旅音風馬 〜旅のち音 午後から風ときどき俄馬〜

ベチケン@苫米地謙治 Official blog by BecKen®

秘湯ロマン〜旅人の心に添う 秘湯は人なり…〜No.112 福田家

2016-08-21 | 
日本秘湯を守る会No.112


天城越えより程なくして現る
河津町湯ヶ野温泉(静岡県賀茂郡)




河津川に架かる小橋を渡った先に佇む、一軒の温泉旅館。




太宰治や川端康成など 多くの文豪たちゆかりのその宿は、明治十二年創業、福田家。




太宰の「東京八景」はこの部屋より誕生し、




川端の「伊豆の踊り子」は此処に起こりし彼の実体験を基に、この部屋にて書される。




後に六度も映画化され名作となった「伊豆の踊り子」であるが、そのうち福田家は五度ほど撮影の舞台に使われ、それぞれに踊り子と学生役に扮する 美空ひばりに石濱朗、鰐淵晴子に津川雅彦、吉永小百合に高橋英樹といった役者らも挙って此処に泊し そして英気を養って行ったという。




源泉掛け流しの榧(かや)風呂と、




岩風呂に露天風呂。

もちろん自動車も何もなかった古き良き時代にも拘らず、「わざわざ此処まで皆 遠路はるばる足を運んで来たということだ」という噂も 到底納得できる。




何時であったか、、何処ぞやのお偉いさんとやら、だったか、、
こんなことを呟いていたそうな。

「自分たちが必死に求めてきた経済発展の代償として、どこかに置き忘れてきた「人間性」が求められるときが、いつか来る。
日本の原風景と云うべき故郷を、自然風景を渇望するときが来る。

そのとき、山の小さな温泉宿に 本当の旅人が戻って来るだろう。
いづれの日か山の自然と出で湯は、きっとほのぼのとした人間らしさをよみがえらせてくれることだろう。

秘湯で歴史を守ろうと じっと耐えてきた人々の心の尊さを、解って頂ける時代が帰って来たのである。」




日本秘湯を守る会 名誉会長 岩木一二三拝