蟷螂の独白

世に背を向けた蟷螂です。喜怒哀楽を綴って18年、モットーは是々非々の団塊世代です。

あの日のこと

2021-03-07 17:20:44 | 徒然

11日、あの東日本大震災から丸10年になります。

当日は近所の診療所へ薬を貰いに行こうと、ジーンズに足を通したその瞬間に『グラッ』と来ました。

直ぐに大きいと判断し部屋を出て、直感的にエレベーターは使わずに、階段を駆け下りました。

エントランスで5階のオバサンと会ったら、『なぁに慌ててるの』と声を掛けられました。

少し認知気味の人なので、構っちゃいられません。

マンションから飛び出しました。

金曜日なので道は車で溢れていました。

クラクションを立て続けに鳴らす車もいました。

ドライバーの顔は不安そうでした。

外の植栽の縁で小学生の女の子が顔に手を当てて泣いていました。

『ママが買い物から帰ってこない

母親が子供に留守番をさせて夕食の買い物にでも出かけたのでしょう。

上階からの落下物の心配は考えられない場所でしたが、揺れがひと段落していたので『もう大丈夫だと思うから、部屋に戻っていた方がいい』と声を掛けました。

自分は飛び出したくせに。

マンションの玄関ホールを見ると縄のようなものが落ちていました。

近寄ってよく見ると、蟷螂が穿いているジーンズのベルトでした。

そのとき松坂屋へお出かけしていた同居人から電話が入りました。

携帯はすべて回線が繋がらなくなっていたのに、偶然1回だけ繋がったのです。

『いま、✖✖駅にいる』

隣の駅に着いたところだと言います。

意外に冷静な声でした。

あの日、『今日は医者へ行くから必ず早く帰って来いよ』と、虫の知らせかカンピューターか、出かけようとしている同居人に申し付けてあったのです。

いつもは蟷螂の言葉を聞きもせず、夜になるまで帰ってこない同居人でしたが、『なんだか胸騒ぎがして早めに帰ろうと思った』そうです。

同居人も野生のカンが働いたのでしょう。

マンションの植栽の縁に腰を下ろして待つこと10分、隣の駅から買い物の入ったビニール袋をぶら下げた同居人の姿が見えてきました。

『危なかったな』

そのまま松坂屋で買い物を続けていたら、交通機関がすべて停まり、同居人がどうなったか考えただけでもおぞましい。

折り合いの悪い義弟の住む上野の実家へは行きたくないでしょう。

同居人の買い物袋を受け取り、無事を確認し合ったその時、余震が起きました。

蟷螂夫妻は大通りを渡り、近くの大きな公園へ向かって歩き始めました。

建築中のビルのそばにくると、何回目かの余震が起きました。

シャッターがバタバタ音を立て、外へ出ていた職人が空を見上げます。

揺れているのは地面なのに。

シャッターが揺れでガシャガシャ不気味な音を立てます。

振り向くと13階建てのアパートが左右に揺れています。

しゃがみこんだ蟷螂がアスファルトに両手を当てると、グルグルと地面が回っていました。

大きなワンボックスカーがすぐ横をクラクションを鳴らしながら通り過ぎ ます。

歩きながら携帯(ガラケー)にダウンロードしてあったワンセグの画面を見ると、震源地が東北沖であることと、津波警報が発令されていることを知りました。

ん・・・

ここらは海抜30センチ。

津波が来たら公園はヤバいかもしれないと考え、マンションに引き返すことを決意、同居人とマンションへ戻りました。

部屋の中は意外に整然としていましたが、お不動様のお札がすべて床に落ちていました。

食器棚からの落下物もなく、お不動様のお札を元に戻してテレビのスイッチを入れます。

『NHKだ!』

画面では緊迫した表情のアナウンサーが絶叫に近い声で避難を呼びかけています。

そのときはまだ、『津波といってもセンチメートル単位ではないか、これまでだってそうだったのだから、今回もそうに違いない』と、大甘の考え方を抱いていました。

余震は間断なく緊急地震速報と共に起き、その都度蟷螂夫婦の顔が青ざめました。

『風呂に水を入れ、飯を炊けるだけ炊いてオムスビをたくさん作って冷凍しておけ』

なにかしていないと心が落ち着かないのです。

いつ停電が起き、断水してもおかしくない状況では、それ以外の方法は思いつきませんでした。

そこへ愚弟から電話が入りました。

『店の公衆電話からかけている。こっちは大丈夫だ』

親子二人で親父の遺したビルの4階と5階に住んでいる愚母愚弟コンビには、蟷螂が携帯から電話を入れても繋がりませんでした。

『こっちは大丈夫だ。田原町を見てきてくれ』

『よし、チャリで見てくる』

後で知ったのですが、ビルはラーメン構造のため、上階は立っていられないほど揺れたそうです。

後日、愚母のケアマネとの打ち合わせで訪れた時、5階と屋上の間の壁に、鉄筋がむき出しになるほどのヒビが入っていました。

まもなく愚弟から『田原町は大丈夫だった』と連絡が入りました。

愚母は揺れ続ける中、階段を降りて避難したそうです。

そうこうしているうちに、原発の情報が伝えられました。

電源喪失、『風呂の空焚き』状態になっていると報道されると、これまで全く意識していなかった原発が気になりました。

その夜も余震が次々に起こり、日本各地で震度5程度の地震が頻発し、日本列島は一大地殻変動でも起きるのではないかと不安になりました。

『日本沈没』が現実味を帯びました。

夜になっても余震は収まらず、『ゴー』という地鳴と共にマンションが揺さぶられました。

あの夜から数日は、衣服を着たまま眠っていました。

怖いのはどこかの部屋で火災が起きることです。

財布などの貴重品は肌身から離せませんでした。

そして翌日から三陸区沿岸部の津波による行方不明者の捜索の報道の合間に福一の報道が混ざり始めました。

テレビの映像からCMが消え、すべてのチャンネルが報道一色になりました。

(テレビ東京だけは早めに通常放送に戻ったような気がします)

大震災の報道の裏で、福一の事故の深刻さは日を追って増しました。

幾度となくチェルノブイリと比較され、自衛隊のヘリからの放水や、『キリン』と呼ばれる背の高いコンクリートを流し込む車が福一に向かっていると報道されると、早く到着してほしいと祈ったものです。

枝野官房長官(当時)の、『直ちに健康に影響ないレベル』という発表を聞き、ということは将来は健康に影響が出るのか?と国外へ避難することも想定しました。

そして水素爆発。

蟷螂家にはあの当時入手した線量計が残ってます。

もう使うことはないと思っていたら、先日の地震で圧力隔壁内の圧力が下がっていると報道され、1930の堤氏によると再臨界も想定されるそうです。

それはまずい。

コロナと放射線のダブルパンチは日本壊滅を意味します。

蟷螂は福一以前より原発に反対のスタンスです。

核廃棄物の最終処分場が決まっていないにもかかわらず、原発を使い続けるのは日本壊滅どころか、人類滅亡へのカウントダウンに他ならないのです。

蟷螂世代が二酸化炭素の排出を抑制させて温暖化が止まり大気がクリーンになっても、数世代後に放射線で必ずしっぺ返しがくるという考え方は、今でも変えていません。

それは、チェルノブイリの原発事故があったころから一貫しています。

日本はなぜ、世界唯一の原爆による被爆国であるにもかかわらず、原発を推進したのか理解不能です。

原発を導入した電力会社の考え方は、『今さえよければ、のちの世代が何とかしてくれる』という、安直極まりない、拝金主義の経営手法をとったために国もまんまと騙されて、原子力発電を推進したのに違いありません。

電力会社からの半端ない額の政治献金を鼻先に突きつけられて。

その結果、津波の恐れのある太平洋の沿岸に原発を建て続けたのです。

巨大地震は絶対に起きず、巨大津波も絶対に来ないと誰が決めたのでしょう。

決めつけたのは政治であることは間違いありません。

今回のcovid-19も原発事故に近いものがあります。

感染が拡大することがわかっていながら、経済を最優先させるGoTo。

日本に冬が来ないと誰が決めたのでしょう。

あるいは今年の冬も暖冬だから、covid-19は抑え込めると、大甘な考え方でGoToを開始したのです。

国は感染が収束し始めたらGoToを再開するハラであることは間違いありません。

よく日本人は忘れっぽいと言います。

あの太平洋戦争から復興し、世界有数の経済大国にまで発展したのは、日本人の忘れっぽさがあったからだと言う人もいるでしょう。

だから原発も日本人の忘れっぽさを利用して、再稼働させているのです。

福一が今後何万年もの間、日本人を苦しめ続けるという事実を隠蔽して原発を再稼働させても、核廃棄物の最終処分場が決定していない現在では、トイレ無きマンション状態なのです。

それに福一の溶け落ちた核燃料はどこに埋設するつもりなのでしょう。

このままだと最終処分場は海底しかないと思います。

比較的安定しているプレートを選んで海底油田を掘削する方法で、核廃棄物を埋め込むのは悪い選択肢ではないはずです。

もしかしたら中国が海洋覇権に熱心なのは、資源というより核廃棄物のゴミ捨て場として利用するためではないでしょうか。

ま、憶測ですが。

先日のニュージーランドの巨大地震が、次の日本近辺での巨大地震の予兆でないことを祈るだけです。

取りあえず今のところ地震雲は発生していませんが・・・

 

 

 

 


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