
兵庫県丹波篠山市に位置する、福住です。
ウイング神姫、京阪京都交通が発着します。

福住には、かつて鉄道が通っていました。
1972年に廃止となった国鉄篠山線がそれで、福住駅は篠山線の終点でした。国鉄篠山線は、篠山口駅(福知山線)〜園部駅(山陰本線)間を結ぶことを目指していましたが、実際には篠山口駅〜福住駅間が開業したところで建設は終了。盲腸線のまま、志半ばで使命を終えました。
残念ながら、篠山口〜園部間は鉄道では繋がりませんでしたが、この区間には並行して国鉄バス「園篠線」が運行されており、篠山口〜本篠山〜福住〜園部を本線として、いくつもの支線を有していました。そのため、福住はバスの拠点にもなりました。

福住駅の跡地に今も残るJRバス時代の車庫。
私が訪問したときは、留置車両はいませんでしたが、車庫機能は現存していて滞泊する車両があるそうです。
また、福住に到着したバスが折り返すときには、一旦車庫の中に入ります。

福住の停留所

整備がされ、きちんと手入れされている待合所です。
失礼ながら、地方の集落によくある、ありふれた停留所に、ここまで手が加えられていたことに驚きを隠せませんでした。

その理由は、貼られていた掲示物で判明しました。
地元のまちづくり協議会、高校、大学が一体となって、竹を使った待合室を作り上げたそうです。当初は機能一辺倒のトタン板を用いた待合所でしたが、放置竹林の間伐材を活用し、2017年から順次、町並みに合うように改修。2023年には外壁を焼杉板に更新しました。

バス停は、集落にとって玄関口と言える重要なランドマークですから、大切に扱う、このような取り組みは素晴らしいと感じました。

さて、現在の福住には、ウイング神姫と京阪京都交通の2事業者が発着します。
かつて、運行していた西日本JRバスの「園篠線」は2002年に撤退。その際、路線維持のために使える手段はなんでも活用しました。地場の路線バスへの引き継ぎ、自治体による貸切バス事業者に委託、スクールバスへの混乗、支線の乗合タクシー化などの施策がとられました。
兵庫県側は神姫バス(現在のウイング神姫)に引き継がれましたが、県境をどうするかは課題となったそうで、結果的に県境を挟んで京都府側は、京都交通(現在の京阪京都交通)に貸切委託をしました。いわゆる21条バスです。路線が分断されたため、園篠線と同じルートを現在のバス路線で乗車しようとすると、この福住で両路線を乗り継ぐルートが一般的となります。

2023年11月現在
ウイング神姫の時刻表

2023年11月現在
京阪京阪交通の時刻表

ウイング神姫便
丹波篠山市のスクールバス一般混乗車両で運行していました。

京阪京都交通
以前は貸切委託(21条バス)でしたが、今は制度が改正され、いわゆる通常の乗合バスとして運行しています。

福住を含めたこの地域は、鉄道が廃止され、その後、代替となるJRバスすらも廃止された経緯を持ちます。
しかし、様々な代替手段を活用し、かろうじてバス路線の維持は叶いました。

そんな過疎地域ですが、実際に現地を訪れ、地元の方々によるバス停を大切にする姿勢に、頭の下がる思いがしました。
この先も路線が維持されることを願うばかりです。
<撮影2023年11月>