アトリエ天藤一級建築士事務所 ATELIER TENDO

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建物の構造形式

2007-11-14 | コラム 

U071114 画像 六甲山麓の某邸です。

秋が深まり、奈良国立博物館の正倉院展が終わりました。
今回も盛況で入場者数は過去最高、24万人以上と報道されていました。
私は今回も残念ながら・・・

ところで正倉院といえば校倉(あぜくら)造りですねえ~!
そう習ったのは小学生だったか中学生のときだったか?
総ヒノキ、寄棟造り。
三倉に分かれ、北倉と南倉は三角形の校木(あぜき)を組んだ校倉造り。
中倉は厚板を組んだ板倉造りから成ります。
科学的調査により、校倉造りでも他の木造建物でもその温湿度差に大差がないことが判明したとのことです。(YOMIURI ONLINEによる)

今回は建物の構造形式について材料別に整理しました。

建物の骨組みのことを構造と言います。
住宅やマンションなどの建築物で代表的な構造を材料で分けると、木造鉄骨造鉄筋コンクリート造などが一般的です。
建築の規模用途場所地盤強度費用対効果など総合的に判断してどんな構造にするかを決めます。
耐震強度や耐用年数、建築費などを単純に比較することは難しいですが、建築費は概ね、木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造となります。

主な構造形式(建物の重さや地震の力などを伝える方法)の特徴を材料別に分けると・・・

■木造 
土台、柱、梁、桁などを木材で作る建築物。
他の構造と比べると建物の重量が軽い。そして単価が安い。
金物や筋交いや合板等によって適切な補強をすれば耐震性もある。
建築規模に制限がありますが、集成材を用いて大規模な建物も作られています。

◆軸組構造(在来工法)
日本の伝統的な工法です。
柱・梁などを用いて組み立てる。
地震などの横からの力には筋違いを入れた壁(耐力壁)で抵抗します。
壁を主体にする構法に比べると間取りや、窓・出入口を採りやすい。
増改築など対応しやすい。 
 
◆ツーバイフォー(枠組壁工法)
北米やカナダで行われている工法。
バルーン工法、プラットフォーム工法などとも呼ばれる。
2インチ×4インチの材を用いた枠組みに合板を打ち付け床や壁を作る。
在来工法に比べて作業が容易で工期が短縮できるといわれている。

■鉄骨造(S造) 
柔軟性と粘りがあり、地震に強いといわれている。
不燃材(但し、500度以上で強度は半減する)
強度があるので広い空間を作れる。
ラーメン構造、ブレース構造、トラス構造など。

◆ラーメン構造
柱と梁の接合部は固定している。
間仕切り壁や開口部を設けやすい。

◆ブレース構造
柱と梁の接合部を固定してしまわずに、筋交(ブレース)などで横からの力に耐える。

■鉄筋コンクリート造(RC造)
鉄筋は引張る力に強く、粘りがある。
コンクリートは圧縮力に強い。
両方の特徴を生かして組み合わせた構造です。
コンクリート(アルカリ性)が鉄筋が錆びるのを防ぐので建物の寿命が長いと言われている。
木造に比べてかなり強固で地震の揺れにも強い。
重量が重いことは長所であり、短所です。
(遮音性、熱容量(熱をためる能力)が大きい)
技術の進歩により30階建て以上の高層建築にも用いられています。

◆ラーメン構造
柱と梁を一体と考え、地震力を処理する。
鉄筋コンクリートと言えばラーメン構造を指すほど一般的。

◆壁式構造
柱梁などの変わりに、壁で構造体を支える。団地などでよく用いられる。

■鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)
鉄骨で柱や梁等の骨組を組み、その周りに鉄筋を配筋してコンクリートを打ち込む構造。
超高層建築に用いられることがあります。
鉄筋コンクリート構造と鉄骨構造の長所を兼ね備えていると言われていますが、疑問の声もあります。

おまけ
■木造建築

◆組積造
柱と梁で屋根を支える「架構式構造」に対して、建材を積み上げて壁面をつくり、屋根、天井などを支える構造を指します。ログハウス(丸太小屋)や校倉造 (あぜくらつくり)は木材の組積造です。

◆ドーム構造
出雲ドーム 木造ドームとしては世界最高の高さ。集成材によるドーム。

◆アーチ構造
橋ですが、錦帯橋が有名です。


フランク・ロイド・ライト 2

2007-11-07 | コラム 

ライトは、「有機的建築」の理想を追及し92歳で亡くなるまで多くの建築作品を残しました。
世界の近代建築が、機能や合理性を求めている建築の流れの中で、「有機的建築」は誤って理解されたこともあったようですが、基本的にモダニズム※の流れをくむ建築です。

モダニズム建築(Modernism Architecture)
19世紀以前の様式建築を批判し、市民革命と産業革命以降の社会の現実に合った建築をつくろうとする近代建築運動により生まれた建築様式。
新しい建築を求めて各国でさまざまな試行錯誤が繰り返され、国を超えて大きな運動になっていった。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ライトが巨匠と賞せられる所以をここに記しておきます。

 彼の建築家としての重要性は、住宅作家として、人々の生活の拠点を作り続けたことでしょう。もちろん、住宅以外の公共的建築にも腕を振るったのですが、傑作の多くは住宅作品であったのです。
 
ライトは、1910年までの第1黄金時代には「草原住宅」を確立しましたし、1936年以降の第2黄金時代には「ユーソニア住宅」を次々に建てて、人間性豊かな住生活の保証に寄与したのです。
「草原住宅」というのは、アメリカ中西部の草原地帯にあって、住宅は大地に根を張り、地を逼うように創られて、自然と一体となることを目的とした住宅です。
また「ユーソニア住宅」というものは、一定の型こそ存在しませんが、「合衆国に生をうけた人々は、貧富の違いに関わりなく、豊かな生活をする権利がある」として、低廉な小住宅を設計していった彼の作品の総称です。ライトが、住宅の経済性のために、積極的にプレファブ化と取り組んだ事実は、未だよく知られていないことのようです。

 ライトは無味乾燥なビルの林立する近代都市を嫌っていました。
人々の住まいは1エーカーの敷地に1家族が住むべきだとも提唱しました。
人間生活の豊かさとは何かについて、真摯に取り組んだが故に、ライトは巨匠であり、偉人であり得たのです。

 自然の破壊、人間性の欠落が問題になっている昨今、ライトの主張は重要な意味をもってわれわれに迫ります。
機能性の追求のみで豊かな人間性は保証されないとして、「有機的建築」の理想を実践した彼の設計態度は、いまこそわれわれに、大きな指針と啓示をあたえてくれるものというべきでしょう。

出典:ヨドコウ迎賓館 見学の栞「F.L.ライトについて」 日本大学教授 谷川正己 抜粋

人間的な巨匠に興味が湧きましたか?


フランク・ロイド・ライト

2007-11-07 | コラム 

Garelly1a 今日は良く晴れた気持ちの良い秋の日です。

今回は芦屋の重要文化財、淀川製鋼所迎賓館(ヨドコウ迎賓館)を設計したフランク・ロイド・ライト(1867- 1959)について書きました。

私の市に遺作がある、超ビッグな建築家で、恐れ多くてすっかり後回しになっていました。

ライトはアメリカの建築家です。
ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと共に「近代建築の三大巨匠」と呼ばれます。
彼らより20年ほど早く生まれたライトの建築は、自然とのかかわりを意識した「有機的な建築」、幾何学的な装飾と流れるような空間構成が特徴です。
浮世絵の収集でも知られることから、建築スタイルも日本の文化や建築の影響を受けていると思われます。
プレイリースタイル※という住宅で知られるようになりました。

プレイリースタイル(草原様式)
北米の伝統的な住宅様式。
建物の高さを抑え水平線を強調、各部屋を一つの空間としてゆるやかに繋いでいる。
ロビー邸(1906年)はライトの代表的プレーリースタイルの作品。

日本では旧帝国ホテルや旧山邑邸住宅※の設計者として有名です。
余談ですが、武庫川学院(武庫川女子大学)甲子園会館(旧甲子園ホテル)はフランク・ロイド・ライトの弟子、遠藤 新が設計しました。ライトの面影が残る建築です。

芦屋市の旧山邑邸住宅※はライトが設計した建築物としては、日本に完全な形で現存する唯一の作品です。

旧山邑邸住宅
現・ヨドコウ迎賓館(淀川製鋼所迎賓館)について

国の重要文化財で、芦屋市街を一望できる南向きの斜面に建っています。
大正時代以降の建造物として初めて、かつ鉄筋コンクリート建築として初めて重要文化財に指定された建築物です。

敷地の高低差を生かして、最も低い南端に玄関を設け、斜面に沿って階段状に部屋を配置しています。
全体としては4階建てですが、すべての棟が地盤から1階または2階建てで、自然が近くに感じられます。
テラスからのロケーションがすばらしいです。
大谷石や幾何学的な文様が、人に優しく、暖かく感じられます。
周辺の自然(土地)と建物が一体化して、まさに有機的建築です。

参考

ヨドコウ迎賓館のHP (画像をお借りしています)
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 「フランク・ロイド・ライト」「有機的建築」など


自然素材と暮らし

2007-11-01 | コラム 

1033 秋が深まって、近くのビルの公開空地の銀木犀が甘い香りを漂わせています。
もう11月に入ってしまいました。

子供の頃、秋の夜長は、ふと見上げた天井板のシミがおばけに見えたりしたものです。

そして11月の足音を聞くと、家族総出で障子貼りをしました。
水はもう冷たく感じるのですが、障子のサンはタワシと水で洗うと見違えるように綺麗になって、白い和紙が貼られると、お正月が待ち遠しかったものです。
(我が家の障子は今日まで10年以上張り替えていません。わ~~!)

いつも季節や自然素材とともにあった暮らしは、もはや郷愁になったでしょうか。

私は、住宅の建築材料を選択するにあたって、フトコロ事情が許す限り、ムクの木や土壁や紙クロスなど、自然素材を選びます。

自然素材は値段が高いし、腕の良い職人さんも減った。
ムクの木は湿度の関係でヒビや反りが出るし、品物に微妙なばらつきがあって、クライアントからクレームが出やすい。
などの理由で、敬遠されがちでした。

少数だったホンモノ派ですが、近頃は、「おやっ? まてよ・・・」と、安心・安全・やすらぎを求める流れが加速して、ホンモノを使いたいクライアントが非常に増えています。

(残念なことに、ムクの木材などにも妨カビ剤、殺虫剤などの薬品加工され、ラベルやスタンプで表示された部分が加工の段階で消えていることもあるので、自然素材だからと言って、油断はできませんが)

住宅の高気密・高断熱化が普及し、エアコンで暑さ、寒さ、高湿度による不快感をしのぐことは当たり前になりました。
けれど、高温多湿の日本の住まいは、自然の恵みである通風と日照は不可欠です。
それは人だけでなく、素材にも大切なことです。
むやみと材料を化学薬品を使用することも避けられます。
それに加えて地域の気候風土、たとえば、日射しの強い地域、強風が吹く地域、豪雪地帯、などその地域の固有の気象条件があり、その厳しい気象条件に対応した住宅のスタイルを踏襲していくことも忘れてはならないことです。

たしかにムクの木材は、節があったり、反ったり、ひびが入ったりします。
床材に使用すると季節によって少し隙間が空いたり木材が反ったりすることがあります。
杉や桧などのムクの素材は外気が乾燥しているときには湿気を出し、逆の時は湿気を吸い込む。
呼吸しているのです。

それらを踏まえたうえで、神経質に見かけの美しさにこだわり過ぎないで、自然素材を利用してください。
そして、クライアントに暮しの奥行き・情緒を楽しんでいただけると良いなあと思っています。

過去の住宅設計ノート 「自然素材」を短く改めました。