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15.イギリス「イギリスの王室はドイツからの一種の移民」

 「イギリスの王室はドイツからの一種の移民」 一部引用編集簡略版

  今日の大国といわれるなかで君主がいるのは、イギリスと日本だけだ。イギリスの王室はウィンザー家であるが、日本の皇室とはまったく体質が異なっている。
  イギリスをはじめとするヨーロッパの王室は、一種の移民である。エリザベス女王はもとはハノーファー家の人である。ハノーバーと英語式に発音してはならない。ドイツ読みではハノーファーである(ドイツではHannoverのvは「ファー」と発音するが、英語では「バー」である)。チャールズ皇太子が歴代のイギリス皇太子に伝えられる指輪をいつもはめているが、この指輪には英語でなくドイツ語で「イッヒ・ディーネ」(私は奉仕する)と刻まれている。

  ダイアナ皇太子妃は18世紀以来、最初のイングランド人の皇太子妃だった。エリザベス女王の父ジョージ6世(1895~1952年)は、初めてブリテン島の妃と結ばれた。スコットランドの伯爵家の娘で、現在のエリザベス皇太后である。ジョージ6世の母君はメアリー・フォン・テックであって、ドイツの王女である。統一前のドイツには小王国や公国がひしめいていて、ヨーロッパの王家の婿や嫁の産地として重宝がられた。

  エリザベス女王の夫君のフィリップ殿下(投稿者補足:先日亡くなりました)もドイツ系である。フィリップ殿下は1979年にアイルランドの過激派が仕掛けた爆弾によって爆死したマウントバッテン伯爵の甥に当たる。マウントバッテンという家名は第一次世界大戦が始まるまではバッテンベルクだったが、ドイツの貴族名では都合が悪いので、大戦中にドイツ語のブルク(山)を英語のマウントに直したものだ。
  ビクトリア女王(1819~1901年)の夫君のアルバート公(1819~1861年)も、ドイツ出身だった。ドイツのザクセン・コブルク・ゴータ大公の次男として生まれた。アルバート公は20年以上もビクトリアと結婚生活を送ったが、英語がさっぱり上達しなかったので周囲を困らせた。もっともイギリスやヨーロッパでは、国王や王族がその国の国語をうまく話せなかったり、理解できないということは珍しくない。天皇や皇后が日本語を話せないというようなことは想像ができない。

  イギリスの王室は現在ウィンザー家を名乗っているが、初めはハノーバー家と称した。イギリスの王位がスチュアート家からドイツのハノーファー家へ移ったのは、1701年にイギリス議会を通過した王位継承法によるものだった。
  当時のウィリアム三世に子がなかったため、王位継承法は王の没後に、メアリー二世の妹のアンが王位を継承することを定めた。アンには子どもがあったがみな早死にしたので、アンのあと血縁関係にあるハノーファー選帝候妃ソフィーとその子孫が、イギリスの王位を継承していくと規定していた。
  アン王女は1714年に死んだ。ところがソフィーも、その数週間後に他界していた。そこでソフィーの長子であったゲオルクがイギリスに迎えられて王位についた。ゲオルクはイギリスの王位につくと、名前をイギリス式にジョージと改め、ハノーバー朝を開いた。

  ジョージ一世(1660~1727年)はイギリスの王座に座ったとき、54歳になっていた。そこで生涯、英語を学ぼうとしなかった。アン王女の代までは、国王が重臣の会議を主催したが、王宮の会議室で会合したので、”キャビネット”と呼ばれた。”内閣”の語源である。
  ジョージ一世は初めのうちは重臣の会議に出席したが、じきに退屈した。エンサイクロペディア・ブリタニカ(大英百科事典)で「キャビネット」(内閣)の項目を引くと、「ジョージ一世は英語がからきし駄目だったので、1717年以後は出席するのをやめた」と書かれている。そこで、王の代理として「キャビネット」を主催する大臣が政治のうえで中心的な役割を果たすようになり、首相という新しい職制が生まれた。国王が英語ができなかったことから、近代内閣制度が生まれたのだった。

  ハノーバー家は、ビクトリア女王の死後に即位したエドワード七世(1841~1810年)によって、父の家名ザクセン・コブルク・ゴータを、英語式に発音してサックス・コーバーグ・ゴーサ家と改められた。そして第一次世界大戦が始まると、ドイツの家名では都合が悪いので、王家が所有するウィンザー城から名を借りて、ウィンザー家と称した。 
(おわり)

参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
 加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長
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