goo blog サービス終了のお知らせ 

東京パリ日記

パリ日記第2章、終了。東京生活、再開。

『最強のふたり』

2012-06-22 00:54:42 | シネマ・アート
20th アニバーサリー フランス映画祭2012

20周年といいつつまったく特別感のない、むしろ地味な開幕でしたが、
なにはともあれ、今年もフランス映画祭開幕。

今年のオープニング作品『最強のふたり』は東京国際映画祭のグランプリも獲ってる作品。
その時は見逃したので、今回こそはと楽しみにしてたのだ。

いやあ、見てよかった。
首から下が麻痺した大富豪と、前科もある失業者。
例え近所に住んでいても、普通なら交わることのない二人の人生。

でも実はこのふたり、ものすごく違うようでいて似たもの同士なんだよなあ。
金持ちだとか、移民の子であるとか、諸々の属性はどうでもよくて、
1人の人間として何を楽しみ、何を大事にし、何を憎み、何を欲してるか。
それが重要。

劇場公開になったらまた見たい!

『最強のふたり』《Intouchables》 2011年/フランス
監督:エリック・トレダノ / オリヴィエ・ナカシュ

『食料品屋の息子』

2012-06-09 00:12:54 | シネマ・アート
フィルムセンターで開催中のEUフィルムデーズ2012
マイナーな国の映画も見られる貴重な機会。なんだけど、やっぱりフランス映画見ちゃった。

『食料品屋の息子』《LE FILS DE L’ÉPICIER》
2006(フランス)(監督)エリック・ギラド

それにしてもヒットしなそうなタイトルだよね(笑)原題直訳なんだけど。
途中すごくデジャヴュ感があったんだけど、どっかで見たっけな…。

上映後の解説によると、フランスでは2007年夏に公開されたそうで、
通常、夏に公開される映画は娯楽大作が多くて、こういう作家系映画は客が入らないというのが定説だったそうなんだけど、
その定説を裏切ってヒットとなり、この作品以降、同じ系統の映画が夏にも公開されるようになった、
そういうきっかけを作った映画だとのことでした。

大都市リヨンの暮らしと、山々に囲まれた田舎の暮らし。
父の入院でひさしぶりに帰った実家のある街は高齢化と過疎化。
商売も人間関係もぎすぎす。

こういう、ニューマンな物語をじめっとした感情に帰結させるんじゃなく、
からっと爽快にすらしてくれるフランス映画の感性っていいよなあ。
よく感じることなんだけど。

『ミッドナイト・イン・パリ』

2012-06-05 02:39:39 | シネマ・アート
楽しい映画だった!

『ミッドナイト・イン・パリ』
ウディ・アレン監督 2011年 スペイン・アメリカ

これはパリの観光ビデオか何かですか?というような始まり。
パリが好きでしょうがない主人公と、アメリカ以外に興味関心のないフィアンセとその両親。
登場するいかにもWASPな「ザ・アメリカ人」たちの描き方が皮肉たっぷりで、
見事にいらっとさせてくれるよねさすがウディ・アレン監督(笑)

パリで学校通ってる時、イメージを裏切らないいかにもなアメリカ人たちがいっぱいいたのでね。
同じ街にいてもそれぞれ見えてる景色、世界が違うんだよね。

それにしても1920年代のパリの芸術家の集合っぷりはすごいね!有名人だらけ!(今もそうなんだろうけど)
あの時代にタイムスリップして彼らと会えたらいいよなあ。
でもいつの時代も「昔は良かった」という懐古趣味は共通。
昔ではなく今、これからを生きなくてはというのもまた大事なメッセージ。

名を残したアーティストたちの描き方がまたおもしろくて、
新たなキャラが登場するたびに笑いが起きる感じ。
それに加えて全編パリなので「あれはあそこだ!」とか「あれはあの辺かな?」とかいちいち楽しい。
ちょっと懐かしくなったよパリ。

出演が話題になったカルラ・ブルーニ元大統領夫人はロダン美術館のガイドとして登場。
この前の新大統領就任式で見たときはちょっとむちっと太めだったけど映画の中ではきれいだった。

映像って残酷…。



それでも恋するバルセロナ [DVD]ウディ・アレン監督



人生万歳! [DVD]ウディ・アレン監督

『ル・アーヴルの靴みがき』

2012-06-01 22:37:33 | シネマ・アート
このぎすぎすした現代のみんなが見たらいいのに!って思った。
いい映画だったー。

『ル・アーヴルの靴みがき』
アキ・カウリスマキ監督 2011年/フィンランド・フランス・ドイツ

フランスの北の港町ル・アーヴルで靴みがきをして暮らすマルセルと隣人たちのゆるくてあったかいつながり。
密航のコンテナから逃げだした少年をどう受け止めるのか。
説明や説得なしに、みんながゆるく同じ側に立っている。
そこがすてきだった。

国や警察っていう団体から見ると、密航者は犯罪者で"保護"して送還すべき存在なんだろうけど、
困っている人がいる時に、当たり前のように手を貸せたり、味方になったりできる。
「規則だから」「法律だから」でばっさり切らない、切れない人たち。

そして最後にマルセルと妻に大きなサプライズ!

なんだろ、現実には、難民問題とか、移民問題とか、何も解決したわけじゃないんだけど、
でも、大きな問題は解決できなくても、日々の時間をどうステキに暮らしていくかだよね。
そこにはゆるいつながりの存在が大きいんじゃないかなと思った。
移民も難民も、ざっくり言えば、同じ時にル・アーヴルにいる人間同士。
いつも仲がいいってわけじゃないご近所さんも、困った時には気遣い合うゆるいつながり。
「絆」という名の縛りではなく、もっとゆるーく、付かず離れず許容し合う。存在を確認し合う。

良いことをした人には必ず良いことが待っている、
そう信じられそうな、素敵な映画だった。おすすめ。




街のあかり [DVD]アキ・カウリスマキ監督

川内倫子展 照度 あめつち 影を見る

2012-05-30 21:33:25 | シネマ・アート
川内倫子展 照度 あめつち 影を見る
2012年5月12日 ( 土 ) ~ 7月16日 ( 月・祝 )
東京都写真美術館

色合いが好きなんですよね。
あと、なんということはないものの切り取り方。

今は携帯やスマホで誰もがカメラを持ち歩いてて、
しかもおしゃれ風な加工も簡単にできるので誰もがある意味"フォトグラファー"。
それっぽい絵になる写真を撮るのはそんなに難しくなくなってる。

でもこの写真展で、「やっぱりちがうな」と思った。
普段まわりにある何気ないものだけど、見えてないものがたくさんあって、
写真によって存在を思い出すもの、気づくことがあるのがいい。
手が加えられすぎてないのがいい。

で、こういう写真展のあとは自分も写真撮りたくなって、撮ってみてがっかりするパターンね(笑)

写美では今年もまもなく世界報道写真展の季節。

世界報道写真展2012
2012年6月9日 ( 土 ) ~ 8月5日 ( 日 )

こちらも楽しみ。



照度 あめつち 影を見る


Illuminance

KATAGAMI 世界が恋した日本のデザイン

2012-05-28 00:11:57 | シネマ・アート
KATAGAMI 世界が恋した日本のデザイン もうひとつのジャポニスムStyle

KATAGAMIとは型紙。着物などの生地を染めるために使う型紙。
かなりの数がヨーロッパやアメリカに渡り、現地のアートに影響を与え、取り入れられ、咀嚼されているその流れや作品を紹介する展示。

型紙として見ると、とっても日本的な柄なわけですよ、花鳥風月とか、江戸小紋にありそうな文様とか。
それがアール・ヌーヴォーやアーツ・アンド・クラフツに取り入れられて、
今では日本でも人気の現代のリバティ柄にたどり着く。つながってる。

型紙って、本当に見事に作られていて、
こんなに細かく美しい文様を切り抜いて作れる日本の職人さんたち凄すぎ!
って思った。これは彼らには無理だろうなと(笑)。

で、型紙と並列の形で影響を受けた作品が展示されていて、
例えばこれまでアールヌーヴォー単体で見てたときにはとても"アールヌーヴォー的"に見えていたものが、
日本の伝統的な絵柄がどんな風に活かされているかがよくわかる。
すごく日本的だと思ってたものが実は普遍的??みたいな発見。おもしろい。

中には日本の型紙の柄ほぼそのままじゃん!っていうテキスタイルもあったりするんだけど、
色の組み合わせが独特だったり、技術的品質的にすばらしかったりで、
そこにはパクリレベルではない新たなアートなんだなあと納得する感じ。
色彩感覚って、すごくお国柄出るよね。

図録も解説が充実してて勉強になりそう。

ベルギーやドイツのポスター、よかったなあ。
ショップがもっと充実してたらなおよかったのに…。

東京での展示は5月27日で終了。
京都、三重に巡回するようです。

これちょっと欲しい。

こども文様ずかん

シャルロット・ペリアンと日本

2012-05-24 00:40:12 | シネマ・アート
シャルロット・ペリアンと日本
2012年4月14日(土)~2012年6月10日(日)
目黒区美術館

「20世紀の建築とデザインに画期的な刺激をもたらしたシャルロット・ペリアン(1903-1999)は、巨匠ル・コルビュジエとその従弟ピエール・ジャンヌレとの共同作業を経て、建築とインテリアに数々の優れた家具を残したフランスの女性デザイナーです。1940年の初来日以降、たびたび日本を訪れたペリアンは、日本を愛し、また多くの日本人に愛されてきました。
本展では、戦前戦後を通じて日本のデザイン界に多大な影響を与えたシャルロット・ペリアンと日本の関係に注目し、彼女の功績を振り返ります。」(HPより)

ペリアンと日本の関わりは坂倉準三(東京日仏学院の建築家でもある)の役割が大きかったことが紹介されていて、
「新愛なるシャルロット」「新愛なるサカ」と日仏間でやり取りされる手紙も何通も展示されてた。
いやもちろんフランス語です。
直筆、読めない。。特にフランス人の書くフランス語。

日本でのペリアンの果たした役割や、彼女が受けた日本の影響の大きさはもちろんだけど、
私は戦時下にあった当時(1940年頃)であっても、こういう交流が脈々と続いてたんだなあと、
そこにじんわり感動した。
やっぱり文化やアートはいいな。

言われて気づくけど、定形化された畳や襖が使われた日本家屋の造りが、
デザインの工業化、モジュール化に活かされる。
BHVの金属パーツ売り場で買えるもので組み立てられる本棚とか、
組み立て方の図とかまるで現代のイケア!

すごいな、つながってるな。

旧都庁の知事室の内装もペリアンが手掛けたそうなんだが、
棚や机は移転に伴い破棄された模様…ってなんてもったいない!
現在の知事室はどんななんですかね。主が主だから期待してないけど。

結構じっくり見れる展示なのにがーらがら。
平日だったからだと思いたい。6/10まで。


シャルロット・ペリアンと日本


シャルロット・ペリアン自伝

『別離』

2012-04-26 20:03:54 | シネマ・アート
『別離』
(製作・監督・脚本:アスガー・ファルハディ 2011年/イラン)

最初から最後まで、ハラハライライラドキドキ。
緊張の映画だった。

イランという国の社会背景、宗教的背景はあるけれど、
夫婦、親子、家族、人間関係の複雑な絡まり方とか、格差社会とか、守りたいものとかプライドとか、
実はどこの国の誰にだって、共感したり、眼をそらしたくなったり、考えさせられたりする話なんだと思う。

はぁー、なんかもう、人間って。
何とも言えずもやもやとしたものを引きずる映画だった。
ズシリ。

最後の最後になって音楽が流れて初めて、
ああこんなに緊張し続けてたのは音楽すら許されずひたすら人間の性とかエゴを見続けていたからかも、と思った。
安らぎの余地もなく。(1か所だけ笑った)

私は今回、特定の登場人物に特別共感したりすることなくニュートラルな感じで観た気がする。
でも私の隣の席で観てた女性は最後号泣って感じだった。
何かあったんだろうな、すごく響く、自分の経験とか状況とか。


脱線するけどペルシャ語でもありがとうって「メルシー」なのね。
あと、もしもしが「アロー」だった。
と思ってちょっと調べてみたらペルシャ語にはフランス語由来の単語がけっこうあるみたい。
おもしろい。

「生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー」へ

2012-04-17 20:33:56 | シネマ・アート
やっぱりドアノーの写真好きだなあ。

生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー
2012年3月24日 ( 土 ) ~ 5月13日 ( 日 )
@東京都写真美術館

写真なのに、今にも動き出しそうな、声が聞こえてきそうな写真たち。
パリやパリ郊外の写真はもちろん、ポートレイトも好き。
どうしてあんなに見事に人物像を浮かび上がらせることができるんだ!

パリで見た時はもうちょっと大きくプリントしてたような気がするけど、
今回の展示も思ってたよりは作品数も多くて、なかなかよかったです。

「ヴォーグ専属は2年間勤めた後、喜んで解雇された」ってのがおもしろいな。
対極だもんね、虚構のファッション写真と、ドアノーが初期から撮ってきた庶民の日常とでは。
スタジオに雪を降らせて撮ったモデルの写真と、パリの街中の雪景色。
雪は雪でも、ね。

日本でも同じようなことが言えるかもしれないけど、昔の方が寒かったんだね。
パリでも結構雪積もってるし、カナル・サンマルタンが凍ってたり。

初めて自分のカメラを手に入れて、
最初に撮ったというドアノー自身の写真がなかなか男前だった!(笑)

ルルドの泉で

2012-03-30 23:01:19 | シネマ・アート
またまた映画ですが。

『ルルドの泉で』
監督 ジェシカ・ハウスナー
出演 シルヴィー・テステュ、レア・セドゥ、ブリュノ・トデスキーニ他

カトリックの聖地ルルド。マリア様の出現と奇跡の水。
病や孤独を抱えたたくさんの人たちが奇跡を信じて巡礼に訪れる。

巡礼ツアーみたいなものがあるんですね。
介助が必要な人には付き添いがついて、祈りの滞在を共にする。

舞台は巡礼地だけども、明らかにされるのは人間のエゴ。
人はエゴイスティックな生き物なんだよね…。
ちょっと仕事を離れれば、いや介助している最中でさえ、若者のごく当たり前の男と女のたわむれがあり、楽しみがあり、
突き詰めれば巡礼だって他人事。
巡礼に来た人たちの状況や深刻さも様々で、毎年巡礼に来ている人もいれば観光気分の人もいる。
参加者同士は共に奇跡を願い祈る立場であっても『奇跡』は全員に起きるわけじゃない。
奇跡が起きる人、起きない人…
なぜ彼女で、自分じゃないのか…

健康なら無条件にしあわせなのか。
病や孤独の重みを、どうして自分が背負っているのか。
宗教って。人間って。しあわせって。
みたいなことをつきつけられる。

ルルド、行ってみたいかというと、微妙だなー。
なんというか、観光気分では行けない気がして。
実際にはきっと観光地でもあるんだと思うけど。

主演のシルヴィ・テスチュはパリにいた時に観た映画の中でも頻繁に観ていた女優。
華やかさやきらきらをふりまくのとは違う、独特に魅力だよね彼女の場合。
若いレア・セドゥとの対称的な役柄が印象的だったな。


美しき棘 [DVD]
出演 レア・セドゥ、アナイス・ドゥムスティエ、アガト・シュレンカー、 ジョアン・リベロー
オンリー・ハーツ