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東京パリ日記

パリ日記第2章、終了。東京生活、再開。

『よりよき人生』

2013-05-10 21:54:44 | シネマ・アート
『よりよき人生』(セドリック・カーン監督《Une vie meilleure》2011年フランス)

書かずに溜まったいろいろを少しずつ振り返りながら…。

というか、この映画に関してはすぐに書く気になれなかったんだよね。
ひりひりするというか、心が痛いというか、決して暗いまま終わるわけじゃないんだけど、
前向きなその後を想像する気持ちと、そこに至る厳しい過程にどーんとなる気持ちだと後者が勝ってしまって。

夢を見る者、しあわせをつかもうとする者につけこむ連中。
そしてあれよあれよと言う間に見事に落ちていく主人公。

もうね、なんつーか、辛かったっす。
でも実際にあり得る話で、華やかなパリ、優雅な生活で隠された、
もしくは見ないふりをしてる中に確実にある厳しい状況。

それに、いつ自分や身近な人に振りかかるか、わからないよね、今の世の中。

だからとても別世界のこととは思えなかったし、
その分、ひしひしと、きた。

久しぶりに見た俳優・ギヨーム・カネはやっぱり笑顔がかわいいなーと思いつつ、
結構バイオレンスな面も(今回も)あり。

ずっしりくる映画好きだけど、これ観た後はけっこうきたなあ。
という、思い出話、ですねもう。

あんまり間を空け過ぎずにメモっておかないとな。




唇を閉ざせ[ギヨーム・カネ監督]


君のいないサマーデイズ [ギヨーム・カネ監督]

『ローマ法王の休日』

2013-02-26 22:52:20 | シネマ・アート
現ローマ法王の退任のニュースと、その退任の日が迫ってる今あらためて考えるとじわじわくる映画。

ローマ法王と言えども1人の人間。
高齢で、務めを果たす力がなくなったという退任の説明に、
親近感というか、人間味というか、やっぱ大変なんだなあとか、
そんな感想を持つと同時にこの映画を思い出さずにはいられなかった。


ローマ法王の休日 [DVD]


映画では、次の法王を選ぶコンクラーベで枢機卿たちみんな自分になりませんように!って思ってるんだけど、
実際のとこ、どうなんでしょ。
で、選ばれちゃって、逃げ出しちゃうわけなんだけども。映画では。

絶大な影響力(今でも、たぶん)と権力(たぶん)と義務と重圧。
そして一度なってしまったら、やっぱやーめた、とは言えない…。
自分のために生きる自由や時間も一生ない。
ちょっとカフェへ、ちょっと劇場へ、は諦めるしかない。

ま、そういう下世話な人物が選ばれるようではカトリックだめじゃんってことになっちゃうけど。リアルでは。

一般の世の中と別の世界を生きる、でも実はいたって普通の人間でもある、
そういう裏側を想像すると、
まもなく退任する現法王、そしてコンクラーベで選ばれる次の法王を見るのも興味深い。

ピアノが出てくる映画2本

2012-12-18 17:54:54 | シネマ・アート
最近DVDで観た映画2本。
どちらもピアノ、ピアニストがストーリーの重要な位置を占めていて、フランス映画で、見逃していた映画。

『譜めくりの女』(ドゥニ・デルクール監督 2006)

人気ピアニストとかつてピアニストを志していた少女。
成長した彼女とピアニストが再会して…。

かつての少女の淡々とした言動と美しさ。
そんな彼女に信頼を寄せ徐々に依存していくピアニスト。
静かながらにぴりぴりと緊張感が高まってく感じ。

クラシック音楽の世界の厳しさとか、音楽への執着とか、
背景のこともいろいろ考えちゃう。その背景があるからこそ、だもんなあ。
女性二人の醸し出す緊張感がすごかったわ。


譜めくりの女 デラックス版 [DVD]



『真夜中のピアニスト』(ジャック・オディアール監督 2005)

いやーこちらも、緊張したわ、特に最後の方。
「譜めくりの女」が心理戦だとするとこちらはもっと直接的なバトル。
主人公トムにとってピアノが象徴するのが善や美とすると、汚れて闇のどろどろ渦巻く現実の世界。
バランスを取るためにどうしても必要なのがピアノで、心の支えで、でも闇を完全に断ち切ることはできず…。

ピアノなしにはいられないっていう感じ、なんかわかるなあ。
人によってピアノだったり、スポーツだったり、いろいろだと思うけど。

で、監督が『預言者』のジャック・オディアールというのもなるほど納得、と言う感じ。
音楽もよかったしロマン・デュリスもよかった。


真夜中のピアニスト DTSスペシャル・エディション [DVD]


『恋のロンドン狂騒曲』

2012-12-13 22:14:47 | シネマ・アート
『恋のロンドン狂騒曲』(ウディ・アレン監督)

パリが舞台の「ミッドナイト・イン・パリ」とロンドンが舞台のこれ。
パリはおもしろかったんだけどな…。

ロンドンのでは、若さ、愛、ときめき、夢を忘れられない、追い続ける大人たちの物語で、
笑って流せないというか、ああなっちゃいけない、みたいなイタイところもたくさんあって、
あんまり楽しめなかったなー。
いや、「そうそう、そうなんだよね何歳になっても」って笑えればいいんだろうけど、
どうやら私はまだそんなに人間できてないらしい(笑)

かっこいい大人になるとか、かっこよく歳をとりたいとか、
言うのは易しですよね。ええ。
いくつになってももがいて生きてくんですね、きっと。


それでちょっと思い出したけど、
学校や会社つながりじゃなくてフランス語つながりだと年齢も背景も全然違う人と知り合えるわけだけど、
語学学校とか行けば10代のクラスメートもいるわけだよね。
20代でも前半くらいだと若いねーって感じるし、ああそういうこともまだ知らないのか、ってこともある。

でも自分の経験を振り返ってみればそれも当たり前で、
自分も同じ年齢の頃はそんなの全然興味も知識もなかったよなあと思ったりする。
10歳違えば、10年経験が違うわけだから。

というわけで、この映画に出てくる大人たちのことも、
5年後10年後にまた見たら、わかるわかる!って笑ってるかも?

ドビュッシー 、音楽と美術

2012-10-10 01:24:37 | シネマ・アート
ドビュッシー 、音楽と美術 ー印象派と象徴派のあいだで(@ブリヂストン美術館)
2012年7月14日(土)~2012年10月14日(日)

脳内音楽流しまくりで観てきました。
生誕150年でドビュッシーのコンサートも多い今年。

生きてたら150歳かあ、クロード。

それにしても当時の芸術家たちの豪華さったらすごいよね。
画家、詩人、音楽家、それらが響き合っての舞台芸術。
ニジンスキーの牧神の写真もあったりして。

家庭にピアノが入りはじめた時代。
それが豊かさの象徴でもあったという説明に、
現代で言うならパソコンだったりスマホだったりゲーム機みたいな感じだったのかなと。
今、もしこれらがなかったら、すごく時間ができると思うんだ。
みんなで音楽を聞いたり演奏したり、感想を言ったり批評したり議論したり。

そして時代はジャポニスム。北斎や広重、かっこいい。

いい時代だなー、と思った瞬間ウディ・アレンの映画「ミッドナイト・イン・パリ」を思い出した。
1920年代のパリに憧れる主人公、その時代の女性アドリアナはさらに前の時代に憧れていて…。
「あの頃はよかった」はいつの時代にもある。
とはいえ、やっぱ豪華だよね。(笑)

タイトルが「ドビュッシー」のせいか、絵を見る集中力が脳内音楽に流される。
会場内にも流れてたけど、あれ、流すなら全体に流してくれてよかったのにな。
「海」を聴きながら海の絵を見る。いいじゃないか。
で、ドビュッシーを聴きに行ったら今度は絵に描かれてるような景色が浮かぶっていうね。ステキだ。


ところで会場内にちょっとあれな年配女性がいらっしゃって、
なんか警備員さんに言ってるなーと視界の端にとらえてたんだけど、
時間を確認しようと携帯画面を見た私にそっこー近づいて来て「携帯禁止よ」と。
でも通話も何もしてませんよと言うと「公共の場では電源切るのがマナーだから」と。

公共の場所で電源オフがマナーだと、自分ち以外では使えないねー。

言葉の力

2012-09-26 23:07:53 | シネマ・アート
お芝居はそんなにたくさん観に行ってるわけじゃないんだけど、
今回観た作品は自分でも予想外にずっしりくるものがあったのでメモ。

『浮標(ぶい)』

書かれた戯曲の、悩み抜き選び抜き、様々な思いが込められた言葉の美しさと重さ。
なんて力があるんだろうと。ずっしりきた。

ほら、今って、思いついたことの垂れ流しで、言い捨て書き捨てが大量にあって、
でもそれってじっくり考えて紡ぎ出した言葉と同じ意味や価値があるかっていうとやっぱり違う、
それを今回すごく感じた。

言葉って思考で、言葉がなければ思考もなくて、思考には言葉が必要。
その場の思いつきレベルの言葉で全部済ませてると思考のレベルも高まらない。
たまにはじっくり考えなきゃいかんな、と。
それに足りる言語的な蓄積を、ちゃんとしとかなきゃな、と。

ストーリーには触れないけど、すごかった。(←さっそく語彙が貧しい)
あの役を連日「生きる」役者さんのすごさ。尊敬。いろんな思いがぐるぐる。
観終わってもずっと余韻が充満してる感じで、この気持ちはとても文字では表せない、表す気にならない、
ということで少し時間が経って書いてみた。

でもやっぱり、うまく言えないなあ。

『キリマンジャロの雪』

2012-09-08 16:47:18 | シネマ・アート
前売り券の有効期限ぎりぎりだった!

『キリマンジャロの雪』

またまた人間愛的な、人類愛的な、誰かを思いやるあったかい人たちの物語であった。

不況、リストラ、失業者、離婚や親の不在。
まだ幼い二人の弟を抱えて職を失い将来を明るく想像できない若者と、
何十年も労働者として働き続け裕福ではないながらも“ふつうの”“ささやかな”幸せな暮らしの50代夫婦。

善人と悪人の定義は?昔ながらの労働組合の活動や存在の意義は?
世代間の確執でもあり、不況に苦しむ現在への対処を問うのでもあり、
人はどこまで寛大に、隣人愛を発揮できるのかというチャレンジでもあり。
すごくいろんなことが盛り込まれてたなあ。

でもミシェルとマリクレールの夫婦は、きっとどんなことがあっても二人で幸せに暮らせるはず。

あと、フランスの労組のグレーヴ(スト)とかマニフェスタシオンを目の当たりにしてると、
よく見るあのデモのさなかの彼らの実像というか、普段の生活に近いものを見た気がしたな。

舞台はマルセイユ。
マリクレールがふらっと寄ったバーのギャルソンがおもしろかった。
客の悩みに合わせて飲み物を勧めてくれるんだけど、そのうんちくがおもしろい且つ妙に説得力があって、
あんなギャルソンのいる店だったら私も通いたい!

ストーリーとは関係ないけどマルセイユだけに発音がパリとは違うわーって思うところがちょこちょこと。

「少年と自転車」といい「キリマンジャロの雪」といい、
なんでもない“普通の人”が差しのべる救いの手というか愛というか。
それだけにじんわりくる。

『少年と自転車』

2012-09-06 01:21:53 | シネマ・アート
やっと見てきた『少年と自転車』、観てよかった…。

施設に預けられた少年と、迎えに行けない・行かない父親。
追う息子と、避ける父。つらいね、このすれ違い。
父親に背を向けられた事実を受け止めきれない少年シリルのどうにもならない様子に、
正直ムリだ…って思ってしまったんだが、シリルにはサマンサがいた。

まともに取り合ってくれない大人ばかりの中で、
どうしてサマンサがあんなにもシリルを受け入れられるのかわからない。
わからないけど、観てるこっちも救われる。
良い人悪い人っていう色分けじゃなく、シリルの父親を責めるでもなく、サマンサを褒め称えるでもなく、
ごく当たり前のように一緒にいる。それが救いになる。

「シリル、お前にはこんなにお前のことを思ってくれる人がいるじゃないか。少しはサマンサの気持ちを考えろ」
みたいな説教は一切ない。(私が日本のでいやなのはいちいち説教くさいところ)

どうしてサマンサはああいう風にできるんだろう、自分だったらどうするだろう、
ってぐるぐる頭を回りながら帰宅。
今のジャポンは心の余裕を持ちづらい世の中だけど、いろいろ考えさせられるなー。

世界報道写真展2012

2012-07-20 22:31:14 | シネマ・アート
世界報道写真展2012(東京都写真美術館)

今年も観に行ってきた、世界報道写真展。
2011年って、本当にいろんなことがあったんだな…。
日本での震災、ジャスミン革命などアラブの春、ノルウェーの銃乱射、etc...
大きなニュースになったものだけでも、これ全部去年あったことなのかという驚き。

作品が入賞してるカメラマンのうち2名がシリアで亡くなったとあった。
どの作品、どのニュースにしても、終わってないのだよ。今につながってる。

昨年のこの報道写真展のときはまだ震災から間もなくタイミングで、
被災地の写真が特別展示されてたと思うんだけど、
「来年の報道写真展には震災の写真がいっぱい入ってくるんだろうな…」
と思ってざわざわしたのを覚えてる。
自分たちの日本、日本人が、その被写体になる。

もちろん、日常生活やスポーツの写真もあるのでずーっとズキズキする写真展というわけじゃないんだけど、
どうにもならない自然災害や病がある一方で、
人間の残虐さ、残酷さ、理不尽さに「まったくもーう!」という気持ちになる。

でもほんと、ニュースにならないところでいろんなことが起きてるんだよね。
幼い子供が結婚させられてるっていう写真で、6歳の女の子が25歳の男と結婚したとあってショックだったわ。
インドも、難しいよね、「インド」とひとくくりにはとてもできない底なしの深さ。

という風にいつもいろんな思いを掻き立ててくれる報道写真展。
写美では8月5日まで。

『愛の残像』

2012-07-05 21:33:22 | シネマ・アート
『愛の残像』 《La Frontière de l'aube 》 フランス/2008年
監督:フィリップ・ガレル
キャスト:ルイ・ガレル、ローラ・スメット、クレマンティーヌ・ポワダツ

なんでしょうこの危うさは!
人間は脆く、愛も脆く、それが本能的にわかってるから目の前の愛に全身全霊を注ぎこむ、
そんなことを思いながら観てたら、後半は前半とは別の理由でドキドキさせられた。

はー。なんか、腑抜けで帰宅。

7/21からは『灼熱の肌』が始まる。

原題《Un été brûlant》なんだ。原題もいいけど、邦題もいいね。