
[類語](1)不可思議・不可解・不審・奇妙・面妖(めんよう)・妙(みょう)・変(へん)・異(い)・謎(なぞ)・怪(かい)・奇(き)・奇異・奇怪・幻怪・怪奇・怪異・神秘・霊妙・霊異・玄妙・あやかし・ミステリー・ミステリアス
[ 大辞泉 提供:JapanKnowledge ]


ふしぎ0?【不思議】
(名・形動)
[文]ナリ
〔補説〕 「不可思議」の略
[1] 思いはかることのできないこと。どう考えても原因や理由などがわからないこと。また、そのさま。
・ ―な現象
・ ―に思う
・ 七―
・ 生命の―
[2] 思いもかけないこと。とっぴなこと。また、そのさま。
・ 人の嘲(あざけり)をもかへり見ず、―の事をのみし給へり〔出展: 平家 1〕
[3] (「不思議を立てる」などの形で)不審に思うこと。怪しく思うこと。
・ ―を立るも断(ことわり)なり〔出展: 浮世草子・諸国はなし 1〕
[4] 〔専門〕 仏 思いはかることも言葉で言い表すこともできないこと。
・ 娑婆に―の薬あり、法華経なりとぞ説いたまふ〔出展: 梁塵秘抄〕 〔派生〕 ――が・る(動ラ五[四])――さ(名)
[ 大辞林 提供:三省堂 ]


あっ、な~んだ「不思議」は「不可思議」の略だったのか。微妙にニュアンスが違うと思っていた。でも数字の単位としては“不可思議”だけだ。10の64乗あるいは80乗であると。
じゃあ24乗は?とか、36乗は?とか、“不可思議”まで数える途中の呼び方もちょっと気になってきた。

「歩留まり」

2006-08-09 | 
言葉の第一印象の話を「インセンティブ」のエントリーでかるく展開したけど、ちょっと関連した話を・・・。単語のイメージは出会いの第一印象だけじゃなく、字面から大きく影響を受けることもある。というかむしろこっちが多いだろう。英単語でいえば、接頭語・接尾語、そして語根を知っていればだいたい意味を推測することができる。日本語の場合も漢字が表意文字であるから、なんとなく解ったような気になってしまう。で、歩留まりだ。この単語は、歩みが留まると書く。留まってしまうわけだ。
この言葉を初めて聞いたある青年は、その時にその意味を問うた。得られた答えは“不良品の発生率”というものだった。そこで彼は工場を想像してみた。順調に流れ進む生産ラインにおいて、歩みを留めざるをえない不良品の発生。その割合。歩留まりが不良品の発生率を意味するのなら、その率は低い方がよいに決まっている。字面の印象からも間違いない、と。
しかし、事実はちがった。


ぶ_どまり【歩留(ま)り】
1 加工する場合の、使用原料に対する製品の出来高の比率。
2 食品の原形物に対する食用可能な部分の比率。
[ 大辞泉 提供:JapanKnowledge ]


なるほど食い物の話だと分かりやすいが、思っていたのと少し違うような・・・。


歩留まり
読み方「ブドマリ」
生産されたすべての製品に対する、不良品でない製品の割合。一般的に、工業製品の多くは製造されるすべての製品が出荷できるわけではなく、一定の割合で不良品が含まれる。不良品を取り除いて出荷できる製品の割合が歩留まりで、不良品の割合が高いと歩留まりは下がり、不良品が少なければ歩留まりは上がる。歩留まりが低いと原材料費や製造コストの無駄が大きくなるため、企業の収益を圧迫する要因となる。
[ Yahooコンピュータ用語辞典 ]


うむむ、不良品でない製品の割合??? Yahooコンピュータ用語辞典の説明だと、つまり、ある青年は180度反対の意味だと思い込んでいたわけだ。歩留まりとはいわば良品率のこと。高いほどよい。しかし紛らわしい字面じゃないか、まったく。どうして歩留まりなんていうのだろう。そのへんも調べてみれば面白い物語にぶつかりそう。ま、そのうち。ちなみにある青年とはいわずもがな、お恥ずかしいかぎりです。


「ひいては」

2005-10-06 | 
4ヶ月ぶりの更新。我ながら続かない性格にトホホなわけですが、早起きしたのでこの機に勢いで…。
さて、「強いて言うなら」とか「強いて言えば」という説明の仕方。自分もたまに使うんですが、以前からその使い方が正しいのか気になっていた。ちょっぴり違うんだけどムリやり当てはめて言えば、といったニュアンスでしょうか。この「強いて言うなら」をはしょって「強いては」と使うとややこしい(そういう使い方が正しいかどうかも怪しい)。一方、ひいては」という説明の仕方がある。なんらかの事象があってさらにそれが発展拡大延伸した結果として、みたいな意味だと思いますが、会話中にでてくると稀にアレ?と感じる。自分の耳が遠いのか、相手が江戸っ子なのかは分からないけど、聞き違えたかも、と不安になるわけです。ちなみに江戸っ子は「ひ」を「し」と発音しますから。引っ越しは「しっこし」、綱引きは「つなしき」てな具合に。(^^)

で引いてみた。
あらら「しいては」では載ってないや。
グーグルしたら結構引っかかるけれど、大抵の場合「ひいては」の意味で誤用している。

では「しいて」で引いてみよう。

しいて しひ― 1 【強いて】
(副)
〔動詞「強いる」の連用形に助詞「て」の付いた語〕
(1)困難や反対などを押し切って、物事を行うさま。むりに。むりやり。
「嫌なら、―することはない」
(2)むしょうに。むやみに。
「はらからの君たちよりも―悲しとおぼえ給ひけり/源氏(柏木)」

三省堂提供「大辞林 第二版」より

なるほど。続いて、

ひいて-は 1 【▽延いては】
(副)
「ひいて」を強めた言い方。
「人のために尽くすことが―自分のためになるのだ」

さらに
ひいて 1 【▽延いて】

(副)
〔動詞「引く」の連用形に助詞「て」の付いた「ひきて」の転〕前文を受けて、それから引き続いて、それが原因となって、などの意を表す。さらには。その結果。ひいては。
「良民の財貨を掠め、―経済社会全体を攪乱するを/社会百面相(魯庵)」

ふむふむ。
意味はこれまでの認識どおりで安心しましたが、ひとつ新発見。漢字で「延いて」と書くのは知らなかったな。結構、著名な方でも「引いては」と書いていたりするから、勘違いしている人も多いのでは。確かに意味からすると「延いて」の方がピッタリですね。

今日の収穫
●「強いては」という言い方はしない。
●「ひいては」は「延いては」と書き「引いては」は誤り。

ではまた。

「ベラボー」

2005-06-07 | 
故岡本太郎画伯が、かつてメキシコかどこかでヨコ30メーターくらいの大きな壁画を制作して、それを日本に持ち帰ってきて修繕する、といったニュースをテレビが流していた。よく見ていた訳ではないのでニュース内容は勘違いの部分があるかもしれないんだけど・・・。で、この岡本太郎さんって「芸術は爆発だぁ!」のCMフレーズが有名ですよね。その所為か以前はヒラメキ型の天才みたいなイメージだった。しかし意外とそうじゃないっていうか、天才は天才だと思うんだけど、論理的っていうか思考を説明できるっていうか。
何故そう思ったかといえば、少し前に偶然にも岡本太郎著『日本の伝統』を買ったからなのです。。
で、本題。この本の中で「ベラボーに魅力的だ」という表現がある。「ベラボー」は「篦棒(べらぼう)」のことで「べらんめえ」の元の「べらぼうめ」の「べらぼう」かな。ちょっと引いてみた。
「ベラボー」では予想通り辞書には載っていない。


べらぼう ―ばう 0 【▼篦棒】

(名・形動)[文]ナリ
(1)人をあざけりののしっていう語。ばか。あほう。
「とんだ―が現れたもんだ」
(2)筋の通らないこと。ばかげていること。また、そのさま。
「そんな―な話はない」「―な値段」
(3)並はずれてひどい・こと(さま)。
「―に暑い」
〔寛文年間(1661-1673)に見世物にされた、全身が黒くて頭がとがり、目が赤く猿に似たあごをもつ奇人「便乱坊(べらんぼう)」「可坊(べくぼう)」から出た語という。「篦棒」は当て字〕
[派生] ――さ(名)

三省堂提供「大辞林 第二版」より


岩波の国語辞典でも大体同じ。普段の生活では文字で目にすることも少なく、耳にすることもあまりないので、気に止めず「度を越して」のような(3)に近い意味で認識していたけど、確かに負のイメージがありますなぁ。しかし、岡本太郎氏は「ベラボーに魅力的だ」と褒め言葉に使っている。う~む~、あまりこだわらず甚だしいという意味で使っているのだろうが、深読みすると芸術家一流の美に対する皮肉を込めた表現なのかもしれない。

しかし言葉の源となった奇人「便乱坊(べらんぼう)」「可坊(べくぼう)」ってどんな人だったんだろか。かなり気になるな。