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三人固まったと言ったってクズ三人じゃねえか 状況は対して変わってねえんだよ 甘ったれが!

2016-01-18 16:32:00 | MOVIE
TSUTSYAやGEOといったレンタルDVD店では
ケースの陳列の仕方はだいたい以下の2つに分けられます。

1つは、パッケージの表を見せて陳列する「面陳列」、
もう1つは、パッケージの背を見せて並べる「棚差し」
です。

新作コーナーでは大作と呼ばれる作品や
タイトルだけでも目にしたことのあるようなヒット作品が、
旧作コーナーでも
大量に入荷したやはり売れ筋のDVDが
普通、面陳列されるものですが、
他にも「店員のオススメ商品」らしき作品が
面陳列されていることがあります。

本日の映画は「店員のオススメ商品」なのか
それとも「店員のオシツケ商品」なのか
判断がつかないまま面陳列されているのが目に入って
うっかりレジに持っていってしまった

「ダブリン上等!」



です。

監督のジョン・クローリーは当時新進気鋭の舞台監督で
映画はこれが2本目(しかも1本目は劇中映画)
脚本のマーク・オロウも舞台の劇作家で
本作が初めての映画の仕事となります。

このお2人が「クライング・ゲーム」
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア 」などを手掛けた
ニール・ジョーダン監督(この作品では製作)に
見出されて撮ったのが本作。

ということでIFTAアワード(アイルランドアカデミー賞」
をはじめとした映画賞をいくつか受賞しています。

ただ、どういうわけかこういう映画に限って
感想を書くのが難しく
一行も感想らしい感想が出てこなかったりします。

一言で云うと、
脚本家の故郷である
アイルランド島東部の都市ダブリンを舞台にした
青春群像劇です。

ですので
とにかく主要な登場人物が多いこと多いこと。

そろそろチンピラ稼業から足を洗いたい
レイフ(コリン・ファレル)。

スーパーマーケットで夢も希望もなく嫌々働いている
ジョン(キリアン・マーフィ)。

ジョンの同僚で目下の悩み、性的不能を解消したい
オスカー(デヴィッド・ウィルモット)。

ジョンの彼女で煮え切らないジョンに愛想を尽かして
年上の男に走るデイドラ(ケリー・マクドナルド)。

デイドラの妹で過去の手痛い失恋から男性不信となった
サリー(シャーリー・ヘンダーソン)。

14年連れ添った妻を捨て新しい恋人デイドラの部屋に
転がり込む銀行支店長サム(マイケル・マケルハットン)。

いきなり離婚を突きつけられ自棄になって訪れた出会い系バーで
オスカーにナンパされ付き合うことになるサムの妻
ノーリーン(ディードル・オケイン)。

レイフのようなチンピラを目の仇にしているあぶない刑事
ジェリー(コルム・ミーニイ)。

奇抜な番組を作るためジェリーを取材中のテレビプロデューサー
ベン(トマス・オスーレーワウン)。

え~っとこれで何人?


日本での予告編にはこんな文章が…。多けりゃ良いってもんじゃないのよ?

とにかく、これだけの人々が右往左往しながら
「人生の幸せ」を求め暴走していきます。

ですので一つ一つの展開が早い早い。


映画開始早々、コリン・ファレル扮するレイフが
言葉巧みにカフェのウェイトレスを口説いていると思いきや


こういう役柄が良く似合いますコリン・ファレル。

いきなり彼女の顔面を強打し


いきなりこれはないわ。

レジの金を奪って逃げるという導入部分だけで
もう勝ったも同然ですよね、この映画。

しかも逃げた先で落ちていたスコップを拾い
走行中の車を停めボンネットに昇って
スコップを振り上げ運転手を脅すのですが、
もしこの時運転手が思い切り
アクセルを踏んだらどうなるんでしょう?


私ならブレーキではなくアクセルを踏みます。でなければバック走行します。

と云う私のささやかな疑問に答える前に
そのまま映画は
(見る人によっては)センスの良い
オープニングクレジットへ突入します。


原題は「インターミッション(ご休憩)」

ようするに今回のコリン・ファレルは
(オープニングクレジットの登場順から判断して)
一見主演のようですが、相当なろくでなしです。


相手から「肉弾戦」を挑まれているのに銃で撃ってくるようなろくでなしです。

アバンタイトルでの一連の行動だけで
レイフが見かけ以上に凶暴な男で
多少のトラブルも頭脳は使わず力任せに押しきって
何とかしてしまうタイプだということが
もの3分で判るようになっています。

そこまで判ってもらったところで
いったんレイフのことは忘れて
今度は順繰りに他の登場人物が紹介されていきます。

何しろ登場人物が多いですからね。
こんなところで時間を取ってはいられません。

しかし、これがまた
揃いも揃って善人ではありません。

悪党と云う程でもありませんが、善人でもありません。
云うなれば「しょうがない人たち」の品評会。

ナイーブな青年役が多いキリアン・マーフィでさえも
ここでは素行が悪すぎるのが
原因でNTRとなるようなろくでなしです。


仕事はできない、恋人に逃げられる、その末に犯罪に手を染めるどうしようもなさ。

そんな感じで大小合わせて様々な悪党が出てきます。
なかでももっとも悪逆非道なのはこの子供です。


こんな子供さえゲスの極み。

6月6日午前6時に生を受け、
頭に「666」のアザを持っているんじゃないでしょうか?
きっとに違いありません。

こんなお子様でさえ手が付けられないのですから
20歳を越えた大人たちが愛するべき隣人のわけがありません。

まだ真面なのが男性不信の女の子サリーぐらいです。

結婚を約束した男に
お金を持ち逃げされた上に
シャレにならない別れ方を一方的にされたため
以後



を伸ばしています。

脚本家もよく思いついたなとも感心するほど
それはそれは酷い別れ方でしたので
身なりに気を遣わなくなり家に引きこもっても仕方ありません。


髭以上にボサ眉が気になります。…ええええ、この女優さんこの時37歳?!

ところが、彼女の心のケアに励む母親との外出中
たまたまバスの事故を目撃したため
テレビを取材を受けることになったサリー。

その様子がテレビで放送されたことで
はじめて自分の姿を客観的に見ることができます。


口髭の代名詞か、「バート・レイノルズ」?

自分を客観的に見ることはとても大切なことです。
それはこの映画の登場人物全てに云えることです。
でも、みんな自分のことでいっぱいいっぱい。

サリーのようなに公共の放送で自分のありのままの姿を
客観的に見るなんて強烈な経験することは
そうそうありません。

改めて「髭の生えたさえない女の子」と云う自分を
見せつけられたことで激しく後悔した
サリーでしたが、一夜泣き明かしてもこの姿。
髭ぐらい一晩もあれば剃り落せるでしょ?

と、思ったらそこは違う国のお話で
そう簡単ではないんですね。


剃毛でもなく脱毛でもなく染めると云う選択。

外見はなかなか変えることができなくても
内面は昨日までの母親が外に連れ出すまで
家の中に籠っていたサリーではありません。

おかげですぐに新しい彼氏ができました。


お相手は熟女とのSM体験を通し性的不能から無事脱出したオスカーです。

かつてあのイチローも云っていました。
変わらなきゃ。
と。

そして、この映画を観ることで
変わるかもしれないのが
「紅茶の飲み方」。

どういうわけかこの映画の中で
紅茶にチョコレートソース(ブラウン・ソース)
をたっぷりかけて飲む飲み方が局地的大流行するのです。

この紅茶のたしなみ方で
デイドラからとうとう愛想を尽かされたジョンですが、
ジョンと知り合う男どもはどいつもこいつも
この飲み方に嵌ってしまいます。
もの凄い勢いで愛好家が増殖していくのです。

紅茶にチョコレートソース。

これがコーヒーになら判らないでもないのですが
あくまで紅茶なんですよね。イギリスだから。
ダブリン、一応アイルランドの街だから。


美味いのか?本当に美味いのか?それでいいのかイギリス人?

バレンタインも近いことですし
日本でもこんな商品が新発売されたことで
これを機に


紅茶にかけるが難しいときはその辺の焼きそばでまず試してみましょう。

紅茶専門店でも特別メニューとして
ご用意されたらいかがでしょう。



案外こうなっちゃうかも。






男と女の不一致な真実

2016-01-11 23:04:00 | MOVIE
本日の映画は
NYで暮らすひと組のカップルの心のうちを
男の視点、女の視点、それぞれ2作品で映し出した

「ラブストーリーズ コナーの涙」
「ラブストーリーズ エリナーの愛情」



です。


原題は
「THE DISAPPEARANCE OF ELEANOR RIGBY」
(エリナー・リグビーの失踪)
と云い、これにそれぞれ副題
「HIM」「HER」「THEM」がついて
3部作映画となっております。

ただし、今回DVDリリースされたのは
「HIM(コナーの涙)」
「HER(エリナーの愛情)」
の2本だけです。

「THEM」は「HIM」「HER」を再編集して
1本にまとめた映画だそうなので
上の2本を抑えておけば大丈夫とは思いますが、
そちらも気になりますね。

さて、原題の「エリナー・リグビー」というのは
ヒロインの名前でして
本編の中でもちらっと語られていますが、
ビートルズの楽曲「エリナー・リグビー」からきています。


エリナーのフルネームを知った大学教授の反応がこれです。

と云っても全くぴんと来ませんでした。

でも、それは私は
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の元ネタが
ビートルズの「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」と
云われるまで知らなかったくらい
洋楽には疎いからであって曲自体は超有名。

youtubeで検索してみたところ
タイトルは知らないけれども何度も聞いたことのある曲でした
「エリナー・リグビー」。


超有名な歌じゃん!!

エリナーに名前の由来を聞いた
美術史教授のリリアン・フリードマンは
「ビートルズを嫌いになりそう」
と感想を述べますが、
今回初めてまじまじと歌詞を見て納得。

wikipediaでの解説なんてこうですよ。
「エリナー・リグビーという身寄りのない老女と、
誰からも相手にされないマッケンジー神父
という架空の人物を悲劇的に書いた物語的な曲。」

…周りもよく止めませんでしたね。

ちょっとした裏話を披露し本題から逸れてしまいましたが、
この手の映画の大きな問題は、
上映時間がきっちり定められている劇場での鑑賞ならともかく
寸分違わないDVD2枚を前にした場合
どちらを先に見るかどこに正解があるか
ということです。

こういう時はとりあえずGoogleへ。
タイトルを途中まで入力したところ案の定
サジェストで「ラブストーリーズ 順番」が出てきたので
それを拝見すると
「女性は『エリナーの愛情』、
男性は『コナーの涙』から見るのが良い」
と書いてありました。

その助言に従い
まずは「エリナーの愛情」から再生してみることに…。


ある日のこと
エリナー・リグビー(ジェシカ・チャステイン)は
サイクリング中にハドソン川へと身を投げます。

真っ昼間に加え公衆の面前での投身だったため
あっさり助けられ自殺未遂に終わったエリナーは
妹に付き添われ担ぎ込まれた病院を無事に退院。

ウェストポートにある実家に戻り、
大学教授で精神科医の父親
ジュリアン(ウィリアム・ハート)


ステキなおじい様になりましたね、ウィリアム・ハート。特に風になびく白髪が。

フランス人で元ヴァイオリニストの母親
メアリー(イザベル・ユペール)、
シングルマザーの妹
ケイティ(ジェス・ワイクスラー))と
その息子のフィリップとともに暮らすことになります。


幼い甥以外の家族は自殺未遂したエリナーを腫れ物に触るように見守ります。

暫くして気持ちも落ち着いたエリナーは
何かを吹っ切るかのように
これまで伸ばしていた髪をバッサリ切り
両親の薦めで大学に復学します。

父親の紹介で受けることになった
リリアン・フリードマン(ヴァイオラ・デイヴィス)
の講義にも慣れた頃、教室に
エリナーの前に夫コナー(ジェームズ・マカヴォイ)が
前触れもなく現れます。

しかし、自殺未遂以降、コナーとの接触を
一切合財断っていたエリナーはここでも彼を拒みます。

自殺未遂以前この夫婦の間に何があったかは
「エリナーの愛情」にも
これに続く「コナーの涙」にも詳しく描かれていません。

数少ない情報から判るのは、
とても仲の良い夫婦だったことと
2人の間に生まれた息子が
生後数か月で何らかの理由で亡くなり
エリナーもコナーとも立ち直れないでいることです。

問題は、同じように子供を失くしながら
2人の受ける心の痛みも悲しみ方も
同じではなかったということです。

少なくともエリナーはそう思っています。

考え方や価値観の違うコナーと
同じ悲しみを分かち合うことに耐えられなくなった
エリナーはコナーの元を去り
一方、夫婦で悲しみを乗り越えたいコナーは
エリナーが立ち直り自分の元に戻ってくることを
待ち続けているようです。

そのすれちがいを時間をじっくりかけて
徐々に修復していく様を描いたのがこの映画です。




一旦、「エリナーの愛情」をおしまいまで見てから
間髪おかずして「コナーの涙」を鑑賞。

同じストーリーをだいたい同じドラマ内時間枠で
今度は夫(男性)側の視点で描いているわけですが、
全てが同じように構成されているわけではありません。

映画「コナーの涙」は、
コナーにとってエリナーとの大切な思い出話から始まります。


コナーの楽しかったころの思い出は「食い逃げ」の思い出。

一方「エリナーの愛情」では
エリナーは思い出に関して父親にこのようなことを語っています。


まあ、ここで云っているのは幼い日家族で観劇した「キャッツ」のことですが…

どこの夫婦でもあることとは思いますが
この「思い出」=「人生の輝ける瞬間」が
夫婦間で全く違っています。

テレビのクイズ番組の一幕であれば
「いちばん思い出に残ったデートは?」という問題に
夫婦のフリップに書かれた答えが一文字も合っていなくても
会場は温かい爆笑に包まれ、
答えた夫婦もぎこちなく微笑みあって
それでおしまいになるのですが、
これはシリアスなラブストーリー。

コナーの「人生の輝ける瞬間」は
(飲食業に就いているコナーにとって)「食い逃げ」と云う
普段は絶対しないちょっとした悪事を
エリナーと共有したという思い出でした。

一方「エリナーの愛情」に出てくる
エリナーにとってのコナーとの大切な思い出は
コナーのものとは全くの別物で
しかもコナーはその思い出をすっかり忘れています。

エリナーにとっての2人の大切な思い出は
真夜中のドライブでラジオをガンガンかけて
ふざけ合ったことです。


ラジオでかかっている曲が最悪でも楽しかった思い出。

このそれぞれの思い出は夫婦別居後
別の形で再現されます。

エリナーの思い出は彼女自身が再現します。
「人生の輝ける瞬間」を再現することによって
膠着したコナーの関係を変えようと思ったのかもしれません。

これまで頑としてコナーと逢おうとはしなかったエリナーが
決意を固め、コナーをドライブに連れ出したもの
一度掛け違った心のボタンは戻りません。

ていうか、コナーときたら
その時のことをひとつも覚えていませんでした。

覚えていないので意図せずして
エリナーのお膳立てを台無しにしてしまします。


あの時食べたのと同じ食料を買い込んでドライブに誘ったのに夫には伝わりません。

しかもドライブに誘ったエリナーの真意も汲み取れず
云わんでも良いことを告白して
さらなる追い打ちをかけてしまうのです。

すっかり落胆したエリナーは
コナーをレンターカーに残すと
土砂降りの雨の中、その辺の地下鉄に乗って帰ってしまいます。

その後、コナーは自分の店で
かつての自分たちを同じように
若いカップルが「食い逃げ」する現場に出くわすことに。

ただし、結果は違います。

逃げおおせたコナーとは違い
追いかけた店主(=コナー)に捕まってしまう
カップルの男の方。

同じなのに全く同じものなんてどこにもない世界。

違いは「価値観」や「状況」の違いだけではなく
もっと映像として判りやすい形でも現れます。

2本の映画を続けて見ることで
同じシーンを扱っていても
衣装やセリフの内容、セリフの順序が
微妙に(ある時ははっきりと)異なっていることが
徐々に明らかになってきます。

最初に私が気づいたのは
大学まで押しかけてようやくエリナーを再会できたコナーが
自分の元に帰ってくるよう頼んだものの、
説得しきれず結局もの別れとなるシーンです。

未練たらたらなコナーに有無を言わせず
きっぱり別れを告げるエリナー。


同じ会話をしていながら人によってこれだけ違うと云うのが判るシーン。

直後「エリナーの愛情」では
エリナーは一旦立ちあがりかけたところで
コナーに呼び止められて坐りなおし
再び彼の訴えに耳を傾けるのですが


コナーの目を見て話を聞くエリナー。この時視点の高さが同じです。

「コナーの涙」では
エリナーは立ったままコナーの訴えを聞いています。


ですので、コナーは見上げる形でエリナーに話しかけています。

その後、怪我を追っていたコナーは
待機していた救急車で運ばれるのですが、
去り際、コナーは


本当はこのセリフで「あれ?前の(=エリナーの愛情)と違う」ことに気づきました。

と尋ねるのですが、
それに対して「エリナーの愛情」では
エリナーは無言のまま。
対して「コナーの涙」では、「さようなら」とだけ答えます。

これは些細な違いですが、話が進むにつれ
2人の間の「会話」や「記憶」に大きな違いが出てきます。

人は他人が云っていることはおろか
自分が口に出した言葉も意外と曖昧にしか覚えていないものです。

ものによっては
どちらが先に喋りそれにどう答えたかという
会話の順序さえ怪しいのです。

「エリナーの愛情」では「追いかけても?」の前に
「さようなら」と云っており
「コナーの涙」とでは順序が逆になっています。

このくらい人の記憶はいい加減です。
他人の話だけでなく自分の話でさえ「話半分」です。

例えば、「亡くなった息子の顔を忘れてしまった」
と嘆くエリナーにコナーは
「肌の白い子だ。よく眉をひそめてた。
瞳も鼻も唇も君と同じだった。
ほっぺもソックリだよ。母親似の子だった。
世界で一番美しい子だ。」
と教え、2人は微笑みあいます。

でも、これは「エリナーの愛情」でのこと。

「コナーの涙」では
「肌が白い子だ。耳は小さくて鼻は君に似てた。口も。
アゴの形も君に似てた。目は僕に似てた。
愛してたよ。世界で一番美しい子だ。」
と云った後2人は涙をぬぐうのです。

亡くなった息子を
エリナーは「自分似」と信じて疑わず
コナーは「一部は母親似でもあり一部は自分似でもある」
と思っています。

どちらの言葉が正しいのかは判りません。

さらにこの違いを判りやすくするためか
この時の2人の位置も服装も違うものとなっています。


「エリナーの愛情」ではコナーの体にはエリナーがかけたと思われるブランケットが。


かたや「コナーの愛情」のエリナーはそのまま放置しています。

「事実(=実体)はひとつで、真実(=観念)は複数ある」
と云う言葉があるそうですが、まさにそんな感じです。

こうした違いは全く同じ場面のはずのラストシーンにも
引き継がれます。

本当に細やかな違いですが、大きく違う2つのラストシーン。


これはコナーが後を付けてきたエリナーに気が付いて振り返るバージョン。
そうでないバージョンもあります。


「エリナーの愛情」から見ると
自分のことで目一杯のエリナーばかりが強調されていますが、
「コナーの涙」の方でコナーの方も
実はいっぱいいっぱいだったことが判り、
やはりこの順序での観方で正解だったと思いつつ


レストランの経営の失敗、父親の認知症と男はつらいよ。

もはや絶対に経験することができない
逆の順序で見た場合も知りたくなります。
あと、「THEM」も。



女って欲張りね。




今年もよろしくお願いいたします。

2016-01-11 10:13:00 | MOVIE
突然ですが、
年末に自分の記事の「年間ベスト」を出すのが
流行っているようなので
年間ベストワーストを出さない代わりにそちらを真似てみました。
(レビューも書かずに何やってるんでしょう…)

といっても、こんな細々としたブログに大した需要はなく
さらにはAutopageという無料ブログの
アクセス解析は過去2か月分しか見ることができないので
うすぼんやりとした記憶を辿って集計してみたところ
ここの「年間ベスト」(順不同)は以下の通りとなりました。

1:映画レビュー「アメリカン・ハッスル」
(理由:「シークに娶られて」で検索をかけてきた人はだいたいここに辿り着くようです。
ブログ記事自体は全然関係のない記事なので検索で来られた方々には申し訳なさで胸がいっぱいになります。)

2:映画レビュー「ドバットマン」
(過去4年毎月の暫定1位がこの記事でしたが、2015年後半「アメリカン・ハッスル」に取って代わられました。)

3:映画レビュー「桜姫」
(考えられる理由:他にレビューを書いているブログがないんじゃないかと思います。)

4:映画レビュー「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
(途中まで書いてそれっきりになっているレビュー。読んでくださった方に申し訳ないです。)

5:映画レビュー「ただの友達?」
(3本の短編映画が収録されているDVDのレビューですが、主に表題作だけの紹介・感想になっています。)

6:映画レビュー「クライングフリーマン」
(理由:小池一夫先生のお蔭だと思っております。)

7:映画レビュー「ウェディング・キャンペーン」
(理由は判りません。)

8:映画レビュー「あぶない刑事」「まだまだあぶない刑事」
(2016年に新作を控えているからでしょうか?新作製作発表当時は「あぶない刑事」が年末に近づくにつれて「まだまだあぶない刑事」の記事が一気に読まれるようになりました。)

9:映画レビュー「脳男」
(ロケ地:地元富山をプッシュしております。)

10:映画レビュー「LAマザーファッカー」
(理由:見ている人も映画レビュー自体が少ないから?)


結果は改めて確認するまでもなく「ニッチ」。
悲しいまでに「ニッチ」。
他にレビューされているブログがない(少ないから)
ここに辿り着いた感ありありです。

そんなぽんこつ記事を読んでくださってありがとうございます。

年始なのでちょっとした欲(と云う名の豊富)を上げれば
「コメントを」とまではとても云えませんが、
「拍手」ボタンをクリックしていただければ
今後の励みになりますので、もしよろしかったらお願いいたします。




ギリシャ危機

2016-01-10 10:45:00 | MOVIE
突然ですが、
キルスティン・ダンストという女優さんがいます。

私が彼女を始めてスクリーンで見たのは
他の方もたぶんそうだと思いますが、
世界的ベストセラーとなったアン・ライスの小説
「夜明けのヴァンパイア」を実写映画化した
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」です。

トム・クルーズ、
ブラッド・ピット、
クリスチャン・スレーター、
アントニオ・バンデラスと云った
当時最先端の人気俳優がキャスティングされるなか
ヒロイン(?)役を射止めたのが
当時12歳のキルスティン・ダンストでした。

ロング・ヘアがまったく似合っていない
ブラッド・ピットもなかなかの見物でしたが、
やはり「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」と云えば
あの変身シーン。

ヴァンパイアカップル
レスタト(トム・クルーズ)とルイ(ブラッド・ピット)に
拾われた浮浪児クローディア(キルスティン・ダンスト)が
心ならずしてヴァンパイアとなる場面です。


最初はぼさぼさのストレートだった金髪が…。


みるみるうちにくるくるパーマに…。何もここまでくるくるしなくても。

その様子を傍観していたルイが思わず腰を抜かすところを含め
屈指の名シーンとなっております。

しかし、強烈な印象は残したもの
このくるくるパーマが仇となり、美少女と云うには
「悪いけど普通(←友人が私の姪の写真を見て放った一言anger)」
にしか見えなかった子役時代のキルスティン・ダンストは
あっさり記憶の彼方へと押しやられることとなりました。
(ごめんなさい。これは嘘です。
その後も毎年映画出演し順調にキャリアを積んでおります。)

それから少しだけ時が流れ
キルスティン・ダンストが再び注目を集めたのは
2002年公開された
「スパイダーマン(サム・ライミー版)」でした。

その映画で見事
メインヒロイン役を射止めたキルスティン・ダンスト。

ところが、
主人公のピーター・パーカー(トビー・マグワイア)の
長年の思い人でありながら、ピーターの友人である
ハリー・オズボーン(ジェームズ・フランコ)とつきあい
その一方でスパイダーマンにも心動いている
モテにモテるモテ女という
ヒロイン、メリー・ジェーンへの世間の評価はどう云う訳か
「スパイダーマンのヒロインって不細工じゃない?」と云う
いささか手厳しいものだったのです。

これは演じたキルスティン・ダンストのせいではありませんが、
この印象は後々まで蔓延り、日本では
「キルスティン・ダンストはブサイク」が
なんとなく定着してしまいました。





前置きが長くなりました。

本日の映画はそのキルスティン・ダンストが
再び2人の男を虜にする美女役に挑んだ
「ギリシャに消えた嘘」



です。

と云ってもキルスティン・ダンストを見たさに
DVDを借りたわけではなく
最近マイミクの1人が
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」経由で
「オスカー・アイザック沼」に嵌りまして
この映画を大プッシュしていたのを見て
その熱にあてられた結果7泊8日してきました。

ただ、ディスクを再生するまで
主演がもう年が年だけに脱がないヴィゴ・モーテンセン、
共演オスカー・アイザック
であること以外は何の情報も入れていなかったため
キルスティン・ダンストが出てきても
「え~っと誰だっけ?この女優さん?」
としか思えず


劇中何度も「親子ほど年が離れている」と云われていますが、
それすらピンときませんでした。


さらには劇中でくどいまでに
「美人」「美人」と云われていることに対して
「…そこまで云うほどか?」などと
思ったことは内緒です。

いえ、ブサイクとは思いません。

ただいますよね、たまに。
世間一般では「美人女優」で通っているのに
個人的には
まあ確かに美人っちゃ美人だけど
そこまで騒ぐほどの美人とは思えない人。

何を以て「美人」と思うかは人それぞれなので
たまたま私にとって好みではないだけのこと。

「…もしかすると外国の人や異性の目から見たら
もの凄い美人なのかしら?」
と、一瞬首をかしげてしまうような美女、
それがキルスティン・ダンストなのです。

そして、この映画では
そのキルスティン・ダンスト演じる人妻を巡って
夫であるヴィゴ・モーテンセンと


他に男前な画像もありますが、肌着から除く乳首を理由にこの画像にしました。

旅先で出会ったアメリカ人オスカー・アイザックが


異国の地でちゃちな詐欺をして身銭を稼いでいます。

互いの腹の内を探り合いつつ争うようになります。

ところが、その対象はキルスティン・ダンスト。

こちらとしてはヴィゴ・モーテンセンの心にも
オスカー・アイザックの心にも寄り添うことができず
むしろ
「お前ら2人がくっつきなよ!」
なくらい投げやりな気持ちで見続けていたら


こんな感じでな。

終盤からはあれよあれよという間に
本当にそういう展開となってしまい逆に吃驚!


最終的にこの2人だけになります。

そもそも初対面の時、最初に目と目を合わすのは
ヴィゴ・モーテンセンとオスカー・アイザックの2人で
その場にいたキルスティン・ダンストは
眼中にありません。

まずカメラが回り込むような動きで
こちらを見つめるオスカー・アイザックの姿を
映す(下図↓)のですが、
これはオスカー・アイザックの前を通る
ヴィゴ・モーテンセンからの視点ですよね。


視点を外すことなく見つめ続けているわけですね。

次のカットではカメラが切り替わり
今度はオスカー・アイザックから見た映像となるのですが、
ヴィゴ・モーテンセンとキルスティン・ダンストが
並んで歩く姿を見ているようで
焦点はヴィゴ・モーテンセンに合っているのです。


要するにお互い見つめ合っているわけですね。

一目あったその日から恋の花咲くこともある

これは私の妄想と云うわけではなく
ヴィゴ・モーテンセンとオスカー・アイザックは
お互いを意識したまま
カフェテラスで再会します。

その際、オスカー・アイザックの方は
デート中の相手に対してこう発言しているのです。


さりげなく爆弾発言をかまします。

それなのにいつのまにか興味はキルティン・ダンストに…。

この無理やり三角関係という展開が
ヒロインのキャスティングと相俟って
映画の世界に浸ることから私を遠ざけるのです。

オスカー・アイザックは、2人と出会う直前まで
父親の葬儀に出なかったことを責める母親からの手紙を読んでおり
手紙から目を上げた瞬間に
父親ぐらいの年のヴィゴ・モーテンセンが目に入ってくるのですから
実父に対して負い目のあるオスカー・アイザックとの
交流がメインになると思うじゃないですか。

まさか、キルスティン・ダンストを巡って
彼ら2人が戦々恐々となるとは…。

しかも、この映画、男2人の視点から立って見ると
それなりに話が分かったような気になるのですが
同じ女だというのにキルスティン・ダンストの視点に
立って見ると共感どころがなく
心が迷子になってしまうのです。

例えば、オスカー・アイザックの視点で
ストーリーを追っていきますと

1962年ギリシャで
ツアーガイドに扮して観光客相手に詐欺を行い
小銭を稼いでる青年ライダル(オスカー・アイザック)は
ある日、仲睦まじく観光する
マクファーランド夫婦と知り合います。

夫婦の身なりの良さと
夫チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)と比べ
親子ほど年の離れた美しい妻
コレット(キルスティン・ダンスト)に心を奪われた
ライダルは言葉巧みに2人に取り入り観光ガイドを勤めます。


劇中ありとあらゆるところで「美しい」と評される美人妻コレットですが


夫婦と知り合う前からの恋人ローレンの方が家柄も容姿も勝ってるような…。
演じるデイジー・ビーヴァンは祖父母・両親・兄弟に到るまでの芸能一家出身。


楽しいディナーの後、
夫婦が宿泊するホテルの前で2人と別れたライダルは
コレットがその日夫にせがんで買ってもらったブレスレットを
タクシーに落としていったことに気付き
ブレスレットを届けにホテルへ引き返します。

そこで見たのは、無人のホテルの廊下で
チェスターが意識不明の男を引きずっている姿でした。

意識不明の男を部屋に戻すのを手伝ったライダルに
男は彼を追ってきた私立探偵で妻に乱暴を働いたため
殴ったら気を失ったと説明するチェスター。

そして、土地勘のあるライダルは
追手が迫ったチェスターから
妻ともども逃亡するのに力を貸してくれるよう頼まれます。

これは金になりそうだと踏んだライダルは
うっかりホテルの旅券をおいてきたチェスターのために
偽装パスポートの手配までしてやり
そのまま逃避行に同行することに。

ところが、チェスターはとんだ食わせもので
投資詐欺で大金を巻き上げ組織から追われている上に
正当防衛とは名ばかりで私立探偵を殺害していたのでした。

悪事千里を走るとは良く云ったもので
次第に地元警察やFBIに追い詰められていく3人。

ライダルから夫が殺人を犯したことを教えられたコレットは
次第に夫に背中を向け
捌け口をライダルに求めるようになります。

一気に仲が深まるライダルとコレット。

そして、そのことに嫉妬した夫との些細な諍いから
事故死してしまいます。

しかし、事故の状況が状況だっただけに
殺人容疑は無関係だったライダルに。

どちらが警察に捕まれば
もう一人も逮捕される関係となってしまった
チェスターとライダル。

男2人だけの逃避行が始まります。


これが、キルスティン・ダンストの視点に立つと

投資詐欺を起こして大金を稼いだ夫と
魅惑のギリシャ旅行を満喫中の人妻コレット。

たまたま知り合ったライダルという
蠱惑的な瞳が印象的な美形ガイドの紹介で
ディナーを楽しんだ後は、夫と夜の営みを…

と、思ったところに予期せぬ闖入者が
ホテルの部屋まで押しかけてきて
交渉に当たった夫が部屋に戻ってくるなり
取るものも取りあえずホテルを引き払うことに。

しかもどう云うわけか美形ガイドのライダルまで
同伴することになり
渋い大人イケメンの夫と
エキセントリックな若イケメンとに
愛情を注がれちゃって
ああ~ん、コレット困っちゃう。

と、内心喜んでいるうちに
うっかり事故で死んでしまいました。


…あれ~ぇ?


と云った感じなのです。


コレットの死後チェスターから写真をねだるライダルでしたが、どっちもおんなじでしょ。

夫の裏の顔を知っていながら
お金があるうちは観光旅行にかこつけた
逃避行に喜んで付き合うものの
夫が旅先でうっかり過失致死を犯すと
あっさり見切りをつけ
手近にいた若い男にちゃっかり手を出すコレット。
なかなかに強かな女性です。

夫から買ってもらったばかりのブレスレットを
失くしたことに最後まで気が付いてないところからも
彼女のことは何一つ弁護できません。

老いてもなおフェロモン振りまく
ヴィゴ・モーテンセン、
現在に人気が鰻登りで映画界でも引く手あまたの
オスカー・アイザック、
子役時代から「美少女」「美人」という
褒め言葉が切れることのない
キルスティン・ダンストを起用し
観光大国ギリシャで撮影しておきながら
観光映画としてもラブストーリーとしてもサスペンスとしても
心躍らないのは残念。

確かに各俳優のファンなら見落せない作品とは思いますが、
もっとキャラクターに魅力を!

と、思ったら原作はパトリシア・ハイスミスなんですね。
なんとなく納得。
一見、1人の女を巡る男2人との三角関係を描いているようで
実は女そっちのけで男同士の確執がメインと云うところが
「太陽がいっぱい」のパトリシア・ハイスミス。

かつて、パトリシア・ハイスミス、ルース・レンデルと云った
ミステリーを女性が読むと洗練されたイメージがあったものですが、
現在もその風潮が脈々と受け継がれているようで
観光ガイドを兼ねた2時間サスペンスで
育っている世代にはこの映画は品が良すぎて
入り込めないようです。

「土曜ワイド」なら
「殺意の迷宮~ギリシャ観光を楽しむ理想の夫婦に近づく現地ガイド。迫る追手。アテナイからクレタへと逃避行。拗れる夫婦に忍び寄る影。やがて遺跡に死体が!蘇る現代のギリシャ神話。」
みたいなタイトルが付けられるかも。


映画はライダルがガイドするギリシャ神話から始まりその後の展開を示唆してます。



狼は生きろ、豚は死ね

2015-12-05 15:21:00 | MOVIE
先日、紀里谷和明監督の「ラスト・ナイツ」を見にいた折
強烈な印象を残したのは、
復讐を恐れるあまり妄想に囚われ
愛玩していた狆を殺してしまう豆腐メンタルぶりから
本人の方がきゃんきゃん吠えまくる小型犬に見えてしまう
ギザ・モット大臣役の
ノルウェー出身俳優、アクセル・ヘニーでした。


なにこのカッコいいヘアースタイルは!

家に帰ってから即行
フィルモグラフィーを確認したところ
無名の俳優と思いきや
日本未公開を含めてそこそこの数の出演映画があるではないですか。

ソフト化されている作品となりますと
「TSUTAYAだけ」が目につきますが、
この場合人気作しか扱っていないような
近くのTSUTAYAにも入荷されている可能性が高く、
さっそく借りに行ったところ
どういうわけか、1本は「貸し出し中」、
別の作品はブルーレイのみという有様でした。

TSUTAYAの公式サイトを使えば
返却予定日が判りますので
日を改めて再度、TSUTAYAに足を運んだところ
またしても「貸し出し中」。

そうかそうか、他の方々も
「ラスト・ナイツ」で目を付けたに違いありません。

でもなきゃ、このタイミングで
2週続けて貸し出し中なんてありえません。

ところが、マイミクの1人で
「ラスト・ナイツ」を初日に鑑賞した
Bigeast(東方神起ファンのことらしい)の友人によりますと
私には初めて目にする名前だった
アクセル・ヘニーと云う俳優、
韓国芸能ファンの間ではソ・ジソプ似として有名なんだとか。


なるべく似て見える画像を択んだのですが…。

…俳優クラスタ女子のアンテナの広さ
侮るべからず。


あ、こちらの方が似てるかも。

「貸し出し中」の真相は判らないものの
まるまる2週間待たされてようやく借りてきました。

本日の映画は
「ヘッドハンター」



です。

そのストーリーですが、

驚いたことにwikipediaの方に
冒頭から結末まで全てネタバレされています。

そちらの方を読んでいただきますと
映画を見なくてもストーリーが分かるようになっており
私といたしましては
面倒なあらすじを書かずに済むので大変有難いのですが、
それでは書くことがなくなってしまうので
序盤だけ説明させていただきます。

タイトル通り
主人公のロジャー・ブラウン(アクセル・ヘニー)は
有能な職業紹介事業者(=ヘッドハンター)として
成功を収めていますが、それは表向きでのこと。

裏では、面接に託けて
巧みに相手の個人情報を聞き出し、
彼らが所有する美術品を盗み出しては
密売することで副収入を得ています。

かつて、ノルウェーの実業家がムンクの幻の「叫び」を
個人所有していたと云う報道
がありましたが、
流石、世界で最も豊かな国ノルウェー
ロジャーが仕事を紹介する相手も
キャリアを積んだエリートが多いため
裏の商売でもターゲットに困らないようです。

おかげさまで昼も夜も働きっぱなしのロジャー。

それもこれも愛してやまぬ知的でブロンド美人の妻
ダイアナ・ストローム(シヌーヴ・マコディ・ルンド)
のためです。

背が低く、自分に自信が持てないロジャーにとって


数あるコンプレックスの中でも最大は身長。こればかりはどうしようもできません。

美しく誰からも好かれるダイアナをつなぎとめておく手段は
お金しかありません。


そのためキスする時も妻の方が夫のうなじに手を添えることに…。これは切ない。

ダイアナの喜ぶ顔を見たいためだけに、
分不相応な時価3000万クローネの家に住み


とにもかくにも妻の為なら惜しみなくお金をつぎ込みます。

彼女のために画廊をオープンさせます。

それでも、ダイアナに別の男が近づくたびに
いつか妻に捨てられるのではないかと
不安は募るばかり。

そのたびに高価なプレゼントを買ってしまい
いくら妻にお金を費やしてもきりがありません。

また、苦労して美術品を盗んでも


絵画は裏からカッターで刳り抜き用意した偽物と入れ替えます。結構扱いが雑です。

仲介人に売り上げの50%、
警備会社に勤める相棒オヴェ(アイヴィン・サンデル)からも
20%の報酬を要求されるため
いつも懐はカツカツでそろそろ大きい仕事が欲しいところです。

そんな折、妻の画廊のオープンパーティの会場で
ペーテル・パウル・ルーベンスの
「メレアグロスとアタランテ、あるいはカリュドンの森」を
所有していると云うオランダの青年実業家
クラス・グリーヴ(ニコライ・コスター=ワルドー)
を紹介されたロジャー。

国内一流企業パスファインダーの重役の席を
餌にクラスに近づきそれとなく聞きだした個人情報を元に
即日ルーベンスを盗み出すことに成功します。

ところが、
たまたま盗みの現場からダイアナに電話をしたところ
彼女の携帯電話がクラスの寝室に落ちているのを発見。


容姿端麗で背も高く、社会的にも成功しているクラス。端から勝負になりません。

妻の不倫を確信したロジャーは、
腹いせにクラスをパスファインダー紹介のリストから
除外してしまいます。


ところが、想定外に相手が悪かったのです。

その日を境に
豹変したクラスから命を狙われることになったロジャー。

まずは、挨拶代わりに毒を盛られたオヴェが
ロジャーの自宅のガレージで発見されます。

将を射んと欲すればまず馬を射よ。

なんとクラスもヘッドハンターだったのです。
ただし、
「首狩り(ヘッドハンティング)をする者」
と云う意味でのヘッドハンターですが…。

「このままじゃ狩られる!」
と、危険を察知したロジャーは、
着の身着のままで逃走を企てます。

しかし、クラスの追跡から逃れることができません。
どういうわけかどこに逃げても
居場所を割り出されてしまうのです。

一体どうして?
そのような不利な状態でロジャーは
はたして逃げ切れることができるのでしょうか?
そして、ダイアナの本心は?



と、かなりハードな逃走劇となっています。

なにしろロジャーが
どこに逃げようともどこに隠れてようとも
もれなくクラスはその場に姿を現すのです。
その不気味さときたら。

この作品を見ただけでも、ここ数年で日本でも
北欧ミステリーやノルディック・ノワールが
大きなブームとなったのが判ります。

勿論、ロジャーの方も手を拱いているだけではありません。

クラスが以前勤めていた電子機器会社で
ナノテクノロジーを使った追尾装置を発明し
軍に協力したという話を思い出し


有能なヘッドハンターは相手の話はどんなことでも漏らさず覚えているのです。

何らかの方法でその装置を衣服に付けられた
と考えたロジャーは身に着けているもの全て、
大事な結婚指輪まで川に捨ててしまいます。


そのために全裸となるロジャー。これに限らず全裸シーンがたっぷりあります。

しかし、クラスは何事もなかったかのように
ロジャーが行く先々に現れます。

逃げ場を失い、最後の手段として
汲み取り式トイレに身を沈め人糞塗れになったことで
(このシーンの画像は衛生上割愛します。)
追跡を一旦逃れることができたロジャーでしたが、
その後はクラスにいわれなき殺人罪まで押し付けられて
警察からも追われることに…。

そのため
幅30cmほどしかない戸棚に身を潜めたり


身長168cmが役に立った瞬間。

クラスに襲われ崖から突き落とされた警察車両の中で
両脇から肥満体の警官2人に押し潰されて
血塗れ洟塗れになったり


でもまあ、両隣が肥満体(クッション替わり)でなければ死んでいたところです。

その直後生死の確認に来たクラスに
死んだと思わせるため、彼が見ている間は
長時間またたきができなかったり


クラスに見られているうちは微動だにしません。ロジャー凄いです。

と散々な目に遭いますが、
ここで一つ朗報が。

ようやくクラスが仕掛けた追尾装置の
付着場所が判ったのです。

ただし、今度は悲報が。

追尾装置はジェルでロジャーの毛髪に
塗り込められていました。

人糞塗れだったところを病院に保護されたため
かなり念入りに洗われたはずなのに
それでも追尾装置が外れていなかったと云う事実から
除去する方法は一つしか考えられません。

仕方なくそろそろ前頭部あたりに不安が感じられる
貴重な毛髪を慟哭しながら剃り落す破目に…。


逃亡中ゆえ碌な道具もないため剃刀負けも酷いことに。

このようにもともと有能なヘッドハンターだけあって
なかなかしぶといロジャー。

何度となく襲いかかる危機を
ぎりぎりのところで回避していきます。

これでもうクラスもロジャーが死んだと思い込んだはず。
ここからは反撃開始です。

と、云っても
またもや思わぬ人からの裏切りに遭ったりして
まだまだロジャーの苦難は続くのですが…。

DVDリリースが「TSUTAYAだけ」という
地味な扱いながらも
一難去ってまた一難
追いつ追われつという
メリハリがきいているためでしょうか。
この映画、ハリウッドでのリメイクが決定しています。

さらには、マーク・ウォールバーグが、
「ここしばらく観た映画の中で、ベストの一本」と絶賛し
リメイク権を買ったスタジオとも話をしているだとか。

でも、でもですよ。

このロジャーと云う人物はアクセル・ヘニーのような
小動物感溢れる役者が演じるから良いのであって
まさか、マーク・ウォールバーグさん
主演のつもりじゃないでしょうね?

これは
「奥さんよりも背が低く
下腹部にも年相応の贅肉がついており
目鼻立ちは整っているもの
見るからにボスの腰巾着タイプの悪役顔、
瞳がぎょろっとし頭髪にもやや不安を抱えるロジャーが
ストーリーが進むにつれどんどん可愛らしく見えてくる」
のを楽しむ映画なのですから


妻の浮気を知ってふて寝を決め込む姿が女子。

それをマーク・ウォールバーグに求めるのは
ちょっと難しいような…。

ダイアナが不倫する一因となる
彼女がジュエリーや画廊よりも欲しがっている
「あなたとの子供」
をロジャーが長年拒んでいた理由がこれ↓ですからね。


こんなセリフで妻の母性本能を直撃。

普通は「なんて女々しい理由なの」
となりかねないのですが、
この理由に奥さんすっかりほだされて
こう↓ですもの。


思い存分甘やかします。

それもこれも全てアクセル・ヘニーが
醸し出すチワワのような小動物感のなせる業です。


動物にするとこんな感じ。

女性が社会進出する今、
kawaii文化が蔓延る日本だけでなく北欧でも
「イケメン」より「カワイイ」の時代となっているのですね。
うんうん。

そんなよこしまな目で見なくとも
「TSUTAYAだけ」の特設コーナーの棚に
埋もれているのは勿体ない映画です。

自分に自信を持つことで
最初は同僚やクライアントに対して
高圧的だった態度も最後には軟化され
こういうオチがつくのも気が利いていて好きです。


意外とすぐに元のふさふさになった毛髪…。