【阿多羅しい古事記/熊棲む地なり】

皇居の奥の、一般には知らされていない真実のあれこれ・・・/荒木田神家に祀られし姫神尊の祭祀継承者

付記2b: 飼い犬

2024年03月02日 | 歴史

 

そんな病人でありながら、二年も経つと、雅子は喪が明けた婦人のように、突然、私の職場に現れた。
迂闊だったのは私のほうで、ようやく取り戻した日常に流され、自分でも気づかないうちにマスコミが描く「可哀そうな皇太子妃」に同情していたのだろうか・・・愛想よく御辞儀をしたのが、不味かった。
 
 
 
雅子は、私の厭な予感のとおり、「公務に復帰したい」と言い出したのだ。「協力していただけません?」 
素手で胃の腑を掴まれたような気がした。東宮御所での雅子は、私へ向けて実弾を撃っただけでなく、監禁していた部屋へわざわざ愛子を招き入れて、私に起立するように命じた。そして、私が仏頂面で椅子に座ったままでいると、テーブルの下から私の脚を狙って、護身用の撃針銃を発射したのだ。
 
 
 
雅子の話は執拗に長かった。まるで旧知の友人に甘えるかのように、臆面無く、自分の要求のみを語った。
その厚顔さに私が黙り込むと、口達者な子供が相手を言い負かした時よくやるように、勝どきの声を上げた。
「私にできないとお思いになるの?」
私は全身の血が頭頂へ逆流するのを感じた。(できるかできないかは、まず医者に訊いてみては如何か!)
雅子は不機嫌そうな顔で帰って行ったが、私にはどうでもいい事だった。
 
 

その後も、彼女は何回か、私の職場へ押し掛けて来た。挙句の果てに、「あなたが呼んだことにしていただけません?」と頼まれた。
何処ぞへ遊びに行くのか、それとも帰国した小和田夫妻と密会するのかは知らないが、そのうちの一回は飼い犬を連れて来て(東宮夫妻とよく一緒に写真を撮られる犬だ)、その犬に同情した私が、犬の頭をなでながら「まあ、可愛いわね」と言うと、「あなた、本当にこの犬が可愛いとお思い?」そう言うや、驚くことなかれ、犬をその場に置いて、自分だけ車に乗り込んでしまったのだ。たぶん、あの自己中心的お嬢さんは、血統書を咥えた斑入りのアフガン犬か何かを連れて、護衛官を従えて、専用機を飛ばして、欧州の王族にその犬を見せに行きたいのだろう。
そうすれば?・・・、と私が言ってくれなかったので、連れて来た犬を捨ててしまいたくなったのだ。
 
 
 
 
 
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まったく無神経としか言いようがない好奇心で、雅子は私の自宅を見物に来た。当時、私が飼っていた犬は十五歳くらいの老犬で、艶を失って毛がバサバサしていたが、番犬としては優秀でよく吠えた。そのせいで、雅子に付いて来た皇宮護衛官が、携帯している薬剤を犬に注射して黙らせた後、硬直した犬と私を並ばせて、それを雅子が写真に撮って行った。「笑って」と、雅子は犬と私に言った。
彼女が帰る時、私は犬の足を持って、「(永久に)バイバイ」と言うように振ってやったのだが、麻痺した犬の足はまるで骨折しているかのようにぶらぶら揺れた。