星郎は、いつもよりだいぶ早く起床した。窓から外をのぞくと、もうさよりが手提げかばんを持って立っていた。そのいじらしい姿に星郎は心を動かされた。
「さよりは、本当は学校へ行って友達と勉強したり、遊んだりしたいのだ。だが、生まれつきの指の足りないことを悪餓鬼どもがいじめの種にしているので、登校したくともいけないのだ。何とかしてやりたい!さよりを助けてあげたい!」と、星郎は強く思った。
急いで着替えて、おばぁさんの用意してくれてある朝食をほおばると、表へでた。
「お早う」と言うと、
「お早う」と心ぼそい声が返って来た。
「さよりさん、早かったねぇ。僕について来れば、何も心配することはないからね。さぁ行こう」
二人は、学校に向かって歩き出した。すると後ろから足音が聞こえて来た。
振り返ると、おばぁさんが、ついて来るのだった。
「さよりさん、あのおばぁさんを知ってるかい」
と、尋ねると、黙ってうなずいた。
「ああ、そうか。さよりさんの家のおばぁさんだね。あなたが学校に行っていじめられるのを心配してついて来たんだね」
「うん、そうだよう。弁当を作ってくれながら一緒に学校へ行くって言ってただよ。だからおらは、絵の先生がついてくれるから大丈夫だと言っただけども、後からついて来ただね」
「それじゃぁ、おばぁさににも校門までついて来てもらおうよ。さよりさんをとても心配してるんだね。今日からは、僕がついているから心配しないでいいよ」
星郎は、力強い声を出して、さよりさんを元気づけた。
おばぁさんは、二人からすこうし離れて、腰を曲げながら歩いていた。
校門までやって来ると、
「さよりちゃん、お早う」
と、声をかける女の子がいた。
「お早う」
と、さよりは、恥ずかしそうに下を向いて挨拶をした。
星郎も
「お早う、さよりさんと仲良くしてね」
と、挨拶を返したら女の子は、にっこりとして
「うん」と言った。
子供たちが、さよりの周りを囲んで、口々に
「心配してただよ」
「誰もいじめねぇから毎日学校へ来るんだよ」
「先生も仲ようしなさいと、言ってたよ」
などと、大騒ぎになった。
「あれ、この人は誰だい」
さっきから黙って子供たちの様子を見ていた星郎に気づいた子が、さよりに尋ねた。
「東京から来た絵の先生だよ。おらは、一ぺぇ描いてもらっただよ」
「それじゃぁ、おらたちにも描いてくれよ」
「おらも、おらも」と、大さわぎになってしまった。
その騒ぎを聞きつけた担任の女の先生が、出て来て
「さよりちゃん、お早う。よく来ましたね。心配していましたよ」
と、言うと、星郎が
「担任の先生ですか。僕は、さよりさんの友達です。さよりさんが、学校を休んでいるのを心配して今朝はついて来ました。この子供たちの仲間に僕も入れて下さいませんか」
と、先生に申し出た。
子供たちは、とび上がって喜んで
「先生よう、絵がえれぇうまいって言うから図画の時間に教えてもらうべぇよ」
ガキ大将のいじめっ子の多平が言い出した。
ほかの子たちも大喜びで、
「そりゃあ、いいねぇ。おねげぇしますだ」
と、手をたたいた。
離れて様子をうかがっていたおばぁさんは、提げていた手拭いで涙をぬぐった。
「さよりは、本当は学校へ行って友達と勉強したり、遊んだりしたいのだ。だが、生まれつきの指の足りないことを悪餓鬼どもがいじめの種にしているので、登校したくともいけないのだ。何とかしてやりたい!さよりを助けてあげたい!」と、星郎は強く思った。
急いで着替えて、おばぁさんの用意してくれてある朝食をほおばると、表へでた。
「お早う」と言うと、
「お早う」と心ぼそい声が返って来た。
「さよりさん、早かったねぇ。僕について来れば、何も心配することはないからね。さぁ行こう」
二人は、学校に向かって歩き出した。すると後ろから足音が聞こえて来た。
振り返ると、おばぁさんが、ついて来るのだった。
「さよりさん、あのおばぁさんを知ってるかい」
と、尋ねると、黙ってうなずいた。
「ああ、そうか。さよりさんの家のおばぁさんだね。あなたが学校に行っていじめられるのを心配してついて来たんだね」
「うん、そうだよう。弁当を作ってくれながら一緒に学校へ行くって言ってただよ。だからおらは、絵の先生がついてくれるから大丈夫だと言っただけども、後からついて来ただね」
「それじゃぁ、おばぁさににも校門までついて来てもらおうよ。さよりさんをとても心配してるんだね。今日からは、僕がついているから心配しないでいいよ」
星郎は、力強い声を出して、さよりさんを元気づけた。
おばぁさんは、二人からすこうし離れて、腰を曲げながら歩いていた。
校門までやって来ると、
「さよりちゃん、お早う」
と、声をかける女の子がいた。
「お早う」
と、さよりは、恥ずかしそうに下を向いて挨拶をした。
星郎も
「お早う、さよりさんと仲良くしてね」
と、挨拶を返したら女の子は、にっこりとして
「うん」と言った。
子供たちが、さよりの周りを囲んで、口々に
「心配してただよ」
「誰もいじめねぇから毎日学校へ来るんだよ」
「先生も仲ようしなさいと、言ってたよ」
などと、大騒ぎになった。
「あれ、この人は誰だい」
さっきから黙って子供たちの様子を見ていた星郎に気づいた子が、さよりに尋ねた。
「東京から来た絵の先生だよ。おらは、一ぺぇ描いてもらっただよ」
「それじゃぁ、おらたちにも描いてくれよ」
「おらも、おらも」と、大さわぎになってしまった。
その騒ぎを聞きつけた担任の女の先生が、出て来て
「さよりちゃん、お早う。よく来ましたね。心配していましたよ」
と、言うと、星郎が
「担任の先生ですか。僕は、さよりさんの友達です。さよりさんが、学校を休んでいるのを心配して今朝はついて来ました。この子供たちの仲間に僕も入れて下さいませんか」
と、先生に申し出た。
子供たちは、とび上がって喜んで
「先生よう、絵がえれぇうまいって言うから図画の時間に教えてもらうべぇよ」
ガキ大将のいじめっ子の多平が言い出した。
ほかの子たちも大喜びで、
「そりゃあ、いいねぇ。おねげぇしますだ」
と、手をたたいた。
離れて様子をうかがっていたおばぁさんは、提げていた手拭いで涙をぬぐった。