汨羅の観察人日記(一介のリベラルから見た現代日本)

自称『リベラル』の視点から、その時々の出来事(主に政治)についてコメントします。

東京五輪-懐疑的な見方

2013-09-08 20:27:09 | 政治全般
本日、2020年の東京五輪開催が決定された。
世間一般では、東京五輪について、祝賀モードである。
ただ、私はこの日本社会の雰囲気について、非常に懐疑的に感じている。

そもそも、東京で開催されて何が目出度いのだろうか。
オリンピックをその目で見ることが出来る。
スポーツ好きには、競技をその目で見ることが出来るというのは、非常にエキサイティングであろう。
しかし、国内大会における陸上競技場の観客数を見ると、日本にスポーツ競技を楽しんで見ることが出来る層がいかほど存在するのだろうか。多くはないであろう。

経済効果を期待しているのであろうか。
21世紀以降、生産労働力の増えない今日の日本において、公共事業をいくら行ったところで、経済効果がないことは明らかになった事項である。オリンピックに向けた経済効果など、オリンピック時に一時的に増える外国人旅行客が落とすお金以外、さほどあるとも思えない。

このように考えると、東京五輪で盛り上がっているのは、なんとなく沈滞した日本社会に光明を見出した気分になれるということであろうか。

しかし、高度成長期の入り口で行われた前回の東京五輪と違い、今回の東京五輪は人口減の真っ只中で行われるものであり、後世からみれば【日本衰退時における最後の花火】としかならないであろう。

仮に、国力衰退の道から日本が脱することを国家戦略とするのであれば、私としては、東京五輪などというイベントで国民の注意をそらすこのに資源を投入するのではなく、東京五輪を開催するのに必要な諸資源を、少子化対策に当てるべきであると思うのである。


小沢一郎(その1)

2013-09-07 13:01:22 | 政治全般


小沢一郎について、何をしたいのかわからないと評する人がいる。
その理由は、小沢一郎はかつて、市場主義に基づく国づくりをすべきだとの主張を日本改造論で言っていたはずである。ところが、近年の主張は、福祉国家を目指すべきだとの主張である。これは一貫性がないと言うのが、小沢一郎は何をしたいのかわからないと主張する方々の論旨である。

一見正しいように見えるが、これは、小沢一郎が目指しているものを見誤っているために起きる批判であ。小沢一郎が目指しているのは【二大政党による政権交代により、日本国の政治を常時活性化し得る政治的枠組み】の構築である。
したがって、小沢一郎が目指すのは、政権交代の軸となる政党の育成であり、自己の思想信条に合致した政党を大きくすることではないといえる。
つまり、大きな政府論が優勢な時は小さな政府を目指す政党を大きくする努力をするし、小さな政府論が優勢な時は、大きな政府を目指す政党を大きくする努力をする。ということである。

この、小沢一郎が目指す政治構造像を理解できないと、小沢一郎は政局のみ、小沢一郎は利権云々という、的外れな批判しかできなくなるのであろう。

また、永田町に集まる政治家は多かれ少なかれ権力を握りたいと考えている。そのような中、せっかく手に入った権力を、二大政党のもう一方の軸を作るために政党を割る、与党から離れるという行動は、小沢一郎についてゆけば権力を手に入れることができると思っていた政治家には憎まれ小沢一郎の理想を理解する政治家についても、新たな軸を作るには相当なエネルギーを要するので、どこかでついてゆけなくなるのだろう。

私個人としては、ドイツ的な二大政党を軸としつつ、そこからこぼれる主義主張を代表する小党がある、ドイツ的な政党システムが今後の日本政界を健全にする上で望ましいと考えている。このため、小沢一郎の考えるイギリス的な二大政党制とは考えが異なるものの、政権交代可能な政党制でなければ、日本社会は環境の変化に対応できなくなると危機意識を共有するものであることから、小沢一郎を支持するものである。

そして、今の日本政界において、小沢一郎のような縦軸、すなわち日本政界・日本社会の将来ビジョンをもって政治にあたっている政治家はいるかというと、私の知っている限りでは、いないのではないのである。

自称保守(ネトウヨ)の支離滅裂な韓国叩き-海産物輸入禁止

2013-09-07 11:56:01 | 自称保守・愛国≒ネトウヨ

福島原発における汚染水海洋流出問題を受け、韓国では福島県等の水産物の禁輸を決定した。
日本から輸出する際は検査を行っている、科学的には問題無い等の意見はあるかも知れないが、①日本側から汚染水流出に関する科学的検討を行うための十分な情報を提供していない、②そもそも市井の人々(当然、日本人も含む)は、直感的・短絡的な判断を行い易いことから風評被害が広まり易い、ということを考えると、今回の韓国政府の措置は妥当だといえよう。

ただ、本件について、保守派と称する輩、所謂【ネトウヨ】の韓国叩きが行われている。
曰く「韓国なんかに日本の魚介類を輸出しなくて結構」
曰く「この際、韓国への前面禁輸を実施せよ」
曰く「韓国の食品は不潔」
曰く「東京五輪への嫌がらせ」

このような言質を見るたびに、発言する人物の知的水準に呆れる日々である。
的に言って、思考が浅いのである。
本件についても、自称保守の思考の浅さがわかるので、ここで指摘しておく。

【韓国なんかに日本の魚介類を輸出しなくて結構】
まず、日本産魚介類が売れなくて困るのは、日本の漁業関係者。自称保守は、日本人が困っても問題無いという立場のようだが、これで愛国者を自認しているのだから滑稽である。
反論としては「韓国以外の市場開拓」なのであろうが、そもそも、日本国内ですら福島県産に対する風評被害がある、海外においては韓国のみならず、他の国においても福島の汚染水流出問題が大きく取り上げられている中、新たな市場を開拓できると思っていることそのこと自体、思考の浅さを物語っている。

【この際、韓国への前面禁輸を実施せよ】
そもそも、韓国は日本第3の貿易相手国だと言うことを知らないのだろうか。
これは、外務省のHPを見ると書いてある、簡単な事実である。
日本の貿易相手国第3位の韓国への全面禁輸を実施した場合、日本経済に甚大な影響が生じ、日本は不況から恐慌にまっしぐらである。日本をこのような状態に追い込む政策を嬉々として提唱する自称保守は、常日頃「強い日本」を言っているはずであるが、このような日本弱体化施策を平然と唱えているところに、彼ら(=自称保守)の思考の薄弱さを感じるところである。

【韓国の食品は不潔】
正直、韓国の食品がどの程度不潔なのか知見が無いのでなんともいえない。しかし、私も含め、私の周囲で韓国旅行後に食中毒になった、また、韓国産の食品を食して食中毒になったという人物がいないことからすると、潔癖症の人からすれば許容範囲外なのであろうが、一般的には許容範囲内なのであろう。
それより、福島県近海の放射能による汚染問題と、韓国における食品の衛生問題を同列に論じていること自体、その思考法に問題があるといえる。食品の衛生管理の問題と、食品の放射能汚染の問題は別次元の問題である。
このような別次元の事項を持ち出して、とりあえず韓国を批判するという姿勢に、自称保守の思考の杜撰さを感じずにはいられないところである。

【東京五輪への嫌がらせ】
韓国が東京五輪に反対して何の利益を得ることができるのか、私は理解することができない。しかし、仮にそのとおりだと仮定しよう。
私の知る範囲だと、自称保守(ネトウヨ)は、韓国人は世界の嫌われ者だの、韓国人が嘘つきなのは世界で有名だのネット上で主張していると記憶している。
そうすると、嫌われ者かつ嘘つきの韓国人が、東京五輪に向けディスインフォーメーションをすればするほど、却って他国における東京五輪への支持が広がるという論理展開になるはずだが、何故か、本件に関しては、他国の方々は韓国側の主張に乗ることが前提となる。
このように見ると、自称保守の思考というものは、論理的一貫性というものを著しく欠如していると思わざるを得ない。
そもそも、オリンピック開催地選考において、各国の記者から福島の汚染水処理についての質問が集中したことを考えると、韓国による東京五輪開催妨害工作というのは、時系列で考えて辻褄が合わないということに気づく。一言で言えば、為にする批判ということであろう。

このように、自称保守の韓国批判は、批判する側の知的水準を疑わざるを得ないレベルであることを述べてきた。
ただ、このような知的に残念な水準の言論が横行する背景を考えると、日本社会に根強く残る【朝鮮人差別】であると思う。つまり、戦前、2級、3級市民扱いであった【半島人=朝鮮人】に対する優越心を基に「韓国人の分際で日本に物申すのは生意気だ」「韓国人に発言する権利などない」という、差別意識が、自称保守が荒唐無稽なことをいう背景にあると感じる。

私としては、誇るものが国籍とDNAしかない輩を軽蔑するし、知的能力について疑問を持つ方なので、今回の海産物禁輸に関する自称保守による韓国叩きを見ると、叩いている輩に対して「もう少し、広く物事を知りましょうね」「国籍とDNA以外で誇れるものを持ちましょう」と言いたくなるのである。