果てのある路

ささやかな想いをエッセイで…

『みをつくし料理帖』 高田郁

2013-09-26 14:00:14 | 読書関連
古書店の片隅で、ひょっこり『八朔の雪』を見付けたのが、ひと月前。
以前から評判は聞いていたが、時代小説や人情噺が苦手な私は、
なんとなく敬遠していた作品だった。
恐る恐る、手に取った一冊。
しかし、一読して、すっかり心を掴まれ、たちまち既刊全八巻を購入した。

ゆっくり味わうように、一日一作ずつ、就寝前に読んでいる。
毎晩、涙で目をはらしながら、心はほんのり温まる。
昨夜、六巻目である『心星ひとつ』を読み終えた。


文化文政時代の江戸・神田を舞台に、
ひたむきに料理に身を尽くす、町娘にして天才料理人の人情物語。

不遇な運命により、ゼロから、
というよりマイナスから出発しながらも、
真心を大切にし、知恵や工夫を凝らして、
艱難辛苦に立ち向かってゆく、主人公の健気さとかいがいしさ。

そこから大きく転換して、
シンデレラストーリーに進展かと思いきや、
まさかの(やはりの)『心星ひとつ』だった。

このシリーズを通して、作者が最も描き、問いたいのは、この、
“身分や権威が、壊してしまう何か”
ではないか、と思った。
(まだ、読んでいる途中ではあるが)




登場人物のほとんど全員に、感情移入できる、血肉の通った設定。

 倹しい暮らしの中でも、季節の巡りを楽しみ、
 心は豊かだった江戸の庶民たち。

季節感や情景を表す、昔ことばが美しい。
日本語の奥ゆかしさに、思いが馳せる。

作中の、料理を作ったり食べたりする描写が、また圧巻。
たいへん美味しそうで、時節がら、思わず「はてなの飯」を作ってしまったほどだ。
その他、料理のヒントや、和食の基礎、下拵えのコツなども、
教えてもらえて嬉しい、本当に実の多い小説だ。
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“自立”と“生”

2013-09-21 15:36:42 | つぶやき
自分自身の覚書きとして、これを貼っておこう。
(『ほぼ日刊新聞・大人の小論文教室』Lesson652)

山田ズーニーのこのコーナーは大好きで、
ずっと以前から愛読しており、いつも強い共感を覚え、
素直に学ばせていただいているのだが、
このLesson652と、次のLesson653は、
私の今後にとって、おそらく何度も読み返すことになるだろう、
そんな予感がする。

  人同士のつながりというものは、
  関係性と距離感が、重要なキーを握る。

また、老いから巻き返す力というのも、身につまされる年齢だ。
それはきっと、無理をするのとは対極にある。
きっと、自分の命が宇宙とがっぷり四つに組む、
充実した瞬間なのではないかなぁ、と思う。
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