「乞食」とは、道に落ちている物を拾う人たちのことを指すのではない。彼らは単に、廃棄物の有効活用をしているに過ぎない(現行法規に於いても、遺失物の取得を原則、合法と認めている)。「本物の乞食」とは、相互理解、信頼のない者(団体)に対し、金品を要求する(または、授与される)人間のことを顕す。
血縁という関係を以ってのみ、すねを齧る子供(もしくは、その逆)、雇用の維持だけで会社組織にぶら下がる(依存する)サラリーマン、予算取りのためだけに盲目的に地方への無駄な公共投資を継続する行政機関等、その例は枚挙に暇がない。しかし、仮に肉親から現金を一時借用していても、はたまた、定年までひとつの組織に勤め続けたサラリーマンであっても、上記に該当しないケースが(昨今では稀だが)存在する。その差異に起因するのが、「プライドの介在」だ。
私の好きなロックン・ロールを代表としたミュージシャンたち(興味のある方は「音楽評論」のカテゴリを参照)は、時にその作品の中で、「foolish pride」なる表現を施す。この意味するものとは、多くが、自己顕示欲であったり、虚栄心であったりして、プライドの本質とは異なる、単なる幼児性に過ぎない(もちろん、当のアーティストたちも否定的に使用している)。つまり、プライド概念の成立には、「一定上位での自我の覚醒」が必須事項となる。
また、プライドを直訳すれば、「自尊心」となる。読んで字の如し、「自身を尊ぶ気持ち」を意図している。自己を客観的、論理的に一己の生命として敬愛するわけであるから、当然、その前に自身をよく知る必要がある。そして、ここで敢えて喚起すれば、英語で「存在する」とは「exist」と綴り、そのラテン語の語義は「外へ出て行く(踏み出す)こと」である。
仮に、とてもサディスティックな、俗に言う「イジメっ子(ここでは成人男子と仮定)」がいるとする。彼は職場に於いて、上司を除く二十名の同僚(部下を含む)とグループ作業をしている。彼はその性格故に、業務遂行上、ことあるごとに周囲への不義を働くのだが、ここで、彼がその全員に対し攻撃性を示すかというと、えてしてそうではない。中には、部下にあたる社員であっても、その範疇外に活動する者も存在するはずだ。それは何故かというと、「人格に統一性はない」からである。
人格とは、当該人物(ここでいう彼)の五歳の頃の自分、十歳の時のと或る経験をし(反応をし)た自分、思春期に恋愛をした自分・・etcの統合(体系化)した総体に過ぎない。この側面からも、人間が自身以外の(物理的には表皮を境界とした)外部との接触なしには自我の形成には至らず、そればかりか、その本質を顧みることすら出来ない事実が帰納できると言える。
そして、かかる論点からの、「外部との明確な識別を獲得した人物のプライド」とは、イコール「知性」でもある。再び例証すれば、女性から金品を受け取る男性がいるとする。彼らの未熟な恋愛関係は、その物質的授与に拘束されている。その時、その男性が自身及び、その女性のことを真義に案じ、現在の唯物的関係を絶った(具象的には別離、もしくは正当な関係へ移行した)としたら、それを世間一般で、「プライドのある男性」と呼ぶのではないだろうか。そして、そうすることが、それぞれにとっての、長期的及び、大局的見地からの幸福を醸造する「ヴェクトル」も意味する。
論語に「不踰矩(七十にして心の欲する所に従いて、矩を踰えず)」という、有名な言葉がある。「矩」という単語には、型、規格、四角形等の語義があり、規矩、矩尺、矩形を英訳する場合は、standard、rule、common等の単語が主としてあてがわれる。しかし、人に於いての「矩」とは、その人物を取り巻く(厳密には出生後、現在に至るまでの)事象の全てであり、直訳には「formula」が相応しいのではないか、と私は考えている(ご興味頂けた方は、スピード概念と民主主義理念をご覧下さい)。そして、私は「自由」の語義を、「与えられた矩の全肯定下に於ける自己実現」であると解釈している。
※「プライド」に関し必然的に付記すれば、女性の側からのプライドとは、上記と少し様相を違える。よりフィジカルになる、と形容していい。つまり、その自尊心とは、「自身の身体を物質的に大切にすること」だと換言できる。ここで敢えて差別化した理由は、そもそも母性なる「叡智」を生得的に保持できる女性が、わざわざ男性の場合のような「時間軸に即した知性」を獲得する必然性はないことを叙述したかったからであり、また、決してできないことを意図するのでもない。その気になれば、(現状がそうであるように)女性の方が優位であるとも形容できるからだ。ただ、その獲得経緯には多大な「犠牲」が伴うため、相対的に空間理念に所属することができる女性が、わざわざ物質的(稀でなく身体的)犠牲を併発させてまで、それに固執しなくてはならない蓋然性は低いと言えるだろう。
最後に、「You Gotta Be」「Life(ドラマ主題歌)」「Kissing You(映画Romeo&juliet主題歌)」で有名なDes'ree(デズリー)の、「I Ain't Movin'」を付与しておきたい。「私は逃げない」と歌う、アフリカ系イギリス人である彼女のソウルが、あなたのハートにヴァイブすることを祈って。
I Ain't Movin'-Des'ree
Love is my passion
Love is my friend
Love is universal
Love never ends
Then why am I faced with so much anger, so much pain?
Why should I hide? Why should I be ashamed?
Time is much too short to be living somebody elses life
I walk with dignity, I step with pride
'Cos I ain't movin' from my face,
from my race, from my history
I ain't movin' from my love,
my peaceful love, it means too much to me
Loving self can be so hard
Honesty can be demanding
Learn to love yourself,
it's a great, great feeling
When you're down baby, I will set you free
I will be your remedy, I will be your tree
A wise man is clever, seldom ever speaks a word
A foolish man keeps talking, never is he heard
Time's too lonely, too lonely without words
Future voices need to be heard
Eyebrows are always older than the beards
Momma said be brave, you've nothing to fear
I ain't movin', I've been here long before
I ain't movin', 'cos I want more
I ain't movin', got my feet on the ground
As far as I'm concerned, love should win the rounds