る。さて、これで挨拶はおわりだ。話を切りだされる前に言っておくが、答えはノーだぞ」
結晶群がかずかにきらめいた。「おお、ジェイコブよ! その若さにして、きみはなんとすぐれた洞察力の持ち主であることか! わたしが連絡を入れた理由をすでに推し量っているとは、きみ
の洞察力は賞賛に値しよう!」
ジェイコブはかぶりをふった。
「お世辞はぬき、巧妙にことばでくるみこんだ皮肉もなしだ、ファギン。ぼくと話をするときは、ふつうの英語を使ってほしい。きみと話をしていて煙にまかれまいとすれば、そうしてもらうほ
かないからな。それに、ぼくがどうしてノーと言うのか、きみにはよくわかってるはずだ!」
異星人は体を揺すった。肩をすくめるまねをしてみせたのだ。
「おお、ジェイコブ、わたしはきみの意志の前に頭をたれ、きみたちの種族がこのうえなく誇りに思っている、大いなる率直さをもって話をすることにしよう。きみにぶしつけなたのみをお願い
しようとしたのは、たしかに失礼なことだった。だが、こうしらには……きみがことわるのは、過去の特定の不快な──それでいて、のちにはそうすることが最良であった
と判明したできごとに起因しているのだろうが……この話はとりやめとしよう。
かわりに、きみたちの元気のいい類族、〝イルカ〟の発達について、きみの研究の進展ぶりを訊いてもかまわないだろうか?」
「ああ、研究のほうはしごく順調にいってる。きょうはひとつ、壁を越えた」
「それはよかった。きみの力なしには、それは実現しえなかっただろうとわたしは確信している。きみの研究は、そこでは必要不可欠だそうではないか!」
ジェイコブは相手の言わんとするところをはっきりさせようと、ひとつ頭をふるった。いつのまにかファギンのやつに、またもやイニシアティブをとられてしまっている。
「まあ、初期にウォーター・スフィンクス事件の解決に貢献したのは事実だがね。あれ以来、ぼくの役割は、そんなに特殊なものじゃなくなっている。最近ぼくがここでしたようなことは、だれ
にだってできることさ」
「おお、そんなことはとても信じられない!」
ジェイコブは眉をひそめた。残念ながら、それは真実なのだ。そして、これから先は、この知性化センターにおけるおれの研究は、ますますルーティーソになっていくだろう。
おれよりイルカ心理学にくわしい百名の専門家が、早く研究に加わりたくてうずうずしている。センターはおそらく、ひとつには功績に報いるためにおれをとどめておくだろうが、はたしてお
れは、ほんとうにここに残りたいのか? イルカと海は大好きだが、このごろでは、不安が高まるいっぽうだ。
「ファギン、しょっぱなに無礼な言いかたをして悪かった。き
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