ネット動画で見る、ブレイク以前の売れない時代の又吉は、
「暗い」「死に神」と言われるけれど、
感受性が強く繊細なだけであって、他の芸人たちから一目置かれているし、
それほど暗くはあるまいに、と私は思っていた。
甘かった。
このエッセイに描かれた又吉は、本当に暗い。
どん底時代は、バイト面接にも落ち続け、お金がなく食事もあまり摂れず、
飢餓感を、読書に耽ることによって紛らわせていたらしい。
感性は研ぎ澄まされたことだろう。
文学的素養も、この頃に鍛え磨かれたことだろう。
だがそれは諸刃の剣で、肥大した自意識によって、
ますます自分が痛めつけられる。
ネット動画(2008年頃)は、おそらくどん底時代よりは、希望が見えた時代なのだろう。
それでも映像からは、確かに人一倍小柄で、虚弱な印象を受ける。
いかに経済的圧迫と心理的苦悩が凄まじかったか、想像に難くない。
又吉は高校時代、名門サッカー部の副部長で、全国大会まで行った人である。
本来ならそれだけでも、一生胸を張れる自信を手に入れるものではなかろうか。
中学以来の親友とコンビを組んで上京し、吉本養成所で頭角を表わし、
「線香花火」という漫才コンビで、プロ入り後も順調に伸びていったにも関わらず、
相方が引退を決意したため、2003年にコンビ解散。
出家するつもりだった又吉を綾部が呼び止めて、
1か月後に新コンビ「ピース」をスタートさせる。
これが息が合うまで数年を要し、なかなか新人の舞台から上に行けず、
どんどん後輩に抜かれてゆく。
孤独で惨めで焦慮に苦しんだ時代に、心を救ってくれたのが文章表現。
伸びやかに広げられる創造の翼。
太宰治生誕100年ライブ「太宰ナイト」を、自らの目標に定め、
果てしない闇夜を乗り越えるエネルギーに変えた又吉の、
誠実で美しい、硬派な魂に、私は心から拍手を捧げたい。
繊細で優しく柔らかい心の核に持つ、
全ての魔物を跳ね返す、硬質のダイヤモンド。
彼の魂は、なにものにも、傷付けることができなかったのだ。
「暗い」「死に神」と言われるけれど、
感受性が強く繊細なだけであって、他の芸人たちから一目置かれているし、
それほど暗くはあるまいに、と私は思っていた。
甘かった。
このエッセイに描かれた又吉は、本当に暗い。
どん底時代は、バイト面接にも落ち続け、お金がなく食事もあまり摂れず、
飢餓感を、読書に耽ることによって紛らわせていたらしい。
感性は研ぎ澄まされたことだろう。
文学的素養も、この頃に鍛え磨かれたことだろう。
だがそれは諸刃の剣で、肥大した自意識によって、
ますます自分が痛めつけられる。
ネット動画(2008年頃)は、おそらくどん底時代よりは、希望が見えた時代なのだろう。
それでも映像からは、確かに人一倍小柄で、虚弱な印象を受ける。
いかに経済的圧迫と心理的苦悩が凄まじかったか、想像に難くない。
又吉は高校時代、名門サッカー部の副部長で、全国大会まで行った人である。
本来ならそれだけでも、一生胸を張れる自信を手に入れるものではなかろうか。
中学以来の親友とコンビを組んで上京し、吉本養成所で頭角を表わし、
「線香花火」という漫才コンビで、プロ入り後も順調に伸びていったにも関わらず、
相方が引退を決意したため、2003年にコンビ解散。
出家するつもりだった又吉を綾部が呼び止めて、
1か月後に新コンビ「ピース」をスタートさせる。
これが息が合うまで数年を要し、なかなか新人の舞台から上に行けず、
どんどん後輩に抜かれてゆく。
孤独で惨めで焦慮に苦しんだ時代に、心を救ってくれたのが文章表現。
伸びやかに広げられる創造の翼。
太宰治生誕100年ライブ「太宰ナイト」を、自らの目標に定め、
果てしない闇夜を乗り越えるエネルギーに変えた又吉の、
誠実で美しい、硬派な魂に、私は心から拍手を捧げたい。
繊細で優しく柔らかい心の核に持つ、
全ての魔物を跳ね返す、硬質のダイヤモンド。
彼の魂は、なにものにも、傷付けることができなかったのだ。