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彼らはショーマンです。単純かつ、時に残酷な真実を派手に飾り立て、見るものを驚かす。

2016-02-07 23:48:00 | MOVIE
本日の映画は
インド国宝級名優アーミル・カーン主演作
「チェイス!」


原題は「Dhoom: 3」。何故「3」かと云いますと…。

です。

日本では
「きっと、うまくいく」と本作の2本しか
劇場公開されていませんが、
既に(予告編で)「インド国宝級名優」と称される
アーミル・カーン。

この映画でもその存在を余すところなく見せつけています。


……と云っても

主に雄っぱ…大胸筋のことですが。

いや、もう、ほんと目のやり場がないくらい
凄いんですよ。


アーミル・カーン(公開時47歳)、インドで結果にコミットする。

始めて目にしたときは心の中の歌丸師匠が
「山田君!男性用ブラ一枚持ってきて!」
と、叫んでましたもの。

インタビューによると
筋肉質で脂肪率の低い身体をつくるため
準備期間1年を要したのだとか。

インド国宝級名優ともなると
RIZAP!で298,000円(税別) 2ヶ月間 全16回
なんて目じゃないと云うことですか。


始まりは1990年のシカゴ。

少年サーヒルの父親であるイクバールが運営する
大インド・サーカスは


一世一代の勝負を前に妙にテンションが低すぎる父親に悪い予感しかしない。

公演にかかる多額の融資を取りつけるため
シカゴ・ウェスタン銀行の頭取アンダーソンを招き
プレゼンとして一世一代のショーを披露します。


最初から金など貸す気のない頭取。池井戸潤の小説に出てきそう。

しかし、頭取の反応は芳しくなく劇場は差し押さえとなり
失意のあまりイクバールは
息子の見ている前で拳銃自殺を図ってしまいます。

確かに銀行が融資を渋るのも判るんです。
基本ジャグリングとマジックで構成されており
素人目にもとても劇場のキャパに見合うとは思えません。


素人目にもショーのフィナーレにしてはショボ…地味すぎます。

かように本作では、製作上
お金をかけるところにはたっぷりかけ
絞めるところはきっちり締めており
それがちゃんとストーリーに反映されているのが素晴らしいです。

と云う短めの感想はここまでにして
それから20年。

ウェスタン銀行の支店ばかりを狙った金庫破りが発生します。

犯人は白昼堂々奪った金を銀行の屋上から地上にばらまき、
その隙に警察の包囲網をついて逃走することに成功。

犯人は云わずと知れた成人後のサーヒルです。


何をしているかと云うと銀行の壁を垂直に降りているところです。

この流れで犯人がサーヒルでなければインド人もビックリです。

しかし、観客が真に驚かされるのは
サーヒルが繰り出すバイクアクションです。

とにかくこの逃亡シーンのバイクアクションが凄まじく
それだけでお口あんぐり、なんですが、
実はこの時点ですでにアーミル・カーンが
「ある演じ分け」をしてたことが
後々判り、もうなにがなんだか。
とにかくアーミル・カーンに圧倒されます。

そして、興奮冷めやらぬうちに
インド映画おなじみのダンスシーンへ。

もうアバンタイトルだけでお腹一杯だというのに
映画はまだオープニングクレジットですよ。


キレッキレのダンスよりベストからチラチラ覗く胸の谷間に目が行ってしまう。

オープニングクレジット明けは
舞台は一転してインド・ムンバイに。

え?何、この展開?

サーヒルの復讐譚はなかったかのように
ムンバイ警察の
凄腕捜査官ジャイ(アビシェーク・バッチャン)と
相棒のアリ(ウダイ・チョープラー)の活躍が
10分ほど紹介されます。


実は本作はこの2人を主人公としたシリーズ映画の第3作に当たります。…え?

この2人がバイクの腕を買われ
シカゴ警察からの依頼を受け
シカゴ・ウェスタン銀行の強盗事件の捜査に
参加することになります。

一地方都市で起こった銀行強盗に何故インドから刑事を要請?

それは銀行の金庫の残された犯人のメッセージが
タミル語だったからです。

そうなの?そんな理由でいいの?
という国際的疑問はさておき
一方、父親の夢だった
「大インド・サーカス」を再開させることに
成功したサーヒル。

その準備中テレビのニュースで
インタビューに応え
犯人を挑発するジャイの発言を目にしたサーヒルは
「犯人を知る」人物としてわざとジャイに近づきます。


明らかに怪しい人物ですが、割と簡単に信用されます。

サーヒルを信用したジャイは彼を捜査に参加させます。

そして、サーヒルがジェイに予言した日時に
再びウェスタン銀行の支店が強盗に遭います。

お得意のバイクアクションを駆使し逃走する犯人。

何故か素顔丸出しです。


ええええええっ!!!!!

ジャイの発砲により肩に被弾したものの
無事逃げ切ったサーヒル。

しかし、警察の手は大インド・サーカスに。

そりゃそうですよね。
あれだけ素顔を晒して
インド本国では検挙率ナンバーワンの刑事ジャイでなくとも
その足で大インドサーカスに駆けつけます。


現代の大インド・サーカス。シルク・ド・ソレイユも斯くやと云うレベルに上がってます。

一応この映画の見せ場の一つでもあるので
華やかなショーの終演を待ってサーヒルを追い詰める
ジャイでしたが、
どういうわけかサーヒルの肩に肝心の銃痕がありません。


銃を突き付けて無理やり脱がさせるとか…。脱ぎシチュエーションも工夫されてます。

証拠不十分でサーヒルを見逃すことになるジェイ。

そんなばかな。
一体どんなトリックが?

その後すぐに
映画「プレステージ」(2006)を見ていた方でしたら
ハッとなる種明かしがなされたところで
インド映画特有の「インターバル」に突入。


ま、こういうトリックです。

サーヒルの秘密はインターバル明けまもなく
清掃員に変装しサーカスに潜入したジェイに
一卵性双生児であることがばれてしまいます。

件の銀行強盗は、サーヒルが計画し
サヴァン症候群(?)と思われる双子の弟サマルが
実行犯とした兄弟2人による犯罪だったのです。

1週間のうち6日間、サーヒルの影武者として生きる
サマルにとってサーカスの休業日だけが
唯一「自分として生きることができる」自由な日です。


身体だけ立派になってもう…。

兄に比べ頭が幼いままのサマルが休日を過ごすのは
決まって遊園地です。

でも、一人で回るにはちょっとさみしすぎます。
それに付けこみ変装しサマルに近づくジェイ。


後半はアビシェーク・バッチャンの七変化を楽しんでください。

飽く迄、捜査のため、事件解決のため
サマルと親交を深めていったジェイでしたが、
ジェイのことを「初めての友達」と
すっかり心を赦して慕ってくるサマルに
徐々にほだされていきます。


こんなふうに懐かれたら無碍にできませんよね。
実際はアラフィフのおっさんに抱きつかれているのですが…。


潜入捜査官に起こりがちな
捜査官という立場と友情の板挟みに苦悩するジェイ。

という熱い心情描写はさらっと描くだけに押しとどめ
後はクライマックスまで一直線です。

いくら主役とは云え
いくら復讐のためとは云え
そして、いくらインド国宝級名優が
キャスティングされているとは云え
サーヒルもサマルも犯罪者には変わりありません。

2人の兄弟はどうなってしまうのか?
はたしてジェイ捜査官の決断は?


やってることは逃がしては追い詰め、逃がしては追い詰めの繰り返しですが。

ということで147分。
アクションシーンでメリハリをつけるためか
やたら乱用されるストップモーション、スローモーションが
なければ2時間ちょっとで収まったのでは?
と思わないでもありませんが(*)
怒涛のカーアクションと主演の肉体美
…ではなく演技力で魅せてきますので
退屈することはまあありません。


表情だけで双子を完璧に演じ分けるアーミル・カーン。

アクロバット・バイク・チェイスを売り物にした
「Dhoom」シリーズの第3弾と云う事になりますが、
これ1本でも充分に楽しめてなんだったらおつりが来ます。

でも、できれば第1作第2作もソフト化されると嬉しいです。
どうですか、ポニーキャニオンさん!!


(*)
と思ったら全長版は171分もあるんですって!
マジか!


こいつら100%英雄伝説

2016-01-31 19:39:00 | MOVIE
本日の映画は
ドウェイン・ジョンソンが主演の
「ヘラクレス」


ない事に見慣れている所にあるものがちゃんとあるとちょっとビックリしますよね。
…特に頭皮にとか。


です。

同時期公開されたもう一つのヘラクレス映画と
続けて見ようと思ったのですが、
いくら「アクション」「ドラマ」「SF」のハ行の棚を探しても
見つからなかったので


もう一つのヘラクレス映画。あ、サ行でしたか。

「まだまだ話題作」の棚に陳列されていた
本作のDVDだけを先に借りてきました。

マーベル・シネマティック・ユニバースや「300」の
栄光の陰に隠れてあまり表に出ていませんでしたが、
Wikipediaによると
この映画もアメコミ映画なんですね。


これですね。「Hercules the Thracian Wars」と云います。

そう思うと他のギリシア神話を題材とした映画作品より
間口が広い感じがします。

なにより
高層ビルの屋上から躊躇なく飛び降りることができる
(参照「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」)
マンガみたいに強いドウェイン・ジョンソンが主演ですので
たとえ劇中主人公がどんなピンチに陥ろうとも
怖れることは何もありません。

見る前から大船に乗った気持ちで見ることができます。

なにしろこの映画、
これまでのギリシア神話の半神半人の英雄ヘラクレスが
散々手こずってきたかの有名な「十二の功業」
(この映画では「12の難業」)の話ではありません。

最初から危機に次ぐ危機が回避されているのです。

正確にはちらっと出てきているのですが、
100分弱しかない上映時間で
12もの戦いをいちいち紹介するわけにはいかないため
中でも絵になる
レルネのヒュドラの退治、
エリュマントスの猪の捕獲、


「スィングガールズ」では女子高生が「トンマッコルへようこそ」でも一般男性が
捕獲できるものをギリシャの英雄が捕獲できないはずがありません。


そして、最も難関と思われるネメアの獅子の退治を
ピックアップし
ものの1分30秒でミッションコンプリートさせ
後の9つは口で説明されるだけです。

というのも

「12の難業」というのは
ヘラクレスの甥であるイオラオスによって
世間に広められた大袈裟な「伝説」であり
ヘラクレス本人は
主神ゼウスの子でもなんでもなく
血も涙もあるただの人間だったのです。


今日の主役はあなたです。不動の安定感があります。

しかも、現在は流れ者の傭兵に身を堕し
5人の仲間たちと戦場から戦場を渡り歩いています。

ヘラクレスは名ばかりで神話の設定全否定。

ヘラクレスがただの人間ですので、
神もまた現代と同様、ただの信仰の対象でしかありません。
ケンタウロスやケルベロスと云った神話上の生物も出てきますが、
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」みたいなことになっています。

つまるところ、この映画は
「ギリシア神話を基にした二次創作」
なのです。

ここから先、広がっているのは
めくるめく「脳内補完と萌え(+筋肉)」の世界です。

ですから、5人の仲間の名前も気兼ねなく
ギリシア神話の登場人物から付けられています。

ヘラクレスの幼馴染で短刀の使い手
アウトリュコス(ルーファス・シーウェル)、


お金に煩い経理兼広報担当。主人公の親友ポジションなのに目立たないのが悩み。

スキタイの出身で弓の使い手、紅一点の
アタランテ(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)、


矢を射るだけでなく弓を使い戦う姿が超カッコいい女戦士です。

国一番の預言者で槍の使い手
アムピアラオス(イアン・マクシェーン)、


この時代の預言者にありがちな話で神託を受けても肝心なこと迄は判りません。

ヘラクレスから「最強の戦士」と呼ばれる
手斧の使い手テュデウス(アクセル・ヘニー)


はいそうです。アクセル・ヘニーが出ているのでDVD借りてきました。

そして、ヘラクレスの甥の
イオラオス(リース・リッチー)。


腕はからっきしですが、口が上手い宣伝担当。

どんな戦いもチームプレイで乗り越えてきた
最高最強の仲間です。

「12の難業」なんてものは
傭兵としての商品価値を上げ効率よく仕事を得るための
戦略的マーケティングに過ぎません。

ただし、ドウェイン・ジョンソンが
キャスティングされるくらいです。
ここでのヘラクレスも人間は人間ですが、
「ただの人間」なわけがありません。


後にこのヘラの石像を素手で押し倒します。それもたった一人で。

ヘラクレスと仲間の簡単な紹介エピソードから映画は始まり、
それがひととおり終わるといよいよ本編です。

酒場で束の間の休息を楽しんでいたヘラクレス一行は、
お忍びで現れたコテュス王(ジョン・ハート)の娘
ユージニア(レベッカ・ファーガソン)から
報酬として体重分の金を支払う代わりに
幻術を使うレーソス(トビアス・ザンテルマン)が
率いる反乱軍からトラキア国を救うよう依頼されます。

多額の報酬に経理担当のアウトリュコスが
食いついたためトラキア国を訪れる一行。

幼い王子や年老いた王からは快く迎え入れられたものの
農民などの寄せ集めでできているトラキア兵では
強大な反乱軍には到底太刀打ちできません。

そこでまずヘラクレスが始めたのは
トラキア軍の強化でした。
根底から兵士たちを鍛えなおすことにしたのです。

要するに「七人の侍」ですね。


ヘラクレス一人の戦いではなくチーム戦の面白さを描いています。

ところが、伝説の英雄ヘラクレスの参入で
気が大きくなったコテュス王が先走ったたため
初戦は敗退。

その失敗を生かして
自分たちの戦術をトラキア兵に徹底的に叩き込む
ヘラクレスとその仲間たちでしたが、
まさかそれが徒になろうとは
その時のヘラクレスは思ってもいませんでした。

ということでトラキア内部に渦巻く恐るべき陰謀に
ヘラクレスとその仲間たちが巻き込まれていく
この映画。

同じ題材を扱った映画がもう一本同時期に公開されたせいか
はたまた、ここ数年出演作は飽和状態になっている
ドル箱スター、ドウェイン・ジョンソンが主演だからなのか
製作費、公開規模の割には
あまり話題とならなかった記憶があるのですが、
思いの外面白かったです。

登場人物の誰もかれもがキャラクターがはっきり立っているのが
見ていて気持ち良く
敵味方それぞれ得意とする武器が異なるのも
特撮戦隊もののようで楽しいです。

露出度が高い衣装でセクハラも簡単にやってのけるのに
あまり性的なものを感じさせないアタランテも
一旦は仲間の元から一人だけ去っておきながら
大方の予想通り仲間のピンチにいけしゃあしゃあと
戻ってくるアウトリュコスも
落語「粗忽長屋」のオチを思い出せるモノローグで
映画を閉めてくれるアムピアラオスも大好きですが、
やはり特筆すべきはテュデウス。

アクセル・ヘニー目当てで
このDVDを借りてきた私にとっては
この映画、なにかのご褒美ですか?

アクセル・ヘニーの一挙一動に萌えすぎて
ほんと殺す気ですか?

アクセル・ヘニーが演じるテュデウスは
子供の頃、戦で住民が全滅したテーベという地で
ただ一人生き残ったと云う過去をもっています。


だからなのかこんな髭面になっても仲間から「子供」扱いをされています。

この時心に深い傷を負ったため
ヘラクレスの仲間に加わった時は「獣」と変わらず、
成人した今でも人の話していることは理解できても
自ら意味ある言葉を発することはありません。
(これが最後に最大の効果を上げます。)

夜は夜で当時の悪夢を見ては暴れるので
眠るときには鎖でチャリオットにつながれています。


寝汗でモヒカンがへにゃと地肌に張り付いているのがステキです。

それを見守るヘラクレスもまた同じ理由で
毎夜悪夢に悩まされており
このへん、実に美味しい設定です。


…もうこれだけで萌えていいですよね?

さらにヘラクレスは盟友であるアウトリュコスに
いずれ傭兵稼業から足を洗いチームが解散する時には
テュデウスを引き取るつもりでいることを
打ち明けています。


食べ方が汚いことにさえ萌えてしまう。

それもかなり映画の序盤で。




あああ、今そんなこと口にしたらあかん!!!

映画の序盤で語られる
「こうなったらいいなあという未来」は
たいてい「こっぴどく裏切られ実現しない未来」
となるものなのです。
俗にいう死亡フラグです。

ただでさえ6人が並んだ時、彼だけが、テュデウスだけが
その外見の弱々しさからか、
背の低さからか
はたまたやたらきょどきょどしているせいか
ラストまで生き残らないであろう嫌な予感がするのです。

一人戦士ではなくお調子者のイオラオスでえさえ
なんやかんや生き延びそうなのに
なんで今ここでわざわざダメ押しするかなあ?


自らの死を予言したアムピアラオスさえ私には死の影が見えません。

とにかく存在感は他の6人と変わらないのに
影が薄いのです。


たまに見せる笑顔がさらに「幸薄さ」を強めます。

そして、案の定
ラストシーンには彼の姿だけありません。


いつの間にか仲間が一人増えている?と思ったらレーソスでした。

…うん。判ってた。
後の全員、生き残るって。

でも、そんなところも含めて
この映画のアクセル・ヘニーも私にはご褒美でした。

さらに一押しのテュデウスは別として
もう一人萌え語りたいのはこの方。
アテネの王様
エウリュステウス王(ジョセフ・ファインズ)です。


本作きってのベストキャスティング。

エウリュステウス王は
以前ヘラクレスと仲間が仕えていた主君でしたが、
国民の人気がヘラクレスに集まることに嫉妬し
ヘラクレスの妻子をケルベロス(と云う名の3匹の猛犬)に
襲わせ殺害し、その罪を彼になすりつけた
云わばこの映画のラスボスです。

ですが、
見るからに裏で何か仕出かしそうなにやけ顔、
小鳥を愛でるなよなよした女性的なしぐさから
まったくラスボス感が感じられず
別枠で重鎮ジョン・ハートが悪役として用意されているため
取ってつけたような存在となっています。

コテュス王の協力でヘラクレスを罠にかけ
地下牢に拘束できたことに気を良くし
ヘラクレスの愛する妻子を殺すことに到った経緯を
本人の前でぽろぽろと告白しちゃうところの
小物感ときたら

もうぞくぞくしますね。


金や地位でヘラクレスを買収できなかったとはっきり語っているのに

その後、復讐の鬼と化したヘラクレスに追い詰められ
どう云い逃れるかと思いきや
よりによって金で話を付けようとしてくるとは
ほんと、期待を外さない方です。


いや、そもそも金で動かない相手だったからこんな事態になったんでしょ?

バカなの?
本当に国を治める立場の人なの?
こんな人が王でアテネ大丈夫?

でも、このだめんず振りがパーフェクト。

地下牢に捕えられたヘラクレスを殺すために
猛犬ケルベロスをけしかける時も


え?ドウェイン・ジョンソン相手に3匹とか、舐めてんの?

んなわけないだろう!
脇が甘すぎるわ!

と、思わずツッコミかけましたが、
考えてみれば3匹しか飼っていなかったのでしょう。
コテュス王に
「3匹もいれば充分だろう」
なんて知った口きかれた時には
「うっせ、じじい。」
と、内心舌打ちしていたに違いありません。


映画の宣伝を兼ねたインタビュー時にもまだ髪が縦ロールのファインズ!

さあ、どうです。
この中盤と終盤に申し訳程度に出てきても
インパクト大なエウリュステウス王も含め
アテネ時代のヘラクレスとゆかいな仲間たちの活躍を
もっともっと見てみたくなりませんか?
私はなりました。

と思っていたらその辺は抜かりなく
エンディングクレジットでやってくれました。


ネメアの獅子の退治も実は集団戦でした。

映画の出だしでイオラオスによって語られた
ヘラクレスの「12の難業」が
実際どのように行われたかを簡単なアニメで
2分で説明。

最後までとことん脇に追いやられている
「12の難業」です。

2分じゃ到底足りません。

叶う事なら
このキャスティングによる「12の難業」を
Netflixあたりでオリジナルドラマ化(全12話)で
放送していただきたいものです。
そうしたら、即、加入契約登録するんですけどね…。







考えたら人生ってオッさんになってからの方が長いんじゃねーか!恐っ

2016-01-26 15:31:00 | MOVIE
今から29年と3か月前
1つの刑事ドラマが産声を上げました。

タイトルは「あぶない刑事」。

日テレ系日曜21時台最後のドラマ枠を
飾ることとなったその作品は、
放送終了1年後「もっとあぶない刑事」と名前を変え
金曜20時台と放送時間も変えて
お茶の間に戻ってきました。

当時の人気を鑑みれば当然の続編決定と云えましょう。

以後、映画化、テレビスペシャル化、(そしてそれに伴う殉職)
が繰り返され、30周年も迎える今年、
講談社から刊行された「あぶない刑事」の
DVDマガジンが累計で120万部を売り上げたことに
気を良くした日テレの粋な計らいで
11年ぶりに新作映画が公開されました。

そう、本日の映画
「さらば あぶない刑事」


オマタセ、ベイベー。イッツ・ショータイム。

です。

日テレ系地方局の招待試写会で一足先に見てきました。

横浜・港警察署捜査課の
名物コンビ、
ダンディ鷹山、タカこと鷹山敏樹(舘ひろし)と
セクシー大下、ユージこと大下勇次(柴田恭兵)の
破天荒な活躍を描いた本シリーズもこれで見納め。
(と宣伝では仰っています。ほんとかな?)

テレビドラマ放送開始時には
30歳と云う設定だった
タカ(1956年12月15日生まれ)、
ユージ(生誕日不明、たぶんタカと同期)も還暦を迎え
4日後にはともに定年退職と相成りました。
(警察官の定年は60歳です。)

刑事人生最後の5日間。
無事乗り切って退職の日を迎えれば
2000万円の退職金と
月20ん万円の年金生活が待っています。


ということで
シリーズ最新作且つ最終作の本作の感想ですが、

正直みぞおちが痛いです。

見終わった後、
ボディーブローのように鈍い痛みがじわじわ効いてきます。

約30年間同キャストで通したがゆえに

舘ひろしは現在65歳
柴田恭兵一つ下で64歳
メインヒロインの真山薫役の浅野温子54歳
永遠の後輩キャラ町田透役の仲村トオル50歳
永遠のお茶くみ山路瞳役長谷部香苗50歳
さらに
主人公たちを常に暖かく見守っていた
松村優子元少年課課長役の木の実ナナに至っては69歳。

つまり、本作は
主要キャストの平均年齢還暦越えの
刑事アクション映画なのです。

結婚もせず、出世もせず定年退職を迎えてしまった
タカとユージ。
それなのにやっていることと云えば
30年前と何一つ変わらず。

平成も28年になっても自己紹介では
「ダンディー鷹山」
「セクシー大下」と堂々と名乗っております。

それは度重なる映画化を経て
キャラクターがすっかり崩壊してしまった
カオル(初登場時26歳と云う設定なので55歳)も同じこと。

今回も
金髪ウィッグ


これでまだ地味な方。

金襴緞子から


バブル期以前の女性にとってはいくつになっても寿退社は憧れなのです。

きゃりーぱみゅぱみゅのコスプレとやりたい放題。


なんかもういたたまれない。

見た目だけでなく頭の中身も
「クイっクイっ!」
なんて擬音を口で云っちゃうあたりが
10年前(前作)と全然変わっていません。

華麗なタップもユージ走りもまだまだ健在な大下さんも


視聴者でも比較的真似のしやすいユージ走り。

大型バイクに乗りショットガンを撃ちまくるタカさんも


真似できないタカのバイクテク。真似した吉川晃司は転倒し全治2か月に…。

なにひとつあの頃と変わっていません。



…容姿以外は。

還暦をとうに過ぎているんですもの
そりゃ、皴もできますし弛みもでます。
白髪だって生えています。

きついなあと思うのは
それなのに彼らの頭の中は30年前と変わらず
「青春真っ盛り」で
なんならこれから結婚して子作りに励むよ!!
と云う気合いが滲み出ているところです。

あれから30年、皆若かったのです。
今回のエンドロールで
テレビドラマ第1作から
映画「まだまだあぶない刑事」までの
ダイジェスト映像が流れるのを見たら
何もかもが当時と変わっていなくて吃驚しますけど
生身の人間を使ったシリーズ実写映画だけに
30年分きっちり時間だけは流れているのです。

それはこのシリーズを最終作まで見てきた私もです。

そう、見ているこちらも
「あぶない刑事」
「もっとあぶない刑事」
「またまたあぶない刑事」
「もっともあぶない刑事」
「あぶない刑事リターンズ」
「あぶない刑事フォーエヴァー」
「まだまだあぶない刑事」を通して
30年間一緒の時間を生きているわけなんです。

なのにタカさんも大下さんもカオルも
表面的な老化だけで中身は何一つ変わっちゃいないのです。

「大人になりきれない大人」を30年間
これまでもこれからもやり続けている3人組。

何なの、この人たち?
何時までショータイムなの?

しかし、これは他人事でありません。

私自身振り返ってみればこの30年
内面的には何も変わっていないことに気づかされるのです。
だからこそ余計に見ていて辛い!

この30年間何やってきたの、自分?!

30年分、年を経たキャスト陣を見て
自分もまた彼ら同様大人になりそこなったことを
確認させられる一連の作業。

ただし中身は変わっていなくとも
確実に社会的な「老後」は近づいてくるのです。

でも、私にはこの人たちみたいに2000万の退職金も
月20ん万の年金もないのです。
そもそもタカさんも大下さんもカオルも
「この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、
実在のものとは関係ありません」ですよね?

これは効くわ。じわじわと。
現実がヒジョーにきびしい。

上手に大人へのシフトチェンジできた大人の観客はともかく
大人の階段を昇りそびれた大人は見ていて
心が痛いです。

一足先に定年退職した
ナカさん(ベンガル)、パパさん(山西道広)も
おそらくは退職金を基に
それぞれ屋台のラーメン屋、居酒屋おでん屋を
営んでおり現役バリバリ。

刑事こそ辞めていますが、気力体力もあの頃のまま。

平成の今の世60代なんてまだまだ働き盛りなんですよね。
でも、現役ではいられません。

このギャップ、どうしてくれよう。

意外と頭のなかは30年前変わらない
タカさんも大下さんもカオルも気持ちだけなら20代30代よ?

とは云うものの、
この痛みはいい年して独身ならでは
センチメンタルな感想と云えましょう。

wikipediaでの解説によりますと
「2016年時点で、同シリーズ同キャストによる
刑事モノ映画としては『ダイ・ハード』シリーズ6本を超え
世界新記録となる」そうですが、
その30年の間に
ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は
離婚を経験し、テロリストから娘を救いだし
CIAとなった息子と共闘しているのです。

立派なものじゃないですか。
あれほど型破りな刑事でも
夫となり父となり年齢なりの人生を歩んでいます。

これと比べると「あぶない刑事」メンバーの変わらなさに
全米が震撼です。


エクスペンダブルズ(消耗品)?いえいえ現役バリバリです。

ああ、教えたい。
4回ぶっ続けで映画「あぶない刑事」を見た
28年前の私に教えたい、
彼らの定年退職を見届けるってことを。
でも、30年ぐらいでは人は変わらないってことを。

そんな私のような約30年
このシリーズを見続けてきた人には
意味なく火だるまになるエキストラ、
180度横転するカーアクション、
突然挿入される柴田恭兵「RUNNING SHOT」、
フォーマット通りのゲストヒロイン、実行犯、黒幕の末路
嬉しいオマージュやお約束が満載です。


エンディングロールさえ変わっていません。

思い入れが深ければ深いほど楽しめる
最終作となっていることだけは(安)請け合います。

反面これだけの長寿シリーズですから
旧作を未見の方は予習が必要かどうか
心配されている方もおられると思います。

そのような方々は
東映のロゴから始まりアバンタイトルに続いて
主演「舘ひろし」「柴田恭兵」の名前の後
脚本と監督の名前が登場するオープニングクレジットに
昭和の匂いを感じていただきたいものです。
 

昭和の匂いが漂う「荒磯に波」

昨今のCG映画、3D映画を見慣れた目には
新鮮に感じることでしょう。

まあ、試写会の方は
タカとユージとともに青春を歩んできた年齢の
ご夫婦連れが圧倒的に数を〆ておりましたが…。

ちなみに前作にあたる
まだまだあぶない刑事」は
トオルが捜査課長に出世したこと以外は
なかった
ことになっておりますので
あらかじめ予習する必要はありません。

30年間のご活躍を評し
「さらば」そして「ありがとう」。

それでは、1月30日の一般公開に向けて
IT’S SHOWTIME!



【余談】
神奈川県警本部長役で深町新三(小林稔侍)元課長も
普通に出ていて
「え?なんでこの人定年していないの?」
と思いましたが、
登場時54歳と年齢設定が決まっていた
近藤卓造課長役の中条静夫(当時60歳)と
違って深町さんは年齢が不詳なので
意外と実年齢より若い設定なのかもしれません。
県警本部長=警視監は普通の警官より
数年定年が長いらしいので
タカさんや大下さんより2,3歳上か
意外と若いのに老けて見えるだけなのかもしれません。


われわれの勝利だ! 海もわれわれ人間のものだ!

2016-01-24 20:12:00 | MOVIE
舞台は80年代前半、
石油ブームに沸くノルウェー。

その発端となったのが1960年代に発見された
イギリス、ノルウェー、デンマーク、ドイツ、オランダの
各経済水域にまたがる北海油田です。

主権地域の約4分の1を有するノルウェーは
海底500メートルに
自国の最も近い港に石油を運ぶための
パイプラインを開通する大掛かりなプロジェクトに
取り掛かります。

このような場合、金の匂いを嗅ぎ付けて
首を突っ込んでくる国があります。

そうアメリカ合衆国です。

このパイプライン敷設が意外に厄介なしろものでして
溶接するには人間が手作業で行わなければなりません。

そのため徐々に水圧を挙げるテスト潜水が
地元ノルウェーチームと
安全な潜水技術を提供することで
割り込んできた経験豊富なアメリカチームの
合同で行われることとなりますが、


当時のニュース映像。

ノルウェーとしては
なんとしても主導権を握りたいところ。

そんなノルウェー政府の思惑に
一人のプロダイバーが巻き込れることになるのが
本日の映画「パイオニア」


これも「based on true story」です。

です。

amazonの解説によりますと
「衝撃の史実に基づく、緊迫の深海スリラー!」
なんだそうです。

史実でスリラーって……。
(スリラーの意味は「映画、小説などで観客や読者に
スリルを感じさせることを狙った作品。」)





主人公はこの人



あらあらすっかり素敵なヘアースタイルになられて。

「ラストナイツ」で出逢ったから
目が離さなくなったアクセル・ヘニーです。

今はすっかりスキンヘッドになられたようですが、


最新作「オデッセイ」のインタビュー映像から。上目使いが可愛いですね。

この頃くらいの薄さ加減が個人的には大好物です。

世界にKAWAii(かわいい)文化をを推し進める
日本において
ワンランク上の「可愛さ」を売りに
乗り込んできた北欧諸国。
そのノルウェー出身の俳優だけに
今回劇中で身につけている肌着代わりのタックトップが柄物、
それも模様違いで持っているだなんて
あんた、私を萌え殺す気ですか?


(頭皮体毛と比較すると)意外とまつげばっさばさなんですね。

そんなアクセル・ヘニーが今回演じるのは
ノルウェーのプロダイバー。

名前はペッターと云います。

同じようにプロのダイバーである
兄のクヌートと
別枠で雇われたヨルゲン、
その他アメリカ出身のダイバーたちと
数週間寝食を共にし模擬潜水艇での訓練を
無事成功させいよいよ本番へ。


本当は存在しないカモメが見えたりして全然「無事」ではなかったのですが…。

国中の期待を背に先陣を切って潜水した
クヌートとペッター兄弟。

ところが、
ペッターが機械操作中に一時的に失神してしまい
作業のタイミングにずれが出たことで気圧が洩れ
爆破に巻き込まれたクヌートが事故死してしまいます。

この仕事を最後に妻子のため危険なダイバーを引退し
ダイビング監督に転職しようとしていた矢先の悲劇でした。


結婚し一家の大黒柱な兄と大人になってもお兄ちゃんっ子な弟。

何故、最も精神が研ぎ澄まされ集中していたはずの作業中に
よりにもよって失神してしまったのか?

その原因を探るためペッターは行動を開始します。

まずは、作業時ベル(潜水鐘=人員輸送カプセル)に残り
呼吸ガスの吸気弁を操作していたヨルゲンを問い詰めるペッター。

その最中にヨルゲンは発作を起こし
以前から癲癇の持病があったことが判ります。

そのため事故の責任はヨルゲン一人が背負うことに。


裏で何かの陰謀が渦巻いています。

一見解決したように思われましたが、
事故現場を録画しているはずの
ビデオテープが紛失していることや
ダイバーの体調を管理する医療チームが
ヨルゲンの持病を知っていながら潜水させたことに
疑問を感じ、捜査を続けたところ
仲間であるアメリカ人ダイバーから襲われ
住処にしているボートも何者かに荒らされもう散々です。

やがて、亡くなったクヌートが
潜水に使われる呼吸ガスのサンプルを盗むよう
依頼されていたことが判り
ペッカーの疑念がますます深まるばかり。

どうやらアメリカからの計画に参加している
ロナルド・マクダーモット博士が混合した
呼吸ガスに秘密があるようです。

そこでペッターは呼吸ガスのサンプルを採取するため
最終検証ダイブに参加することを表明します。


物語の発端になっている割にはどんどん影が薄くなるお兄ちゃん。

ところが、ガスのサンプルを巡り
殺される者、外国へ追いやられる者などが現れ
ペッターも命を狙われることに…。


この爆破に巻き込まれ殺されそうになるシーンの美しいこと!

もはや誰が味方で誰が敵かすらも判りません。

その末にペッターが掴んだ事の真相と黒幕の正体は?



ということで
ほぼ出ずっぱりのアクセル・ヘニーの演技と
禿げあがった頭皮に
鍛え上げられた身体を愛でるだけでなく


海底での仕事のためか脱ぎシーン(男性限定)が多くあります。

ノルウェーがいかにして北欧諸国でも
ダントツにお金持ちな国となったかが順を追って判り
とってもためになります。

また、兄の死の真相を解き明かしていくあたりは
「スリラー」と云うよりは「ミステリー」でもあり
「サスペンス」要素もしっかりあって
オプションで余り知られていない潜水技術についても
詳しく学べるというなかなかお得感のある映画です。


なんだかいろいろてんこ盛り過ぎて
……これ本当に実話なんですか?


まあ、ラスト、全ての謎が解き明かされても
スカッとならないあたりが
「実話を基にしている」からと云えなくもありません。

生死の危機にさらされながら
ようやく真相に辿りついたところで国家に対して
何の力も持たない一個人が一矢報いるわけがないのです。

それでなくとも独身で家庭を持つ予定もなく
「結婚しなくてもお兄ちゃんがいるからいい。」
なんて劇中で発言しているくらいですから
彼女はおろか兄以外は腹を割って話せる友人すらいない
となるとそれはもう
ほぼ「フォックスキャッチャー」における
チェニング・テイタムですからね、この主人公。

加えて頭も禿げ上がって背も低いとなると
到底勝ち目なんてありません。

残念ながら長いものに巻かれるしかない主人公。

小動物的なアクセル・ヘニーに打ってつけの
配役と云えましょう。


模擬潜水艇で訓練に挑むペッターの姿なんて「実験動物」にしか見えません。

主人公が懐柔されたことで
「1981年6月ノルウェー議会は
パイプラインの設置計画を承認。
石油を本土に輸送しノルウェーは世界一豊かな国とな」
ります。

しかし、その栄光の陰で
「2004年、設置の開発と工事で神経を損傷したと
ダイバーたちが国を訴えたが、敗訴。
2011年、欧州人権裁判所に上訴した」
と云う文章が続きこの映画は終わります。


主人公たちダイバーが身体を張って
危険なダイブに挑んだおかげで
ノルウェーはロシアを除く欧州最大の原油生産国・輸出国となり
2014年時点で
原油(石油)生産量は世界第14位
天然ガス生産量世界第7位となったのです。



ね、勉強になるでしょ?




いい男成分が足りない人のためにウェス・ベントリーも用意されています。



こんにちは!私があの有名な天下を獲る織田信長です!

2016-01-19 22:16:00 | MOVIE
あるサイトが歴史好きを自称する歴女のみなさんに
アンケートを取ったところ
付き合いたい戦国武将第1位となったのは
「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」担当の織田信長
だったそうです。

織田信長と云えば
「天下布武」と尤もらしいスローガンを掲げながら
やっていることは
ところ構わず戦いを仕掛けては「世界征服」を企む
仮面ライダーにおけるショッカー首領のような人物。

それが証拠に「第六天魔王」という御大層な綽名で呼ばれ
弟殺しを始め、
比叡山焼き討ちの際には
僧俗・児童・智者・上人の別を問わずことごとく首を刎ね、
長島攻めでは
男女二万人を取り籠んで四方より火をかけて焼殺、
嘘かまことか
姉川の戦いで敗れた浅井久政・長政及び朝倉義景の髑髏に
漆を塗ったものを盃として馬廻衆との宴に披露し、
謀反を起こした荒木村重の一族郎党の婦女子122人を
磔、鉄砲、槍・長刀などで処刑、
極悪非道悪行三昧のエピソードは数えきれません。

それなのに500年の時が流れた現在においてもなお
日本国民に深く愛される織田信長。

「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり。」
などと歌い踊った22年後、
47歳(と11か月28日)で亡くなるあたりも
後世の人々にとってギュッと心を鷲掴む何かがあるのでしょう。

そのため、織田信長は
同じく戦国の世を生きた豊臣秀吉、徳川家康とともに
数多くの小説、漫画、ドラマ、ゲームに
ひっぱりだことなっています。

愛されすぎて時には女性として描かれてしまうのも
織田信長が国民的アイドルである所以です。


この女子衆は全員織田信長です。

そんな織田信長が、
実は平成の世からタイムスリップしてきた
普通の男子高校生だったら?
という人気漫画を実写映画化したのが、
本日の映画「信長協奏曲」


「ノブナガコンチェルト」と読みます。

です。

そういう荒唐無稽な設定の漫画を
わざわざ生の俳優を使って実写映画化しているわけですから
史実問答無用
時代考証問答無用
時代背景問答無用
そして、人物の年齢問答無用であろうと、
いちいちツッコミを入れては野暮と云うものです。

ですから、戦雲吹き荒れる乱世に
巨大ウェディングケーキや
大粒の真珠がついた結婚指輪が出てきても
ノープロブレム!

そこは割り切って見ましょう。

そもそも本作は


フジテレビ開局55周年記念プロジェクト企画として
2014年夏にまずはテレビアニメとして深夜に放送され
それに遅れること3か月後
フジテレビ系の「月9」枠でドラマ化、
その時点で2016年1月に映画版が全国公開されることが
決定済みという経緯を経ているのです。


フジテレビドラマの映画化なので予告編も毎度お馴染みのこの言葉で〆ます。

満を持しての映画公開です。

時代劇よりトレンディ
ラブストーリーよりドラマティック
「楽しくなければテレビじゃない」
というフジテレビ魂は未だ健在なのです。

しかし、これは相当な危険な賭けとも云えます。
なにしろドラマが成功するか失敗に終わるか判らない時点で
映画化が決定しているわけですから
下手すれば
「銀幕版 スシ王子! ~ニューヨークへ行く~」
のようになりかねません。

しかも映画と云うものは完成に時間がかかるもので
ドラマ終了から映画公開までにまる1年かかっているのです。

ドラマを毎回楽しみに見てきたファンでも
その間興味を保ち続けるのはなかなか難しいことと思います。
(ちなみにドラマの平均視聴率は12.5%)

ドラマの第1話で特に理由なく
天文18年(1549年)にタイムスリップした
現代の高校生サブロー(小栗旬)が
顔、声、体格など瓜二つの
当時15歳の織田信長に偶然出会ったことから
ひ弱な本物に成り代わり
「織田信長」として生きていくこととなり


ドラマの第1話では15歳だった織田信長も時が32年ほど流れ

桶狭間の戦い、稲葉山城の戦い、姉川の戦いを経て
(ドラマ版は一切見ていないのでこれらは当て推量)

天正4年(1576年)に天下布武の拠点となる
安土城を築城しようやく腰を落ち着けたところから
映画は始まります。


47歳なりました。一見変わっていないようですが年齢が肌に出ています。

ようやく訪れた束の間の平和な時間。

しかし、それを満喫する間もなく
サブローは同じく平成の世から戦国時代に
タイムスリップしていた松永弾正久秀(古田新太)から
自分がまもなく死ぬことを知らされます。

高校時代、日本史をろくに勉強していなかった
サブローは戦国時代に来てから先
行き当たりばったりで行ってきたことが
全て歴史の教科書通りであったことを
ここにきて初めて知ったのでした。

しかし、せっかく松永弾正に
日本史の教科書を見せてもらいながら
いつどこで誰にどういう理由で信長が殺されるか
と云う肝心なことに目を通さなかったため
サブローはしばし
いつ訪れるか判らない死に怯える事になります。


ここまでネタバレしてもらって「信長の死後」しか目に入っていないサブロー。

その裏では、幼い頃、織田信長率いる軍勢に
自分の住む村を滅ぼされ母親を惨殺されたことから
復讐の鬼を化した羽柴秀吉(山田孝之)と
サブローに全てを託した後、
明智家の養子となり頭巾で顔を隠した姿で
織田家に仕えはじめた真の織田信長、
明智光秀(小栗旬)が
サブローの命を狙い何やら暗躍中です。

のんきなサブローの方は
天王寺の戦いで苦戦するミッちゃんこと光秀のため
自らの命も省みず援軍を率いて助けに行ったりして
サルくんこと秀吉のどす黒い企みに
一向に気がついておりません。


ミッちゃんのためなら足を種子島で撃たれようが肩を矢で射ぬかれようが平気です。
…んなバカな。


そして、物語はいよいよクライマックスである
紅蓮の炎燃え盛る「本能寺の変」へ。


この状態で延々話し合う信長と光秀。何悠長なことしとんねんと何度思ったことか。

織田信長史上最大の見せどころです。
このために最終回は映画に取っておいたのですね、判ります。

サブローは、
ミッちゃんは、
サルくんはどうなるのか?!
歴史は変えられるのか?!


「敵は本能寺にあり!」ってお前(=秀吉)が云うんかい!!

と、盛り上がりを見せたところで
試写会で一人頭51円(ペア招待なので)見た私が
とやかく云うのは大変烏滸がましいので
敢えてこれ以上のネタバレや苦言は避けさせていただきます。

ご覧になれば一目瞭然のことと思いますが、
非常にツッコミし甲斐のある映画です。

隣の座席に並んで座っていた
高校生らしきカップルの彼女の方が
上映中10分おきにストレッチをして
なにやら気を紛らわせていた事が気になりますが、
この原作でこのキャストでテレビドラマ流れの映画化では
どう頑張ってもこんな出来よ?

アイデアの面白さだけで企画が通って
「じゃあ映画化よろしく。」なんて云われて作られた割には
スタッフもキャストも頑張っていると思いますよ。

例え開局55周年記念プロジェクト開始時点の2014年には
飛ぶ鳥を落とす勢いだった主演の小栗旬、
結婚発表前で人気最高潮の向井理、
個性派俳優まっしぐらの山田孝之、
Kis-My-Ft2藤ヶ谷太輔が
2016年現在では
それほど客を呼べる俳優でなくなっている上に


かわいいよ、かわいいよ徳川家康(濱田岳)!

歴史の勉強になにひとつ役に立たないストーリーなので
現役バリバリの女子高生が退屈してしまうのも
致し方ありません。

おうちに帰ってyoutubeで
エグスプロージョンの踊る授業シリーズ「本能寺の変」を
視聴した方がよっぽど勉強になりますからね。

一緒に試写会を見た母が
「(この映画)まるでマンガだわ。」
と云う成程ご尤もな感想を漏らしていましたが、
ご明察です、母上。

でも、序盤の肖像画作成中の信長を囲んで
和気藹々している織田家臣勢のシーンは
私的にはかなり楽しかったので見て損はありませんでした。

無理にお薦めは、お薦めはいたしませんが…。





暴を禁じ、戦をやめ、大を保ち、功を定め、
民を安んじ、衆を和し、財を豊かにする
の七徳の武をもって天下を治めるという意味。