「先生、お婆はおこんねぇかなぁ。おこったら助けてくんど」
「ああ、いいともよ。お婆には、ぼくからも話すからね」
「うちのお婆は、怒ると、すげぇおっかねぇからよ」
内へ入って行くと、
「さよりかぁ、えれぇ遅いじゃねぇかよ。どこへ行ってただい」
「先生に絵を見てもらってからおっかぁさんに会いに行っただよ」
「何、おらが、あれほど行くじゃねぇと言ってあるのによう」
「それでね、お婆が寝たきりだって言ったばよ、うちへ帰って来てくれるってよ」
「えっ、そらぁおいねぇ(いけない)ぞ。おめぇのおっかぁは、おらが追い出しただからよ。おらは、すぐにようなるぞ」
「でもね、おっかぁは、涙をこぼしていただ。お婆も、おらもしんぺぇだってよ」
星郎先生が、口をはさんだ。
「おばぁさん、今までのことは今までのことです。さよりちゃんも頑張っていますが、まだ小さい子どもです。そういつまでもおばぁさんの面倒を見ることは出来ませんよ」
そこへお父さんが帰って来た。
「話は外で聞いていたよ。おっかさんがけぇって来てくれれば、ありがてぇことだ。お婆も、さよりも助かるからなぁ。それにおれも漁に精を出せるからよ」
おばばは、目をつむって黙って聞いていたが、涙が頬に伝わっていた。いくら気の強いお婆も、やせ我慢をいつまでもしてはいられねぇったのだ。
「お父さん、おかぁさんは、明日には来ることになっていますからよろしく頼みますよ」
星郎は、そういうと外へ出た。岬の上に半月がかかっていて、潮騒が珍しく優しく響いていた。
「ああ、いいともよ。お婆には、ぼくからも話すからね」
「うちのお婆は、怒ると、すげぇおっかねぇからよ」
内へ入って行くと、
「さよりかぁ、えれぇ遅いじゃねぇかよ。どこへ行ってただい」
「先生に絵を見てもらってからおっかぁさんに会いに行っただよ」
「何、おらが、あれほど行くじゃねぇと言ってあるのによう」
「それでね、お婆が寝たきりだって言ったばよ、うちへ帰って来てくれるってよ」
「えっ、そらぁおいねぇ(いけない)ぞ。おめぇのおっかぁは、おらが追い出しただからよ。おらは、すぐにようなるぞ」
「でもね、おっかぁは、涙をこぼしていただ。お婆も、おらもしんぺぇだってよ」
星郎先生が、口をはさんだ。
「おばぁさん、今までのことは今までのことです。さよりちゃんも頑張っていますが、まだ小さい子どもです。そういつまでもおばぁさんの面倒を見ることは出来ませんよ」
そこへお父さんが帰って来た。
「話は外で聞いていたよ。おっかさんがけぇって来てくれれば、ありがてぇことだ。お婆も、さよりも助かるからなぁ。それにおれも漁に精を出せるからよ」
おばばは、目をつむって黙って聞いていたが、涙が頬に伝わっていた。いくら気の強いお婆も、やせ我慢をいつまでもしてはいられねぇったのだ。
「お父さん、おかぁさんは、明日には来ることになっていますからよろしく頼みますよ」
星郎は、そういうと外へ出た。岬の上に半月がかかっていて、潮騒が珍しく優しく響いていた。