
以前、このブログで「通掛聞造(とおりがかりきくぞう)」という漫画キャラを取り上げたことがある。
それは小林よしのり先生の「おぼっちゃまくん」という漫画に出てくるキャラで、大金持ちの御曹司「御坊茶魔」君の「お助け軍団」の1人だった。
今回は、貧保耐三(びんぼたいぞう)というキャラについて触れてみたい。
彼へのメッセージのつもりで。
前略、貧保耐三君。いや・・・通称「貧ぼっちゃま」だったな。
君は、かつては大富豪にして上流家庭のぼっちゃんだったのだが、親の事業の失敗かなにかで小学校時代は落ちぶれて、極貧の暮らしをしていたんだよな。
当時は君には親はいなくて、君1人で幼い兄弟たちを支えていたっけ。
えらいやっちゃ。
口癖は「おちぶれてすまん」「こう見えても、元は上流階級」だったよなあ。
だまっていると顔は優等生的で、真面目な奴にも見えたもんさ。
いつも口をへの字に曲げている点などの「ふてぶてしさ」は、「当時の自分の状況」に耐えていた証拠かもしれないな。
正面から見た君は、一見「おぼっちゃん」であるのだが・・・君の「見た目」の最大の特徴は、その後姿にあったなあ。
お金がなくて、上流家庭らしい(?)おしゃれができなかったので、まっとうなスーツは買えなかったんだっけ。
でも、元上流階級というプライドだけはあったので、君は前半分だけのスーツを着ていたよな!
あれは、すごい姿だったぞ。
そのスーツ、後ろは「ない」。
後ろは素っ裸だったなあ。
要するに、前半分だけのスーツだったっけ。
後ろの生地をケチった(?)スーツだ。
前半分だけのスーツを、後ろで紐で固定しているだけだった。
縁日などで買ったお面を顔にかぶった時のような状態の全身版・・とでもいおうか。
体前半分に、スーツの「お面」をつけてるようなものだ。
おいおい、恥ずかしくはなかったのか?だとしたら、君は相当な大物か、相当な鈍感ってことになるぞ。
貧乏でちゃんとしたスーツは変えなかった君だったが、元は上流階級。
あの前半分だけのスーツは、せめてもの身だしなみやプライド・・のつもりだったんだなあ。
私思うに、かえってあんなスーツのほうが特注になるので、高くつきそうな気もするのだが(笑)、違うかい?
君はともかくプライドが高かった。
プライドが高い上に、妙な行動をとる変な奴だった。
だから非常に扱いにくい奴だったし、食べ物に対して意地汚い部分もある奴ではあったのだが、実は兄弟思いで、けっこう友情にも厚い。
君はそういう奴でもあったよな。
そう、君の本性は、いい奴である。それを君に言っても「ふん」とか言うんだろうけどな(笑)。
君は時々、生き方の核心をつくような発言をしたし、周りの人の「親切の押し売り(?)」やおせっかい、偽善やきれいごとを本音の言葉で粉砕することもあった。
けっこう痛快だったぞ。
君は、人の評価など気にしてはいなかったようにも見えた。
あの当時の生活をどうするかでいっぱいだったんだろうね。
また君は、サバイバル力が高く、たくましい生命力や自活力、生き抜く知恵を持っていた。
食べたものはすべて栄養にしてしまうという、超能力みたいな体力も持っていたっけ(笑)。
おいおい君ってヤツは、いったいどういう体してるんじゃあ。
君の境遇に同情した茶魔が君に色んな支援をしようとしたが、「こう見えても元は上流階級。人のほどこしは受けん」といって、支援を拒んでたっけ。
その気概が、私は好きだったんだよ。
だが・・そんな君も、母が死んだ時だけは、別だったなあ。
母の存在があるからこそ、貧乏にも耐えていただけに。
茶魔は、持ち前の財力を活かし、君に・・なんと、実物そっくりのサイボーグ母(実際にはロボットだと思うのだが・・)を作ってあげたよな。
さすがの貧ぼっちゃまも、この時だけは・・・そのプレゼントを受け入れたっけ。
いくら意地を張っていても、プライドが高くても、親を亡くしている寂しさの前ではそれを貫くことは・・できなかったのだろうね。
でも・・強がりばかり言ってても、たまにそんな姿を見せたって・・いいと思うぞ。
甘やかされて育って、何不自由ない生活をしている茶魔にとって、君はいつも気になる存在だったのではないだろうか。常に一目おいていたと思うんだ。
私は、そんな君「貧ぼっちゃま」が大好きだった。
面と向かって言うわけないけどな(笑)。本人を目の前にして言えるかい、そんなこと。
「おぼっちゃま君」という作品の中では、主役の茶魔とは対極にある感じだった君だが、けっこうファンは多かったのではないだろうか。
前半分のスーツ、「おちぶれてすまん」という決め台詞など、インパクトも大だった。主役の茶魔には、存在感で負けてなかったと思うぞ。
いくつもあるストーリーの中では、君は貧乏から脱出するチャンスはあった。
でも、結局それは実現しなかった。
君自身の意思でそうならなかったケースもあるよな。
行方不明になった茶魔を見つけたら大金をもらえる・・というエピソードの中で、君はひょんなことから茶魔を見つけた。覚えてるかい、そのエピソード。
茶魔をつれて御坊家に帰った時、君は大金をもらうこともできた。
だが、途中「葛藤」もあったはずだが、金よりも友情をとり、君は大金を受け取らなかった。
「こう見えても元・上流階級!なめるな!」という君の決め台詞が、あんなにカッコ良かったことはない。
君が金持ちに戻ってしまったら、君はどうなるんだろう。
相当ケチな金持ちになるか、あるいは慈愛にみちた金持ちになるかもしれないね。
その答は分からない。
でも・・君は貧乏だからこそ、君だったんだと思う。
そのプライドが輝いていたんだ。
貧乏でもプライドだけは忘れない・・・というのが、君のいい点でもある。
金持ちに戻ってしまったら、君の良さは半減してしまったかもね。
プライドがあったからこそ、君は頑張れたんだよな。
貧保家の、こんな標語が君のキャラクターを物語っている。
↓
「おちぶれたって、明るくびんぼ!ほこりたかき、元上流階級」
「おぼっちゃまくん」が終わってから、もうずいぶん時間がたつ。
当時小学生だった君も、漫画世界のなかでも普通の時間が流れていれば、今はもう大人になっているはず。
何か仕事をしているだろう。
大人になった貧保耐三は、今どうしているのだろう。
どうなっているのだろう。
あのプライドが邪魔になることもあれば、あのプライドが心の支えになったこともあるだろう。
なにより、あの生命力があれば、どんな困難にもへこたれないだろう。
ということは、今は大成功して、上流階級に戻っている可能性はある。
お~い、貧保耐三! 今どうしている?
お~い、貧ぼっちゃま!
あの「前半分だけのスーツ」はどうした?
まだ、あのスーツを着てるのかい?
あの服じゃ、冬はカゼひきそうだから、気をつけろよ。
とりあえず、誰もいない夜中の学校に忍び込んで、ケツ丸出しで残飯をあさるのだけは、もうやめてくれよ(笑)。
かっこ悪い・・を通り越して、すごい光景だったぞ。
あれだけは・・・勘弁してくれ。
ともかくだ。君のあのたくましさは、誰よりも輝いていたぞ。
・・今、元気かい?
「貧ぼっちゃま」こと、貧保耐三君へ。
ちなみに写真は、ヘタクソながら私が手描きで描いた「貧ぼっちゃま」です(笑)。
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