<fo早速、海女小屋に入って着替えをし、ガウンを羽織って磯辺に出ると、小屋を出るときから待ちかねていたアマチュアカメラマンたちのフラッシュを浴びた。
先ほどの幹事さんが、手招きをしている場所に向かうと、顔なじみの写真家のBさんが笑顔で迎えてくれた。Bさんは、売出し中のヌード写真家で何度か茉莉子も依頼されたことがあった。ドイツの写真コンクールで第二席に入賞した時には、お祝いのパーティを上野のレストランで写真家のお仲間たちがして下さり、招かれたこともあった。
「まぁ先生、お久しぶりで御座います」
と、挨拶をすると、
「遠いところをよくお出でになったね。I社長さんからあなたがお出でになることは聞いていて、会うのを楽しみにしていましたよ」
Bさんは、徹底的にいろいろと場所を移動してモデルにポーズをとらせて、しつこいほどにシャッターを何度も切るので有名であったし、モデルたちも敬遠していたほどだ。
「I社長さん、今日は夕焼け空が朱色に輝きそうだからそれを浜辺で茉莉子さんが見上げているところを私は撮りたいが、みなさんはどうかねぇ」
と、提案した。
集まっている地元の人たちは、東京の大先生が言うことは、すべて受け入れるので、今日の撮影会は夕方まで行うことになった。茉莉子は、もう異議を唱えたり、都合を言ったりは出来ないのが、モデルの辛いところだ。
「茉莉子さん、それでよいでしょう。今夜はI社長さんの離れに泊まってくださいね。もう私は二週間ほど、御厄介になっていますよ」
Bさんの言葉には、お断りさせないぞと言う強い口調が隠されていて、黙ってうなずいたのであった。
「それでは、みなさん。夕焼雲の出るまでは、モデルさんにはこの磯辺でいろいろなポーズをとってもらいますからシャッターチャンスを逃がさないで名作を撮ってください」
と、I社長が声を張り上げた。
御宿の岩和田海岸は波の荒い所で、岸壁や、そこを滴り落ちる清水を背景にして日本人離れした茉莉子の容貌や肢体を写すのは、アマチュアにとっては、心の踊るような喜びだ。
夢中になってシャッターを切る音が鳴りやまぬのであったが、Bさんは、助手にカメラを持たせて、悠然と葉巻煙草をくゆらせているのであった。さすがはプロの写真家だと、集まったアマチュア写真家は感心させられるのである。
その日の夕暮れの雲の色は、エーゲ海の岬の上の千変万化するものとよく似ていたからBさんは、得意げに助手に指示して立て続けにシャッターを切った。それは、空が薄暗くなるまで続けられたから「さすがは有名な写真家だ」と、撮影会に参加していた者たちは互いにうなづきあった。
こうして、撮影会が終わり、Bさんと茉莉子は、Iしゃちょうのお宅へと車で向かい、町はずれの狭い道を車は巧みにとおって社長さん宅にはいった。nt size="6">
先ほどの幹事さんが、手招きをしている場所に向かうと、顔なじみの写真家のBさんが笑顔で迎えてくれた。Bさんは、売出し中のヌード写真家で何度か茉莉子も依頼されたことがあった。ドイツの写真コンクールで第二席に入賞した時には、お祝いのパーティを上野のレストランで写真家のお仲間たちがして下さり、招かれたこともあった。
「まぁ先生、お久しぶりで御座います」
と、挨拶をすると、
「遠いところをよくお出でになったね。I社長さんからあなたがお出でになることは聞いていて、会うのを楽しみにしていましたよ」
Bさんは、徹底的にいろいろと場所を移動してモデルにポーズをとらせて、しつこいほどにシャッターを何度も切るので有名であったし、モデルたちも敬遠していたほどだ。
「I社長さん、今日は夕焼け空が朱色に輝きそうだからそれを浜辺で茉莉子さんが見上げているところを私は撮りたいが、みなさんはどうかねぇ」
と、提案した。
集まっている地元の人たちは、東京の大先生が言うことは、すべて受け入れるので、今日の撮影会は夕方まで行うことになった。茉莉子は、もう異議を唱えたり、都合を言ったりは出来ないのが、モデルの辛いところだ。
「茉莉子さん、それでよいでしょう。今夜はI社長さんの離れに泊まってくださいね。もう私は二週間ほど、御厄介になっていますよ」
Bさんの言葉には、お断りさせないぞと言う強い口調が隠されていて、黙ってうなずいたのであった。
「それでは、みなさん。夕焼雲の出るまでは、モデルさんにはこの磯辺でいろいろなポーズをとってもらいますからシャッターチャンスを逃がさないで名作を撮ってください」
と、I社長が声を張り上げた。
御宿の岩和田海岸は波の荒い所で、岸壁や、そこを滴り落ちる清水を背景にして日本人離れした茉莉子の容貌や肢体を写すのは、アマチュアにとっては、心の踊るような喜びだ。
夢中になってシャッターを切る音が鳴りやまぬのであったが、Bさんは、助手にカメラを持たせて、悠然と葉巻煙草をくゆらせているのであった。さすがはプロの写真家だと、集まったアマチュア写真家は感心させられるのである。
その日の夕暮れの雲の色は、エーゲ海の岬の上の千変万化するものとよく似ていたからBさんは、得意げに助手に指示して立て続けにシャッターを切った。それは、空が薄暗くなるまで続けられたから「さすがは有名な写真家だ」と、撮影会に参加していた者たちは互いにうなづきあった。
こうして、撮影会が終わり、Bさんと茉莉子は、Iしゃちょうのお宅へと車で向かい、町はずれの狭い道を車は巧みにとおって社長さん宅にはいった。nt size="6">