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おぼろ男=おぼろ夜のおぼろ男は朧なり 三佐夫 

小説・エッセー。編著書100余冊、歴史小説『命燃ゆー養珠院お万の方と家康公』(幻冬舎ルネッサンス)好評!重版書店販売。

昨日の文章の訂正

2014-08-24 07:41:13 | 小説
ありませんが→ありますが  ですのでよろしく。言葉は、怖いですね。
今日は、午後から「岩の井クラブ」で、獲れたてのイセエビを肴に名酒各種を賞味します

大本山小湊誕生寺へ書を贈る

2014-08-22 17:43:04 | 小説
お万の方 礼讃
命燃ゆ
 同郷の日蓮御聖人を崇め
 法華経を座右に
 世の弱者救済に尽くす
 その業績 
  誠に偉大なり

  平成二十六年吉日安藤 三佐夫

 お万の方のお父上は、勝浦城主として誕生寺の大旦那でした。また、お孫の水戸黄門様は、誕生寺の再興に尽力されました。
 なお、拙著のご紹介に誕生寺様は、とても支援して下さっております。有り難いことですので、上掲の書をお送りさせていただきます。
 

「浜の娘とサンフランシスコ号の青年」推敲開始

2014-08-15 18:12:29 | 小説
 予定通り、今日から中編小説の推敲を始めます。ただし、これはブログには掲載しませんので、来春刊行予定の本でお読みください。
 すでに数社より出版の引き合いも来ておりますが、あわてることはないので、じっくりと取り組みます。
 乞うご期待!!

小説「貝の笛」 完成!!

2014-08-09 17:06:36 | 小説
 東京から喘息の療養に来た絵の好きな青年星郎と浜の少女サユリの交流を素朴な村の子どもたちと、鄙びた漁村の学校を舞台に現代の教育問題にも触れて描きました。
 青少年からシニア世代にまで読んでもらえる作品になりました。ジャンルは、児童文学になるでしょうが。
 そうそう、「貝の笛」って、どういうものかと言いますと、大きい2枚貝の蝶番の部分の出っ張りを削って穴をあけて、息を吹き込むと音が出るのですよ。ただ、メロディは難しいのですが、そこは小説ですので読者の想像にお任せです。
 完成祝いは、サザエの炊き込みご飯にしようと、スーパーへ行ってサザエを買ってきました。親しい生簀養殖の田中さんからサザエを殻ごと炊き込んで、炊き終えたら身を取り出してスライスし、味付けをして、ごはんに混ぜると良いというので、家内にやってもらいます。
 珍しい炊き込みご飯になるでしょうが、香りがよいということですぞ!
 窓の外は、霧にけぶっていて、白波の中に10人ほどのサーファーがうっすらと見えますから台風はこの浜にはあまり影響がないようです。
 強風は、海岸の高層マンションには襲ってこないことを願っております

沖より黒雲

2014-07-16 19:39:59 | 小説
 星郎は、沖に黒雲が湧き出て、南風が潮煙を巻き上げる夕暮れにとうとう息を引き取った。
「夏の疲れがたまっているところに急な激しい運動が重なり、呼吸不全で死亡してしまった」
と、年老いた医師が、駆けつけた村人や家族の人たちに病因を説明した。
 集まった人たちは、涙をこらえて、若くして逝った星郎の冥福を祈った。
 翌朝は、台風も去って、良い天気だった。
学校では、校長先生が校庭に並んだ全校の子どもたちに話した。
「短い間の図画の先生でしたが、星郎先生は皆さんの心にいつまでも、いつまでも生きています。本当によく教えてくれました。皆さんのお兄さんのような人でしたね。手を合わせ、目をつぶって、感謝のお祈りをしましょう」
 子どもたちも先生も涙をこらえきれなかったが、我慢して黙祷をした。
 子どもたちは、家族に抱かれて遺骨が汽車で東京へ帰る時刻に全員、駅へ見送りに行った。トンネルから黒い煙を吐いて機関車が出てくると、さよりはその場へ座り込んで泣きじゃくってしまった。杖を突いたお婆も隣で手を合わせていた。
 
 それから20年ほどがたった。
 さよりは、浜の小学校で図画の先生をしていた。高校を出て、東京の美術大学に行き、図画の先生になったのだ。
 餓鬼大将の太一は、漁師の仕事をついでいて、時々、タイやヒラメをさよりの家に届けてくれる。
 級長だった正男は、千葉の先生になる大学を出て、隣町の中学校で英語の先生をしている。
 この3人が、相談して、星郎先生の命日には、教え子に集まってもらい、「星郎先生をしのぶ会」をやることになっている。
 さよりは、久しぶりに仏壇から貝の笛を取り出して、お婆に教えてもらった歌を吹こうと練習している。星郎先生が、きっと耳を澄まして聞いていてくれるに違いないと真面目に思っているのである。 (終わり)

危篤の先生

2014-07-15 19:42:40 | 小説
 子どもの回復は、早い。さよりは、目を覚ますと、ベッドの中から周りをきょろきょろ見回して、
「ここは、どこ?」
 さよりが尋ねた。
「おお、目をさましたか。ここは、病院だぞ」
「良かった、良かったねぇ、さより」
「お父も、おっかぁもいるのか。おらは、腹がへったよ」
 心配していた二人は、顔を見合わせて、ほっとした。
「隣に寝ているのは、誰だい」
「先生だよ。おめぇを助けてくれた星郎先生だよ」
「えっ、先生は、おらを助けてくれたのかい」
「そうだよ、おめぇが海でおぼれているのを助けてくれただよ」
「それで、先生は、まだ寝ているのかい」
「医者どんの話じゃ、おめぇより方だが弱っているようだ」
「助かってくれればいいがのう」
「えっ、そんなに具合が悪いのかい」
 ベッドから飛び起きてしまった
 さよりは、星郎先生が心配で、ベッドに寝ているどころではないのだ。
 しばらくすると、医者どんが見回って来た。
「お早う。この子は回復が早いようだね。隣の先生の方は、まだ目を覚まさないようだが、どれ、どれ」
 と言って、右手首の脈をとっていたが、静かに首を振った。
 外には、子どもたちが大勢集まって来て
「さよりちゃん」
「先生よう」
 と、大きい声で呼ぶのだった。
 その声に星郎先生は、薄目を開けたが、すぐにまた閉じてしまった。
 医者どんが、先生の右腕に太い注射針をさして、
「これでも眠っているようだと、家族を至急呼ぶといい」
 と、言って、診察室へ入って行った。
 騒ぎを聞きつけて、学校の先生方や村の大人たちも駆けつけて来た。
「ふうむ。星郎先生は、体が弱いからなかなか回復しねぇかもしれねぇなぁ」
 校長先生が、腕組みをしたままつぶやいた。
 担任の先生が、子どもたちを学校へもどるように指示した。子どもたちは、心配しながら黙って学校へ向かった。
「みなさん、しんぺぇをかけてすまねぇよ。おらが野さよりは、元気になったけども、先生の様子がどうもよくねぇだよ」
 サヨリのお父さんが、そう言って、顔を手のひらで
拭った。
「図画の先生だっぺ。子どもらにえらぁく人気がある先生だそうだよ」
「早くよくなってくだせぇよう」
 村人たちも星郎先生の回復をみんな願っていた。

病室

2014-07-12 19:31:50 | 小説
「先生の方は、だいぶ衰弱しているね。持病があるようだ。」
 年取ったお医者さんは、首を振って、駆けつけた人たちに言った。
「この女の子は、水を沢山飲んでいるだけだから心配はないだろうが、一晩入院して様子を見るといいね」
「おらが、二人に付き添います」
 サヨリのおかぁさんが、申し出た。
「一人で二人の付き添いは無理だからおれも付き添うぞ」
 サヨリのお父さんも申し出た。
「そうか。それなら安心だが、何かあれば、すぐにわしを呼んでくれ。隣の部屋に寝ているからな」
「へぇ、有難うごぜぇます。おれは、寝ずに二人を診ているから何かあればすぐにお呼びしますだ」
 心配して病院の廊下で様子を見ていた子どもたちも家へ帰って行った。
「さよりちゃん、さよりちゃん」
「しっかり腕につかまって」
 などと、星郎先生は、うわごとを何度も言う。
 その度におかぁさんが、
「さよりはでぇ丈夫ですよ」
 と、言うが、またしばらくすると、同じ言葉を繰り返すのだった。
「あぁ、ありがてぇことだなぁ。こんなにさよりを思ってくれるとは」
 気丈なお父さんが、腕で涙を拭って、おかぁさんに話しかけると、
「本当にありがてぇことですよ。先生、さよりはでぇ丈夫ですから気を確かにしてくだせぇよ」
 おかぁさんも涙を着物の袖で拭った。
 こうして、いつの間にか空が明るんで来た。

波にさらわれるさより

2014-07-11 21:10:25 | 小説
子どもたちは、絵を描くのにとても熱心で、日によっては、教えていないクラスの子どもたちも来ることがあった。やはり東京から来た若い先生が珍しいので、絵を習うのは2の次なのだろう。
 浜辺に打ち上げられた美しい貝がらを見つけて描く子もいれば、浜に揚げられた小魚や、肌の色つやの美しい魚を描く子もいて、楽しい日々であった。
 ある日、太一が言った。
「このところ海に入って泳いでいねぇなぁ。たまには、みんなで泳ぐべぇよ」
「うん、誰が一番潜っていられるか、競争すべぇよ」
 女の子で、いつも元気なとめ子が、すぐに賛成して、男の子は素っ裸、女の子もパンツだけになって、海へ入って行った。
 この日は、いつもより白波が沖の方で立っていたが、波打ち際は、いつも通りに静かだった。
 星郎先生は、子どもたちから少し離れた日陰で海岸風景をスケッチしていたので、子どもたちが海に入ったのに気づかなかった。
 しばらくすると、
「先生!先生!」
 正男の声がした。
「なんだい?」
「てぇへんだよう、さよりが波に引っ張られて、沖の方へ流されているだよ。早く来てよう」
 星郎は、飛び上がって、子どもたちの方へ駆けて行った。まだ波打ち際からは、そう遠くではない所で、さよりの頭が浮いている。そのそばに太一と、泳ぎの達者な子が数人泳いでさよりを助けようとしているのが目にはいった。
「がんばれ!さより」
 星郎は、着ている物をかなぐり捨てて、海に飛び込んだ。あまり泳ぎは達者でない星郎先生が、泳いでさよりに近づいた。
 太一もさよりに手を伸ばして、海に沈むのを助けているが、一人ではなかなかうまく行かないのだ。そこへ先生が近づいて来て、二人でさよりを助けた。ほかの子たちも何人か来たので、さよりは何とか抱えられて、浮くことが出来た。
 こうして、さよりは助かった。
「さよりちゃん、よかった、よかったね」
 星郎先生は、そう言うと、力つきてその場へばったりとへたり込んでしまった。 
 この騒ぎを聞きつけた網元の若い衆たちが、さよりのお父さんと駆けつけてきた。
「すぐに先生と細魚を病院へ連れて行ってくれ」
 お父さんの言いつけで二人は、背負われて近くの病院へ担ぎ込まれた


絵をほめる

2014-07-10 18:45:13 | 小説
子どもたちは、ものも言わないでスケッチに取り掛かった。星郎先生は、見回って声をかけた。
「花のふくらんだ形がいいねぇ。うまいうまい」
「ヒルガオの つるの伸び方が面白いよ。ただ、花のついているところは、どこかな。もっとようく見ること」
「ちょっと線が乱暴だが、茎と葉が空へ伸びていて面白い」
「バックに海を入れて、月見草の花を大きく描いたのはとてもいいよ」
などと、声をかけると、ますます夢中で絵に取り組むことを星郎先生は知った。
「さよりちゃんも間に合ったね。いつもより思い切って元気な花を大きく描いて見なさい」
「はぁい」
 さよりは、とても張り切った声で答えたので、星郎はほっとした。おばばもきっと期限が良いのであろう。
「先生、描けたから大まるをくんど」
 太一が、先ず絵を見せに来た。
 太一は、大胆な絵をいつも描くのだが、ちょっと丁寧さに欠けるのだ。
「どれどれ、おう、だいぶ上手になったなぁ。この花びらは、どうなっているか、もっとよく見て直すとよいな」
「ああ、そうか。やっぱり先生だな。ようし、描きなおして来るからね」
小走りで砂丘へもどって行くと、おずおずとユリ子が絵をみんなに隠しながら持って来た。
「先生、これでいい?」
「ふうむ、なかなかいいよ。月見草と、ヒルガオの花が絡み合って咲いているんだね。おもしろいなぁ」
そこへ正男がやって来て、丁寧にお辞儀をして絵を見せた。
「3本も月見草を描いたの?1本はきれいに開いていて、2本はしおれているね」
正男は、うなずいて言った。
「だって、今の時間は、咲いている花を見つけるのは、容易じゃないです。月見草は、早起きの花ですよ」
「なぁるほどなぁ。正男君の言うとおりだね。君は、だから3本も描いたのだね」
 ニコッと笑顔を見せて、こっくりした。
 太一がのぞきに来て
「やっぱり、正男は級長だよ。おらたちは気がつかねぇったかんなぁ」
と、大声で言った。
 しばらくしてから星郎先生は、大声で言った。
「そろそろ家に帰る時間だから描き終った人は、見せてごらん。まるをつけてやるよ」
「はぁい。大きなまるをくんど」
 子どもたちは、星郎先生を囲んで、自分の絵を差し出した。
 もう夕焼けが空いっぱいに広がっていた


母と子

2014-07-09 19:29:09 | 小説
星郎は、うつらうつらと眠っていると、だんだんに子どもたちの声が近づいて来た。
「まだ、学校は始まっていないのにどうしたのか」と思って布団から体を起こした。
「先生、お早う」
 窓の外から太一の大声が聞こえた。
 ガラス戸越しに外をのぞくと、7,8人の子どもたちがいた。
立てつけの悪いガラス戸をあけて、尋ねた。
「やあ、お早う。こんなに早くからどうしたの?」
「おらたちはよう、先生に絵を教えてもらうべぇと相談しただよ」
正男が、真剣な顔つきで言った。ほかの子も声をそろえて
「おねげぇします」
 にこにこ顔で嬉しそうに声をそろえて言った。手には、小さなノートと、鉛筆などを持っていた。
「それじゃ、朝の食事をしたら浜に行くから遊んで待っていなさい」
「はぁい」
 子供たちは、とび上がって、向こうの砂丘目指して走って行った。
 星郎先生は、いくら都合が悪くても、子どもたちの清んだまなざしを見ると断れないのだ。
 急いで顔を洗い、布団をあげて、おばあさんの用意してくれたご飯を食べて、子どもたちの待つ浜へ向かった。
 途中で、さよりが、おかぁさんと手をつないでやって来るのに出会った。二人は、ぴょこりとお辞儀をして
「お早うごぜぇます。昨日は、すっかりお世話になりました」
 とおかぁさんがお礼を言うと
「朝早くにね、おとうが、おっかぁを迎えに行っただよ」
 サヨリは嬉しそうに先生に言った。
「おお、そりゃぁ良かったねぇ。さよりちゃんもおばぁさんのお世話をしないで、学校の来られるね」
「うん、先生にいっぺぇ絵を教えてもらえるだよ」
 嬉しそうに言った。
 立ち話をしていると、子どもたちが、迎えにやって来た。
「今行くからね。待ってなよ。さよりちゃんもスケッチブックを取って来なさいね。今日は、砂丘に咲いている月見草とハマヒルガオを描くからね」
 さよりは、おかぁさんの手を引っ張って家に帰った