2012年といえば、米国・ロシア・韓国での大統領選挙、中国における指導部の交代等、国際政治が大きく動く年である。年末に金正日が鬼籍に入り、北朝鮮という国家運営の帝王学をほとんど学んでいない金正恩が北朝鮮のトップになったのは、2012年をむかえ不安定化する国際情勢、特に東アジア情勢の不安定化に華を添える出来事であった。
さて、我が国の情勢を見てみると、なにやら「消費税増税」を論点に今年中に総選挙がありそうな勢いである。総選挙があった場合、民主とは現在の議席を保つのは困難だといういう予想が出ており、問題は民主及び与党がが過半数を維持できるかが焦点になろう。言い方を変えると、自民・公明による政権奪還が成るか否かということである。
しかし、少し考えると、この構図はおかしいということに気付く。そもそも、先の参院選で「消費税増税」を公約に掲げ勝利したのは自由民主党である(もっとも、得票率は民主党の方が高かったが)。民主党が自民党に擦り寄り、消費税増税を言い出したのならば、公約を実行に移すステージに入ったと真っ先に協力してよさそうなものであるが、何故か自民党の見解は「民主党が行う消費税増税は反対」である。理由は「民主党は選挙公約違反だから」である。
ちょっと待ってもらいたい。そもそも、民主党の公約のエッセンスは、マニュフェストに掲げるセーフティーネットを整備しつつ、政治・行政の無駄を削る。したがって、先ず「増税」ということはやらない。そして、無駄を削っても歳入が足りなければ増税するということであったはずである。
これに対し、自民党は参院での優位により旧社会党のように何でも反対し民主党の法案を参院で通過させず、結果として旧来(自民与党時代)の政策の延長を行う以外の選択肢がなくなったため、歳入不足を補うためには消費税増税しか手段が無くなったということであろう。
このように見ると、自民党が言っているのは、「自民党が民主党の法案を参院で葬る→民主党は従来の延長線以外の選択肢が無くなる→自民党は『民主党は公約違反』と騒ぎ立てる」という、自作自演以外の何者でもない構図であり、政党は権力を掌握するために何でもするということを知らなければ噴飯物である。
このように自民党の消費税に関する主張を見ると、一体この政党は何を考えてるのかわからないのであるが、そもそも、自由民主党そのものが何を目指しているのか、どのような国家、どのような政治を目指しているのかさっぱりわからない。ここに自民党のHPにある新綱領へのリンクがある。 http://www.jimin.jp/aboutus/declaration/
これを見てわかるのは
1新憲法制定
2高い志をもった日本人育成
3小さな政府
4持続可能な社会保障制度の確立(少子化対策含む)
5世界一、安心・安全な社会
6食糧・エネルギーの安定的確保
7知と技で国際競争力の強化
8循環型社会の構築を
9男女がともに支え合う社会
10生きがいとうるおいのある生活
ということを自民党が目指しているということである。 新綱領を見ると4~10は民主党のマニュフェストにも書かれているというより、更に具体的に書かれているということである。(因みに、1は民主党内の意見集約ができず、2に関しては言及無し、3に関し民主党は大きな政府指向)
つまり、4~10の分野では、党利党略がなければ十分に民自の調整が可能な分野であるのだが、何故か自民党は民主党の低い法案成立率を攻撃し、民主党マニュフェストを攻撃している始末である。民主党マニュフェストの攻撃は結構であるのだが、では、自民党が新綱領実現に向け、何を努力しているのかさっぱりわからない。
何故、自民党がこのように政策本位ではなく「政局本位」な主張をするのかといえば、色々な要因があるが、大きな理由の一つに「自民党は保守陣営の権力維持のために作られた政党である」という出自が大きく影響していると私は考えている。55年体制における保守合同の経緯を見れば、このことは容易にわかるであろう。左右社会党の合同への保守陣営のカウンターとしてできた政党、これが自由民主党である。従って自民党の綱領とは、畢竟、自由党の主張+民主党の主張以外の何者でもない。
実際、自民党の綱領・新綱領そのものが自由党と民主党の政策を足したものであり、鳩山一郎氏を鑑とする鳩山由紀夫元首相が実質オーナーであり、マニュフェスト作成に木曜クラブ直系の小沢一郎氏が深く関わった民主党マニュフェストと自民党の新綱領が類似していてもそれは当然なのである。
このように、自民党と民主党は「保守」という根は同じであり、自民党の新綱領で目指すところと民主党のマニュフェストは大きなところではベクトルが同じなのであるが、自民党は民主党の政策は全否定している。このような、結果として自分達の新綱領を否定するよう主張を、自民党は何故できるのか?という疑問が出てくる。先に指摘した「党派的見地からの否定」という要因以外で言えば、自由民主党は権力を維持する(即ち政権党でいる)ことを目的とし、政策は二の次の政党に成り果ててしまっていることに、その原因があるといえる。
実際、自民党のHPを始め、谷垣総裁、石原幹事長等、自民党の政治家の口から出てくるのは、ひたすら「民主党の政策はダメ」ということばかりであり、「このような国家・社会にするのでこのような政策が必要」という建設的な意見というものはほとんどないというのが現状である。 冷戦時代、自由主義化か社会主義どちらかを選べという時代であれば、自民党への投票=自由主義の選択ということが明確であった。また、人口増を前提とし、外交は対米一辺倒で済んでいた時代は、政官財のトップ層の思惑が基本的には一致しており、政治の役割は利害調整と現状の問題点の是正であったし、これで十分であった。
しかし、昨今の情勢は劇的に変化している。冷戦終了と中国の国力増により東アジア情勢は流動的になっている。我が国は人口減局面に入り、黙っていれば経済のパイは縮小していく。このような状況において、政治に期待されているのは、いかにして東アジアにおいて我が国が起立し、人口減社会において国の経済力を維持・増進し、国民の福祉の充実を図るかというビジョンを示すことであろう。 確かに民主党の政策は予算の抜本的組換えをしなければ財源が拠出できない政策であり、予算の抜本的組換えは負の影響が大きいため実施には相当な摩擦と困難が伴う。このため、マニュフェストの実施は財源という面で実現性が疑問視されるのはそのとおりである。 では、財源問題を叩いている自由民主党にはいかなるビジョンがあるのか?今までの自民党代議士の発言からわかるのは、外交は対米一辺倒以外のオプションは思考の範疇外であり、少子化対策は現状の延長線以外の策はなく、経済のパイを広げる具体策は何も無い。要は新綱領というビジョンらしいものはあるが、それを実現する気はサラサラ無い。つまりビジョンなどというものは持ち合わせていないとしかいいようが無いであろう。
このような政党に、これからの日本を任せてよいのかというと、私は甚だ疑問に思うわけである。 更に見方を変えれば、自民党とは所詮は冷戦体制化に生まれた政党であり、国際環境、社会環境が激変した今日においても新しいビジョンを国民の前に提示できないのであれば、既に賞味期限切れであるとしかいいようがあるまい。
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