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鼠径(そけい)ヘルニアのはなし

2008年06月27日 | 病院だより
6月も残り少なくなりました。
梅雨真っ盛りで湿度は100%に近く、不快指数100%といったところではないでしょうか。

 本日は鼠径ヘルニアについて記載致しましたのでよろしく御願いします。

 ヘルニアとは、ある臓器が体の弱い部分やすき間から他の部位に出てくる状態を指し、体のいろいろな部分で起こります。
足の付け根付近(鼠径部)で起きるものに、鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアがあり、前者の鼠径ヘルニアでは小腸が出てくる場合が多いので、俗に「脱腸」と呼ばれています。

鼠径ヘルニアの症状
 立ち上がったり、お腹に力を入れると足の付け根(鼠径部)が膨らみ、男性の場合大きなものでは陰嚢まで達するものもあります。
膨らみは、体を横にしたり、手で押さえると消えることがあります。
腸が出たり入ったりしている際は、軽い痛みやつっぱり、不快感、便秘が起きる程度で、強い痛みなど特別な症状はありません。
はれが急に硬くなったり、押さえても引っ込まなくなることがあり、お腹が痛くなったり吐いたりします。
これをヘルニアの嵌頓(カントン)といい、急いで手術をしなければ、命にかかわることになります。
鼠径ヘルニアになる原因と種類
  外鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアの多くを占めているのがこの外鼠径ヘルニアです。
鼠径部にはお腹と外をつなぐ筒状の管(鼠径管)があり、男性では睾丸へ行く血管や精管(精子を運ぶ管)が、女性では子宮を支える靱帯が通っています。
年をとってきて筋膜が衰えてくると鼠径管の入り口(内鼠径輪)が緩んできます。お腹に力を入れた時などに筋膜が緩んで出来た入り口の隙間から腹膜が出てくるようになり、次第に袋状(ヘルニア嚢といいます)に伸びて鼠径管内を通り脱出します。
内鼠径ヘルニア
腹壁には弱い場所があり、年をとってきて筋肉が衰えてくるとここを直接、押し上げるようにして腹膜がそこから袋状に伸びて途中から鼠径管内に脱出します。
これを内鼠径ヘルニアといいます。
高齢者に多く見られます。
大腿ヘルニア
:鼠径部の下、大腿部の筋肉、筋膜が弱くなって膨らみが発生するヘルニアを大腿ヘルニアといいます。中年以降の女性(出産した方)に多く見られます。
鼠径ヘルニアになりやすい人
 鼠径ヘルニアは、乳幼児の場合はほとんど先天的なものですが、成人の場合は加齢により身体の組織が弱くなることが原因で、特に40代以上の男性に多く起こる傾向があります。
 鼠径ヘルニア患者の80%以上が男性ですが、これは、鼠径管のサイズが女性は男性より小さく、比較的腸が脱出しにくいためと考えられています。
また、40代以上では、鼠径ヘルニアの発生に職業が関係していることが指摘されており、腹圧のかかる製造業や立ち仕事に従事する人に多く見られます。
便秘症の人、肥満の人、前立腺肥大の人、咳をよくする人、妊婦も要注意です。
鼠径ヘルニアの治療方法について
 鼠径ヘルニアは自然には治りません。
治療には根治手術が必要です。
嵌頓を起こす前に手術を受ける事が勧められています。
いつ嵌頓が起こるか予想は難しいので、診断が確定した時点でなるべく早く治療を受けた方が賢明です。
 根治手術には、筋膜を縫い合わせる方法と、メッシュという網のような素材で穴をおおう方法とがありますが、再発率の低いメッシュを使用する方法が最近は主流になってきています。
 足の付け根(鼠径部)が膨らみ等に気づいたら、早めに当院外科を受診しましょう。

執筆者ご紹介
外科:山木先生

専門領域
 呼吸器外科・一般外科

メッセージ
 4月より広島大学病院から赴任してきました。
 よろしく御願いします。 

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