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ファイト! 闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう

2015-11-10 17:02:00 | MOVIE
本日の映画は

「ラスト・ナイツ」



です。

「CASSHERN」
(製作費6億円、興行収入15.3億円)
「GOEMON」
(製作費8.5億円、興行収入14.3億円)
のしくじり先生こと紀里谷和明監督の
映画第3作目であり、


興行収入を見る限り第1作も第2作も失敗作ではないんですね。お見逸れしました。

ハリウッド初進出作品となっています。

こう云ってはなんですが、
紀里谷和明監督作品と云うだけで
「負のフィルター」がかかる映画ファンが
かなりの数おられると思われるのに
今回はただのハリウッドで撮った映画ではなく
日本でヒットした映画のハリウッドリメイクでもなく
ハリウッド大作と呼んでもよい規模の映画です。
当然、お金(=製作費)もかかっております。

さらにハリウッド大作ですので
字幕も大御所、戸田奈津子先生です。

敢えて字幕を戸田先生に依頼するところに
私なんぞは
「監督、やりよるな。( ̄ー ̄)ニヤリッ」
と、非常に心惹かれたのですが、
戸田先生の翻訳を毛嫌いしている映画ファンが
少なからずいらっしゃるのもまた事実。

そして、ハリウッド大作らしく
出演者も豪華にハリウッドスターを起用。

日本ではアカデミー賞俳優
モーガン・フリーマンが出演していることで
注目を浴びていますが、
主演は今映画女子から注目を集めている
「英国俳優」の一人でありながら
箸にも棒にもかかっていないと思われる
(参考:「SCREEN×イマジカBS 英国男優総選挙2015」)
クライヴ・オーウィンです。


日本でクライヴ・オーウェン主演を理由に
劇場に足を運ぶファンってどのくらいいるのでしょう?


日本では女性人気が今一つでも
これは何気に凄いことです。

他にも
ノルウェーで何本が映画に主演しているアクセル・ヘニーや
「天使と悪魔」でヒロイン役を演じた
イスラエルの女優アイェレット・ゾラー、
韓国の国民的俳優、アン・ソンギ、
マオリ族出身のハリウッド俳優、クリフ・カーティスが
参加しており相当「国際色豊か」となっておりますが、
このこともまた人によっては
「監督スタッフ俳優の国籍が色々またがってる映画
=失敗作
と、取られかねません。

さらに原作があの「忠臣蔵」と
かなり手垢のついたものとなっております。

そうなると見る方もそれらを踏まえ
いくつもの色眼鏡をかけて見てしまうことになってしまいます。
(そして、私のような自称映画好きに限って
好きが高じて色眼鏡をかけて映画を見ることが多いのです。)

ある意味、マイナスからのスタートと云っても良いでしょう。


ところで、原案となった「忠臣蔵」。
皆様はどこまでご存知でしょうか?

「忠臣蔵」と云うと
古くは歌舞伎・人形浄瑠璃の演目に始まり
落語、講談、浪曲、
はたまたテレビドラマ、映画、舞台、漫画と
いろいろなメディアに形を変え語られ続けてきた
「base on true story」です。

「忠臣蔵」関連の作品だけでもこれまで
数えきれないほど作られています。

基本のストーリーは
Wikipediaからまるっと解説を
お借りすると

①江戸時代中期の元禄14年3月14日、
江戸城殿中松之大廊下で赤穂藩藩主・浅野長矩(内匠頭)が
高家肝煎・吉良義央(上野介)に刃傷に及んだことに端を発する。

②この一件で加害者とされた浅野は即日切腹となり、
被害者とされた吉良はお咎めなしとなった。

③その結果を不服とする赤穂藩国家老・大石良雄(内蔵助)を
はじめとする赤穂浪士(赤穂藩の旧藩士)47名、
いわゆる「赤穂四十七士」は、紆余曲折のすえ

④元禄15年12月14日未明に本所・吉良邸への討ち入りに及び、
見事その首級をあげる。

という皆様ご存知私もご存知なお話となっています。

映画のストーリーも
この①~④からいささかも外れることなく踏襲しておりますので
映画をご覧になって
「意外性がない!!!」と思われてもそれは仕方ありません。

基本的なコンセプトは前作「GOEMON」とも
通じるのでその点でも酷評される方がいるかもしれません。

確かにそう思う気持ちも判ります。

でも、むしろ、同じ日本人なら
日本で2本しか映画を撮っていない監督でも
ハリウッドでハリウッドスターを使って
ハリウッド大作を撮らせてもらえる
この事実を喜べ!!ってなもんですよ。

日本では、「CASSHERN」や
「GOEMON」を見て
「映画としてストーリーが全くダメだ。」
なんて小さなこと云っていた(ワタシモナ)裏側で
映画の殿堂ハリウッドは紀里谷和明監督の美的センスを
大きく買っていたのです。

重箱の隅をつついたような感想を述べて
いい気になっていた当時の私を叱りつけたい。

日本では安っぽいCGでしか作れなかった世界も
生のセットを使えばこのとおり。

同じ「忠臣蔵」を題材にした「47RONIN」と
比べてみても迫力が違います。
(ただし、IMDbでの評価は本作6.2、
「47RONIN」6.3とどっこいどっこい)

架空の帝国を舞台に、浪士を中世の騎士に置き換え
ここまで映画として面白くできたのですから
いいじゃないですか。

この①~④に渡る基本ストーリーを
赤穂事件の2年後、1703年から312年もの間
あれやこれやとずっと使いまわしているわけですよ、日本人は。

その間に
悪役である吉良側の視点に立ったり
赤穂四十七士の一人にスポットを当てたり
後日談を追加したり
他の物語(「東海道四谷怪談」等)とコンボしつつ
どれだけ多くのストーリーが生み出されたことか。

そんな王道中の王道であるストーリーを引っ提げて
一人の日本人がハリウッドで5年間頑張ったのだと思うと
少しぐらい感慨深くなっても良いじゃないですか。

「杉原千畝 スギハラチウネ」や
「海難1890」といった
「日本人礼賛」映画はちょっと…な私ですが、
この映画は例えロッテントマトの評価が16%*2でも
「ハリウッドで撮影」と云うスタート地点に立てただけでも
誇りに思います。

では、肝心の映画はどうだったかと云うと
日本の映画ファンが眉を顰める長々とした説明セリフも抑え
人間ドラマとして丁寧に描いているのですが、
残念なことがひとつ。

それは何かと云うと
「原作が『忠臣蔵』と知って見ると面白さが半減する」
ということです。

……。
なんという自己矛盾!
今回私、レビューを書き進めているうちに
とんだカオスに突入してしまいました。
この先どのような文章になるか自分でも判りません。

この映画では上の「基本ストーリー」での
③にある「紆余曲折」を非常に時間をかけて丁寧に描いています。

主君も部下も失った主人公ライデンが身を持ち崩していく様を
これでもかというほどくどくどと描き
演じているクライヴ・オーウェンも
鬼気迫る演技で応えているのですが、
いかんせんこれが敵を欺くための「芝居」であることは
劇場までわざわざ足を運んで本作を見に来るような
観客の皆様ならご存じのはず。

せめて、せめて
「忠臣蔵」が原作であることを知らずに見ていたら
と思わずにおれません。

[[youtube:ElK-AH3KjMo]]

「世界に届け。新しい『忠臣蔵』。」
そんなネタバレを堂々と公開前から
ネタバレしたらあかんやろ!


公開日初日の新聞広告からしてこうです。

何も知らないまま、鑑賞し
途中でハッと
「ああ、これって『忠臣蔵』なんだ。」
と気づくのが(私にとっての)ベストな見方だったのに
なんということでしょう。

いや、判りますよ。
ここまで映画ファンからの評価が低い監督の新作、
それも「モーガン・フリーマン出演」が最大の売りの
凱旋映画を日本のお客さんに見てもらうため
どう宣伝するかとなると私でも云っちゃいますよ、
「新しい忠臣蔵」って。

そうすることで普段、映画を見ないような方も
「忠臣蔵」というキーワードに惹かれて
ひょっとしたら見に来てくれるかもしれないじゃないですか。

というわけで
マイケル・コニーベス、ドブ・サスマン
という2人のアメリカ人(?)脚本家の手によって
書かれた「ラスト・ナイツ」は世界観こそは違えども
(外国人が「忠臣蔵」を元に脚本を書いたというのも
この映画の興味深いところです。)
まんま「忠臣蔵」ですので
味方に一人の死者も出さなかった四十七士と違い
何人かの騎士は志半ばで命を落としたものの
ライデンは見事主君の仇を討ちます。

めでたしめでたしですね。

なのに何故かスカッとした気分で映画が終わりません。


と云うのも
主君を嵌め処刑へ導いた大臣ギザモット(アクセル・ヘニー)
も相当に悪党ですが、
その悪党をそうと判っていながら
自分の地位と政治に利用するため囲っている


1年間ライデンに怯えつづけたため心が壊れてしまうギザモット大臣。

「皇帝」こそが諸悪の根源であり
(「忠臣蔵」では将軍徳川綱吉に当たるのかな?)


皇帝は第84回アカデミー賞外国語映画賞を授賞した「別離」で
父親役をしていたペイマン・モアディです。


その「皇帝」はその禁断の身分故最後まで生き延びるため
なんだか仇討が終わった後も
思うほどカタルシスが感じられないのです。


まあ、ギザモットの方も
思いのほかあっさり殺されてしまうからでしょうが。

結局のところ
御政道に対する正論を進言しても一切耳を貸さない
老主君バルトーク卿(モーガン・フリーマン)に
生前も死後も振り回され続けるライデンにしても
騎士として思うところがあっても逆らえず
ギザモットに従うしかないイトー(伊原剛志)にしても
ギザモットの悪政を知りながら自分の利益のため目を瞑る
皇帝に仕えるオーギュスト卿(アン・ソンギ)を
始めとする大臣たちにしても
時代が時代だけに
臣下は辛いわ


そんなこんなでいろいろ云いたいこともありますが、
映画公開前から一気に
テレビでの露出が増えた紀里谷和明監督の
「しくじり話」や「裏話」をひっくるめて
(皇帝を監督と重ねてみると
なんとなく「うんうん、ですよね~。」
と一人納得できたりと)
大変楽しむことができました。

そういう意味では
私は運よく試写会に当選して見ていますが、
往復はがき第程度で見させていただき
大変申し訳なく思っております。



私もこれしょっちゅしてしまうので今後、肝に銘じます。


本筋とあまり関係ない
アバンタイトルとラストシーンから
もしかすると、ライデンは生き延びていると云う可能性も…。



ちなみにこれは映画通である私の友人のお言葉です。
…え?そうなの?


*2
人気作の続編やアメコミ原作、リブート流行りで
実話をもとにした伝記映画がもてはやされている
今のハリウッドで
「base on true story」とは云え
中世を舞台にしたファンタジー映画を
よく撮らせてくれたと思います。
見た人も「忠臣蔵」と判って見ているようですし…。
そういう意味では16%も仕方ないように思えます。


【追記】
11月14日に公開された本作ですが、
地元のシネコンでは第2週目にして
日に5回の上映から日に1回の上映に格下げされました。
上映スケジュールを見て今年一番驚きました。
…え~っ?!

【後日談】
BS朝日「ザ・インタビュー~トップランナーの肖像~」
によると、
・脚本はカナダの人。
・元の脚本は「忠臣蔵」そのもので役名も「忠臣蔵」のものでありそのため配役も日本人俳優を想定したものだった。
・部隊が中世になったアイデアの元は黒沢明監督の「乱」。
・世界で日本だけがこの映画を買い取らなかったため、仕方なく監督が自力で配給した。
ということが判りました。

配給が「KIRIYA PICTURES」と知ってはいましたが、
自分も含め日本と云う国が
あまりに閉鎖的というか懐が狭いというか
そんなんでいいのか?と、驚きを隠せません。

日本のアニメやラノベがハリウッドで映画化されるより
よほど凄いことなのに…。







同じ地獄で待つ

2015-11-01 00:16:00 | MOVIE
「なんてこった!クソ面白い!キアヌ完全復活だ!」
(日本公式サイトより)な「ジョン・ウィック」を
劇場で見てきた興奮冷めやらずな状態で
TSUTAYAからキアヌDVDを借り出してきました。

この勢いに任せ見るのなら
もはやこの映画しかあるまい!と
借りてきた映画は「コンスタンティン」


断じてテレビドラマ化の影響で見たわけではありません。

です。

この映画、初見ではありません。


こんな感じで超カッコいいキアヌ・リーブスの活躍が確定されています。

今から約10年前、所沢に住む
キアヌ・リーブスファンの友人宅に遊びに行った折り
「今、ちょうどキアヌ主演映画やっているから見よ見よ。」
と、誘われて一駅先のシネコンに見に行き、鑑賞後
「ごめんね!ごめんね!」
と、ひたすら謝られたという思い出があるのが
この映画です。

どうもキアヌ・リーブスを愛してやまぬ彼女からすると
「人様にオススメできる映画ではなかった」ようです。

その時は友人が相当に落ち込んでしまって
エンドロールそこそこでスクリーンを後にしたため
今回DVDで見直すまで知りませんでしたが、
「エンドロール後のおまけ映像」
つきじゃないですか、この映画。


え?こんな後日談があったの?ちょ…。

最近では上映前に前もって
「エンドロール後に映像がございます。」
の断り書きが流れますが、
当時はまだそんな気遣いはありません。

10年前とは云え流石アメコミ映画。
(原作はDCコミック「ヘルブレイザー」)

映画はやはり客電が点くまでが映画です。

それにしても自称キアヌ・リーブスファンが
がっくり肩を落とすような映画とは
どのような映画だったのでしょう?

当時の私の印象を一言で云うと
ずばり「禁煙運動推奨映画」。

今や西に行っても東に行っても肩身の狭い喫煙者。
ジブリ映画「風立ちぬ」での喫煙シーンに
禁煙学会の苦言・批判が殺到したかと思うと
アメリカでは2014年に
ウォルト・ディズニー・スタジオの会長兼CEOの
ボブ・アイガー氏が、ディズニーの子供向け映画に
喫煙シーンを入れることを禁止すると発表するくらい
映画界においても規制が年々厳しくなっております。

その動向をいち早くキャッチし、アメコミ映画の形を借りて
「喫煙による健康障害」を訴えかけているのがこの映画でした。
 



で、ストーリーですが、
簡潔にまとめてるのが、面倒臭かったので
TBSテレビが今年の夏にこの映画を放映した時に使用した
「みどころ」をまるまる拝借いたします。
(…そんなんテレビでやってったっけ?)

人間の姿に扮した天使や悪魔が紛れ込んでいる人間界で、超常現象専門の探偵・コンスタンティンの活躍を描くホラー・サスペンス。
 神に認められ天国へ行くために悪魔祓いを続けているコンスタンティンは、儀式の途中で言い知れぬ恐怖をおぼえる。長い間保たれてきた天国と地獄のバランスが崩れ去ろうとしているかのような…。彼の前に刑事アンジェラが現れた時、この世界の均衡を崩す、とてつもないことが動き出そうとしていた。
以上。

主なキャストは
コンスタンティン:キアヌ・リーブス、
アンジェラ:レイチェル・ワイズ。

天使と悪魔とエクソシストがまぜこぜに出てくる映画ですので
舞台はそれにふさわしく
ANGEL CITY「ロサンゼルス」です。

ただし、宗教色よりも「禁煙」色を出したい映画ですので
主人公登場の前にまずはイエローキャブから投げ捨てられる
吸い殻がアップで映し出されます。


主役は俺だ!!と主張する吸殻。(この画像では豆粒大ですが)

その後、ようやく主役の
ジョン・コンスタンティンがお目見えです。


登場するなりまずは一服。

コンスタンティンは悪魔祓いを生業とする探偵として
主に悪魔の「ハーフブリード」を始末しています。
「ハーフブリード」とは
天使と人間・悪魔と人間の中性的な存在で
普段は人間の姿をして地上に棲みついています。

その漫画ならではの世界観にすぐなじんでもらうため
映画はまずコンスタンティンの仕事っぷりを紹介します。
やっていることはほぼ「エクソシスト」と同じです。

コンスタンティンには
弟子と云うかアッシー君が一人います。
名前はチャズ・クレイマー。

このクレイマー君がエンドロール後に大化けするのですが、
残念ながら前回はそこまで見ていなかったため
今回初めて知ったと云う事を先ほど告白しました。

それとは別にもうひとつ。
今回見直して始めて知ったのが
シャイア・ラブーフも出ていたということです。

当時は全く目に入っていなかったシャイア・ラブーフも
10年も経てば「お騒がせセレブ」の仲間入り。

年月の長さをしみじみと感じさせられました。


シャイア・ラブーフに似た子だなあと思ったら本人でした。

このデコボココンビが悪魔退治をしていくわけですが、
コンスタンティンの方は、現在末期の肺癌を患っていて
お医者様から余命1年の宣告をされています。
(先ほどから散々ネタバレしておりますので
発病の原因は自ずとお判りになると思います。)


担当医の前でも平気で吸います。

まあ、それ自体は本人にとってさほど問題ではありません。
問題は死んだ後のこと。

幼い頃から強い霊力を持ち、
他の人には見えない者の存在に怯え
さらには両親と云えども理解してもらえない孤独感から
コンスタンティンは過去に自殺未遂を起こしています。

カトリックでは自殺は大罪となり
その罪を犯した者は天国に行くことができません。

一命を取り留めたコンスタンティンですが、
安易に自殺を選択したため
「死んだら地獄行き」が決定してしまいました。


地獄はこんな悪魔がうようよしているので死んでも行きたくありません。

そこでなんとか逝き先を天国に変更してもらうため
「ハーフブリード」を退治することで
神の恩恵を預かろうとしているのです。(←イマココ)

しかし、余名1年となると
善行を重ねるとしても期限は後わずか。
どう考えてもこのままでは天国に行けそうにありません。

思い余ったコンスタンティンは
天使のハーフブリードである
ガブリエル(ティルダ・スウィントン)に
救けを求めに行きますが、
にべもなく突き返されてしまいます。

「何でこんなことになってしまったんだ!!」
と弱音を吐くコンスタンティンを
ばっさり斬り捨てるガブリエル。


ああ、「自己責任」ですね。

そう、この映画の真のテーマはこれです。
「(肺癌で)死にたくなければ吸うな」です。


タバコ ダメ。ゼッタイ。Let’s  脱タバコ社会。

ということで
主人公コンスタンティンがいかにして煙草をやめるようになったかが
2時間かけて描かれているこの映画。

とりあえずここまで病気が進行してしまっては
今さら禁煙する気にはさらさらなれません。

では、どうすれば残された短期間で
地獄行きを天国行きに覆せるほどの
善行を積むことができるのか?

そこに千載一遇のチャンスが訪れます。

ちょうどその頃、一人のハーフブリードが秘密裏に
地獄の主であるルシファーの息子マトンを
地上に呼び寄せる計画を進めていたのです。

当初は触媒としてコンスタンティンより霊力の強い
アンジェラの妹イザベラ(レイチェル・ワイズ)が
狙われていたのですが、
計画実行前にイザベラは自殺してしまいます。

そのため触媒の候補は双子の姉であるアンジェラに移ります。

それを知ったコンスタンティン俄然張り切ります。
目の前で何者かに連れ去られたアンジェラを追って
クレイマーと共に最終決戦に…。

ところが、黒幕が天使のハーフブリードの
ガブリエルであったため
悪魔祓い専門のコンスタンティンには
手も足も出ません。

そこで最後の手段に出るコンスタンティン。
両方の手首をかっ切り
マトンの父親であるルシファーを人間界に呼び寄せます。

何故そんなことができるかと云うと
ルシファーはコンスタンティンに
「ZOKKON 命」(「ゾッコン・ラブ」と読みます。)
でして、機会があればコンスタンティンを
地獄に引きずり込みたいと虎視眈々と狙っていたのです。

ということでここからは
平日の夜、お茶の間で家族揃って見ていると
やや目のやり場に困るシーンが続きます。

地上波での放映だからと安心している場合ではありません。

思惑通り舌なめずりしながら
死の淵に瀕したコンスタンティンを迎えに
遠路はるばる人間界に現れるルシファー( ピーター・ストーメア)。

コンスタンティンからガブリエルの企みを聞かされ、
まずはバカ息子マトンを地獄に戻します。

地獄をつかさどるルシファーとしても
天界-人間界-地獄の均衡を崩すわけにはいかないのです。

しかし、まさかそれが裏目に出ようとは。

後は、コンスタンティンと手と手を取り合って
地獄に向かうだけ…

と、思いきや、自己犠牲を払ってまで人間界を護ったことで
コンスタンティンに(だけ)思わぬボーナスポイントが付き
一気に天国行きへ昇格してしまったのです。

コンスタンティンの魂が神の元に召されるのを
目の当たりにして焦るルシファーは


コンスタンティンへの執着が強すぎて目がイっちゃってますルシファー。

慌ててコンスタンティンの身体に縋り付き
つい暴走してしまいシャツまで破ってしまいます。


別に乳揉んでるとかエロいことをしているわけではありません。

人間界の危機を救いながら、
結果、苦渋の決断を迫られるルシファー。

コンスタンティンを神に横取りされないため
取れる手立てはひとつのみです。

それはコンスタンティンの寿命を延ばすこと。


「コンスたんぺろぺろはあはあ。」にしか見えない絵図ら。

ぼやぼやしている時間がありません。


泣く泣くコンスタンティンの身体から癌を除去します。

かくしてキレイな肺を取り戻したコンスタンティンは
悔い改めて「禁煙」するのでした。めでたしめでたし。


吸いたくなったらニコレット。

こんなふうに再発の恐れもなく
肺癌が完治できれば良いのですが…。
まあ、そこはファンタジーということで。

それにしてもあの中世的で美しい天使は
ティルダ・スウィントンだったんですね。

こうして一度見た映画でも10年くらい経って見直すと
映画そのものより
「この映画にあの俳優が!」と云う発見をすることがあり
ちょっとしたご褒美がいただけます。

断っておきますが、
2度見るくらいですから
私は好きですよ、この映画。

…と云う言葉で〆てこのレビューを「投稿」し
「索引」にもアップしたところ
10年前見た時にもブログ記事を書いていたことに
気づきました。

その一部を抜粋。
「…ごめんなさい。
最初の30分ほどはうつらうつら→うとうとしてしまいました。
それから、久しぶりにエンドロールを最後まで観ないで帰りました。
でも、特に悔やんでいません。
悔やんでいませんが、映画を語るには1から出直しです。」

寝てんじゃん!!!
1から出直すのに10年かかってんじゃん!!!

もう自分が一番信じられません。



負けはいけない絶対勝つ事 それが掟

2015-10-28 23:17:00 | MOVIE
本日の映画は
「キアヌ・リーブス完全復活」と
キアヌ本人が聞いたら軽く凹むんじゃないかと思われる
キャッチコピーが付けられた
「ジョン・ウィック」



です。

だいたい
「マトリックス」の時には「起死回生」、


映画雑誌「PREMIERE」1999年10月号。

今回は「完全復活」とは失礼にもほどがあります。


タイトルよりもキアヌの名前よりも「完全復活」の文字の方がでかい。

その間に、キアヌ・リーブスは
リプレイスメント
ザ・ウォッチャー
ギフト
スウィート・ノベンバー
陽だまりのグラウンド
マトリックス リローデッド
アニマトリックス
マトリックス レボリューションズ
恋愛適齢期
コンスタンティン
サムサッカー
イルマーレ
スキャナー・ダークリー
フェイク シティ ある男のルール
地球が静止する日
50歳の恋愛白書
フェイク・クライム
サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ
シークレット・パーティー
ファイティング・タイガー
47RONIN
と、
1~2年に1本のペースで新作を公開しているのです。
それらをまるごとなかったことにしてしまう日本映画界。

それなのにキアヌさんは
本作のプロモーションのため来日までしてくださったのです。


しかも64日ぶり。

そんなキアヌさんが私は愛おしくてたまりません。

これは何としても劇場公開中に見に行かなくては
女が廃ります。

ところが、鑑賞日と狙いを定めた
映画サービスデーの11月1日(日)、
地元シネコンの上映スケジュールによると
21:40からの回1回のみ。
21時ってレイトショーですよ!!!
見終わって帰宅したら日付が変わってますよ。

そんなわけで1週前倒して見てきました。

今回もネタバレを防ぐため
鑑賞前になるべく前情報を入れないようにしてきたので
事前に判っていたことは
「愛犬が殺されたので復讐する話」
ということだけです。


え?このわんこが殺されるんですか?

そんな最小限の情報だけでいざシネコンへ。


まずはストーリーの紹介ですが、


「愛犬が殺されたので復讐する話」です。

なんとそれ以上でもそれ以下でもありませんでした。

殺した方(主に親)は
「たかが犬じゃないか。」みたいなことを云いますが、
あんな可愛い仔犬を
あんな極悪非道道楽息子に
あんなしゃれにならん殺された方をすれば
そりゃ償ってもらいますよ、お前の命でな。
(この映画は日本ではR15+となっているのですが、
その理由は銃器等による
刺激の強い殺傷・出血・肉体損壊の描写
ではなく「仔犬を殺した」からだと私は踏んでいます。)

というわけで
あらすじは1行(15文字)で語ることはできますが
もちろんそれだけでは1時間41分も持ちません。


この予告編通りの「殺し屋」が復帰していれば映画は15分で終わっていたわ。

「彼の復活に裏社会騒然」となるほどの
「伝説の殺し屋」が愛犬の敵を討つのに
そんなに時間がかかるとは思えないじゃないですか。


生ける伝説。にしては復讐が終わった頃には満身創痍。

そこまで裏社会の人間が怯えているのですよ。
仔犬が冒頭十数分で殺された時には
「え?この後1時間以上あるんだけど、どう繋げるの?」
と思いました。

そこで復讐を完遂するまでに
いろいろな仕掛けが用意されています。

その一つが「ホテル」です。

「コンチネンタルホテル」と云う名前のそのホテルは
ジョン・ウィックをはじめとするプロの殺し屋が
常宿にしている特殊なホテルです。

支配人が定めた「掟」と云うものがあり
宿泊する殺し屋たちはそれに従わなくてはなりません。

ホテル内では特別な金貨が
「貨幣」や「通行手形」の代わりに使われ
ホテル内での殺しはどんな理由があろうとご法度です。

劇中中盤でホテルに滞在中、
暗殺者の襲撃に遭ったジョン・ウィックは
相手を殺すことなく生け捕ったため
迷惑料の代わりにホテル側から新車を貰い
暗殺者の方はその後、宿泊中の別の殺し屋を殺したため
支配人の手の者に粛清(要するに処刑です)されます。

そのくらいに厳しい掟なのです。

しかし、このような「掟」に縛られているのは何も
ホテル内だけに限りません。

私には主人公が住む町(コミュニティー?)そのものが、
ある種の「掟」の元
かろうじて均衡が保たれているように思えるのです。

ここは
ジョンのような「伝説の殺し屋」が
過去は捨てたからと何食わぬ顔で住み続け
「コンチネンタルホテル」のようなホテルが通常営業し
ロシアンマフィアを納得づくで受け入れているような
町なのです。

主人公や裏社会を含む街の住人全てが
「コンチネンタルホテル」で云うところの
「ホテル内での殺しは厳禁」といった
おそらくは暗黙の裡に定めらた「一線」を越えないからこそ
住民もこの町で心中穏やかに
暮らしていけるのではないでしょうか。

ところが、その一線をあっけなく破る者が現れます。

最初に「掟」を破るのは
ヨセフ・タラソフ(アルフィー・アレン)という男です。

彼はロシアン・マフィアのボスである
ヴィゴ・タラソフ(ミカエル・ニクヴィスト)を父に持ち
相当周りから甘やかされて育ったのか
欲しいものは強盗してでも手に入れるような男でした。


まあ、憎たらしい。マフィアのボスってどうしてこうも子育てに失敗するのでしょうか?

そんなバカ息子が
たまたま入ったガスステーションで隣で給油していた
1969年式のマスタング「BOSS429」に興味を示し
「どんな手を使っても手に入れたい」という欲望だけで
車の持ち主の家に仲間とともに押し入り
車を盗むついでにその家の犬を惨殺します。

犯行が手慣れているので
しょっちゅうやっていることなのでしょう。

しかし、ここで問題が。

そのBOSS429の持ち主が
かつてヴィゴ・タラソフの組織で
凄腕の殺し屋として働いていた
ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)という男で
殺害された犬は彼の亡くなった妻が残した
大切な愛犬デイジーだったのです。

ジョン・ウィックは結婚を機に組織を抜ける際
ヴィゴが辞職の条件として出した仕事を
見事にやり遂げてお役御免となっていました。

それでこの件は「手打ち」となります。

以後、2人はお互いの人生に一切係わらないことで
均衡を保っていました。

しかし、ヴィゴの息子のヨセフがそうとは知らず
その「手打ち」を一方的に反故にしてしまいます。
それもかなり暴力的なやり方で。

「BOSS429」を手に入れたヨセフはいつものように
すぐさま父親の息のかかった解体屋に持ち込みます。

しかし、「BOSS429」を見て持ち主が判った
解体屋のオーレリオ(ジョン・レグイザモ)は
頑として車を受け取りません。

何故なら、彼は
ジョンとヴィゴの間に交わされた「手打ち」のことを知っていますし
この町でそれを破ることがどういうことか知っているからです。

一方、オーレリオ経由で息子が仕出かした不始末を知った
ヴィゴはたちまち顔面蒼白となります。

なにしろ相手は
「鉛筆1本で同業者3人を殺した男」なのです。

ですので組織を抜ける際も他の手下よりも慎重に事を進め
引退後はお互いの生活には一切干渉しないほど
気を使っていた相手です。

それだけ気を使っていたので
最近妻を亡くし、今は車と妻の遺した仔犬だけを
心のよりどころにしていると云う近況も
ばっちり調査済みです。
(というか、ジョンの近況は裏社会の人はだいたい知ってます。)

それをよりによってこのバカ息子ときたら
車と犬の両方をジョンから奪ってしまったのです。

親父大パニック。

まあ、あんなバカ息子(たぶん一人息子)ですから
いつかはこのような失態を仕出かしても
不思議ではありませんが、
いかんせん相手が悪すぎます。

しかし、そこは「此の親にしてこの子あり」。
一旦は話し合いでけりをつけようと
ジョンに電話したものの無言で切られてしまったヴィゴは
慌てて刺客をジョンの屋敷に仕向けます。

まあ、電話で謝罪を済まそうとしているところが
もうアウトなんですけどね。
息子の不始末はもはや
「菓子折り持参で近所の目も気にせず門の前で土下座」
でも済まされないレベルですから。

恐怖のようなネガティブな感情は
時として人間の判断を大きく鈍らせるのです。


当然の如くこんな感じで全員やられてしまいます。

案の定、刺客が全滅したことを知り
さらに焦りまくるヴィゴ。
もはや正しい判断ができる状態ではありません。

こうなると後には引けません。

ジョンの首に多額の賞金を懸け
さらには、ジョンが復讐のため宿泊中の
「コンチネンタルホテル」内での殺人まで
勝手に推奨してしまいます。

これは明らかに「掟」破りです。

本来ならば
ジョンがデイジーの仇をしてヨセフを処刑し
ヴィゴが息子の不始末を「手打ち」にすれば
この話はおしまいです。

それが「筋」ってものです。

「掟」を勝手に破るようなヴィゴの部下と
お金目当ての殺し屋以外の住民は
被害を最低限に抑え、町の均衡を保つため
「筋」を通そうとするジョンに対して働き掛けます。

こんな町だからこそ、
均衡や秩序が崩れ出したときの対処が早いのでしょう。

町の解体屋はジョンに車を盗んだ犯人が誰か教えますし、
パトロール中の警察官は、
その上でジョンの自宅にごろごろ転がる
刺客の遺体を見なかったことにします。


機を見て敏なる警官。こういう人が最後まで生き延びるのです。

また、ヨセフの警護を言い付かった用心棒は
ジョンの顔を見るとあっさり身を引きます。

非常事態が起きた時、この町の住民は
自分が何をすればよいのか知っているのです。

そして、殺し屋専用の清掃員は
依頼を受けて数分後には現場に到着するや
何事もなかったかのように
刺客の遺体を運びだしジョンの自宅を元通りに
クリーンアップします。

綻びが見えた途端、町全体があっという間に
秩序回復に全力で動き出すように見えます。

「隣の騒音が煩」ければ
直ちにしかるべきところに通報され素早い対処がなされるのは
「コンチネンタルホテル」内でも町中でも同じです。


私はこういう人になりたい。

「掟」にこだわる「コンチネンタルホテル」は
彼らが暮らすこの町の縮図です。

だからこそ、簡単に「掟」を破る
ヴィゴやその手下、加担する殺し屋は
ここはジョンの味方となった町そのものに
駆逐されてしまいます。

ヴィゴが本当に怖れなくてはならなかったのは
「伝説の殺し屋」ではなく
その殺し屋をその正体を知りながら
住民の一人として住まわせても問題のない
この町そのものではなかったのかと思います。

親父の威を借り暴虐の限りを尽くしているような
ヨセフなんてもともと町の鼻つまみものだったのでしょう。

ヴィゴが怖くておおっぴらに批難できなかった住民も
ジョン・ウィックが立ち上がったとなったら話は別。

これに乗じてタラソフ親子にお灸を据えようとしても
不思議ではありません。

なにせ「伝説の殺し屋」とは云え
5年も現役を退いていたジョン・ウィックは
あろうことかチンピラ同然のヨセフに住居不法侵入された上
ボコられ愛犬まで殺されているのです。



…ってありえねー!!
いくら引退して5年とは云え腕落ちすぎじゃないの?

これは町ぐるみで応援せねばなりません。

もう、ジョンときたら、
必殺技「ガンフー」を以てしても
標的であるヨセフはなかなか仕留められないし
中盤ではあっけなくヴィゴの囚われの身になるし
ホテルに送り込まれた女暗殺者とは
腹部被弾中で普段の力が出せないとは云え
互角に(しかも肉弾戦で)戦って
かろうじて勝利を収めるようなふがいなさ。

う~ん。

映画に華を添えたかったのは判りますが、
ジョンを最も徹底的に痛めつけ勝利寸前までいったのが
うら若き女性というのは
……どうなの?


まさかこんな女の子相手に苦戦するとかこの時思ってもいませんでした。

防弾スーツを身に着けていながら
最初の襲撃で被弾してしまうこと自体
なんだかなあもう。

本当に裏社会が騒然となるほどの殺し屋だったの?
という疑問が頭を掠めてしまうのです。

これは、ジョンの友人であるスナイパー
マーカス(ウィレム・デフォー)でなくとも
サポートを買って出ちゃいますよ。


彼にジョン暗殺の依頼をしてしまう全く人を見る目がないヴィゴもヴィゴ。

「伝説の殺し屋」の凋落ぶりに驚かされたのは
ヴィゴも同じだったらしく
息子の失態を聞かされた時は
おしっこを漏らしそうなほどビビっていたのに
いざ、意識を失ったジョンを捕えることに成功すると
余裕をかまして、すぐには殺さず
さらに怒りに油を注ぐような演説を披露し
ジョンが殺される様子を確認することなく
その場を退場。

いくらなんでも「伝説」を舐めすぎです。

いえ、判っていましたよ。
マフィアに捕えられたところで
ジョンが殺されるはずがないって。

まだ上映時間がたっぷり残っていますし
なによりこの映画、
日本公開(本国公開より1年遅れで公開)の前から
「続編が決定」されているんですよ。


続編と云う名の壮大なるネタバレ。

ということは主人公のジョン・ウィックが
本編内で死ぬことは絶対にないのです。

例え、冒頭で腹部に被弾して
土砂降り且つ人通りのない道端で意識を失おうとも
生き延びるのは必至。

劇中どのような危機に陥ろうとも「心配ご無用!」です。

この時点で「続編決定」になるなど
夢にも思っていないヴィゴは
偶然ジョンの身柄を確保したことで
安心しきっちゃいますが、
いくらどう考えてもあの時点で殺さないとダメでしょう。

ジョンなんて発砲の際にはボディを撃った後で
念を入れていちいちヘッドショットしているんですよ。

「コンチネンタルホテル」の「掟」を
甘く見ている点でもこの人危機管理能力ないんですかね?

こんな人のためにジョンに殺された74人の方々が
気の毒になってきました。




この町のこのホテルが真の主役です。

最後にヴィゴは復讐の連鎖から逃れるため
ヘリで町を出ようとしますが、
その計画は成功しませんでした。

町がそれを許さなかったからです。

生き残ったジョンもまた新しい犬を得て
家に戻ります。

町は元の静寂を取り戻したのです。



この町怖ぇぇ。

 





地球の歩き方 ニッポン

2015-10-15 22:18:00 | MOVIE
本日の映画は



「ギャラクシー街道」です。

BBT(富山テレビ)HP上で試写会の案内が出た直後、
「これは試写会で見ておかなければ…。」
と、応募締切迄まだ優に2週間もあると云うのに
その日のうちに往復はがきをポストに投函しました。

それも当選率を少しでも上げるため
30分ぐらいかけて描き上げたカラーイラスト入りで。


この絵を模写しました。

話題作が次々と公開を控えている2015年秋、
例えレディースデーであろうともこの映画に
1000円以上のお金を支払う気など毛頭ありません。
故にこちらも必死です。

試写会に外れればたぶん劇場では見ることはないでしょう。
かといって話題作だけにDVDやテレビ放映を待つのは
なんだかやりきれないのです。

日本人が苦手な(コテコテそうな)コメディ映画。
映画ファンが苦手な三谷幸喜監督。
キャストだけがいつも通り無駄に豪華。
(豪華と云っても他の三谷作品と比べるといささか地味?)

予告編を見る限り
60、70年代のアメリカのテレビドラマ(シットコム)の
スタイルを保ちつつ
演じているのが変なカツラやメイクをしている日本人であるため
見た目「吉本新喜劇」です。

それも
「ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃー」
「大阪名物パチパチパンチや」
「今日はこのくらいにしといたろか~」
などのお決まりのギャグを何一つ知らないまま
素で見る人生初の「吉本新喜劇」。

だいたい登場人物全員が(日本人が演じる)宇宙人
と云う触れ込みの映画、誰が見に行くと云うの?
ターゲットとなる客層すら見えてきません。

そもそもシットコムって1話30分のテレビドラマだから
良いのであってこれを2時間見せられてはたして面白いの?

と、まあ、どこを取っても不安要素しかありませんが、
試写会で一人頭52円(試写会はペア招待)で見る分には
頭も使わず無駄な感動もせずさらっと見れるはず…。

そんな思いのたけを書きつづったコメントと
イラストが功を奏したのでしょうか、試写会は無事当選。

それから、9日後の10月24日(試写会は15日)
本作「ギャラクシー街道」が全国約350館で
一般公開されました。

蓋を開けてみるや、不評酷評どころの騒ぎではなく
読むレビュー読むレビュー、判で押したかのように
「『ギャラクシー街道』今年のワースト当確!!」
「忠告する。絶対に見るな!」
の嵐です。

この土日に劇場で見ていると云う事は
最安価格でレイトショー1200円、
真面に支払えば1800円で見ているのですから
このような結果となっても仕方ありません。


どんな御馳走が出るかと正装して訪ねたらマクドが出されたと云う感じですね。

同じ日にフジテレビ系で放映された
「すてきな金縛り」が土曜プレミアム枠で放送されるなら
本作は
テレビ東京金曜深夜1時枠の深夜ドラマ
午後のロードショー枠ですらない
フジテレビ系土曜深夜ドラマ枠(土ドラ)で
ひっそり放送されるのは相応しいように思える作品ですから。

このような深夜ドラマ(本作は深夜ドラマではありません)は
明日は学校や会社も休みということで
見るならだらだら見るもよし
つまらないと思ったら潔くテレビを消して
とっとと寝るに限ります。

今の段階で結論を申しますと
本作ほど試写会で見ておいて良かったと思った映画はありません。
ありがとうございます、BBTさん!

そんな私の試写会での感想は

「想像に難くなく可もなく不可もなく
まあこんなものだろう。」
と、割と冷めたものでした。

そもそも
老巧化が激しいスペース幹線道路『ギャラクシー街道』の脇にたたずむハンバーガーショップを舞台に、そこで働く人々と客たちが繰り広げる騒動
に何を期待しろと?


「SMAP×SMAP ギャラクシー街道スター軍団勢揃いSP!!」で
終始ふてくされたような微妙な表情の監督。眼が死んでます。


それでも
肝心の会議部分が全然痛快でなかった
「清州会議」よりはまだましなような…。

おかげさまで「清州会議」を踏まえた上で
「オリエント急行殺人事件」を経て、
三谷作品に対していかに私のハードルが下がっていたか
今更ながら実感できました。
(なにしろ「清州会議」も試写会で見ているのに
レビューすら書いていないのです。)

本作は一見すると

やまなし
おちなし
いみなし

所謂「やおい」です。
ですから「つまらない」と思われても間違っておりません。

ただ、物語に起伏がないゆるゆるな映画
(例「楽園の瑕疵」「フリック」とか)が好きな私には
他の方が苦言されているほど
この映画、見ていて苦ではありませんでした。

さらに最初から日本のコメディ映画、
それも三谷幸喜作品と肝に銘じて見ているので
笑えなくても」それほど気にもなりません。

だって、ねえ
「これ…ひょっとして
作り手だけが面白いと思っている…んじゃ…?」
みたいなコメディ映画に今年だけでも
どれだけぶち当っていると思ってんの?!

監督自らが臆面もなく
「爆笑間違いなし」なんて宣伝している映画は
たいてい観客以前にまず監督が面白い
と思い込んでいる可能性が高いのですから。

どうしてそういう作品に限って大言壮語を吐いて
自らハードルを上げてしまうのか…。

この作品で
どのくらい作り手と受け手でズレがあるかと云うと
作り手は遠藤憲一をやたらプッシュしているのに
レビューで褒められているのが
押しなべて小栗旬と云うくらい開きがあるのです。

その小栗旬パートのネタバレも
公開前テレビで安易に披露してしまうお粗末さ。
ここは公開後まで出し惜しみしておきましょうよ。


を劇場公開5日も前にテレビに出したらあかんでしょ!

予告編でも後姿や顔だけ登場していますが、
全体像のチープさダサさが良いんだから
そこは最後まで隠し通しましょうよ。

でも、このキャプテンソックスの造形もそうですが、
舞台となるサンドサンドバーガー・コスモ店のセットも
絶妙に古臭くて私は好きです。

50~60年代のアメリカンダイナーの内装を
参考にしてそうなのに何故か調度品が日本の喫茶店。
そこはかとなく漂う昭和臭。


結構こだわって作られているセット。客席にはルーレット式おみくじ器もあります。

下北沢の劇場ザ・スズナリが外装や名前もそのままで
申し訳程度飾り付けられた状態で出てくるのも好きです。

確かにこの作品が映画ではなく舞台だったら
数ある劇場を抱える下北沢(または本多劇場グループ)でも
「ザ・スズナリ」で公演しそう…
と、思わず頷いてしまいました。

そのくらいしっくりきます。

ズレと云えば、映画の最後の最後に
三谷監督云うところの「超人気俳優」がちらっと登場してきますが


Youtubeでもくどいほど宣伝活動にいそしんでいます。

「みんなが大好き」とか「超人気」とか
臆面もなく云っちゃうところがまた…。(*)

監督の自己満足、過大評価にこちらが赤面してしまうわ。

これに限らず公開前から
三谷監督が云っていることって針小棒大しすぎて
「そ、そうですか~?」
と首を傾げることが多いのです。

例えば、この映画
「宇宙を舞台にしたロマンティックコメディです。」
と仰っていますが、
ロマンティックなところはありません。
というか私の知っているロマンティックはこれではありません。


香取慎吾のノアと綾瀬はるかのノエ夫婦はこのアニメほどラブラブではありません。
後、ステキな夫婦でもありません。


監督のみならず出演者が挙って「爆笑です!」
とアピールしていますが、
先ほどから何度も書いているようにこれも大変微妙です。


主演男優の建前。むしろ建前なのにこれって。


ベテラン女優の本音。三宅正治アナも暢気に笑っている場合ではない。

一般公開された今では微妙どころか
観客から全面否定されています。

後、「登場人物全員宇宙人」と云うのも嘘です。

香取慎吾も綾瀬はるかも一応地球人に分類されています。
他にも石丸幹二、秋元才加や阿南健治、段田安則
あたりもおそらく地球人で
登場人物の4割くらいが地球生まれです。

 
こんな頭してますが、優香も地球人(ハーフ?)にカウントされています。

それに関しては、公開数日前
たしか「めざましテレビ」だったと思いますが、
「地球人も宇宙人です」
と云う文章がずっと画面に右端にテロップされていて……

おぃぃぃぃぃぃぃ!!
それ云うたらあかんやつやぁぁぁ!!

だいたいテレビ局制作映画では
「のだめカンタービレ」しかり
「テレマエ・ロマエ」しかり
「王妃の館」しかりで
平気で外国人の役を日本人に演じさせていますが、
この映画ときたらしれっとオール日本人キャストで
ろくろく仮装せず素の顔を見せて
「登場人物全員宇宙人」とか云っているんですよ!?

…ええ、ええ、だいたいにおいてこういう姿勢の映画です。

公開1週間前あたりから宣伝のため
出演者と共にワイドショーやバラエティー番組に
顔を出している三谷監督、
異様にテンションが低いし
なにより目が死んでいるような…。


実は公開前から超投げやりだった三谷監督。

もしかすると監督自身も自分が期待していたほど
この映画が面白く思われないことに気が付いているのでは?


そんないい加減な映画ですが、
遠藤憲一さんが劇中で妊娠するというのが
本作いちばんの見どころとなっており
生まれた子供たちはあるCG加工(?)されて登場してきます。
ところが、
どういうわけか後姿は加工がなされていないという
「そこ!そこはちゃんとしようよぉ。」
みたいな手の抜き方を平気でしてくるあたりも
実は好きだったりします。

この試写会を前後して
「図書館戦争 THE LAST MISSION」の
試写会もあり、
こちらの方が前作を見ていないからと云う理由で
応募しなかったのですが、
公開直後の月曜日(10月26日)段階での
Yahoo映画での評価は
「ギャラクシー街道」1.83点(5点中)に対して
「図書館戦争 THE LAST MISSION」は
4.4点と高得点。



…う~ん、でも、後悔はしません。
例え時間が戻っても私は
「図書館戦争 THE LAST MISSION」ではなく
「ギャラクシー街道」の試写会に往復葉書を郵送することでしょう。

余談ですが、
私の隣で試写を見ていた女性は
ギャグと思われるシーン1つ1つに
それはそれは丁寧に反応されておりました。
レビューを書くほど映画好きな方はともかく
試写会で映画見れて得したわぁ
ぐらいに思っている観客は
意外と面白く見ているのかもしれません。

かく云う私もこの作品が30分ドラマとして
週末深夜に2クール放送されていたら
喜んで見ていたかもしれません。




【注釈と追記】

(*)
ネタバレ&私事で申し訳ございませんが、
この映画で自分が「後頭部を見ただけで佐藤浩市が判る」
人間であることを初めて知りました。

まあ、これはどうでも良い話ですね。

追記として妄想をさらに暴走させると
この映画、昨今の訪日観光需要拡大で
アップアップしている今の日本を描いているようにも
見えてしまうんですよね。

内容は同じセットなのにチーズバーガー「に」つくか
チーズバーガー「が」つくかで値段が違うことに
「それはそういうもんなんだよ。」
と、会社の意向を疑問とせず鵜呑みにしたり
いきなり初対面で顔を舐められても
「これが私どもの挨拶の仕方で」
なんて云われると「そういうもんか」と信じてしまう
ノア夫婦が私たちと同じような日本人で
そんな「地球の常識は通じない宇宙人」が


常識がないんでナゲットを今流行りの「爆買い」します。

中国人観光客をはじめとする外国人、
寂れゆくギャラクシー街道は
五輪後、外国人観光客が減った日本に
と、つい置き換えて見たりして。


日本マクドナルドでもこんな感じの料金設定がされているそうです。



【さらなる追記】

他の方のレビューを読んでいてようやく思い当ったのですが、
私、この映画をコメディとしてではなく
「ああ、いるよね。こういう人。
腹立つけどいるわ、こんな人。
…ていうかこれ私のこと?!」
と云う日本あるあるネタ、ちょっと困ったニッポン人見本市
としても見ていたようです。

その人格に対して映画を見た人が皆「不快」と感じる
七三眼鏡姿のいかにもTHE 日本人なノエ。

異星間交流したいけど病気は怖いし
結局大きな冒険はできず
自分とよく似た人種を択んでしまう歯科医。

そんなノエが経営する寂れた場末のバーガー屋で
生きていくため働かざるおえない
アンチエイジングでそうは見えないけど
実は後期高齢者であるパート店員。


昭和生まれですもの煙草はピース缶です。

あるある。

確かにノエの行動を見ていると
差別的でむかつきます。

客に対してこんな態度をとる店長なんて人として許せない
って気持ちにもあります。

ただし、自分のことに置き換えれば
ハンバーガーを美味しく食べようと口に運んだところで
隣の席の客が床に水たまりができるほど
体液を流しているのを目にしたら
店長にそれとなくクレームをつけるか
勢い余って食べログ(かSNS)で
その店をけちょんけちょんに叩くかもしれません。

そんな苦情のことを考えるとと店長だって
自主規制が働いてそれとなく入店お断りするかも…。

やっぱりいるわ、こういう人。
ていうか私自身がなりかねない。

特にこの時のノエは店の閉店と妻の浮気疑惑という
問題を抱えていてイライラしてましたし。

ムタ(石丸幹二)に対しても差別的と思いつつも
未知の宇宙人相手ではやはり病気とか心配になりますもの。

でも、人間とはおかしなもので
そんなノエやムタの対応に腹立ててつい勢い余って
「こんな不快な映画、お前ら見るな!」みたいなこと
友人限定のSNSとかに書いちゃうんですよね(テヘペロ☆)

すみません。私も典型的な日本人なので…。


……う~ん。
この映画、日本人よりこれから
「お・も・て・なし」を期待し日本を訪れる
外国人観光客にある程度の心構えとして見せた方が
良くないですか?

さすればこの映画公開後の顛末も含めて
日本は「失敗を許さない社会だ」
と実感してもらえることかと。


【さらにさらなる追記】

後日、三谷幸喜監督は著作の中で
「これは第1話じゃなくて
第235話のつもりで作ってください」と指示した
と記述されているテレビドラマ
「HR」の第1話だけを見てみました。

おそらくこれが「ギャラクシー街道」に
作りも製作意図も一番近いと思います。

そう考えるとこの映画も
30分ドラマ「ギャラクシー街道」の
「第235話 ノエが浮気!?ノアの元カノ来店で大騒動」
「第236話 異星人とHがしたい」
「第237話 さようならキャプテンソックス」
「第238話 ノエの子供を妊娠しちゃった?」
の4本をまとめて映画化しちゃったという感じ?

深夜に放送されたら実験的作品として
それなりに評価を得られたかも。


この店を舞台にした30分枠シットコムで見たかった!
 
 
【これで最後にしたい追記】

「『ギャラクシー街道』にファンからも失望の声」という
タイトルを掲げたネットニュースなど
批判寄りの感想を読んでいると思うのは
映画内でストーリーが入れ子構造になっている映画は
結構ありますが、
映画内と映画の外側で入れ子構造になっている
と感じる映画はこの作品が始めてだなあということ。

映画を見る前、見た直後はそれほどでもなかったのに
公開後映画を見たと云う酷評が出てくるたびに
いろいろ考えさせられるところが非常に面白いです。

例えば、SNSでの酷評は
宇宙に放出された卵を救おうとして
思うように救えないキャプテンソックスに対する
「期待外れ」「役立たず」と云った
他の登場人物の罵声を思いだせますし、
三谷幸喜のロマンティックコメディを期待していて
「ただの下ネタじゃん!」とがっかりする様は
宇宙人のセックスを楽しめなかった歯医者さんのよう。

とまあ、過去の三谷幸喜作品は別にして
この作品は「最低最悪」とげんなりしている方にとっては
それまでメロメロだった恋人レイのハンバーガーの食べ方が
実は怖ろしく汚かったこと
(しかも本人はその時は気づいておらず
6年後、汚い食べ方でも楽しく一緒に食事してくれる
男を択ぶのです。)
を目の当たりにした時のノアと同じ気分なんだろうな
と思ってしまいます。

ところで、
他の方のレビューを読むと、
難産の際潤滑剤として
ここぞとばかりにカエル星人の体液を使わなかったことで
三谷幸喜を非難している文章をいくつか目にしましたが、
その方々は自分や自分の妻が出産するとき
このような事態に陥った時
どこのだれか判らないおっさんの体液を使用しても
それはそれで平気なんでしょうか?
私は嫌です。
断固拒否します。
この2択なら迷わず昆布を択びます。
 


フ…ランス…… ばんざ…い…!!

2015-10-10 00:13:00 | MOVIE
本日見た映画は
「HOME 愛しの座敷わらし」
「少年H」に続く水谷豊主演3部作
最後の刺客(あくまで「これで最後にしてくれ」と云う私の希望)
「王妃の館」


テレ朝との癒着が続く限り主演映画に事欠かなさそう。

です。

原作は2001年の発表された浅田次郎の長編小説で
ハードカバーで上下巻あります。(つまりそこそこ長い)

舞台となるのは
フランス、パリ3区にあるホテル
「シャトー・ドウ・ラ・レーヌ」
日本語名「王妃の館」。


モデルとなったパヴィヨン・ドゥ・ラ・レーヌ・パリはこちら。

かつて太陽王ルイ14世が
寵姫ディアナのために用意した宮殿でして
現在は一見さんお断りの高級ホテルとなっています。

どのくらい高級かと申しますとモデルとなった実在のホテルでは
宿泊費が各1泊
スーペリア(シングルもしくはダブル)350ユーロ、
デラックス(同)400ユーロ、
ジュニアスイート(同)400ユーロ、
スイート(同)800ユーロ、
ファミリースイート(ベッドルーム2屋)980ユーロ
となっています。
(現在1ユーロ≒136円)

なにしろこれまで
アマデウス・モーツァルト、
アルバート・アインシュタイン、
チャーリー・チャップリン、
グレース・ケリー
といった錚々たるVIPたちが滞在しているのです。

そのシャトー・ドウ・ラ・レーヌに
日本の倒産寸前の旅行会社が
前代未聞のダブルブッキングツアーを企画します。

どう云う事かと申しますと
同じ客室を昼の部と夜の部に振り分け
昼の部のお客様(ポジツアー)には150~200万円で
夜の部のお客様(ネガツアー)は29万8000円で
交互に滞在してもらうのです。

勿論、お客様にはこのことは内緒です。

過去はどうであれ現在経営が傾きかけているホテル側も
このダブルブッキングツアーには一枚咬んでおり
旅行会社に全面協力しています。

滞在期間は10日間。
果たして旅行会社の目論見は成功するのか?


…ね、これだけでも面白そうでしょ?

さらにツアーに参加するのは
皆訳ありや癖があるお客様ばかりなのです。







まず、ダブルルームの201室には
成金実業家の金沢貫一(緒形直人)と
彼のなじみのホステスであるミチル(安達祐実)が
夜間に宿泊し、
一方昼間は
カタブツ刑事の近藤誠(青木崇高)と
同じく一人旅でたまたま相部屋となった
ショーパブの女装スター、クレヨン(中村倫也)
が滞在します。

ツアーのスケジュール上
この2組が顔を合わすことはありません。

同じように202号室は
夜に失恋したてのOL桜井香(吹石一恵)、
昼には亡き妻との思い出を引きずる
元詐欺師の丹野二八(石橋蓮司)が、
205号室は
夜をスランプ中の天才小説家の北白川右京(水谷豊)が使い
その北白川の行方を捜している文芸編集者の
香取良男(山中崇史)と早見りつ子(野口かおる)が
同じ部屋を北白川と交互に使っていることを知らず
昼間だけ使用することになります。

両方のツアー客が鉢合わせしないよう
時間を決めてホテルの外に連れ出すのが
ポジツアー担当の添乗員である妻の桜井香(吹石一恵)と
ネガツアー担当の添乗員である夫の戸川光男(尾上寛之)
の主な仕事です。

客にダブルブッキングがばれないように
いかにして効率よく観光案内できるかは
この2人の肩にかかっています。

しかし、取材旅行で来ている北白川を始め
ツアー客は予定を変更して先にあそこに行きたいだの
ここの観光はパスしたいだの我侭三昧。

それでも折角お金をかけてパリに来ているのですから
見せるところは見せなくてはなりません。

そのため本作は
2014年6月23日から20日間、パリでロケを敢行し、パリでは、ルーヴル美術館、セーヌ川などの観光名所で撮影が行われたほか、ヴェルサイユ宮殿を休館日を利用して1日貸切でロケが行なわれ舞台となったホテルの外観にはマレ地区ヴォージュ広場前にある『パヴィヨン・ド・ラ・レーヌ』(wikipediaより抜粋)」
を使用すると云う
テレビ朝日が大盤振る舞いした作品となっております。

普段撮影できないところまで撮影しているのです。

これで面白くないはずがありません。

例え、映画予告編を締めくくる
「この春、右京と共に人生を変えるツアーへ」
と云うナレーションでの
あからさまな「右京」押しに辟易したとしても
この原作、このキャラクターと出演者、このロケ地で
面白くないはずがありません。




…と思ったらありました。
大方の予想通りありました。

かつて原作者である浅田次郎氏は
「映画化は不可能」と語っていたそうです。

理由はこの2つ。
① 舞台はパリ(しかも一見さんお断りラグジュアリーホテル)。
② 物語上ルイ14世の時代(在位1643年―1715年)と現代を
  行き来しなくてはならない。

①はお金の力で解決です。
「映像化不可能」と云っても
大概のことは製作費次第で「可能」に転じます。
特に昨今ではCG技術の進歩によって
不可能と思われたものが悉く可能となっています。

問題は②です。
こればかりで最新VFXを以てしても
何ともなりません。

ルイ14世の時代を映像で描くとなると
黒目黒髪モンゴロイドな日本人の力だけでは
いささか無理があります。

しかし、そこは代表作「相棒」の橋本一監督です。

「フランス人キャストが用意できないなら
日本人俳優が演じればいいじゃない。」

ということで天才小説家の北白川右京が
執筆する
「ルイ14世と愛妾ディアナと、
二人の息子のプティ・ルイの話」は
オール日本人キャストで演じることになりました。
(ただし、監督本人はインタビューで
「フランス人の俳優」起用より
「原作の日本語ならではのセリフの面白み」
を重視した結果だと仰っています。)

これがどれほど危険なことか
監督も判っておいでだと思います。

しかし、
「男には負けるとわかっていても戦わなければならないときがある」
のです。

しかし、この時監督はまだ知らなかったのです。

まさか主演俳優自ら
この常識を覆すキャスティングに勝るとも劣らない
離れ業を仕掛けてくるなどとは…。


かつての天才の名を欲しいままにした
ベストセラー作家北白川が構想中の新作小説の舞台は
フランス、太陽王ルイ14世の治世。

映画は開始早々、小説の冒頭シーンから始まります。

王妃マリー・テレーズが
王の愛妾ディアナから生まれた赤ん坊プティ・ルイを
バルコニーから投げ捨てようとしています。

はじめのつかみが肝心とばかりに
スクリーン一杯に映し出される王妃の狂気の表情。
演じているのは魏涼子と云う日本の女優さんです。

この時点では目のアップと口元のアップぐらいしかないので
さほど違和感はありません。


だからと云ってフランス人には見えません。

しかし、映画が始まったばかりだと云うのに
早くも嫌な予感しかいたしません。

劇場で見たならばおそらくこの時点で
只ならぬ後悔の念が押し寄せたことでしょう。

そんな不安を知ってか知らずか
王妃の高笑いとともに場面は一転、
パリ行きの旅客機内で悪夢に魘される北白川右京に
カメラが移動します。

はい、ここで早速仕掛けてきましたよ、主演俳優が。


ちなみに下はハーフパンツにタイツと云うかなり強気のファッションです。

え~っと、北白川先生これでもちょっとは知られた小説家です。
ファッションデザイナーでもファンション評論家でもありませんし、
還暦も迎えています。

その頭のてっぺんから爪先まで徹底した
エキセントリックな佇まいに
予感はますます悪化の一途を辿ることになるのですが、
こういうときにはあれです。

一旦現実を離れるのです。

この場合、応急の処置として
「ああ、これは映画ではなく
いつもとちょっぴり様相と予算が違う
『土曜ワイド劇場特別企画』なんだわ。」
と思い込むことにいたします。

そうすることで普段の2時間ドラマでは味わえない
魅惑のパリ観光ロケというお得感もついてきます。
(実際は劇場映画です。)

この時DVDのレンタル料金が頭を掠めますが、
テレ朝へのご祝儀と思ってなんとか自分を納得させます。

これに無駄なお金をつぎ込んだと思うから
腹立たしいのです。
(そこのところをテレビ局製作映画の作り手は
よ~く肝に銘じた方が良いかと思います。)

しかし、そんな無駄な抵抗が何とか持つのも
北白川先生の妄想が
ヒートアップするまでのお話。

再び日本人が演じる
ルイ14世御一行様がお目見えになると
それさえも通じなくなり


日本映画の限界。

DVDの映像に向かって
「ホワイ、ジャパニーズ ピーポー!」とわめき散らす
某外国人IT会社役員のような心もちに。

ルイ14世=石丸幹二
愛妾ディアナ=安田成美のインパクトは
予想を軽く越えています。

しかし、まだまだ参るわけにはいきません。

なにしろ日本国民にとっては
テルマエ・ロマエ
テルマエ・ロマエⅡ
の例もありますしね。
このようなことでいちいち動じるような
柔なジャパニーズ ピーポーではありませんよ。
と、強がってみたところで突如挿入される
フランス人に扮した日本人キャストによるミュージカル。

ここにきてミュージカル!!

オール日本人映画でミュージカルを成功させるのは
針の穴にラクダを通すより難しいことなのですよ?

ミュージカルであれば多少セット
(ほとんどが合成。それも合成なのが丸わかり。)
がチープだろうが、ごまかしがきくとでも?

もはやどこをどうとっても
フランス共和国に向かって土下座するレベルです。


もともとこんな見るからに怪しい日本人しか出ていないのです。

ストーリーも奇想天外、
それぞれのキャラクターも立っていて、
映像化不可能と思われた場所で原作通りのロケを敢行して
何故このようなできに?

 ___
/ || ̄ ̄|| ∧_∧
|.....||__|| (     )  どうしてこうなった・・・
| ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/
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個性豊かなポジツアーとネガツアーの客と
添乗員のドタバタを撮るだけでも
十分楽しい映画になったはずなのに…。

しかし、実際は2時間の映画に収めるため
原作では11組22人いたツアー客を
半分以下まで減らしておきながら
それでも折角のキャラクターの良さを半分も出していません。

それもこれも一人悪目立ちしている
北白川先生こと水谷豊御大のせい?

ポジツアーのネガツアーの客が入れ替わる隙をついて
急いで部屋の模様替えを済ます
ホテル従業員のドタバタっぷりとか


ラグジュアリーを売りにしている割には女性従業員、肌出しすぎ。

最初は気味悪がって避けていたクレヨンに対して
徐々に警戒を解く近藤刑事や
愛するミチルにカツラであることがばれるのではないかと
気に病む金沢の姿は見ていて楽しいので


この役緒方直人で正解だったの?いや、私的には正解ですが…。

「ルイ14世」の時代をまるっと削ってでも
そちらの方を丁寧に描写してほしかったです。

こう書いては元も子もありませんが、
北白川先生の新作を
わざわざ映像化する必要があったのでしょうか?

終盤、ダブルブッキングであることが
両方のツアー客にばれてしまうのですが、
その直後北白川先生の描く新作小説「王妃の館」の世界に
他の客も添乗員も取り込まれしまい
その美しい結末に涙することで現実でも全てを水に流し
大団円を迎えることになります。

と云った物語の構成上、「ルイ14世」の時代の
描写が必要なのは判りますが、
何故皆さんがその描写に感動し
それとはまったく関係のない旅行会社の詐欺を
ああもあっさり許すことになったのかが判りません。


橋本監督のインタビューによると
本作は主演の水谷豊さんの持ち込み企画のようです。

ということはあの衣裳とあのヘアースタイルで出たいがための
映画化ということになります。

よもやあんな奇抜なファッションで現場に現れるとは
夢にも思っていなかったようで
脚本では一言も触れられていないばかりか
こういう話題には詳しいはずのホステスのミチルが
同じツアー客の北白川が
あの作家の下白川と知り驚く場面さえあります。

もし、旅行していた同じツアーに
たまたま志茂田景樹先生がお忍びで参加していたとしても
一目で志茂田景樹と気が付くと思うのですが…。

「相棒 シーズン13」の最終回も思いましたが、
水谷豊さんと橋本一監督(最終回の演出は和泉聖治氏でした)
そしてテレビ朝日は
一体どこに映画を連れて行こうとしているのかと
ますます不安が募るばかりです。