デタルカメラ時代の極軸合わせのドリフト法
(Drift Alignment with CCD or CMOS camera)
このページを読んでこの方法を初めて知りました。
Cloudy Nightsにもこんな記事があります。
以下の書籍の第12章にこの方法の紹介があります。
「Gerald R. Hubbell , Patrick Moore's Practical Astronomy Series
Scientific Astrophotography :How Amateurs Can Generate and Use Professional Imaging Data
© Springer Science + Business Media New York 2013」
さて、前置きは、このぐらいにして、この方法のポイントは、撮影中に赤道儀を赤経軸回りに往復運動させて、ドリフト量とその方向を“見える化“するといういうものです。
いろいろやり方はあると思いますが、balcon の普段行っているやり方を示します。
普通にドリフト法で選定する対象の恒星を選びます。極軸を東西方向に合わせるならば、天の赤道近くの南中前後の恒星を、極軸を 南北方向に合わせるならば、東北方向の水平線から少し昇ってくる赤緯40〜50度の恒星を選定します。
セオリー通りならば、上記の通りなのですが、balconのベランダは北東方向は、視界が悪く、南西方向が開けているので、南西方向の沈みつつある恒星を利用しています。手早く測定しないと、沈んでしまうので、精神衛生に悪いです。(笑)
赤道儀を振る速度は、大雑把に合わせるときは、日周運動の5倍速(75秒角/分)、もう少し精密に合わせるときは、日周運動の2倍速(30秒角/分)で動かしています。
機材は、KE-60屈折望遠鏡(口径60mm、焦点距離910mm)、CMOS カメラは、ZWO asi 224 mc を asi air に接続して、直焦点撮影します。asi airは、wifiでiPadに接続しています。
赤道儀は、Losmandy GM8です。対象の恒星を導入したら、コントローラの追尾速度(speed)に、guideにセットします。デフォルトでは、日周運動の5倍速です。
実際の方法は、次の通りです。
1) asi air をpreviewモードに設定して、露出時間を1分か3分にセットします。撮影を開始します。
2) 日周運動追尾で、10秒間撮影をします。
3) ハンドコントローラの右向き矢印 -> を押して、総露出時間の1/2(30秒または、90秒)押し続けます。
4) 30秒または90秒になったら、左向き矢印 <-を押し続けて撮影が終わるのを待ちます。
結果、このようなV字型の星像の写真が得られます。
丸くなっている端が開始点、丸みのない端が終点です。ドリフト0の場合は、往路と復路が一致して、2本の線が重なります。
赤道儀の基部にある微動ネジを一定量回転して、2回目の写真を撮影します。
幸いドリフト量は減少してきました。もしドリフト量が増えたら、反対方向に、先ほど回転量の二倍回して、撮影します。これを繰り返して、復路の線が、恒星像の中心のを通過するように、調整します。
ほぼ、ドリフト量は0に近づきました。
さらに暗い恒星を対象にして、日周運動の二倍速で3分露出して、極軸を追い込んでいくとこんな感じ極軸が合ってきます。
赤経方向、赤緯方向の2方向で追い込んだあと、オートガイドを行なって、ガイドエラーを見てみます。
ガイドエラーは、赤経方向0.68秒角/秒、赤緯方向で0.53秒角/秒と、どちらも、1秒角/秒以下となります。
望遠鏡の焦点距離ガイドエラーの許容範囲についての「天体写真の世界」
http://ryutao.main.jp/tips_howto22.html
の記事によれば、それぞれの焦点距離に対して、恒星が点像になるガイドエラーの許容範囲は、以下の通りで、
今回の精度で、焦点距離2000mm以上まで対応できるようです。(Balconの独自計算上は約2400mm)
焦点距離910mmのKE-60で撮影する場合を考えると、必要な精度の約三倍の精度です。
北極星の見えないベランダでも、十分な精度で、極軸を合わせることができたと思います。
あらかじめ、子午線に沿って赤道儀が設置されて、緯度に合わせられていれば、所要時間は、1分の露出が5回程度、3分の露出が3回あれば、合わせられるので、一方向15分程度、2方向で、30分ほどで、極軸を十分な精度で合わせることできます。
今回はasi air を使いましたが、時間が計れて、デジタル写真を撮れる環境があれば、特別なソフトも、pcも必要ありません。
原法とも言うべき記事が、
http://www.minorplanet.info/ObsGuides/Misc/ccdpolaralignment.htm
にあるので、次回は、少し理論的背景について、説明を掲載する予定です。
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