瀬淵きゃぶ、JAZZと珈琲、そしていくつかの考える事柄

       日々、時々の事柄に、JAZZを聴き、珈琲を飲みながら考える。

体罰に関する僕の経験

2013年02月06日 10時50分50秒 | スポーツ
大阪桜宮高校の体罰事件から柔道女子日本代表の体罰事件まで、体罰に関して、今、多いに話題になっている。
僕の体罰に関するちょっとした経験を話してみたい。

一九七一年、高専の三年の時だ。
僕たちのクラスは、学校史上最悪のクラスと言われていた。
別に授業中に暴れたり、大声を出したりといったガキっぽいことは誰もしない。ただ、みんな、ひと言で言えば教師を相手にしなかった。
二年生の終わりに、「オイ、次は、ビンタのTだぞ」と、話が出た。で、どうするということになったが、「まっ、様子を見るか」ということになった。

三年生の最初のホームルーム、ビンタのTは、教室にずかずかと勢いよくやってきて、七、八人を黒板の前に並ばせ、往復ビンタの嵐となった。
Tは、一通りビンタをすると、さっさと教室を出て行ってしまった。
僕たちは、どうかというと、「まっ、たいしたことはないな」というのが、率直な感想だった。
それから毎日、ビンタのTはビンタの嵐を続けた。
毎日、とにかくどういう基準で選んでいるのか、さっぱりわからなかったが、七、八人を黒板の前に並ばせ往復ビンタを続けた。

だいたい、二週間ほどそれは続いたが、結局なんの効果もなく、ビンタのTは、ひと月ほどして、ホームルームにまったく顔を見せなくなった。
出欠も取らないので、年中無断欠席したり、二時間三時間と遅刻する僕も、毎日学校に出ていることになってしまっていた。
この話は、僕たちがみんな精神的にかなりタフだったということが一つ。
それから、ビンタのTは、やるときは、派手に何人もまとめてやっていたということで、逆に誰もうんざりするような思いをしなかったということでもあると思う。

もし、誰か一人を狙い撃ちして、毎日やっていたら、そいつは、かなりうんざりしていたと思う。
もっとも、それを一週間も続ければ、僕たちは、全員黙ってはいない。
とにかくTは、やるときは、Tなりにフェアにやっていたと思う。
今、思えば、Tなりに一生懸命だったのだと思える。

しかし、そのときの僕たちにTの思いはまったく通じなかった。
つまり、ビンタは、一切なんの効果もなかったのだ。

ところでそんな僕たちの心を大きく動かした教師が一人いた。
新しく赴任してきた体育の先生で、ハンドボールの元全日本代表だった。それも、ついこの前まで現役という先生だった。
もちろん、僕たちは、最初「それがどうした」と、相手にしなかった。

すると、その先生は、「よし、お前たちにハンドボールで一番面白い練習をやらせてやる」と言った。
「一番面白い練習って?」
それは、シュート練習だった。およそ、球技はすべてシュートが一番面白い。
僕たちは、遊び半分で面白がって練習を始めた。確かに面白かった。

みんなができるようになると、「よし、パスもわかるな。ドリブルもわかるな。試合、やれ」と、その先生は言った。
僕たちは、誰もハンドボールというスポーツを一生懸命やろうとした者はいない。みんな、ハンドボールごっこだった。

しかし、それが良かった。
子供がふざけて相撲を取り始めて、そのうち死に物狂いになってしまうように、僕たちもハンドボールに夢中になった。
そのうち、その先生が、二、三人に「アイコンタクト」という言葉を言った。説明はしない。

「アイコンタクトってなんだ?」
やってみるとできる。みんながさらに夢中になった。
僕は、中心選手になった。
体育の時間は俄然面白くなった。みんなが、体育の時間を楽しみにするようになった。

体育の時間だけは、みんな人が変わったように生き生きとした。ハンドボールというスポーツに夢中になった。
先生はそれ以上の欲を出さなかったが、もし、あのとき、ハンドボールの強いよその学校との対外試合などということをやったら………
ちょっとしたことが起きていたかもしれない。

スポーツという物はこういう物なんだよ。
その後、僕はボクシングの四回生ボーイになった。
残念ながら四回戦で挫折してしまったが、体罰なんて一度も受けたことはない。
そして、ボクシングは、滅茶苦茶面白かった。


                     瀬淵きゃる


1 コメント

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hierarchy (noga)
2013-02-08 16:15:49
下の者は優秀。
指導者は愚鈍。
国がひっくり返った時にも、責任者はでなかった。
分かっている。分かっている。皆、分かっている。
わかっちゃいるけど、やめられない。
なぜ、やめられないのか。日本人には、その意思がない。
意思は、未来時制の内容である。日本語には、時制がない。
意思のないところに方法はない。
日本人の意思を確かめることは難しい。
ア、ホレ、スイスイ、、、、、、

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