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後半 伊勢の娘中務と源信明の恋と恋の終わり

後半 伊勢の娘中務と源信明の恋と恋の終わり

  馬場あき子氏著作「日本の恋の歌 ~貴公子たちの恋~」一部引用再編集

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前半 伊勢の娘中務と源信明の恋と恋の終わり のつづき

    男のもとにつかわしける 

   はかなくて同じ心になりにしを思ふがごとは思ふらんやぞ 中務

    返し

   わびしさを同じ心と聞くからに我が身を棄てて君ぞかなしき 源 信明

  信明(さねあきら)と逢ったあとの中務の歌は初々しくつましく、女らしい弱さをみせた訴えになっている。「はかなくて」といううたい出しや、「わびしさを」という返歌の初句をみると、一夜の語らいの中では、男女の愛だけでなく、今ふうにいえばそれぞれの置かれた人生や世間の定めなさ、のようなことまで語られたとさえ思われる。どちらかといえば侘しい後朝(きぬぎぬ)の歌で、初心の、まじめな恋の第一歩に立っているようだ。

  中務は「あなたと心が一つになった」と言い、しかし「私があなたを思うほど、あなたは私を思っていますか」と問いかけている。信明もも「あなたが、私と同じ心だと言ってくださったので、我が身はもうどうなろうとかまいません。いまは一途にあなたが愛しい」とこたえている。「いたづらにたびたび死ぬと言ふめれば」という奔放な物言いの表と裏として読むと実に面白い。

  信明はその後、受領としての人生をえらぶ。陸奥守として赴任する時は、中務も同行したほどの密接さであったが、どこからか道がわかれてしまった。信明の愛は変わらなかったようで、中務が疎くなったあとも、その居所をつきとめて歌をとどけている。さびしい恋の終わりである。

   恋しさはおなじ心にあらずともこよひの月を君見ざらめや
   「拾遺集」恋三 源 信明

    返し

   さやかにもみるべき月を我はただ涙にくもるをりぞおほかる 中務

  おわり

参考 馬場あき子氏著作
 「日本の恋の歌 ~貴公子たちの恋~」
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