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おぼろ男=おぼろ夜のおぼろ男は朧なり 三佐夫 

小説・エッセー。編著書100余冊、歴史小説『命燃ゆー養珠院お万の方と家康公』(幻冬舎ルネッサンス)好評!重版書店販売。

月の浜辺で

2014-01-21 19:35:38 | Weblog
「そうじゃねぇだよ。ほら右手を出しなよ。おれみてぇに小指と小指を絡ませて、閻魔様、閻魔様。指切り~げんまん、嘘つくと~針千本のませるぞ!って、約束するんだよ」
「おお、それは~面白いですねぇ~。わたしもこの指を~出すのですねぇ~」
 二人は、小指と小指を絡ませて、何度も指切りげんまんをするのだった。
 気が付くと、いつの間にか月が海の上の方まで登っていた。
「あれ、遅くなるとおっかぁに怒られてしまうだよ。早う帰るべぇよ」
 白い砂浜は、月明かりで昼のようであった。
 二人は、指切りげんまんの時のように小指と小指を絡ませて、家路についた。
 家に着くと、おっかさんが、月明りの中で海老をとる網を繕っていて
「にしらぁは、どこへ行ってただよう。遅いじゃねぇか」
 と、注意した。
「わたしが~たえさんを~浜辺に誘いました~。ごめんなさぁい」
「若いもんが、夜遅くまで遊びあるお手いちゃぁよくねぇから気をつけっだよ」
二人は、口々に
 「ごめんなせぇ」
 と、謝って部屋へ上がった。

大河歴史小説の最終手入れ

2014-01-20 14:49:48 | Weblog
 大河歴史小説「命燃ゆ」の最終手入れが終わりました。かなり編集者の意見が入りましたので、細部や文体がよくなりました。今朝は、早起きをして、残っていた関ヶ原の戦いを詳しく書きましたので、すべて完了です。あとは校正が待っていますが、それは割合簡単です。font>
大河歴史小説
『命燃ゆー養珠院お万の方と家康公』(安藤三佐夫著・幻冬社ルネッサンス)
                ゆかりの地(作品の舞台) 
☆千葉県内☆ 
勝浦市=正木城(八幡岬)・朝市  御宿町=岩和田・岩瀬家  大多喜町=大多喜城 
一宮町=一宮城  鴨川市=小湊誕生寺・鏡忍寺・正文寺・妙覚寺・仁右衛門島
館山市=正木・里見家  南房総市=長狭街道  鋸南町=保田港鯨とり・龍島
山武市=妙宣寺  匝瑳市=飯高寺  東金市=東金御殿  佐倉市=佐倉城
千葉市=お茶屋御殿・金親町  船橋市・八千代市・八街市・千葉市・東金市=お成り街道
松戸市=本土寺・松さとの渡し 市川市=行徳河岸  木更津市=木更津河岸 
 ☆千葉県外☆ 
山梨県身延町=久遠寺・本遠寺・敬慎院・神力坊
東京都=江戸城・紀州屋敷・日本橋河岸・養珠院通り・於満稲荷・佃島・本門寺
大阪市=大阪城  堺市=港町  京都市=二条城・本法寺  伏見市=伏見城
茨城県=水戸市・常陸太田市
和歌山県=和歌山城・三重県=紀州藩領
小田原市=小田原城・一夜城  三浦市=久里浜港・新井城  鎌倉市=英勝寺
静岡市=駿府城・妙国寺・蓮永寺・感応寺・久能山東照宮  名古屋市=名古屋城
浜松市=浜松城  三島市=妙法華寺・三島本陣  藤枝市=田中城 
伊豆市=妙国寺・吉奈温泉・善名寺  河津町=北条屋敷・笹原城・乗安寺
韮山市=江川屋敷  岡崎市=岡崎城  熊本市=熊本城 ほか

             ">キ  リ  ト  リ              
   注 文 書 ※3月出版―最寄りの書店へ予約下さい!
『命燃ゆー養珠院お万の方と家康公』(安藤三佐夫著・幻冬舎ルネッサンス刊)
(  )部を注文する。価格1,680円(税込)

 ご氏名(             )
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※書店名(                        ) 


 明日からは、また連載の小説に戻ります。お楽しみにー。

晩秋の浜辺

2014-01-16 20:10:54 | Weblog
 晩秋の満月が、網代湾の上にのぼっていた。岩和田の岬の森は、黒一色だが、水平線のあたりは、昼のようにきらきらと煌めいている。
 ミゲルとたえは、砂浜をただ歩いていた。砂山には、枯れのこった月見草の花が、寒さに耐えてクリーム色の花弁を開いていた。
「あれ、まだ咲いているよ」
「きれいな色の~花だねぇ~」
 二人は、月光に向かって咲いている月見草のわきに腰を下ろして、黙って潮騒のささやきを聞いていた。
 たえは、ノビスパンに行くと言うミゲロの憂いを含んだ横顔を月明かりでのぞいていた。色白で鼻筋の通った顔は、このあたりの若者とは異質である。
「たえさんは、いつも~なにを~思っているのでしょうか」
 ミゲロの問いは、たえには答えようがなかったが、黙っていてはいけないと考えた。
「おれはよう、浜へ出て、鮑や栄螺や海の草をいっぺぇとることをいつもかんげぇているだよう」
「たえさんは~とても~働き者ですねぇ。ルソンの~娘たちは、あまり働かないのですよ~」
 たえには、ルソンの娘たちが、働かないのはなぜかが分からないのであった。
 足元に小さな蟹が走ってきたのを見つけたミゲルが、
「この虫は、日本の~言葉で~なんでしょうか~」
と、たえの顔を覗き込んで尋ねた。
「これはねぇ、虫ではなくて、海のさかなだよう。大きいのは、ゆでて食うだよ」
「あぁ、ルソンでも~たべますよ~。私は~大好きです」
「今度、海へ出た時に磯の穴から蟹を探してきてやるよ」
「それなら~私も海へ~連れて行って~くださいなぁ」
「あぁいいよう。ミゲルさんに蟹が捕まえられるかなぁ」
「わたし~がんばりま~す」
「きっとだよ。それなら指切りげんまんをしようよ」
「指を~きるのですか~。それは~困りますねぇ」
 たえは、ミゲルの真剣な顔つきに思わず笑ってしまった。
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閑話休題=ヴァイオリニスト黒沼ユリ子女史が我が家へ

2014-01-15 20:12:03 | Weblog
 御宿町とメキシコのアカプルコが友好都市であるのは、400年前のサンフランシスコ号の遭難救助によります。メキシコ在住の国際的に著名な黒沼さんは、毎年、御宿町でボランティアの演奏をしています。私の記憶の中の黒沼さんは、天才少女ですが、歳月は経って、今では74歳のおばぁ様です。だが、その演奏は、迫力がありましたし、気さくな語り部でもありました。わたしは、町の名誉町民に推挙したいと考えております。
 その方が、わがマンションにおいでになって、拙宅でお茶を飲んでくださいましたからこれはにゅーすです。
 もう一つ、今朝の朝日新聞千葉版に「命燃ゆー養珠院お万の方と家康公」が幻冬舎ルネッサンより3月に出版される記事が大きく掲載されました。有り難いことです

ルソンの日本人

2014-01-15 20:09:29 | Weblog
 ">片言の日本語を話すミゲロと言う若者は、とても人懐こくて、誰にでもにこやかに話しかけるので、村の人気者になった。
 「ミゲロさん、おめぇさんは、どうして日本語が出来るんだい」
 と、たえのお爺さんが尋ねると、にっこり笑って
 「わたしは~ルソンの日本人~の家で働いて~おりました。だからすこうし出来るように~な
りました」
「そうかい。ルソンには、日本人がいるのか」
「はぁい、とても~沢山が~いますよう。この前、日本人が~大勢で~おこって~大騒ぎになりました~」
「ほう、それはなぜかい」
「なんでも~日本人の~あきんどさんが~品物を~ごまかして~売っていたというので~役人に~捕まりました。それは、嘘でしたから、日本人が~、たくさんで~牢屋へ押しかけましたよう。だから、みんなつかまって~牢屋に~入りましたよ~」
「何人ぐらい捕まったのかな」
「えぇと~二百人ぐらいでしたよ~。でも、ロドリゴ提督が~ルソンに来て~調べたら~日本人は~悪くないのでした。それでみんな~日本へ帰しました」
「そのロドリゴさんは、この船に乗っている親方さんかい」
「そうですよう。ロドリゴさんは、とても優しい人ですから~みんな~喜んでいましたね」
「おお、そんなに偉い人がいるのか。もっと、大事にしねぇといけねぇな」
「ありがとうごぜぇます。ロドリゴさんは~、この村の~人たちは、命の~恩人だと、私たちにおしえて~います」
「それでおめぇは、どうしてこの船に乗ったんだい」
「わたしの~お父さんは~ノエスパンに生まれて~ルソンに来ました。お母さんは~、ルソンの~人です。それで~私が~生まれました。だから~ノエスパンへ~行きたかったので、おねがいして~船に~乗せて~もらいました。ごはんの~お手伝いです」
たえは、祖父とミゲルの会話を聞いていて、この異国の若者に何となく興味を抱いた。
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2014-01-14 21:10:41 | Weblog
その夜、茉莉子は寝付かれないままに潮鳴りを聞いていると、遠い昔のスペイン船の遭難の様子が、あれやこれやと脳裏に浮かび、眠れないままに夢幻のように浜の娘と異国の若者の恋物語がセピア色に繰り広げられるのである。

 湯浅家は紀州より魚を求めてこの岩和田に移り住んだ一族のリーダーの一人であった。遭難した異国の人たちを家の大きさによって数人ずつ宿泊させることになり、湯浅の家には4人が泊まることになった。肌の赤褐色の三十代が二人、四十代と二十代の白人が一人ずつである。
 家には、祖父母と両親と年頃の一人娘のたえ(鯛)の五人家族であった。普段はせまい耕地で米や野菜を作っているが、海の穏やかな日には、祖父と両親は浜に寄る魚を獲っている。
たえは、村でも評判の働き者で器量よしであった。いつもは、浜に出て海藻や貝を獲っていたが、急に四人も人が増えたので、祖母を手伝って食事の用意や洗たくに精を出すことになった。
「あ~なたの~なまえを~おしえてくださ~い」
数日たった朝のこと、スペインの若者が、たえに話しかけた。長身でマリーンブルーの大きな目の持ち主であった。異国の人が、日本の言葉をたどたどしく話したので、たえは、びっくりして、手にしていた茶碗を落としてしまった。
「あのう、私の名前ですか」
「は~い、そうです。わたしの~なぁは、ミゲロ-カナールと~もうしま~す」
「おらの名は、たえだよう」
「あ~なたは~、としは~いくつで~しょうか。わたしは~二十三です」
「おらは、十七だよ」
その日は、それだけの会話でおわった

海女との夕食

2014-01-13 18:35:56 | Weblog
案内された家は、藁ぶき屋根の天井の低い家である。はだか電灯のぶら下がった二間の座敷と土間があった。前に泊まった岩の井の離れ座敷とは、月とすっぽんであるが、この集落では上等の方である。
「遠慮しねぇで上がんなよ。とう(夫)は、夕方の漁に出たから今夜は誰もいねぇだよ」
「お子さんは、いらっしゃらないのですか」
「ああ、うちは養子供が出来ねぇっただ。爺さん、ばぁさんは早うに冥土へ呼ばれてしまったかん亭主と二人だけだよ」
「今、湯を沸かすかん行水をして汗を流してくんど」
土間には、土の竈があって、上に大釜と小釜が乗せられていた。茉莉子は、幼い時から都会暮らしなのでカルチャーショックを感じた。でも、こういう素朴な生活には土臭い魅力があった。
お湯が沸いたので庭先で盥にお湯を入れて、体を洗うのだが、これには戸惑ってしまった。だが、郷に入れば郷に従え、だと覚悟を決めて縁先で裸になって出された手ぬぐいで体を洗った。濃紺のハマヒルガオの群生している庭隅から虫の声が聞こえて来た。空を見上げるとメキシコ塔の上に半月が登っている。
行水をしているうちにお膳の上に野菜と、魚の煮つけが出されていた。
「おれも行水してくるからゆっくりしていなよ。あぁそうだよ、おれの名は菊っていうだよ。何でも庭先に菊の花が咲いているときに生まれたから爺様がそう名付けたそうだ」
「いい名前ですね。私は茉莉子(まりこ)です。今夜は、御厄介になります」
と、茉莉子は改まった口調で挨拶をした。
 海女の菊さんとの夕食は、興味深いものであった。
「あんたは、なぜこんな所へ一人でやって来ただい」
「菊さん、私は東京でモデルをやっていて、この浜が好きになったんです」
「あぁ、岩の井の旦那が東京からきれいな娘さんを呼んでよく撮影会を浜でやっているから知ってるよ。あんたも来たことがあるんだね。旦那はね私らが浜で仕事していると、ポケットのキャラメルをくれて、いっぺぇ写真をとるだよ。鶴ちゃんや、絹ちゃんはきれいだからよく景色のいい所で写されているよ」
「わたしは、この前撮影が遅くなって、岩の井の離れに泊めていただいたのです」
「あぁ、あそこはこの町で一番古い家で、戦前には代議士も出てるだよ」
「三百年あまり昔のスペインの船のマストの材木が梁に使われていて驚きました」
「あんたは、色白で美人なので何か言われねぇったかい」
「えぇ、一緒に泊まった写真家のB先生にこの村には外人の血の混じった子供が時々生まれると、言われました」
「そうだったかい。あんたは、背丈も高いから言われただよ。学校で外人に似ていると言われていじめられた子もいるだよ。あんたもそう言われたことはねぇかい」
「私は、東京の学校に通いましたからそう言ういじめには合わなかったです」
「そうかい。そりゃぁいかったよう」
「菊さんねぇ。この前、御宿から家に帰って父に尋ねたら私の祖父は、この岩和田から東京へ出て来たんだそうです」
「それで、さっき湯浅の家を探していたんだね」
と、菊さんは、茉莉子の顔ををまじまじとみつめていたが、
「おこらねぇでくんどよ。もしかすると、湯浅の家には外人の血が入っているかも知れねぇなぁ」
と、大きな声を出した。
 海女たちは、荒い海で生きるのだから声の大きいのは地声だが、茉莉子はびっくりさせられたのである。

休載のお知らせ

2014-01-11 08:31:27 | Weblog
今日は、これから公開講座「命燃ゆー養珠院お万の方と家康公」(幻冬舎ルネッサンス)で千葉市へ講演に出向きます。
明日は、メキシコよりヴァイオリニストの黒沼ゆり子さんがお出でになり御宿町にてコンサートと歓迎パーティがあります。
そういうわけで、小説執筆の時間が取れませんので休載します。