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Woman is the "N" of the World

2016-02-17 16:36:00 | MOVIE
本日の映画は
Yahooの無料動画配信Gyaoで
現在配信中(2月20日まで)の
「4人の女」



です。

Gyaoの「映像情報/内容・ストーリー」によると

美しき女たちの仁義なき戦い……。血の絆で結ばれた女たちの本格アクション・ノワール!人生の転落を味わった女たちが、マフィアに復讐を企てる。しかし彼女たちに差し向けられた刺客もまた、美しい女だった。

とあります。

上映時間は2時間2分。

ざっと最後まで見てましたが


美しい女の刺客なんて出てこなかったよ!!!

え?
ええっ?
どういうことですか?
Gyaoの担当者さん?

もしかして私が見落としているだけでしょうか?

さきほどの文章に続いて
「あらすじ」が表記されていますが、こちらでは

オーロラとアナの姉妹、子連れのグロリア、可憐なパロマの4人は窃盗のエキスパート・チーム。金庫破りに失敗、逃げ遅れたオーロラが刑務所送りになる。アナは麻薬ディーラーのフェリックスと結婚してメキシコに移り住むが、豪邸での暮らしはDVと酒に溺れる日々だった。スペインからグロリアを呼び寄せ、ある計画を打ち明けたアナは、夫に走る車から突き落とされ意識不明の重体になる。出所したオーロラはパロマとともにメキシコへ飛ぶ。復讐と麻薬資金強奪計画を胸に。しかし、フェリックスの片腕、“天使の顔”を持つ殺し屋ガブリエルが、オーロラたちの動きを追っていた……。

となっています。

これだと「ガブリエル」と云う人物が
「刺客」だと思うじゃないですか?


こんな感じのね!(参考:「コンスタンティン」の美しい天使ガブリエル)

でも、ガブリエルを演じているのは
「ガエル・ガルシア・ベルナルの友人」で
毎度お馴染みのディエゴ・ルナ
なんですけど…。


別名「ベビーフェイス」「大天使」。ぶっちゃけどの女性キャストより美形。

確かに美しいですよ。
だからと云って罷り間違えても
この髭面を女性と間違えることはないでしょう。

実際映画を見てみると
Gyaoの「映像情報/内容・ストーリー」
に負けず劣らず
「ん?」と思うところがあります。

メキシコの麻薬ディーラーと取引する韓国人が
喋っているのが普通に中国語だったりとか…。


「謝謝」って云ってる韓国人とそれを訳す韓国人通訳。

だからと云って
映画紹介の肝である内容説明を
こんなふうに適当に書いて良いものなのか?
う~ん。

流石にぼんやりした私でも1時間切ったあたりから
「あ、これ、出てませんね。美しい女の刺客。」
と感づきますわ。

そういうカッコいい女の殺し屋が出てくるような
爽快アクション映画ではないのですよ、この映画。

どちらかと云えば女性の描き方が妙に生々しい映画です。

美しい容貌と金庫破りの腕だけはあるものの
どこにでもいるようなごく平凡な女性たちが
屈強な男どもを相手に無謀な勝負を仕掛けてくるのですから
冒頭からしてもうどっきどきです。

鍛え上げた肉体を武器に戦う男たちのアクションなど
もう見飽きたとばかりに
映画の世界ではどこもかしこも見渡す限り
女性が率先して戦っています。

おかげでBMI数値が17以下にしか見えない美人女優が
自分より遥かに体格の良い男たちを、
痛快に蹴り飛ばしたり殴り倒したりするアクションを見ても
不思議とも何とも思わなくなってしまいました。


これがジーナ・カラーノでしたら相手がチャニング・テイタムでも違和感がありません。

例えか弱い女性で
映画の前半に男たちにただならぬ暴力を振るわれたとしても
後半には形勢逆転。
誰の手も借りず己の力で復讐します。

守られるヒロインなんてもはや過去の遺物と云えましょう。

だからでしょうか、
女ばかりの4人組強盗団と聞けば
男性も太刀打ちできない強靭な女性たちを
想像してしまうじゃないですか。

しかし、何の訓練もしてない一般女性が
男性相手に肉弾戦で勝てるのはフィクションの世界だけ。
ほぼ嘘っぱちです。

実際、オーロラの金庫破りの手管は
周到に計画され作業もテキパキしており見事なものです。

それをフォローする後の3人の女たちのチームワークも
ばっちりです。

しかし、残念なことに彼女たちが輝いているのは
その時だけです。

馴染みの警官に顔見られたパロマの密告で現場を押さえられ
大勢の男たちに取り囲まれ
あっさり捕り押さえられてしまうオーロラ。


金庫破りの才能はあるものの他のことは結構ダメダメなヒロイン、オーロラ。

これが現実です。

大概の女性は体力の面で男性には敵わないのです。
複数の男性を相手にすればなおさらです。

ですので、この映画のヒロインたちはそれ以降も
簡単に男性に捕まってしまい
そのたびに男たちに身体を弄ばれることになります。

裏社会で生きるような男たちにだけではなく
オーロラの減刑を求めるために検事にまで
その報酬として性的なサービスをしなくてはならないのです。


仲間を救うためなら女子高生好きの検事のためコスプレだってします。

ようやく女としての幸せを手に入れたと思ったオーロラの妹アナも
夫フェリックスがイケイケの麻薬ディーラーで
彼女のこと端っから娼婦(性の対象)としてしか見ておらず
少しでも彼女が意をそぐわないことをすれば
走行中の車から突き落とすような男だったため
結果的持続的意識障害(植物状態)となってしまいます。

アナの紹介で息子を連れて
スペインからメキシコに渡り
フェリックスの組織に潜入していた仲間のグロリアは、
アナの復讐を果たすため
オーロラとパロマも呼び寄せるのですが、
いかんせんこの人たち、自分たちへの
危機管理能力がなさすぎて
見ているこちらは終始ハラハラされっぱなしです。

彼女たちが虎視眈々と復讐を企んでいることは
フェリックス側に筒抜けなのに
オーロラなんてメキシコ到着早々に
滞在中のホテルに男のデリヘルを呼んで楽しんでいるのです。

そして、それをフェリックスの右腕、ガブリエルに知られ
まんまとこの男性配達サービスを利用されてしまいます。

このガブリエルが過去のトラウマから
女性と子供には手を上げれない
この作品唯一の良心的な男性だったから良かったものの
本当だったら相当「危険な情事」となるところです。


結果、ミイラ取りがミイラになってガブリエルは女性側に付きます。

もう少し身辺に警戒した方がよろしいのでは?

とにかく、オーロラを始めグロリアもパロマも
アナの復讐することだけで手一杯で
逆に報復されることや反撃されることまで
頭が回らないようです。

危機管理能力に欠けるのか、
単に刹那的なのか。

冒頭の強盗失敗でもオーロラだけが捕まるや
あっという間に彼女(=リーダー)を斬り捨てて
逃亡を図る仲間たち。

逃げた後は文字通り身体を張って
オーロラのために働くだけの友情はあるのですが、
今はとりあえず逃げるのみです。

その後、幾度と訪れる危機に次ぐ危機を
「女と見ればセックスすることしか考えていない」
ラテン系男子の欲情によるお情けと自爆のおかげで
免れつづける4人の女。

スペインとメキシコ連邦特別区が舞台ですが、
基本的に出てくる男たちはガブリエル以外
女性に対して暴力を振るうこととセックスすることしか
頭にありません。

特に口でしてもらうのが大好きです。


この体験がすこぶる良くて初対面のアナに即プロポーズしたフェリックス。…。

どのくらい好きかと云うと
その快感のために裁判所の判決を覆したり
デリヘル嬢にプロポーズしたり
背後から銃で撃たれても構わないくらい大好きです。

こんな男たち相手ですもの、
腕に覚えもなく男に立ち向かう程の体力も装備もなく
拳銃に使う弾丸でさえ自作しなくてはならない
普通の女性である彼女らが、唯一無二の武器として
己の体をフル活用するのも不思議ではありません。

そんな感じでエロティックなシーンも絡めつつ
他のアクション映画では決して見られない
生々しさが特徴のラテン系ノワールなのがこの映画。

他のケイパーものが白々しく感じられるほどです。

故に見ているこちらまでがハラハラ。

周到な計画でフェリックスから大金を奪い
マフィアとしての信用を貶めた後に
あってしかるべき報復のことなど頭になく
オーロラが入院中の妹を引き取りに行く
終盤の展開に至っては
もう詰めが甘すぎてハラハラがイライラに…。


ガブリエルがいたから良かったもののここまでの1時間52分でいい加減学んで!

どう考えても病院で待ち伏せされるよね?
あれだけのことをしでかせば。

臨時社員として名前も顔も知られていながら
雇い主である麻薬ディーラーを相手に
大喧嘩を仕掛けておいて
愛する一人息子に関してはなんの対策を立てていない
グロリアにもひやひや。


フェリックスの魔の手が大事な息子に伸びたらどうするんだ?!
(案の定ガブリエルに目を付けられます)


相手はちょっと口答えをした妻を
即病院送りにする輩ですよ?

まあ、脇が甘いのは女性たちだけでなく男性も同じで
商売上の機密データが彼女たちに盗まれていながら
相手は商売女で頭の中にあるのはセックスと金のことだけ
と軽く見ているフェリックス。

なのでガブリエルに任せる以外に何の対策も立てず
まんまと大金を奪われ韓国マフィアを怒らせてしまいます。

中韓を怒らせると云う事は「死」を意味します。

これはガブリエルでなくとも心配になりますわ。


本作に登場するほぼ全員に云える大天使様からの貴重なお言葉。

ということでこんなふうに書き連ねると
暗めの映画に思われるでしょうが、
Gyaoでも「仁義なき戦い」と紹介しているように
女同士の強い絆を描いているだけでなく
その裏では男同士の濃ゆい友情も描いており


母親の次くらいに(*)ガブリエルが好きなフェリックス。

1粒で2度おいしい映画です。

まあ、いかんせん地味すぎるのと
登場人物に感情移入しにくいのも確かですが。


この2人の関係だけで二次創作が1本書けそう。




(*)メキシコの男性は母親をとてもとても大事にするそうです。


娘さんよく聞けよ山男にゃ惚れるなよ山で吹かれりゃョ若後家さんだよ

2016-02-16 16:13:00 | MOVIE
南アフリカ共和国の報道写真家であるケビン・カーターが
1993年に撮影した
「ハゲワシと少女」と云う写真があります。



飢餓で苦しむスーダンで
飢えで動けなくなり、うずくまってしまった少女と
その背後で彼女を狙う一匹のハゲタカを撮った写真で
翌年、新聞等の印刷報道、文学、作曲に与えられる
米国で最も権威ある賞である
ピューリッツァー賞受賞を授賞しました。

しかし、その写真は
「報道か人命か」と云う論争を巻き起こし
撮影したケビン・カーターは授賞から1か月後に自殺します。

結構有名な話ですのでご存知の人も多いと思います。

本日の映画の主人公も
フォトグラファーを職業としています。

1993年ネパール、カトマンドゥでの
日本のエベレスト遠征隊に随行したカメラマンの
深町誠(岡田准一)。

しかし、登攀は2人の犠牲者を出し失敗。
帰国後出版するはずだった写真集の話もなくなります。

雪渓を滑降する仲間を救けもせず彼らに向けて
シャッターを押し続けた深町に
遠征隊の隊長も愛想を尽かし
見捨てられた深町は一人
カトマンドゥに取り残されてしまいます

しかし、野心家な深町は撮ることを諦めません。
それが仕事ですから。
写真集を出版する夢を捨てません。
男とはそういうものです。
特に山男ならば。

…ということで
本日の映画は


世界的なのに映画化されるまで知りませんでした。
しかも映画のエンドロールで初めて原作者が夢枕獏を知りました。




「エヴェレスト 神々の山嶺」



です。

個人的な話で相済みませんが、
試写会に応募するようになって約5年。

「陰日向に咲く」
「天地明察」
「図書館戦争 THE LAST MISSION」
「永遠の0」
「蜩ノ記」
全て外れました。
それはもうもれなく外れてきました。

岡田准一主演(出演)映画の試写会は当選できない。

私にもとうとうそのジンクスが覆される日が来たのです。

ありがとうございます、北日本新聞社!
これが、テレビ局主催の試写会でしたら
当選は無理でした。

と、きめきめの媚を売ったところで、ストーリーの続きを

「報道か人命か」と問われれば迷わず
「報道」と答えるような深町でしたが、
先の見通しがつかずカトマンドゥの町を彷徨い
立ち寄った骨董品屋で劇的な出会いをします。

それは
ヴェスト・ポケット・コダックのモデルB。

1924年にエヴェレスト頂上を目指しながら
行方不明となった登山家ジョージ・マロリーが
使用していたカメラでした。

同じカメラは数あれど
見つかった場所が場所だけに
マロリーのものである可能性は大。

もしマロリーのものであれば
マロリーとそのパートナーであるアンドルー・アーヴィンが
世界初のエヴェレスト登頂を果たした証拠ともなり
世界的大発見となります。

思わぬ幸運にほくそ笑む深町。

早速、知り合いの斎藤(山中崇)からお金を借り
カメラを買い取ったところ
骨董屋にアン・ツェリンというシェルパと
ビサル・サルパと呼ばれる男が現れ
カメラは自分たちの元から盗まれた故売品だと告げ、
深町に返却を求めます。

事情が事情だけに渋々返却した深町でしたが、
ビサル・サルパの顔を見て
かつて日本国内で数々の登攀記録を打ち立てながら
ヒマラヤ遠征で事件を起こし姿を消した
羽生丈二(阿部寛)であることに気が付きます。

運は彼を見捨てなかったのです。

羽生がエヴェレスト単独登攀を狙っていると考えた
深町は日本に帰国後、
雑誌編集長である宮川(ピエール瀧)を説き伏せ
羽生の単独取材を取りつけます。
(もちろん羽生本人には無断で)

そして、取材で知り合ったかつて羽生の恋人だった
岸凉子(尾野真千子)と共に
再びカトマンドゥに旅立ちます。

羽生の単独登攀を撮影し
マロリーが最後に撮ったフィルムを手に入れるために。



ところが、この羽生と云う男
クライマーとしては比類なき天才ですが、
登山以外のことに関してはまるっきり使えない男だったのです。

まず空気が読めない。
他人からどう思われようが気にしない。
だから誤解されっぱなし。
でも、気にしない。

まずは今を遡ること1967年、
国内屈指の谷川岳一の倉沢第三スラブを
積雪期に登攀と云う偉業を成し遂げた際には
大事なパートナーである井上(甲本雅裕)の前で
悪びれもなく単独登攀でもいけたと豪語して
井上の顰蹙を買ってしまいます。

また、唯一兄のように慕ってくれた
山岳会の後輩、岸文太郎(風間俊介)が見ている前で
「もし遭難しパートナー(つまりは文太郎のこと)が
邪魔になれば切り捨てるし
自分が相手にとっての足手まといになれば
切り捨てられて大いに結構。」
などと持論を噛まします。

あああ、そんなこと本人を前にして云ったら
後々遭難したとき、岸は自ら命を絶つことになるぞ。
と思ったらその通りに…。

しかし、コミュ障の羽生は沈黙を貫いたため
山岳会の仲間は羽生が岸を見殺しにしたと思い込み
羽生は名前通りハブられることになります。


男は黙ってサッポロビール。

失意の中、羽生は岸の妹である凉子の面倒を見始め
いつしか2人は恋仲に。

やがて、エヴェレスト登攀に向かった羽生は
日本の涼子に首飾りを贈るとそのまま消息不明になります。

で、深町に発見されるまで何をしていたかと云うと
ちゃっかりアン・ツェリンの娘との間に子供を儲け
粛々とエヴェレスト最難関ルートである南西壁の
冬季単独無酸素登頂を目論んでいたのでした。

年老いた父親(=アン・ツェリン)を抱えた妻と
幼児と乳飲み子までいるというのに
命にもかかわる危険な登攀に挑む羽生。

そんな羽生を追ううちに深町の心境にも
変化が現れます。

なんと、羽生に影響を受けた深町は
それまでの過度にビジネスライクだった生き方を改め
感情赴くままに行動し始めるのです。

羽生なんて抜け目ないように見えて
折角、登攀中に偶然マロリーの遺体を見つけ
件のカメラを持ち帰ったまでは良かったものの
カメラの中にフィルムが入っていなかったことに
山を下りるまで気が付かなかったような男ですよ?

そんな男に追従してしまったばかりに
以降の深町はまったく仕事になりません。

雑誌社に頼まれ撮影した写真を火にくべたり


プロのフォトグラファーになると云うのはかくも過酷なものなのか…。

クライマーが集う酒場で生意気盛りの若者に酔って絡んだり
借金を重ねた上に返す当てを自ら踏みつぶしたり
商売道具も持たずエヴェレストに登って
いきなりスピリチュアルなことを始めたかと思ったら
何の収穫もなく下山したり


このお返しにてっきり深町が羽生を担いで下山するのかと思いました。

その際羽生自作のポエムを心の中で暗唱してみたり。


深町がまともに仕事をしたのは中盤までです。

なんかもう



…仕事しろ。

映画の冒頭で雪渓を転げ落ちていく遠征隊メンバーに
無慈悲にカメラを向けていたあの深町は
もうここにはいません。

映画は日本映画らしく音楽を盛り上げるだけ盛り上げて
そこに羽生のモノローグを加え
最高に感動するラストシーンに仕上げていますが、
私に見えているのは
羽生と云う天才クライマーに出逢ったが故
フォトグラファーとしての矜持を捨ててしまった
深町の姿なのです。

映画前半の深町も羽生も自分の目的のためなら
他人の気持ちなどお構いなしで邁進する男たちで
そこには怖ろしいまでに感情に欠けており
日本映画特有のじめじめしたところがなく
これはこれで面白いと思っていたのです。

ちょっと豪華なドキュメンタリーの再現映像を
見るような面白さですね。

ところが、後半は一変し、
岡田准一が雄叫びまくる姿と
泣き叫ぶ尾野真千子の姿ばかりが目立つようになり
いい加減うんざりとなります。

標高8,848mでの吹雪の映像と云い
阿部寛のナレーションといい
岡田准一の泣き顔と云い
ここぞとばかりに大音響でかかるBGMと云い
目にも耳にも全てがやかましいわ!

判ったからそこまでして盛り上げなくてもいいよ!

となってしまい終映後にはどっと疲れが…。

判るよ、深町が損得に囚われず
真のクライマーになる話だということも。

いくらフィクションでもマロリーのフィルムを
発見してはいけないことも。

しかし、こんな結末では
衝撃的な写真を撮ることと、
そうした写真ばかりが喜ばれることに疑問を抱き
葛藤の末自死を択んだ先達であるカメラマン
ケビン・カーターも草葉の陰で嘆いていることと思います。

まあ、あまり仕事に打ち込みすぎると
「ナイトクローラー」の主人公みたいになってしまいますけどね。


カメラマンならこの俺を見習えよ。

それにしても
昨年秋に公開された韓国映画「ヒマラヤ」と云い
「エベレスト 3D」と云い
ここにきてエベレスとを舞台にした映画が
続々公開されてるのは何か理由があるのでしょうか?




君を守るため そのために生まれてきたんだ

2016-02-14 22:09:00 | MOVIE
本日の映画は
またもやアクセル・ヘニー主演映画
「ナチスが最も恐れた男」



です。

ヘラクレス」の次に借りようと思ったら
もよりのGEOでは
1枚しかいないDVDが貸し出し中になっていて
1週待たされることに…

これと同じことが「パイオニア」の時にもありまして
…もしかすると、同じ活動拠点内に私以外にも
アクセル・ヘニー出演作を追っている人物がいるのではないか?
そんな気がするのですが
えっ?そうなんですか?

と云う妄想はここまでにしておき、本作は
この気合いの入っていない邦題からもお判りのように
「実録もの」です。

原題は「MAX MANUS」。
マックス・マヌスとは、
お察しの通りこの作品の主人公の名前です。

本国ノルウェーならばいざ知らず
日本ではまったく無名の人物ですので
非常に判りやすく目の引きやすい
「ナチスが最も恐れた男」と云う邦題が付けられたのだ
と、推測いたしますが
こんなタイトルで「戦争アクション」のコーナーに
置いて、DVDなんて借りる人いますか?

…あ、いましたね。
それも私以外にも。

ということでまずは映画の概要から


舞台は、第二次世界大戦中。

ノルウェー出身の兵士、
マックス・マヌス(アクセル・ヘニー)は、
フィンランドでロシア軍と戦った後、
ナチスドイツ占領下におかれたノルウェーに帰郷し
同じ世代の友人たちと共に
反ナチスを掲げたレジスタンス「抵抗運動」を
結成します。


はじめは国威発揚のため新聞を刷るだけの地味な活動だったのですが…。

やがてマックスは反ナチス抵抗勢力の中心人物として
ナチスから怖れられるようになるのでした。



というように本作は
実在したノルウェー「救国の英雄」
マックス・マヌスの活躍を描いた
実録戦争アクション巨編のはずなんですが、

その英雄を演じているのが、
あのアクセル・ヘニーですから
危なっかしくて見てらんない!
のが正直な感想です。

最初のうちはビラを壁に貼って
反ナチスを促すだけだった抵抗運動も
脇の甘さからマックスが仲間内で一人だけ
ナチスに捕えられたことをきっかけに大きく変わります。


ナチスから逃れる際、二階の窓を突き破って落下、脳震盪を起こし入院。

ナチスの厳重な見張りがつく中、
なんとか病院を脱走したマックス。

逃亡先のスコットランドのフォレストロッジ訓練所で
再会したレジスタンス仲間の
グレカス・グラム(ニコライ・クレーヴェ・ブロック)と共に
妨害工作員としての訓練を受けてからは
一気に活動が血生臭くなってきます。

と云ってもマックスらレジスタンスがやっていることは
主にナチス軍の補給船に爆弾を仕掛け沈める程度です。

ささやかな反抗です。

しかし、そんなことをしてナチス軍が
おめおめと指をくわえて見ているわけがありません。

報復としてレジスタンスたちを虱潰しに処刑していきます。

特にナチス親衛隊のジークフリート大佐(ケン・ドゥーケン)は
取り逃がしたマックスを執拗に追い続けます。


ただレジスタンスからは怖れられるだけではなく、時には職場でナンパもします。

そのくらいナチスから危険視されている
マックス・マヌスですが、

奇襲攻撃の際にはカッコよく空から飛び立ったものの
一人だけパラシュートが木に引っ掛かって降りられず
バタバタしていたところを
無事着地したグレカスに助けてもらったり


こんなドジっこマックスですから、仲間たちも放っておけません。

そのグレカスの紹介で知り合った
魅力的な勤労婦人ティケン(アグネス・キッテルセン)には
初対面の際、マックス・マヌス本人とは思ってもらえず
持っていた鉛筆で額を小突かれ、軽くあしらわれたり


恰好がこんなんだからか英雄なのに軽く扱われてしまいます。

一挙一動

危なっかしくて見てらんない(>_<)!

人物として描かれています。

例え祖国の英雄を演じようとも
アクセル・ヘニー特有の小動物感は薄れることはありません。

その後も
「風と共に去りぬ」を見て泣いたことを
ティケンにばらされグレカスから
「センチメンタルね。」と云われてすねてみせたり

アジトで何気なく弄っていた拳銃を暴発させ、
自分で大腿部と胸部を撃ち抜いたため
戦線離脱することになり


あやうく友の腕の中で息を引き取るところでした。

グレカスにぐじぐじ弱音を吐いたり


そのためグレカスと離れて暮らすことになってしょんぼり。

何度、DVDの前で頭を抱えさせれば気が済むの?!

とにかく自分から病院送りになったり
負傷してしまう回数が仲間内でも断トツに多いため
そりゃグレカスをはじめとする仲間も
マックスのことをお姫様並みに大切に扱います。

代わりに表だって活動しては暗殺され、
運よく命が助かってもナチスの拷問に屈する前に自殺し
あらゆる手を使ってマックスを守りぬく仲間たち。


仲間から離れ一人淋しくクリスマスを迎えるマックスにせめてものの贈り物をして
メッセージカード付きのお酒を送る仲間たち。いたれりつくせり。


そして、仲間が犠牲となるたびに
またうじうじ悩むんですわ、このリーダーは。

そうこうしているうちに
グレカスまでがナチスの襲撃を受け射殺されてしまいます。


こんないたずらを仕掛けるほどマックスはグレカスのことが大好き。

罪の意識に苛まれるマックスは遂に
オスローに停泊中の巨大輸送船ドナウ号の爆破を決意します。
今度は仲間の手は借りません。
死ぬ覚悟で単独での計画実行を宣言します。

この姫御乱心にレジスタンス仲間は騒然。


勢いでこう云ったものの無茶を云っているのは本人がいちばん判っているはず。

犠牲になるのは自分一人で良いと云い張るマックスに
さすがにぶちきれて手をあげるという
旧友コルベイン(クリスチャン・ルーベック)の実力行使のおかげで
マックスの単独行動&自殺行為を阻止することができ
肩をなでおろす仲間たち。

どれだけ仲間から愛されているのか、マックス・マヌス。


最高の殺し文句でマックスの行動を止めました。やるな、コルベイン。

まあ、本当のところもっとも肩をなでおろしているのは
マックス本人かもしれません。

そして、1945年1月16日
ドナウ号爆破計画が実行されます。

…ってドイツ軍兵舎に乗り込む直前、
胃の中のものをゲーゲー戻しているマックス。

もう!これだからほっとけんわ。

まさかそんなメンタルの持ち主が宿敵マックス・マヌスであろうとは
流石のナチスも思いもよりません。
(吐いたのはただの食あたりで精神的なものではありません。)

ドイツ軍兵舎内では、
ジークフリート大佐と肩が触れる距離ですれ違っているのに
まったく気が付かれることもなく
さくさくと爆弾を仕掛け無事に逃走。

ジークフリート大佐なんて何度となく
入院中のマックスの写真を見ているはずですが、
このとき、怪しいノルウェー人として職務質問したのは
コルベインだけで一緒に歩いていたマックスのことは
全く眼中になかったようです。

おかげで作戦は成功。

使用された爆弾のボディに
これまで亡くなった仲間の名前がチョークで
書き記されている辺りが泣かせます。

それからしばらく経ってヒトラー死亡のニュースが流れ
1945年5月8日、長かった戦争は幕を閉じます。

しかし、国を挙げて喜びに浸っているなか
マックスだけは終始浮かない顔のまま。

終戦を迎えても
一緒に祝杯を挙げたい仲間はもう残っていません。

一人生き長らえてしまったマックス。
(あ、コルベイン他数名も生き残っています。)

レジスタンス活動に青春の全てを費やしてきた
マックスにとって、ナチス無き今
何をして生きていけばよいか見当もつきません。

すっかり「ナチスロス」と化してしまったマックスは


この後のシーンがものすごく泣けます。


一人淋しく祝杯を挙げていると死んだ仲間たちが駆けつけます。いたれりつくせり。

失意のあまり「ひきこもり」となってしまいます。

相変わらず、ほっとけない男ですね。

ということで心配したティケンが逢いに来ると
ここぞとばかりにすねて見せたり弱音を吐いたり
甘えたり。


こんな拗ね方されたらそりゃティケンも落ちるわ。人妻だとしても。

しかし、このような事態、
アクセル・ヘニーを主演に配した時点で予想がついたこと。

実際のマックス・マヌスがこういう人物だったのかは
調べていないので分かりませんが、
ラスト・ナイツ」でのギザ・モットを
見捨てれないイトー(伊原剛志)しかり
「ヘラクレス」でのテュデウスの面倒を最後まで見ようとする
ヘラクレス(ドウェイン・ジョンソン)しかり
ヘッドハンター」での
夫ロジャーの裏稼業を知っても離縁しない
ダイアナ・ブラウンしかり
アクセル・ヘニーが演じる人物にかかわると
周りがほっておけなくなる魔法がかかってしまうようです。

そういう意味ではベストキャスティングと云えましょう。

なにしろ、ジークリード大佐が
終戦後始めて対峙することとなった実物のマックスを見て
「え?こんなのが、あのマックス?」
とあっけにとられたくらいですから。


控えめな表現をしていますが、本音は「思てたんと違う」でしょう。

見た目、レジスタンスのうちでもひときわ体が小さく
常に瞳がきょどってますからね。

とても仲間からだけでなく国王からの信頼厚い
ノルウェーきっての大物とは見えません。
ましてや、「ナチスが最も恐れた男」などとは…。


捕らわれの身とはいえ上半身裸で待っていたと思うとちょっとキモ怖いです。

まあ、エンディングロールに流れる
実際のマックス・マヌスの画像が
さらにうだつの上がらない感じなんですけどね。


これは見落とされるわ。いかにも人畜無害なお顔立ちしてますもん。

こりゃ、ナチスに捕まらなかったのも無理ないなあ
と、思いつつこの映画の感想をしめさせていただきます。


勝手にその辺にあったリンゴかじってんじゃないよ!





今日、新湊で

2016-02-14 11:01:00 | MOVIE

IT関連企業「N&S global Inc」の
CEO中原祐馬(竹野内豊)の元に
3年前に袂を分かったかつての共同経営者であり
親友だった塩谷航平から
日に何度も電話がかかってくるようになります。

しかし、忙しさを言い訳に祐馬は
電話に一度も出ることはありませんでした。

それから数日経ち
2人のことを良く知る秘書の
大場由希子(優香)にせっつかれ
ようやく航平からの電話に出た祐馬。

しかし、その電話が無言のまま切れたことから
妙な胸騒ぎを覚え、由希子と共に取るものも取り敢えず
航平の故郷、富山県新湊市を訪れます。

そこで2人を迎えたのは既に骨上げも終えた
航平の変わり果てた姿でした。

明らかにお呼びでない焼香の席で
末期の肝臓癌だった航平が新湊曳山まつりをめぐり
地元・四十物町のために奔走し、
その結果病状を悪化させ亡くなったことを聞かされた祐馬は、
遺された航平の娘、瞳(高橋ひかる)に頼まれ
資金と人手不足により隣町・西町に泣く泣く譲渡された
四十物町の曳山を取り戻そうと決意します。



ということで上映開始から早1か月。
地元ではまだまだ大ヒット中の
「人生の約束」



を見てきました。

この作品が、未だに地元シネコンのスクリーンを
日に4~5回分独占してしまうため
洋画を中心に初日にそこそこの成績しか残せなかった映画が
どんどんファーストショーやレイトショー落ちしていくのを
目の当たりにしなくてはならず
釈然としない気持ちを抱きつつも
もういい加減諦めて見ておくしかあるまいと
ようやく重い腰を上げた次第です。

まあ、判りますよ。
これだけの豪華キャストが富山に集結するなんてこと
そうそうありませんから。


映画が進むにつれていい顔になっていく主演の竹野内豊さん。

そりゃ県を挙げて
「ア、イヤサー! イヤサー!」となりますわ。
 

と、あまり気乗りがしなかった割りには
実際に見てみると
個人的には得るものがある映画でした。

これだから映画は見るまで侮れません。

監督の石橋冠氏が、
「生涯1度きりでいいから映画を撮りたい」
と云っていた映画だけに訴えかけてくるものも
大きいです。
(なので脚本も監督が兼業しているかと思っていたら
脚本はあの吉本昌弘なんですね!)


IT企業なのに畑違いの紡績会社との合併を行うなど
会社拡大の為ならどのような手段も辞さなかった
ワンマン社長の祐馬でしたが、


ちょっとでも意見すればすぐに辞表を書かされるため周りはイエスマンばかり。

親友の死をきっかけに知り合うこととなった
塩谷航平の義兄である渡辺鉄也(江口洋介)や


短髪にしたせいかやたら耳に目が行ってしまう江口洋介。

四十物町の町内会長である西村玄太郎(西田敏行)の影響を
もろに受けそれまでのビジネスライクな考えを改めます。

と云っても祐馬の心変わりは
この人なくては始まらなかったでしょう。

それが、柄本明演じる
西町の町内会長、武田善三です。


江本明の真骨頂と云うべき怪演を披露してくださいます。

曳山を巡って対立する
西村町内会長と武田町内会長の関係はそのまま
祐馬と航平の関係に置き換えることができます。

おそらく四十物町と西町の対立に関わることで
意識的ではないにしろ祐馬は初めて
自分の姿を客観的に見ることができたのではないか
と思います。

西村町内会長の語る「踊り場」の話ではありませんが、
一旦立ち止まって自分のことを客観的に見るというのは
とても難しいことです。

なかなかできることではありませんし
そういう機会に恵まれることも稀有です。

もともと心がけさえしていれば
そこたら中に機会は転がっているのですが、
自分の視点から見えるものだけを見ていると
意外と気が付かないものです。

2人の町内会長はまるで迷える祐馬のためだけに用意された
寓話のキャラクターのようです。

他人は自分を映す鏡。

他人を腐す言葉は案外そのまま自分に帰って来ることが
多いもの。

誰かに対して何か感情が動いたとしたら
それが悪意でも好意でも感じる大元の理由は
その誰かにではなく自分の中にあるものです。

武田町内会長の姿に嫌悪感を抱いても
それは祐馬にとっては
そのまま自分に対する嫌悪感でもあるのです。

そのことを私も常に肝に銘じなくては。

親友の死がなければ
四十物町との出会いがなければ
そして、武田町内会長と云う自分と
瓜二つの人物に出逢わなければ
祐馬もまた
使われることなかった「西町」の提灯の前で
一人寂しく佇む西町町内会長のようになっていたでしょう。


祐馬が受けるはずだった敗北を代わりに押し付けられたこのシーンは泣けました。

何故、武田町内会長が四十物町との約束まで破って
花山車(昼の曳山)、提灯山(夜の曳山)の両方に
拘ったのかは描かれていません。

曳山にこれだけ執着するのには
それなりの理由があるのでしょうが、
普段の生活で他人が抱える事情まで
なかなか目配りできないのと同様
その理由は最後まで伏されたままです。

たぶん監督が伝えたいのはそう云う事ではないからでしょう。

社長の顔色を覗い、強制捜査が入るまで
架空取引のことを云いだせなかった祐馬の社員同様
西町町民も武田のやり方に
全部が全部賛同しているわけではありません。

曳山に対する思いが強い曳き手であればあるほど
武田町内会長に対して思うところがあるようです。


曳山の譲渡式の間、ずっと浮かない顔の西町の曳山総代。

でも、それは武田町内会長には見えていません。

かつて祐馬が部下である沢井卓也(松坂桃李)ら
重役の内に秘めた思いに気づかなかったように。

前進前進あるのみで気が付いた時には
周りには誰もいなくなっていました。

驚くほど素直に親友の遺志を受け継いだ祐馬と
周りの意見に全く耳を貸さなかった武田町内会長。
曳山祭りの日、町中の人々から祝福を受けた
西村町内会長と
誰からも相手にされず一人ぼっちの武田町内会長。
この2つの対比は
「花咲か爺」や「こぶとり爺さん」のように
あまりに寓話的です。

「立ち止まらなければ見えない景色もある」
親友の最後のメッセージをしかと受け取ったことで
この災難から逃れることができた祐馬。
(まあ、半分ほどは時すでに遅しでしたが…)

そこが航平という友人を持っていた祐馬と
同じ町内会長でありながら西村町内会長と
敵対する関係しか築けなかった武田町内会長との違いでした。

おかげで人が変った(昔に戻った)祐馬は
親友が愛した曳山を通してつながった鉄也と
親友の仏前で語り合うまでの仲になることができました。

そこで出てくるアイテムが煙草です。


ここでの煙草のやり取りは屈指の名シーン。

今年の年明け早々
WHOが喫煙映画を成人指定するよう勧告したことが
話題になりましたが、
男同士が心でつながった時必要とされるのは煙草です。

殴り合いの後、心がつながり
その証として共に煙草を吸う
これ以上の女がグッとくる男のロマンがありましょうか。

ここにグッと来なくてこの映画、何のために見たの?
と、私は問いただしたい。

だってですよ、
イケメン2人(←ここ大事)が煙草を吸うことで
すっと心を通わすんですよ。
これを「美味しい」と云わずして何と云おうです。

私自身は嫌煙家とまでは行きませんが、
煙草の煙は身体が受け付けません。

でも、このシチュエーションは
是非とも映画史上に永久保存したいです。

無くてもいいけど
あった方が断然良いと思うんですけど、喫煙シーン。

ダメでしょうか?


あれ?
またしても論点がずれたレビューになってしまいました。

う~ん。


最後に新湊は私が住む富山市の隣の市ですが、
2012年の映画「あなたへ」を見るまで
そんな曳山祭りがあることを全然知りませんでした。
申し訳ございません。

原作者の山川健一さんのブログを読むと
本作について
「映画の撮影と同時進行でこの小説を執筆しました。
ストーリーは、映画と小説は基本的に同一ですが、
枚数が小説のほうが3倍なので、
主人公たちの出会いや別れなど、
映画では描かれていない彼らの過去についても描いています。
我が儘を言わせていただけるなら、
映画の前に小説を読んでいただければ嬉しいです。」
と書かれております。

映画の後になりましたが、
映画に描かれていない部分も多く
それを補うため原作本を読みたく
とりあえず市立図書館で検索をかけたところ
昨年の11月に発売されたばかりだからなのか
入荷されてはいませんでした。

映画公開中のこのタイミングで
在架していなくてどうするの?!

こういうところが富山なんですよね。
良い意味でも悪い意味でも。
 


家族はつらいよ 英国篇

2016-02-09 16:27:00 | MOVIE
本日の映画は
DVDパッケージの裏を見たところ
どういう繋がりがあるか判りませんが、
なんかベネディクト・カンバーバッチが
えらく褒めていた(*)ので
じゃあ間違いないだろうと思って借りてきた
「家族の波紋」



です。

2010年にイギリスで制作された映画ですが、
その翌年の2011年に公開され
ファミリー層や男性客の来場が予想された
アメコミ映画「マイティ・ソー」において
想定外に映画女子の心をがっちりつかんだ
トム・ヒドルストンの人気に便乗して
まずはWOWOWが「ジャパン・プレミア」枠で放送し
それだけでは済まされるわけもなく
今回めでたくDVDがリリースされました。


英国男優総選挙2015第1位。実在する俳優ですが、ここ日本では二次元の住人。

と、云っても旧作に落ちてからレンタルしております。
ですから、今さら何エラそうなこと書いてんの?
と云う話ですが、
まずは本作のストーリーを。





舞台はイギリスの南西部のコーンウォール半島の沖合いに
位置するシリー諸島。

まもなくエイズ関連のボランティア活動のため
貧困、飢餓、 病気、紛争に苦しむアフリカに旅立つ
エドワード(トム・ヒドルストン)。


トム・ヒドルストンは貴族の家系だそうです。本作でも育ちの良さが滲み出ている。

良家の子息として
これまで何不自由ない生活を送っていたエドワードの
決断に家族は少なからず動揺します。

そりゃそうですよね。
ここまで大きく育てた息子がいきなり
遠く離れた途上国で11か月間現地ボランティアですよ。

でも、エドワードがしようとしていることは
善意の社会貢献だけに
面と向かって反対するわけにもいきません。

息子の意思を受け入れた母親の
パトリシア(ケイト・フェイ)は
シリー諸島にある別荘に家族を呼び寄せ
息子が異国へと旅立つまでの時間を
一緒に過ごそうと計画します。

母親の招待に応えエドワードの姉である
シンシア(リディア・レオナード)は
早々に島を訪れ、母と共に弟を温かく迎えますが、
エドワードのアフリカ行きに反対する
父親のウィルだけが姿を現しません。

父親不在のまま
料理人として雇ったローズ(リディア・レオナード)と
友人である絵描きの
クリストファー(クリストファー・ベイカー)を交え
短い休暇を過ごす一家。

しかし、別れの日が近づくにつれ
お互い心に抱えた不満や不安が表面化されて…。


というお話です。

映画が始まって間もなく合流する一家。


この映画は終始こんな「イギリス」って感じのお色合いで進みます。

行き来にヘリコプターを使うような土地に
別荘を持っており
(シリー諸島への行き方は
他にスカイバスとフェリーがあります。)
1週間の滞在中、臨時の料理人を雇えることからも
この家族かなり裕福なようです。

ヘリコプターなんておそらく一生乗ることもないし
別荘なんてどんな人が買うのかも分からない私にとっては
なんだかもう別世界。

ヘリの発着場から別荘までの道のりを
先に到着していた母と姉は自転車で
就いたばかりの弟は軽トラックの荷台に乗って
向うのですが、
この車がまたブリティッシュで
瞬く間にこの映画に心鷲掴みされてしまいました、私。


これ乗りたい。

そして、別荘での短い生活。
適度に使い込まれ歴史を感じるものの
清潔感漂う建物です。


ここ住みたい。周りには何もなく移動手段は徒歩か自転車。

憧れのイギリスライフがここにありますよ!

ただし、別荘の内装はやや小さめに作られているのか
187cmもあるトム・ヒドルストンには
ちょっと使い勝手が悪い感じ。

ドアをくぐる際にはぶつけないよう
いちいち頭をひっこめなければなりません。


到着早々ドアの上枠で頭をぶつけます。これに懲りて以降は一遍もぶつけません。

建物の作りにあわせ身体を縮めなくてはならないこの感じは
身の丈にあった人生を歩んでいる母親や姉とは違い、
将来の指針がぶれまくっており
家族に対してもどこか一歩引いたところがある
エドワードの姿をそのまま表しているように見えます。

でも、まあ、家族に愛されて育った下の男の子って
こんな感じかな?という気がしないでもありません。

1週間の休暇の間
クリストファーから絵の描き方を習ったり
野外でみんなで食事をしたりして
ゆったりとした時間を過ごす家族。

家族内に生じた問題に踏む込む事を躊躇しまい
時間だけがむなしく過ぎていきます。


楽しいはずの時間もずっとこんな寒々とした感じです。

内心は家族への相談もなく勝手にアフリカ行きを決めた
エドワードに苛立っていたり
電話しかかけてこず一向に姿を見せない父親に対し
不満を溜めこんだりと一発触発状態。

事の発端であるエドワードといえば
母や姉には腫れ物に触るような距離でしか接しない一方で
違う環境で育ってきたローズに興味津々。


一見草食系に見えて中身は肉食。ロールキャベツ系男子だったエドワード。

ローズと食卓を囲みたいなどと云いだして
雇用者として使用人との間に一線を引いている
母親と姉を驚かせます。


そういう話を本人がドアの開いた隣の部屋にいる状態で話すところも凄いです。

そんな発言を家族の前でしておきながら
付き合っている彼女は別にいて
本来は別荘にも連れてくるつもりだった
エドワード。


隣のキッチンにローズがいるところで恋人の話をしてしまうあたりの神経も…。

勝手にアフリカ行きを決めたことで
恋人のクロエとの関係も相当拗れているのに
あまり深く考えていないようです。

11ヶ月なんて大した時間じゃないだろ?
だって僕たち1年半も付き合ってるんだよ?
と軽く考えています。

おいおい。

このエドワードのいいところのお坊ちゃんらしい
のほほんとしたところが
姉のシンシアにとって愛おしかったり癇に障ったりするようで
同じ一姫二太郎の私としましては
とても共感を覚えるところです。

やがてシンシアの鬱屈していた怒りは
ローズとクリストファーを交えた
レストランでの外食の際に小さな爆破を起こします。


このレストランも他に客が誰もいなくて寒々しいのです。

出されたホロホロ鳥の料理が生焼けだったことで
店にクレームを捲し立てるシンシア。
本当に怒っているのはシェフに対してではなく家族です。
その姉の怒りに対処できず一人席を立ち隠れて涙ぐむ弟。

周囲に気づかい過ぎて自分の感情を抑え込んでしまうのは
エドワードの良いところでもあり悪いところでもあり。


これは姉としていやでも心配になるわ、弟のこと。

これだから育ちの良い子は…。

思いをぶちまけた姉は姉で眠れないまま夜泣きぬれて
翌朝心配した弟に起こされるし。


姉と弟という距離感のもどかしさ。

その後も本音を溢してしまう姉と
そんな姉を黙っていなすしかない弟の仲は
何度も決裂の危機を迎えるのですが、
最終的には弟が折れて元に戻ります。

ていうか弟の仲直りの仕方が
いちいちかわいすぎて血吐くわ。


ん?パペット?

まずはアナグマのパペットを通して謝罪し
姉の機嫌が判ったところで
ドアの隙間から半分だけ顔を出してみせるこの高等技術!


ぎゃあああああ。こんな弟どこに行ったら売ってますか?

ここに天使が!天使がいます!

エドワードのあざと可愛いは
他にもこんなところに発揮されています。

それが萌え袖!


何だこの袖口。20cm以上ない?

流石「二次元の住人」だけあって
萌えシチュエーションをきっちり抑えています。

そりゃあ劇場公開すっ飛ばしてもDVDリリースされるわ。

ようやく姉弟が仲直りできたと思ったら
今度は母親がヒステリー発散中です。


電話越しに父を糾弾する母の罵声を聞きながら食事をとる姉と弟。

あ~、判るわ、この家族ならではのいたたまれない感じ。

母と息子
母と娘
姉と弟
と云う家族観の距離感もそうですが、
他人との距離感も絶妙です、この映画。

家族だけだとギスギスとなりがちなところを
親しいとは云え他人であるクリストファーの存在が
父親の不在を上手くカバーし癒していくのがいいです。


これが実の父親からの言葉だとここまで素直に受け止められるかとどうか。

この家族とは住む世界が違えども
家族構成(父、母、姉娘、弟息子)が同じだからでしょうが、
かなり共感するところの多い映画でした。

まちがってもキャビアを「シンプル」な食事とは云いませんけどね。



(*)
ベネディクト・カンバーバッチはトム・ヒドルストンと共演した
「戦火の馬」(2011年)のプロモーション取材時に
「『家族の波紋』は素晴らしい映画だよね」
と語っていたそうで、この時の発言が
この映画最大の宣伝文句として使われています。