しかし、農業の企業化は難しい。「サイゼリヤ革命」(柴田書店:山口芳生著)には、サイゼリヤの自社農場がなかなか黒字化できないことが書かれている。作物は生育にかかる時間が長くデータの蓄積に時間がかかること、せっかく効率的な作業のできる畑を作っても台風の襲来などでダメになってしまうことが農業の難点として挙げられていた。
また最近、日本でも農作業に外国人労働者が使われることがある。しかし、「待遇や制度の面で受け入れ態勢の評判は悪く、日本を見限る外国人が増えてきた」(「もう、ここには来ない…日本を見限る外国人労働者」2014/7/29 日本経済新聞 電子版 )と、日本での外国人の労働環境に対する評判は悪いようだ。寛政のころ、農村人口の減少に悩んでいた武蔵国は、信濃や越後の国から奉公人を呼び寄せることで農村人口を増加させようと、彼らを雇い入れる際の手続きの簡素化などを求めていた。実際、現在の鴻巣市にあたるところの名主、福島幸作は「越後国にでかけ、大勢の奉公人を連れてきて村々で耕作にあたらせたが、しばらくすると給金も高くなり、また風俗も乱れてきたので取りやめになったという」(「埼玉県の歴史」 山川出版社:田代脩、塩野博、重田正夫、森田武 P219)。これは、江戸時代の「外国人労働者」問題といえ、現代の外国人労働者問題と共通するところがある。この江戸時代の一件をみると、海外でも批判の多い、「外国人技能実習制度」を悪用して低賃金で外国人を働かせようなどというやりかたは早晩行き詰っていくだろうと思う。
農業を「企業化」するといっても、肝心の労働者が集まらなければ机上の空論である。もっと足元から議論したほうが良いのではないか?
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・吉田清治氏の済州島証言の裏付けが取れなかったと朝日新聞が「訂正」したことで、日本には「性奴隷(従軍慰安婦)」などなかったとする向きがある。しかし、Newsweek日本版 2014/4/22号の記事「ナイジェリアから売られる性奴隷 SEX SLAVE PIPELINE」は、ナイジェリアから人身売買でイタリア連れてこられた売春婦のルモセ。別に暴力的な連行ではなかったからといって日本の「性奴隷(従軍慰安婦)問題」がなくなるわけではないだろう。これも外国人労働者問題と同じ、海外から注目される人権に関わる問題だ。
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