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 アクアコンパス3 続編

アクアコンパス3が容量一杯になったので、こちらで続きを開始します。

働くとは、何か 28 最終話

2025-06-05 06:02:21 | 社会

  これまで、1世紀前に労働者の世紀が到来し、やがて現在の衰退に至った状況、特に日本の酷い状況を見て来ました。
前回は、国民や労働者らが団結し、世界で何が起きたかを見ました。


今回は、日本での団結力が如何に歴史を揺さぶったかを見ます。
最後に、私達の「働く」意味を見直すべきと提案します。

 

 日本は、政治文化(選挙)や民主主義が未発達だとよく言われます。
確かに、相変わらず三バン(地盤、看板、鞄)が選挙の主力であり、兵庫県知事選に見られる内部告発者潰しに無頓着な県民等、とても先進国とは言えない。
しかし、そんな中にあっても、理不尽な仕打ちに対抗し、現状打破を試みた人々が少なからず居た。

1.かつて団結し目的を果した人々


a)逃散(ちょうさん)
 これは農民が、耕作を放棄し村を捨てて逃げる抗議行動です。要点は、村人が一丸となり、要求が通るまで、山林などへ逃げ込む事で、年貢の軽減や横暴な代官の交代等の要求が通れば、皆は村に戻って来る事にあります。これは古くからあったのですが、南北朝時代や室町時代(戦国時代)によく行われた。これは武力蜂起の一揆と違って、罰せられずに目的を達する事も多々あった。しかし、江戸時代になると、厳罰化されるようになった。
 
 日本では、歴史時代を通して百姓は奴隷ではなかったが、過酷な税に苦しめられて来た。しかし一方で、この百姓のサボタージュを、権力者は必ずしも罰したわけではなく善処していた事に驚かされます。もう一つ重要な事は、成功の要となった村人の一致団結の為に、彼らは「一味神水」を行っていた事です。彼らは神社に集まり、誓約を記した起請文を焼いて灰にし、神水に混ぜ、一同回し飲みした。彼は裏切らないことを神に誓ったのでした。いつの時代も団結は要でした。

b)一揆
 主に年貢軽減や徳政令(借金帳消し)を求めて村人たちが集団で武装し、支配者に対して蜂起する事です。悲惨な末路に至った事も多々あるが、二つの代表的な成功事例を紹介します。

山城国一揆、惣国一揆
 応仁の乱の終息後も、京都府南部、山城国では守護大名の小競り合いは続いていた。1485年、この被害から逃れる為に、三つの村と国人衆(豪族)が宇治の平等院に集まり、「国中掟法(くにじゆうおきて)」を取り決めた。彼らは対立し抗争を続ける二つの守護大名双方への助力、参戦を断り、中立を約し南山城の自治を行った。こうして三十六人の国人衆による政治が8年間行われた。

 彼らが、もし立ち上がっていなければ、対立する畠山勢力に農地を荒らされ、男性は兵士として駆り出され、多くは落命していたことだろう。彼らは、朝廷や守護と交渉し、まいないとして大枚の財力を使わねばならず、さらには自ら武装して軍の進駐を阻止する姿勢も見せた。彼らは参加者一同を信じ、危険を冒し、事を成し遂げた。遂に彼らは権力者に対峙しながらも、ほぼ無傷で事を成した。しかし残念ながら、分裂し崩壊する事になった。


加賀一向一揆、惣国一揆
 1488年頃からほぼ百年間、加賀の本願寺門徒(一向衆徒)が中心となり、国人衆と農民が起こした惣国一揆。この中心人物は吉崎御坊(福井県)に滞在していた親鸞の子孫蓮如でした。彼が国人衆の一方に加担し内紛に介入して行くと、国人衆が二つに別れ、また門徒衆が戦いに参加し、加賀一円(石川県)を巻き込む事になった。そして遂に戦国武将から独立した門徒の国を勝ち取った。しかし、1580年、織田信長の軍勢により、凄惨な敗北を喫した。その間、数万の死者が出ただろう。

 これは農民と国人衆らによる独立国が1世紀近くも維持された稀有な例です。長島一向一揆のように一向宗(浄土真宗)は、各地で権力者の介入を拒絶し、頑強な抵抗を見せて来た。しかし、いずれの一揆も日本の体制を変える事にはならなかった。1789年のフランス革命や184年の黄巾の乱(三国時代の切っ掛けになった新興宗教の信者による反乱)等では、市民や農民が立ち上がり、やがて体制が交代した。この違いは別にして、現状の日本人の行動からは想像出来ない、社会に抗うエネルギーの大きさを私は強く感じた。


c)日本人のチャレンジ精神
 欧米では、抗議のデモで各地が連携し、数百万の参加に至る事がある。同様に、東アジアの中国や朝鮮半島でも起きていた。しかし日本では、このような事は終ぞ見られなかった。しかし、上記の逃散や一揆では、失敗すれば命も全財産も無くす危険を冒し、村人が団結し、事に当たっていた。これらが成功した背景に、南北朝時代の混乱があり、やがて戦国大名が強大になると、民衆の抵抗は望むべくもなかった。その後、現代まで、大正時代など一時期を除いて国民は政府に対して従順になってしまった。

 明治以降、何百万人もの日本人が海外に移住して行った。それは国内からの逃避とも見れるが、チャレンジ精神や冒険心がなければ叶わなかった。アメリカ大陸、南太平洋のハワイやミクロネシアで、日本人が活躍していた事績を、私は旅先で知って嬉しくなった。日本人も、かつてはチャレンジ精神が旺盛だった。
 


2.同業者組織(仲間・座・講)に見る町人組織の強さ

 これは中世ヨーロッパの商工業者のギルドに似ており、日本でも中世から始まり、徐々に発展し、戦国時代から江戸時代にかけて大きく変貌を遂げた。様々な庶民の生活用品や武家の用品を作る職人や、それらを扱う商人は、都市や城下町の発展、全国的な流通網の展開に合わせて、その対応を変えて来た。

 初めは、農業だけでは立ち行かない村落の農民らが特定の産物(一例、紙、塩、塩漬け干物)を離れた市場まで運び商いするようなった。この商いが、やがて実績(故実)となって行くのだが、その間、事件や事故が起こったりし、街道筋の村々や領主との間で交渉が重ねられ、相当の金品の贈与も必要であった。こうして彼らは既得権・独占権としての「座」を持つようになり、よそ者の新規参入を阻止し、安定した収入を確保するようになった。

 座を持つ組織は、新規参入者や違反者に対して、自ら商品の没収等の対抗手段を持ち、それでも解決しない場合に限り、裁判や調停によって実績(故実)が認められ決着した。しかし戦国時代になると、商いは戦国大名の調停や認可が不可欠になっていた。こうして商売の実績だけで座を守る事は出来なくなっていった。やがて城下町が発展し、巨大化して行くと、町人らも力を持つようになり、京都の祇園祭りの山鉾を出す町のように、ある程度自治が行えるようになって来た。こうなると町人らと戦国大名らは、共に町を発展させる為に、楽市楽座と呼ばれる、納税義務の無い、新規参入も許される体制を作るようになっていった。そうは言っても、多くの座の株を買い集めた豪商らは、戦国大名の認可を受けて、一部の商品の独占を図る事が出来た。

 

江戸時代の商人の問屋仲間を例に、彼らの活躍と役割を見ます。

 江戸時代初期、近江八幡(滋賀県)の西川家は当地で作られていた蚊帳・畳表を扱っていたが、やがて大阪に出店し、大阪の畳表問屋仲間に属し、さらに江戸に出て、同問屋組合に加入した。こうして主に八幡商人らの手によって西日本から集められた畳表は江戸に運ばれ、大量の商品流通が安定して行われるようになり、西川家を初め八幡商人も潤った。
 
 ところが江戸時代後期、株仲間解散が発令された。幕府は、諸物価の引き下げを目指していたが、意に反して、畳表の価格は上昇してしまった。この要因は主に二つあって、一つは大塩平八郎の乱による大阪の大火による需要増と、問屋仲間が行っていた価格抑制のシステムが崩壊した事にあった。実は以前から、それぞれの店が勝手に畳表を織元に発注するのでは無く、大阪の問屋が一手に購入する事で、価格の安定を図っていたのでした。この失敗に気付いた幕府は10年後に、株仲間再興を認可したが、元に戻ることはなかった。この西川家が、現在、ふとんの西川へと繫がり、450年の歴史を持つに至ったのです。


3.何が言えるのか?
 こうして日本の歴史を振り返ると、あらゆる人々ガ自ら団結し、組織を造り、自らの生存を賭け、社会を目的に適うように変えようとして来たのです。そこには、絶えず実績や伝統を造り上げる努力と、一方で社会変化に応じて、それを打ち破る動きがあったのです。決して、流れに身を任せ、甘んじるだけでは無かったのです。

 日本の労働組合や政党も、かつては社会を突き動かすエネルギーを持っていたのですが、やがてマンネリ化し、沈滞するのは時の常です。改革を怠り、没落していった文明や国は歴史上数知れません。改革が必要な時は必ず来るのです。改革は日本人に不可能とは、上記の歴史から言え無いのでは無いでしょうか。


4.最近の労働組合の活躍例を二つ紹介します

 

 2004年、プロ野球選手会がプロ野球発足以来初のストライキを行った。事の発端は、財務状況が厳しい球団が合併させられ、2リーグ12球団制が崩れるのを、労働組合である選手会が、これに反発し話し合いで解決しない場合は、公式試合をストで中止するとした事でした。これに対して野球機構は、巨人軍オーナー渡辺の「たかが選手が。ストライキどうぞどうぞやったらいい」の言葉に象徴されるように、高飛車に出た。そして幾らかの試合は中止になったが、やがて球団の合弁は撤回され、終結宣言が出された。この間、中止になった球場や報告会のホールに多くの野球ファンが詰めかけ、選手会は拍手喝采を浴びていた。

 

 少し風変わりな労働組合、大阪にある関西生コンを紹介します。この組合には嫌な風聞が付き纏っていますが、やっていることは合理的で先駆的です。この組合は個人加盟で、各企業内に組合組織を持っていませんが、交渉・争議・妥結を担って来た。また職種別の賃金協約を結ぶ産業別組合でもあります(日本では少ない)。この組合は生コンの中小企業相手に、共同購入・共同受注を行う協同組合化を促し、生コン価格の下落を防止することにより、労働者の賃金と条件を守ろうとしている。

 生コン業界は零細の下請けが多く、各企業は過当競争による倒産を恐れ、また労働者も低賃金に喘いでいた。この状況を打破するために、この業界は、企業の横断的な連帯によって、企業と労働者を守る必要があった。2010年、大阪府内の全生コン業者の7割が工場の操業をストップし、大手ゼネコンに対して、全生コン業者の存続が可能な生コン原料の購入価格アップを要求した。しかし、組合に加盟していない企業の中には、半値で購入するなどのスト破りに出た。これに対して、関西生コンは厳重に抗議し、これが一部マスコミから非難されることになった。

 しかし、よくよく考えて下さい。アマゾンの配達員の苦境は、配送料無料の横行が引き金でした。またタクシー業界は公定幅運賃制で、安全とドライバーの生活が守られています。上記の江戸時代の畳表問屋が行った統制の効果を思い出して下さい。過度な競争を放置しておくと、消費者に良くても、安全や労働者にとってマイナスな事があるのです。

 そこには自由競争、自主的な統制、規制(法)などが上手く作用し、社会を廻しているのです。そして、問題や不利益を被るようになれば、その組合せを変えて行くのです。こうして一時は軋轢が生じるが、社会は良くなって行くのです。

 

5.まとめ
  私達は「働く」と「暮らし」のバランスをどうとりながらより、良くして行くべきなのでしょうか?
ヒントを箇条書きにしました。

人類は苦境に陥ると、団結し組織を通じて、個人では成し得なかった成果、身の回りの状況や社会を変える事に成功して来た。

これは日本でも同様でした。日本民族は社会への帰属意識が高い分、人々は組織を越える大きな力までは持ち得なかったと言えるが、それでも画期は幾度もあった。文化心理学では、東アジアが世界で最も帰属意識(村意識)が高いと指摘しているが、日本はさらに高い。実は、これが組織刷新の為に内部告発が重要な理由でもあり、かつ内部告発潰しが繰り返される理由でもあるのです。

人々が時代の変化に合わせ、組織や行動方式を変えるのは当然で、歴史が示しています。

ただ、その変化の過程や新旧交代が、総て当時において理に適っていたとは言えない。どちらかと言うと、力技であったり、集団の勢い、流行りが方向づけていたように思える。

  • トランプの関税政策; 経済理論や大戦後の反省から関税は否定されていたが、被害妄想に駆られた末の暴挙妄動でしょう。
     レーガノミクス; トランプ政策の要は、これと同根で、中曽根もこのブームに乗った。これはそれまでの労働者優遇時代からの脱却を目論んだもので、半世紀を振り返れば明らかです。
  •  累進課税; トマ・ピケティは格差是正に累進課税が不可欠と言明しているが、レーガノミクス以降、世界は累進課税を捨てて来た。しかし20世紀前半の大幅な格差縮小をもたらしたのは、大戦時の税収増大の為に行った累進課税でした。火事場の馬鹿力!やれば出来るのです。
  •  戦国時代の座が崩壊する過程で、実績(故実)中心から、新規参入者の証拠書類(偽の院宣など)提出が物を言うようになった。体制を変えるには、良くも悪くも口実が必要だった。
  •  様々な法理念は、主に、この3千年間で人々が生み出した産物です; 古くは私有権、近代になって工業所有権(特許権)、そしてストライキ権や男女平等、普通選挙権等は、ここ百年ほどで人々が自ら勝ち取ったもので、けっして自然に生じたものではありません。これらの人々の幸福や経済発展への貢献は計り知れない。ストライキは、それまで社会に認められておらず、犯罪扱いすらされていたのです。まだ日本には中世のイメージに生きている人もいるようですが。

今の世界や日本を見ていると、一部の強大な富裕者達が富集積だけでなく、世界を都合の良いように引っ張っているようです。そして多くの人々はそれに流され、目ざとい人は誰よりも早く乗り切る事に、安堵を得ているように思える。実は、これが現在の国民、ひいては労働者にとって最大の悲劇なのです。 

米国は経済で世界を牽引し、産業界・資本家を代表する人々らが、国政を牛耳ているように見える、トランプ政権のように。このような状況が半世紀も続いたことで、米国で何が起きたのでしょうか? 国家経済は伸びたが、8割近い国民の生活は実質横這いのままです。日本だけは低下しているが。北欧は、これと状況を事にしているが、米国の影響がやがて災いするでしょう。

皆さんに問います。あなたに取って、最重要な事は、経営者と同じく所得中心なのでしょうか? おそらく、多くの人は仕事と家庭とのバランスがとれた暮らしを望むでしょう。当然、安定と所得の伸びも期待したいところです。しかし、現状、これを手に入れるのは至難の業です。特に日本では、益々、長時間労働、低賃金、非正規等の不安定な雇用状態が進んでいます。

この流れが、何によって起きているのか? それは明確です。また、この現状は国民の生活権を奪っていると、皆さんは考えないのでしょうか? この判定には、皆さん躊躇されると思います。しかし、既に述べたように、歴史を振返って下さい。答えは自ずと見えてくるはずです。

それでは、どの様に解決すれば良いのでしょうか? 一つ言えることは、トランプの振る舞いは、現状をさらに悪化させるだけで、これと対峙し、世界が協力する体制を模索することが重要です。これまでも共和党政権は、世界が協力しなければならない事案の多くを反故にして来ました(タックスヘイブン対策や地球温暖化等)。一層、世界の協力体制が遠のくと、これまでのように巨大資本が、世界で好き勝手に振る舞い、たとえ日本の国政が良くなったとしても、大幅な改善は望めません。

日本だけが、国政を刷新して、良くなることは難しいでしょうが、北欧4ヵ国や、幾つかの国は、この半世紀の間に、素晴らしい国造りを成功させて来ました。そこには下地になる文化や、地政学的な利も幸いしたのですが、日本も不可能ではないでしょう。明治維新のように、少なくとも真似るのは得意な日本ですから。

もしここで手をこまねいて、何ら手を打たなければ、良くて英国病の二の舞でしょう。数多くの興隆し滅んだ国として名を留めることになるでしょうし、最悪は、また幾度の恐慌の後に、軍国主義に走り、やがて自滅するかもしれません。


これで、このシリーズ「働くとは、何か」を完結したいと思います。
長い間、お付き合い下さった方々に感謝します。

これからは、ワールドクルーズ、カナダ・アメリカ縦断の旅、南太平洋クルーズを通じて、世界を語りたいと思っています。

 


 

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働くとは、何か 27

2025-05-28 08:48:55 | 社会

 

 

益々日本の労働組合の力は弱くなっており、今後さらに弱くなるでしょう。
本当にこれで良いのでしょうか?

これから労働組合の再興について考えます。

今の趨勢を放置すれば先進国の労働組合は、ほぼ無力化するでしょう。
これまではグローバル化、新自由主義、IT化が労働組合を骨抜きにし、今後はAIが破壊するでしょう。

 

1.労働組合の勃興と衰退の歴史を要約します。

a)19世紀、英国では産業革命により工場労働者が大量に生まれた。初め、彼らは職能組合を造り、工場経営者に待遇改善・賃金アップを呑ませ、次いで全国規模に拡大させ、政府にスト権などの労働法制定を呑ませ、権利向上を成し遂げて来た。これは男女平等にも繋がった。これら運動は欧米にも浸透し、20世紀前半には、累進課税等により、世界が歴史上始めてと言える、格差拡大から縮小へと一機に進んだ(二度の大戦も影響している)。

b)しかし大戦後の復興が進んだ1980年から逆転が始まった。当時、先進国は世界的なインフレ亢進に悩まされていた。このインフレは、好景気による賃金上昇も影響したが、中東戦争に米国が介入し、その反発から石油価格が高騰した事が大きかった。一方、長期低迷に陥っていた英国と泥沼のべトナム戦争と敗戦国日独の急速な追い上げに脅かされていた米国は、荒療治に踏み切った(レーガン、サッチャーの新自由主義)。労働組合潰しと貨幣供給量抑制によりインフレは収まったが、さらに金融自由化と累進課税縮小により、両国では格差の拡大が定着し、国民大半の賃金は横這いとなった(全体では上昇)。この間にグローバル化とIT化が重なり、先進国の労働状況は一変し始めたが、規制緩和がさらに過酷なものにした。

c)そしてトランプ政権は、グローバル化と自由放任経済が招いた国内の産業空洞化と貿易赤字拡大を逆転させるぞと息巻いている。しかし共和党に通じる荒療治は、より富裕者への見返りが多くなるだろう。少なくとも労働組合擁護や弱者救済の思想は無いのは既に明かだ。こうなると、来たるAIによる大変動、失業者急増への対応は望めず、労働者にはさらに過酷な状況に追い込まれるだろう。


2.かつて労働者興隆の時代が到来したが、既に富裕者優先への時代へと戻ってしまった。この2世紀は何を我々に示唆しているのか?

 19世紀の英国から欧米に広がった運動は、人類が歴史上初めて成した遂げた地球規模の労働者の意識改革だった。 この意識改革から派生した共産主義革命は、独裁国家を打破する為の便法に過ぎなかった。むしろ重要なのは、「広く団結することで、弱者たる者が権力者に対抗出来き、国の支配すら望み通りに変えることが出来る!」との自信が労働者に生まれたことでした。

 しかし一方で、富裕層が操る政党とマスコミに乗せられ、徐々に外堀を埋められ、半世紀かけて、労働者の地位は低下し続けるようになった。これはひとえに、労働者の驕りと無知が、用意周到な富裕層の仕掛けに嵌ってしまったと言える。そして今また、さらなる大混乱を経て、より深みに陥ることになるだろう。

 それにしても、英国の産業革命後の都市労働者は、なぜ困難状況から、立ち上がる事ができたのだろうか? 地球上の全労働者が再び栄光を取り戻す事は出来るのだろうか?


3.人々はどの様にして団結を我が力とするようになったのだろうか?
 人々が団結して行動を起こすことで、権力者に対抗した事例を世界からいくつか紹介します。

紀元前11世紀のエジプトで、労働者が一斉にストライキを起こし、墓の建設を中断させた最古の記録があります。

1888年、イギリスのロンドンでマッチガールズ・ストライキが起き、働く女性工員が有毒物質による健康被害と低賃金に抗議し、労働条件の改善と罰金制度の廃止を勝ち取った。これは女性労働者による初の成功事例となった。

1936-1937年、アメリカのGMで労働者が労働条件改善と組合承認を求めてシットダウン・ストライキを起こし、全米自動車労働組合の承認と労働条件の改善を勝ち取った。この後、多くの大企業で産業別組合が認められるようになった。

1968年、フランスで、学生運動をきっかけに、労働者がゼネストを起こし、1000万人以上がストライキに参加した(五月革命)。これにより労働者の最低賃金引き上げ、労働時間の短縮、労働組合の権利強化などが実現した。

1980年代の南アフリカで、鉱山労働者のストライキが頻発した。これはアパルトヘイト体制下での過酷な労働環境に対する抗議だった。この結果、南アフリカ鉱山労働者組合が承認され、労働条件の改善が進んだ。さらにアパルトヘイト反対運動と結びつき、民主化運動の一翼を担うようになった。


最後に、想像を越えた運動を紹介します。

1975年10月24日、アイスランド全国で 女性の約90% が職場や家庭の仕事を放棄し、ストライキに参加しました。女性たちは一切の働きを止め、平和的な抗議活動を行った。学校・病院・店が閉まり、男性たちは家庭と職場の混乱を体験することになった。当時のアイスランドでは、女性の賃金は男性の約60%程度で、政治・経済分野への参画も限定的でした。この結果、翌年には 男女平等法が成立し、1980年、世界で初めて民主的選挙で選ばれた女性大統領が誕生した。

これに似た奇想天外な女性による平和活動がありました。


「この活動の中心になった女性」

1989年から続いたアフリカのリベリア内戦を終息させる為に、一人の女性活動家が中心となり、キリスト教徒とイスラム教徒が連携し、様々な停戦運動を行いました。その中でも特異なのは「セックスを拒否するストライキ」でした。この為に戦闘員である男性は、非戦を考えざるを得なくなった。そして、2003年停戦になり、さらにアフリカ初の女性大統領が誕生した(別の女性)。

こうして見ると、人類は結構果敢に権力者や資本家と対峙して、国家や社会で生まれた逆境を平和裏に改変していったのです。

 


「米国の20世紀における所得格差の推移。青枠は労働運動が激しい時代で、やがて所得格差が減少し始めた。赤枠は新自由主義が吹き荒れた時代で、やがて格差が拡大し始めた」

 


「米国の20世紀におけるGDP成長率の推移。青枠と赤枠は上記と同じ。国民が様々な権利を獲得し格差を少なくした時代も順調な成長を遂げ、国の経済は良好だった」


4.翻って、現状の酷い状況を見てみましょう。
 端的な例は、イーロン・マスクが行った連邦政府機関における大量の人員削減です。彼は、ツイッター社買収直後にも、大量の人員解雇を行っています。実は、酷い状況とは、彼のような常軌を逸した人材をもてはやし、重用している社会にあるのです。

 社会をリードすべき人は、資金力や特異な才能よりも別の優先されるべきものが不可欠です。少なくとも共感性などの豊かな人間性は必須です。まして人類がここ1世紀以上、体を張って築き上げて来た権利や福祉の概念を、いとも簡単に切り捨てられる者、それを自慢し、称賛する人間も、論外です。さらに情けないのは、その事に無頓着で居られる国民、社会こそ重篤な事態に陥っている事に気が付いていないことです。

 産業に革命を起こしたフォードもデズニーも、共に労働組合に敵対的でした。しかし、企業も労働者も共に生存する権利は同じであり、後者は個人では弱者なのです。当時の労働者はこれに真っ向から対峙して来たのです。

 私が不思議に思うのは、なぜ人々は優れた経営者を、企業文化以外でも称賛し、期待するのかと言う事です。例えば、オリンピック金メダルの選手が優れているからと言って、政治のトップに招きません。私が知る限り、成功している多くの経営者は強烈な個性を持ち、偏執的な情熱家で、パワハラを厭いません。ある心理学者は、企業経営者には反社会性人格障害が多いと述べていました。
 
 現状のトランプ現象について注意すべき点があります。この現象は、ヒトラー誕生前夜と似ています。トランプは米国と国民は大いなる被害者だと言い募っています。だからこの窮地を救うには、絶大な権力を振るう独裁者でなければならないとし、大半の米国民もそれを期待している。これはヒトラーがドイツ国民を煽情したやり方と同じであり、米国社会の不満の蓄積が、これに呼応し始めているのです。もう既に米国民は術中に嵌っている。非常に危険です。


次回は、日本について語ります。

 

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働くとは、何か 26

2025-05-22 06:21:39 | 社会

 

 

日本国民は、組織にあって滅私奉公を強いられ、必死に働いて来た。

国民の多くは、長時間労働と薄給に甘んじ、いつか豊かになる事を夢見て来た。
しかし実質賃金は横這いを続け、増税や保険料の値上がりが続いて来た。

悲しいことに、小泉や安倍首相らが勇ましい事を言っていたが、日本経済は良くならない。
国民はバブル崩壊から早や35年が経ち、かつての高度経済成長期からは半世紀にもなるが、朗報は無い。

一方、かつての仲間、欧米、さらには台湾、韓国にすら、日本は追い抜かれている行くのだから、日本の凋落は凄まじい。

 


「日本の賃金だけ横這いです」


何が悪くて、日本の働く人は、報われないのか?

A.政治家、特に長年与党の自民党
B.財界や企業家
C.官僚
D.労働者・組合
E.学者
F.国民
G.海外・外国

A.政治家、自民党が最大の元凶であることは多くの人が気付いている。 
 繰り返し露見する腐敗・汚職、族議員の利権漁り、世襲に象徴される贈収賄と見返りの地元優遇。自民党議員がこれらから抜け出せない限り、日本全体を見通した政策など実行できるはずがない。そんな彼らだからこそ、地方の新線増設に躍起になり、国鉄の膨大な赤字が目立って来ると、首切りと路線廃止、止む無しと他人事。

B.資本主義にあって、財界・企業家を非難するのは気が引けるが、その振る舞いは情けない。
 日本の組織やトップは労働者に甘えている。様々な労働者の権利に対して、トップは欧米、特に北欧に比べて意識が低いままである。これとて財界にとって、労働者を切り捨てる自民党が頼りになるからです。これは国鉄民営化の折に行われた組合潰しに現れている。
 加えて致命的な要因は、バブル崩壊後、企業家が守りに徹してしまい、さらに自民党がそれを容認し、援護射撃までして来た事にある。この事は安倍政権時の様々政策、特に海外援助62兆円などに現れている。これは産業革命を成し得た英国が19世紀半ばから凋落を始めたのと同じでした。簡単に言うと、国内での新規事業に尻込みし、海外への生産と投資に奔走している事です。

C.官僚は劣化してしまった。
 能力があるはずなのに何ら経済復活の有効打を打ち出せていない。行革、女性活躍、育休、子供給付、学費無料化、どれもこれも二番煎じばかりで、多くは周回遅れ。この醜態の半分の責任は、自民党議員の責任に帰せるかもしれない。法案はすべて、自民党が修正し最終決済するのだから。

D.我々労働者や組合も力不足だ。
 日本の経済状況を、他の先進国と比べる時、他の指数がほとんど悪いにもかかわらず、日本の労働者だけは高く評価されている。確かに良い所は多いが、一方で自己研鑽しない、組織に埋没する特性はいただけない。これが、周り回って、成長を阻害しているのかもしれない。
 労働組合も同様だ。国鉄民営化の過程で見せた、国労、動労、鉄労等の組合の分裂と対立は情けない。まとまって条件闘争をすればましな結果を得られたはずなのに、互いに足を引張り合った。初期に、一部野党の革命思想に振り回され、徹底抗戦を強いられた組合、また民営化がなされると御用組合に成り下がる組合など、あまりにも両極端で、浅薄過ぎる。これでは、組合は横暴で、怠惰で、役立たずと罵られ、国民から疎まれても仕方がない。労働の権利に対して、自民党議員や官僚の意識も低いが、国民や労働者自身も何処か欠落している。単に社会意識が低い、それだけのことかもしれないが。

 
E.経済学者のレベルが低い。
 ノーベル賞をもらう日本の学者は多いが、経済学者にはいない。政府が重用する経済学者は、米国の顔色を伺う為か、米国繫がりが目立つ。結局、雇われ学者は言いなりか二番煎じになる。これでは、混迷を打開出来る経済政策を提言出来る学者は日本からは出ない。行政改革と言っても、せいぜいカット、規模縮小、首切りだった。中曽根首相の行革も、当時流行りの英米の新自由主義の受け売りだった。これは20世紀初頭の労働者の時代に対する反動だったと思える。

F.国民が悪いと言えるのだろうか。
 一つ言えることは、日本を凋落させている政治家・自民党を凝りもせず、応援し続けている国民の多いことが不幸です。野党が頼りないのも事実だが。それもこれも、政治文化が低レベルだからと言ってしまえば身も蓋も無い。
 少し弁明させてもらう。遅れていた日本の政治文化にさらに不幸が襲った。戦後、米国はGHQやCIAを通じて日本を共産圏に対する橋頭堡にする為に、自民党首脳に肩入れし(現ナマ)、政府・議会を通じて合法的に、労働運動抑制と社会意識の抑制を図った。それが公務員のスト権剥奪や、教育現場での社会問題無視に繋がった。真逆の世界もある。北欧では、小学校から環境問題を扱い、中学・高校では支持政党に別れクラスで討議を行い、政治を身近なものにしている。これが高い投票率と腐敗の無い政治を生み続けているのだろう。
 政府批判や労働運動擁護は、マスコミ、裁判所などあらゆるものを通じて抑え込まれた。これが国民の社会意識を未成熟なままにし、これが悪い政治家を生み続けることにも繋がっている。かつて宗主国が、あらゆる植民地で同様な事を行って来た。 

G.海外と外国が悪いとは言えない。
 確かに、円安やトランプ関税は、日本国民にとって、生活を低下させることになるだろう。しかし、円安は日本が財界(輸出メーカー)の為に仕組んだものでした。トランプは見境なく、あらゆる国に関税を掛けようとしているので、他国も同じ状況です。強いて言えば、これまで日本政府は米国に盲従して来たのに、ニクソンやレーガン、トランプでの共和党政権時には幾度も苦汁を飲まされているのが残念だ。だが同じ状況で台湾や韓国が、日本を追い越して行ったのは、日本の停滞が原因だから、文句は言えない。


こうしてみると、日本は八方塞がりです。
日本には、良い所がたくさんがあるが、残念ながら経済復活とは結びつきそうには無い。

しかし、事はこれだけで済まない。

今後、日本はさらに大きな荒波に揉まれ、日本の労働者は一層窮地に追い込まれるだろう。

これは世界の潮流であり、日本はこの荒波から逃れられない。
過去も、他の先進国も同様でした。

 

日本の凋落と、世界の動きの関係を簡単に見ておきます。

第一段階; 戦後のグローバル化
 これは全体としては経済復興に大いに役立ったが、ここではマイナス面だけ取り上げます。

多国籍企業(特に米国)が小国の産業、環境を荒らし回り、さらにCIAなどが暗躍し、自国の都合により国家転覆等を図って来た。当時日本は、経済的に助けられ、社会的に後退させられたと言えそうです。

少し時期は遅れるが、人件費の安い国に先進国の産業の大半が移転してしまった。これが、ほとんどの先進国内に失業と所得格差を生む事になった。不思議な事に、トランプ周辺は、この事を不公正だとか、米国が被害者だと言い募り、関税で逃げ切ろうとしている。これと似た事は、レーガン時にもあったが、やり方はまだ筋が通っていた。

第二段階; 1980年代からのIT化
 これはデジタル化とその後のインターネット普及で、情報通信技術がビジネスの世界に効率化をもたらした。

人出に頼っていた業務が自動化され、単純作業者は失業に晒された。

さらに世界中の低賃金労働者に、容易に仕事を発注出来るようになり、高度な仕事すら、先進国から無くなっていった。米国がインドに計算処理などを夜中に発注する等。

同時進行; 米国の悪態
 米国は強権を振りかざし、自国の巨大産業を守る為に、身勝手な振る舞いで世界の災いを加速させた。
グローバル化による弊害を是正したい欧州先進国の協力を断り、放置して来た。例えば、タックスヘイブン対策や地球温暖化等。

米国は、英国と共に、レーガン、サッチャーによる大改革を行い、労働組合弱体化(非正規拡大、公務員削減)と金融経済重視に向かった。この事が、現在の経済格差拡大と失業率の高止まりに拍車を掛ける事になり、中曽根も続いた。

移民問題は欧米の先進国を悩ませているが、この背景に、米国の中近東への度重なる侵攻があった。中近東の難民は膨大な数に上り、ヨーロッパに向かう事になった。また各国の小事業者は、低賃金の移民を使うことで、コスト競争に立ち向かった。米国の事情も似ている。

 上記の政策変更と産業構造の変化は、それまで、手に職を持っていた労働者でさえ立場を弱くさせ、組合結成と維持を困難にさせた。
こうして、非正規雇用拡大、賃金低下、組合組織率の低下が進んだ。
だが各国政府は、これにより自由競争が一層進み、経済に良いと考えた(大いに疑問)。

 

「世界中、労働組合の組織率は低下し続けている」

 

「労働組合が弱体化すると、国民の多くは貧しくなる」


これが、現在までの状況です。
しかし、今後、10年を待たずに、AIによる産業革命が起きるでしょう。

これによる経済状況を予見するのは困難ですが、二つの側面がある。
経済以外に、社会に大きな影響と破壊的な問題を与える可能性はあるが、これについては触れません。

良い事; 経済を活性化させる。
 AIは生産性向上に役立ち、多くのサービスや製品がローコストになる。また新規の産業や製品、サービスが生まれ、大きな需要拡大が起きて、経済が大きく拡大するでしょう。しかし、具体的に読めない。

悪い事; AIにとって代わられる仕事が広範囲にわたり、大量失業が発生する。
 このことについて、多くの研究機関が職業毎の失業率を見積もっています。現在、高度な技術や熟練が必要とされている情報・創作・分析に関わる仕事でも、数十%の失業が見込まれています。

これの帰結として、さらに多くの労働者が失業と低賃金、不安定な身分に晒されるでしょう。
また労働組合組織率はさらに低下し、恐らく、無用の長物と見なされるようになるかもしれません。

このまま、現状の経済観念、自由競争至上主義が続くようで有れば、古代ローマ時代のように、一握りの超富裕者と、その日暮らしの人々と奴隷だけの世界になるかもしれません。
現状から言えば、日本が、その悪影響を無防備に受け、さらに凋落に拍車をかけることになるでしょう。

次回に続きます。

 

 

 

 

 

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働くとは、何か 25

2025-05-16 09:35:40 | 社会

 

私は1987年の国鉄民営化、JR誕生に違和感を覚える。

その後の橋本と小泉政権に至る一連の行政改革に対しても同様です。
この行革の過程を追って行くと、日本の政治、政党、組合の振る舞いに狭量さを感じる。

国鉄民営化が失敗だとか悪手と言っているのではない。
放置すれば1985年頃で累積赤字が37兆円になると予想された。
国鉄の運営側と職員(組合員)は共に問題を孕んでいた。
これを放置することは出来なかっただろう。
そして現在、JR各社は順調で、サービスも向上している。
首相の中曽根、臨調の土光敏夫、部会の加藤寛がいなければ大反対の中、成し得なかっただろう。

しかし、そこには幾つかの日本の深層心理、歪な意識が隠れており、結局は経済と国民に大きなダメージを与えてしまったと言える。

 

始めに、国鉄民営化の要点を挙げます。

大改革しなければならない理由。
1.膨大な赤字が続いていた。
赤字の多くは、長年に亘る毎年1兆円もの新線建設費が蓄積し、その元利払いだった。
モータリゼーションの発達と私鉄との競合により売上は減少し、収支は悪化傾向にあり、運賃値上げが続いた。
2.国鉄は通常の経営権限を持たず、また組合と馴れ合いになり、職員に業務指示が出来なくなっていた。
  予算や投資の裁量は運輸省や政府(自民党運輸族)に握らていた。つまり出費は他人がやり、儲けは国鉄の責任。 
3.組合はストを頻繁に行い、合理化に反対し、生産性は低く職場規律は悪化していた。

採用された改革手段
1.民営化; 採算を自覚させ、政治家から分離し、多角化と合理化を進める事が出来る。
2.分割; 本州3分割と3島分離により、地域に合った経営が出来き、競争原理が働く。 
3.人員削減; 民営化時に約10万人、それまでにも10万人ほどが退職しなければならなかった。JRには20万人ほどが配転となった。
4.資産売却; 保有地7兆円(バブル時に重なり、地価高騰抑制の為に販売価格は低く抑えられた)。
5.赤字処理; JR各社が後に14兆円を返却したが、さらに膨れ上がった残り24兆円は、結局、たばこ税等で賄われた。

国民から見て、納得しずらい点
分割により、多くのローカル線廃止が加速した。
大量の公務員等が失業・転職の憂き目に合い、生涯所得を減らした。
実は、上記二つは、日本経済に大きなダメージを与えただろう。
せっかくの都心の高額不動産を、裏で安く大手デべロッパーに売却している(繰返される悪弊)


経緯から見える事
民営化を決定するにあたり、紆余曲折、大反対の合唱があった。
国鉄民営化に関わる組織には、政府の行革担当(内閣)、諮問機関(臨調の経営者、識者、議員)、運輸省、国鉄、自民党運輸族、国鉄内の幾つかの分裂した組合が主なものだった。
これ以外にも、列島改造(鉄道建設)でぼろ儲けした元田中首相(田中派)と国鉄OB、野党が関わった。
国鉄の状況分析が進み、また国鉄が行っていた合理化計画の不完全さが明確になって来ると、民営化は多くが認めるところとなった。
また民営化は英米で興った新自由主義により、一大ブームになっていた。

しかし分割には抵抗があり、胡散臭さもあった。
分割は、赤字処理への不安やサービス低下、地方路線の廃線等を想定し、多くが猛烈に反対していた。
だが諮問機関は、民間で成功した再建事例等を調査研究して行くうちに、分割を民営化と同時に行ってこそ、目的を達するとの意を強くしていた。
やがて国鉄内の少数派であった若手改革派と自民党運輸族の三塚委員長が、分割で一致したことにより、形勢は逆転し始めた。
この改革派の三人は、後に本州JR3社の社長になって辣腕を振うことになる。
この経緯には、経済合理性だけでは説明仕切れない、人間臭さや権力争いがあった。
逆転が決まったのは、自民党運輸族が頼りにしていた田中角栄がロッキード裁判で脳梗塞で倒れてしまった事にあった。


胡散臭さの正体とは何か?
後に、中曽根首相は「国鉄民営化は組合潰しの画期となった」と公言している。
国鉄は1960年代のマル生運動(管理者らが職員を巻き込んだ生産性向上運動)において、裏で組合潰しを行っていた。
また日本の公務員は欧米と異なり、スト権が剥奪されていた(この異常事態を打破するために組合はストを打ち、頑なになった一面もある)。
これらの事から、見えて来るのは政府、与党議員や官僚は、労働者と組合を軽視、敵視している事がわかる。
これは、後のJR西日本の福知山線脱線事故に繋がった「日勤教育」(事故防止と称した職員への精神虐待)の横行に見えるJR管理者の意識に通じるものがある。
これを牽引した当時の社長は前述の改革派の一人で、当然、マスコミの追及にも反省の素振りを一切見せなかった。
職場で安全活動をやった者なら、JR西日本の慣行は時代遅れの最たるもので、パワハラに過ぎない事を理解できるはずです。

残念なことに斎藤知事(自治省の官僚出身)の如く、兵庫県ではこれが繰り返されている。
彼は内部告発者の扱いやパワハラへの反省がまったく無く、平然と振る舞える姿に、日本の官僚の「労働者軽視」が如実に現れている。
さらに、これらに無頓着な県民や国民にも唖然とさせられる。

根底にあるのは、政府・自民党議員や官僚らの、労働者と労働組合への軽視と敵視であり、無頓着な国民です。

 


「福知山線脱線事故:この無罪は、組織責任者処罰に関する法整備が遅れている事による」

 

しかし、事はそれだけで済まない。

上記だけが問題なら、労働者・公務員の待遇が先進国中最悪を説明できても、日本がこれほど経済を凋落させている事を説明できない。

私が「日本の労働」の異常さに歯がゆい思いを長年持ち続け、ここ半年間、調べて行くうちに、あることに気が付いた。
それは国鉄民営化と労働関連の本20冊ほど目を通し終えた時でした。

国鉄民営化関連の本は、政府・企業寄りの民営化礼賛本と労働者・組合寄りの民営化非難本に大きく別れます。
民営化礼賛本の一部には、国鉄の収支や赤字を取り上げ、丁寧な経済分析を装う本もある。
民営化非難本には、個々の退職した国鉄職員家族や廃線で仕事を失った人々の悲哀に迫るドキュメンタリーはある。
だが不思議な事に、中曽根から小泉の行革(1980年代から2000年代の公務員の合理化)による、100万人を越える労働者の退職がもたらす意味に向き合う本はなかった。

しかし「大量の労働者の失業・転職は、日本経済に巨大な需要低下を招き、確実に経済を冷却させると、マクロ的に分析している本」が見つかった。
それは、2001年刊の小野義康著「誤解だらけの構造改革」でした。

 

「失業者数の推移、失業者が増えるとその間に失業手当が国全体で4~5兆円支払われる」

日本経済が停滞を始めたのは1990年のバブル崩壊以降だが、上記の行革時期とも重なっており、直接だけで公務員100万人以上が転職・失業し、さらに関連する企業や労働者も給与を低下させている事を考えると、行革がバブル崩壊に輪をかけて経済を悪化させた事は容易に理解出来る。

私は日本の現状を嘆く者だが、政府、議員、官僚、経済学者、マスコミなど、誰一人として、労働の経済的意義に思いを馳せる者がいない。
組合や野党は権利を主張するだけで、経済的な視野に立って訴えないと、消費者である国民は真摯に受け止めてくれない。

しかし経済学者の小野義康は、不景気において失業者に仕事を与える公共投資こそが必要であって、逆に公務員を切る事は、経済を悪化させる自殺行為だと警告している。
民間企業のトップ(イーロン・マスク等)にとって、人減らしは企業発展の道具に過ぎないが、国はまったく異なる。国は失業者が税金を払えないからと国外追放にはしない。
むしろ再分配を適正にし、さらに失業者を雇用出来るように経済を浮上させる事こそ、国の使命です。
ルーズベルト大統領はかって、これを実行した。


つまり、日本の舵を取る人々、政府、財界、官僚、学者、政党は、経済全体、国民である労働者の経済的意義に向き合っていない。

これでは日本は良くならない。
政府、国民、経済学者、皆、二流になったしまったようだ。
いや昔から二流のままなのだろう。

次回に続きます。

 

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働くとは、何か 24

2025-05-15 12:30:43 | 社会

 

日本人は自分たちが豊かだと信じたいのだろうか?

「かつて日本の所得は韓国の2倍あったが、今や韓国に抜かれてしまった。」
と高校で生徒に実情を話すと、一様に驚く。

「かつてタヒチやハワイの幸福度はトップレベルだったが、その時、日本は最下位だった。」
とハワイでガイドが説明すると、若い日本女性が信じられないと疑っていた。

私もベネチア発ワールドクルーズやシドニー発南太平洋クルーズに参加して驚いたことがある。
それぞれ乗客は2500名と3500名であったが、両船共に日本人乗客は私ら夫婦だけであった。

 

最近の海外旅行で、日本の通貨の弱さを痛感する。
15年前の海外ツアー料金は、今のほぼ半値でした。

海外に出なければ、通貨の下落や日本の国力の低下に気づかない。
日本の経済指数(低い成長率、下がる賃金)を知れば凋落は明白なのだが。

それでも、周りを見渡すと、皆が平和で幸福そうに見える。
このギャップは、どこから来るのだろうか?


だが日本の将来を考えると、もっと恐ろしい。

 


先進国は、戦後のグローバル化、80代に始まるIT化、レーガノミクス(新自由主義)の荒波にもまれ、産業構造や労働環境が大きく変化して来た。
ここに来て、数年前から急速に現実味を帯びたAIによる大変革が、大失業時代を招くかもしれない。
さらに、トランプによる大国のエゴ剥き出しの気ままな経済政策が荒れ狂っている。

加えて、日本は唯一、経済の低成長継続と著しい少子高齢化を抱えている。
どう考えても、ここ30年の日本政府の政策では、復活はむなしい夢になりそうです。

私は、「日本の労働者よ! 奮起せよ!」と言いたくて、連載を始めたが、八方塞がりの状態だ。

世界の状況はさらに悪化し、日本も先進国中最悪を継続しているにも関わらず、国民は我関せず、相変わらず政府は恥と無策を繰り返すばかり。

それでも、私としては、少なくと日本の労働者にとってより良くなる為に、問題点だけでも明らかにしたい。

次回に続きます。

 

 

 

 

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5月中頃まで休みします。

2025-03-10 06:59:39 | 社会

勝手ながら、ブログ投稿は5月中旬まで休まさせていただきます。

「ワールドクルーズ」と「働くとは、何か」の続きは、5月中旬以降から再び始めます。

よろしくお願いします

 

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働くとは、何か 23

2025-03-07 08:37:07 | 社会

これまでの第1話から第22話を簡単におさらいします。

次いで、残りの連載で、何を語るかを書きます。

 

 

「いたるところで、寂れる商店街」

 

* これまでの連載毎の要約

 

第1~4話では、人々の働く様子を、世界の古代から近代までの日本と近代の英国を中心に見て来ました。

 

第5~8話では、労働運動が興る様子を、主に英国と日本で見て来ました。

 

第9~15話では、現在日本で進んでいる異常な働き方を、主に国鉄民営化(JR)を切り口に見ました。

そこには日本政府の労働運動への長年の怨念、さらに米国の意図が働いていた事も見ました。

 

第16~17話では、日本の労働者の働く状況を海外と比べ、如何に悲惨かを確認しました。

 

第18~19話では、日本の労働者の所得と公務員削減が海外と比べ如何に酷いかを確認しました。

 

第20~22話では、この半世紀で、日本、北欧、米国のいずれが、最も国民の幸福を得たかを見ました。

そこには予想を越える違いが生じており、日本国民が最も過酷な労働に耐えていたはずなのに、得られた物は最も少なかった。

 

 

「腐敗と老害が蝕む」

 

* 第1~22話で、判明した日本の労働事情と労働運動の現状

 

・ 日本人は古代から現在に至るまで、働かされて来たと言えそうです。

1500年間にわたり、所得の半分以上を国家に納め続け、最近は先進国の水準にすら入れないのですから。

 

・ 産業革命後、英国が先頭を切って労働組合の結成を進め、世界に広がった。

しかし残念なことに、軍国主義の日本では労働組合は、ことごとく潰されていった。

 

・ 戦後、日本で起こった最大の労働組合と労働者政党潰しがJR誕生でした。

これは日本上流層の長年の怨念と、戦後のGHQ、英米発の新自由主義による労働組合敵視が重なって起こった。

その後、日本はバブル崩壊の後遺症と公務員削減や賃金カット等の緊縮政策が仇となり、経済は長期衰退期に入った。

 

・ 日本人の働く状況(賃金、税負担、労働時間、ストレス、休暇取得等)は、すべてにわたり先進国に比べて劣り、さらに悪化し続けている。

 

・ かって日本の労働慣行こそが、高度成長を生んだと絶賛されたが、それは幻となった。

日本の労働慣行は、高度経済成長要因の一つではあったが、他に幾つも重要なポイントがあった。

むしろ、現在は、年功序列の残滓、非力な労働組合、非正規拡大、男女差別等が仇となり、社会経済は窒息状態にある。

働く人は、転職・失職を恐れ、止めるに止められず必死に働かずを得ない。

 

・ 皆さんはこれまで頑張って国に尽くして来たが、日本の経済や社会状況は悪化の度合いを深めている。

一人当たりGDP、賃金、企業の国際競争力、言論の自由度、政治腐敗等が、悪化し続けている。

これは端的に言えば、政治が腐敗し、産業界が保守化しているからです。

産業界が高付加価値を生む新規産業育成の意欲を無くして行く中で、政府はそれら企業を保護する為だけに、法人減税、消費増税(輸出企業優遇)、円安、金融緩和、海外投資の援助で応えている。

こうして、企業は益々ぬるま湯で安楽死を待つだけになり、政府はそれら企業からの見返りで、政権維持を図ることが出来ている。

 

・ 大戦後、欧米先進国は、概ね自由貿易の資本主義により繁栄を謳歌して来たが、異なる政策が、国民の幸せを大きく左右してしまった。

平等を目指した福祉国家の北欧5ヵ国が、地球上最高の幸せと経済成長を手に入れるようになった。

片や、英米は新自由主義による金融経済の大膨張を手に入れ、資産家は益々豊かになって行き、日本も追従に必死です。

その一方で公務員の大量解雇や労働組合の活力が削がれた事により、労働者の立場が弱くなり、生計の不安定さと賃金低下が進み、恐ろしほどの経済格差が社会を襲い、社会が分断されるに至った。

先進国で最も格差が進んでいるのは米英日の順で、共に国民の幸せが遠のいた。

トランプ再登場で、さらに米国を筆頭にヨーロッパも悲惨な状況に巻き込まれるだろう。

 

 

「多くの人々は益々幸福から遠ざかる・・・」

 

* 今後、語りたい事

 

・ 20世紀以降、人類が成し遂げた労働運動の意義を確認したい。

労働組合が何を成し遂げて来たのか、成果の一端を紹介したい。

 

・ 日本国民を苦しめる腐敗政治の一端を、国鉄を例に確認したい。

如何に、議員達が国民から税を掠め取り、己れの周辺企業等を潤わせて来たかを見たい。

 

・ 民主主義が未完の日本では労働運動が遅れているが、それでも、中世より民衆は団結して、自らを守ろうとした事が少なからずあった。

古くは戦国時代まで遡り、一揆や組合の活躍を見ます。

 

・ 蔓延する新自由主義の問題にも触れたいと思います。

簡単に言うと、経済学者フリードマンのマネタリズム理論が、結果的に富裕層に莫大な富をもたらし、彼らは莫大な資金を使って議員、学者、マスコミ、そして民衆を取り込み、政治を操るようになった。

こうして彼らはより富を集めることが出来るようになり、経済格差の拡大が加速するようになった。

これがトランプ再来の大きな要因になった。

おそらくこの暴走を止めない限り、大惨事がいずれ起こるでしょう。

 

・ ここ半世紀、世界はサービス産業への転換、次いでIT革命を経て、この数年でAI産業革命に突入した。

これは産業・企業・労働に大変革をもたらし、大失業時代を経て新産業の勃興が予想されます。

この問題にも、いくらか触れたいと思います。

 

 

*勝手ながら、都合によりブログ投稿は5月中旬まで休まさせていただきます。

従って、「ワールドクルーズ」と「働くとは、何か」の続きは、5月中旬以降から再び始めます。

よろしくお願いします

 

 

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働くとは、何か 22

2025-03-05 07:25:27 | 社会

 

今回は、他国と比較する最後として、日本政府が盲従する米国を取り上げます。
米国はGAFAMに代表されるITやAIで先端を行き、世界を牽引しています。
しかし、一方で綻びが目立つようになりました。


* 先ずは米国の凄さから見ます

 


「 図1. 以前は国際競争力は上位だったが、低下し始めている」
現在、米国企業が世界のトップを占めているが、北欧とアジアの競争力の高まりに押され、米国の競争力に陰りが出て来た。
我々凡人には米国の競争力衰退を実感出来ないでしょうが、底流で何かが起きている。
日本もかっては高度成長で海外からもてはやされたが、その後、長い衰退期に突入した。
AIによる産業革命が米国を潤すのか、それとも大量失業の果てに大混乱を招くのか、残念な事に今の米国政府の振る舞いは危なっかしい。
予断を許さない状況です。

 

「 図2. 米国のベンチャー投資は群を抜いている」
米国の経済力は日本の4倍ほどあるが、それを差し引ても12倍はある。
現在はもっと差が開いている。
これが米国で新しい産業GAFAMやOpen AIが生まれた大きな理由の一つです。

 

「図3. 右の赤線が示すように移民の増加が、経済成長を支えている」
二つのグラフは、先進国では移民の多さが成長率と相関している事を示している。
移民による労働者数の増加がなければ、成長は期待出来ないだろう。
また米国のように、GAFAM等、先端産業の起業家の多くは、一攫千金を求めて米国に移民した天才達です。
移民政策は諸刃の剣であり、日本は慎重に策を講じて進めなければならないでしょう。


* 米国国民は幸せか?
これだけ将来性のある企業が多く生まれる米国の「働く人」は幸せなのだろうか?

 


「 図4. 米国は1990年の23位から低下し続け、2022年には31位になった」
また世界幸福度ランキングで、米国は前年から順位を8段階下げて23位となった。
ランキングの発表以来、米国が上位20カ国に入らなかったのは初めてだった。


* 米国で何が起きているのか?

 

「図5 貧富の差が拡大し、50%の国民の所得は半世紀かけて若干マイナスになっている」
米国の超金持ちは一人で総資産35兆円を有し、さらに上がるだろうが、多くの国民は下がっている。
1946~64年に生まれた米国の世代は、平均で97万ドル~120万ドル(約1億8200万円)の純資産を持っている。
一方で、2022年後半から23年前半にかけての大量解雇の波により、雇用主に対する不信感や不安感が生まれ、同世代の半数以上が「お金が足りない」と回答し、70%近くが、自身の経済状況が思わしくないと答えている。
つまり、米国経済全体では好調なのだが、大半の国民には腹立たしい状況なのです。

 

「図6. 米国の犯罪率は高く、先進国では最悪」
ここ20年程、米国の犯罪率は低下傾向にあるが、銃による殺人数は世界トップレベルです。


* 米国民が幸せを感じない理由(私が推測する)

・貧富の差が拡大し続け、多くの貧しい人々の暮らしがより過酷になっている。注1.

・銃犯罪が多いため、治安の悪化が切実。

・移民の増大で、白人以外の人口が米国人口の50%を越えることに白人は不安を持っている。注2.

・政党の対立を背景に扇動家が、失望と不満をさらに煽る。注3.

 

* 幸福度が低下している背景は何か?

 

「図7. ここ15年ほど、英米が先頭切って政府債務を急拡大させている」
日本は、今でもGDP対累積債務残高は群を抜いて多いが、先進5ヵ国はリーマンショック後、史上最大の金融緩和を推し進め、債務が増大傾向にある。
日本もアベノミクスで大規模な緩和策を採ったが、それ以前から債務残高が多かったので、グラフでは目立たない。

 

「図8. 米国の家計金融資産は群を抜いて増えている」
米国の金融資産増加のほとんどは株式投資等の運用リターンが占めているが、これは金持ちがより金持ちになっている理由です。
米国の運用リターンは平均複利年5%だが、資金が巨額であればあるほど10%近くになっている。
日本では1%に過ぎない。
米国で起きていることは、政府が発行した大量の貨幣を民間が借り、投機や投資で増やし続けている状況です。

 

「 図9. 先進国がGDP以上にマネーサプライ(注4)を大幅に増やし、株価が急上昇」
赤矢印の2008年以降、赤上下矢印の間隔(マネーサプライと名目GDPの差)が開き続けている。
これが富者に、より多くの富みをもたらしている理由ですが、米国経済は将来大きな危機に見舞われる可能性が高まっている。


この金融政策は、80年代から始まったマネタリズム(金融政策で景気を制御)が起こした最大の金融危機(2008年のリーマンショック)の後処理が招いたと言える。
これまでの金融危機(恐慌)の後処理でも、金融緩和は行われていたが、再発を恐れて、経済成長(GDP)以上の貨幣発行は行われていなかった。
しかし英米等は、経済成長を越える史上初と言える膨大な貨幣発行を最長の17年以上続けている。
この結果、起こりうる危機は二つある。
一つは、最大のバブル崩壊、金融危機が起こり、経済は大打撃を受けるでしょう。
この事を、投資の神様、ウォーレン・バフェット氏が2024年に指摘している。
今、一つはハイパーインフレが起こり、経済と暮らしに打撃を与えるでしょう。

 

「図10.欧米の経済格差が80年代から急激に拡大している」
赤枠の時代は、大戦後、各国がグローバル化で経済成長し、格差が抑えられ、特に日独が急成長した時代でした。
またルーズベルト大統領が提唱した政策を米英が押し進め、労働者の賃金が上昇した後に訪れた時代でもありました。
しかし、それ以降、米英日が牽引した政策が先進国の格差を急拡大させ、米国では上位10%の所得層が、全国民の所得の50%を稼ぐようになり、さらに拡大している。

これが今の米国や日本の国民大半を苦しめている大きな理由の一つです。
これは80年代、サッチャー、レーガンが始め、中曽根が追従し新自由主義経済を始めたからです。
一言で言うと、規制緩和と金融経済への以降です。
具体例として、政府は累進課税を捨てて富裕者を優遇し、金融危機再来を防止する規制を取り払い、投資を奨励した事です。
その結果、巨額の資金を得た富裕層が、金で政治や選挙を操るようになり、益々、自らに都合の良い政治・経済システムに改変出来るようになったのです。


* もう一つ格差拡大の大きな理由があります。

 

「図11. 米国の臨時雇用の保護指標が先進国では最低」
つまり首切り自由がまかり通っている。
以前は、民主党に投票していた労働者も、状況悪化に居ても立っても居られず、極端な解決策にすがったのが、今回のトランプ再選でした。

 

「図12. 労働組合の組織率がどんどん低下している」
米国が低いのには訳があります。
80年代に、新自由主義が押し進められる中で、徹底的に労働組合の弱体化が図られた。
その後も米国では、さらに共和党が組合潰しに奔走した。
この点、日本もまったく同じでした。

 


「図13. 米国の労働組合組織率(青)が高い時代(戦後から70年代)は経済格差(赤)が低かった」
労働組合組織率(青)が急激に上昇しているのは、ルーズベルト大統領によるニューディール政策が功を奏したからです。

最近、米国でも、労働組合を見直す議論が出ているようです。
しかし残念ながら、トランプの再登場で、金持と投機優先に拍車がかかり、雇用・組合の弱体化が図られるので格差は拡大するでしょう。
やがて騙されたと気付いた国民は、暴発するかもしれない。


次回に続きます。

 

注1. 解雇が容易な上、福祉政策が切り詰められつつあるので、ホームレスが大都市の通りに溢れている。
大都市の路線バスと図書館の1階には、必ず多くのホームレスが居る。市民は概ねホームレスに親切か、慈善活動を通じて助けているか、その一方、無視している人も多い。
自己責任が根付いている為、元々医療制度は貧弱で、貧しい人は金銭的にさらに苦しめられるか、医療を断念するしかない。
さらにトランプ共和党の政策で、政府縮小による福祉政策と税による所得の再分配は後退し、より金融・投機が奨励され、生活を守る規制はことごとく撤廃されていくだろう。
こうして富者はより富みに、貧者はより貧しくなる。

注2. 白人の人口は、既に60%を切り、今後も低下するだろう。
米国の大都市、南部のジョージア州アトランタの市内を走るバスは黒人ばかり、中西部デンバーのバスも、白人以外の様々な人種が多い。私は特に危険を感じなかったが、治安の悪化を恐れてか、金持ちの白人は郊外に住むようになっているようだ。

注3. 共和党は、1990年代に活躍した共和党下院議員ギングリッチを筆頭に、苛烈な民主党攻撃を始め、今のトランプカムバックに繋がるスタイルを持っに至った。
またプロテスタント右派も、リベラリズムによる教義(堕胎、進化論教育)に反する政策に神経を益々尖らせ、さらにイスラエル擁護で、民主党攻撃を盛んに行うようになっている。
結局、社会がうまくいかなくなり、失望と不満が蔓延すると、人々は何も信じられなくなり、扇動家の分かり易い単純な解決策(陰謀論)に希望を持っようになる。
こうして産業界や富裕層、宗教保守派の利益を代表する政党が、力を増す事になった。
この手の混乱から独裁へと向かう政変は20世紀前半、各国で起こっていた。

注4. マネーサプライは通貨供給量(M3)と訳され、市中のお金の動きを示す重要な経済指標です。 普通預金や定期預金、当座預金などの残高の合計です。
景気とマネーサプライの関係を表す式 MV=PY
右の項、Pは「物価」、Yは「実質GDP」で、PYは名目GDPを表す。
左の項、Mは「マネーサプライ(貨幣供給量)」、Vは「貨幣の流通速度」。
つまり市中の貨幣の流通速度が同じであれば、政府が貨幣供給量を増やすほど名目GDPが増えることになる。
もし貨幣の流通速度が早くなれば、インフレが亢進することになる。

 

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働くとは、何か 21

2025-03-02 09:04:38 | 社会

 

これまで日本の悲惨さを見て来ました。

今回は、世界に素晴らしい国々があることを紹介し、その理由も探ります。

それは北欧ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、フィンランドです。

 

 

* 北欧の紹介

 

皆さんの北欧のイメージは、寒い国、フィヨルド、バイキングが強いのではないでしょうか?

北欧の1年の半分は日本からすると冬で、ノルディックスキー発祥の地であり、アイスランドとノルウェーは一部氷河に覆われ、北極圏に近いのでオーロラが見られます。

フィンランド以外は、11世紀頃、世界の海を荒らした勇猛なバイキングの故地でした。

 

* なぜ、このように自然が厳しい北欧が素晴らしいのでしょうか? 注1

 

 

私は30年以上前にスウェーデン、デンマークを企業視察で訪れ、そして2018年にノルウェー、スウェーデン、デンマークの都市を一人で巡りました。

私が北欧を訪れたのは11月と6月で、北部では雪国の風景と、初夏の湖畔や海岸の風景を堪能しました。

 

* 私が受けた印象

・ 家族や友人との生活を優先 ⇒ 午後4時を過ぎれば帰宅を急ぐ人や、街・郊外は寛ぐ人で溢れる。

・ 人権や環境保護への意識が高い ⇒ 男女格差ほぼ零、男性の育児休暇は必須、活動家グレタの生誕地。

・ 小学生から政治参加 ⇒ 投票率が高く、腐敗政治家がいない。

・ 日本と異なる企業と労働 ⇒ 外注比率が少なく世界に通じる企業が多く、有給休暇が多く、キャリアアップで転職する労働者も多い。

・ 福祉国家 ⇒ 医療・年金・教育・転職・障害者等に手厚い保護がある。

 

30年を経ても、これらは変わらず、さらに発展し豊かになっていました。

ただスウェーデンだけは、現在、移民問題で国民の不満が募っているようです。注2

 

 

 

* 具体的に良さを見て行きます

 

 

「 図1. 北欧5ヵ国は、毎年常連の幸福度ランキングで10以内」

ちなみに、2024年の世界幸福度ランキングで、日本は143カ国中51位となり、順位を下げ続けている。

 

 

 

「 図2. 北欧のGDP(国内総生産:$換算)は増大し続けている」

日本は1990年代から横這い。

 

 

「 図3. 男女格差が最も少ない北欧」

日本の順位は、2024年で118位/146か国でした。

 

 

「 図4. 高所得ながら格差が少ない北欧」

 

北欧は高福祉国家の為、税負担が多く、大金持ちに成れない企業家は意欲を削がれているはずなのに、なぜ経済成長するのだろうか?

例えば、大富豪を夢見た海外の天才達は米国に移民し、米国の高成長を牽引している(IT産業など)。

北欧には、その条件が無いのに、なぜ可能なのか?

 

 

* 成長と豊かさの秘密

 

 

「 図5. デンマークとアイルランド、スウェーデンの国際競争力は最上位」

 

 

「 図6. デンマークと日本の比較から見える北欧の良さ」

デンマークは政府、ビジネス、インフラについて、抜群に良いと言える。

デンマークが劣っているのは物価と租税政策ぐらいで、日本が優位なのは雇用ぐらいです。

この連載の20話でも示したが、デンマークと比べ日本の悪さがよくわかる。

 

「 図7. 北欧は世界で最も腐敗していない国」

図6で、日本の競争力が低い理由に「政府の効率性が悪い」がありますが、これは腐敗度と関係していると思われる。

北欧のように国民の意向が政府にストレートに届き、政策が国民の為に行われているなら、今の日本のようにはならなかっただろう。

 

 

「 図8. デンマーク企業の方が、日本より小規模」

日本の企業では従業員数50名以上が5.2%あるが、デンマークだは1.2%と少ない。

また従業員数0人が半数を占めている。

つまり個人企業が多い。

これは何を意味するのだろうか?

 

「 図9. 北欧はベンチャーキャピタルが活発」

これは重要で、この傾向は米国にもあるが、日本には無いものです。

 

ベンチャー事業が多く生まれると言うことは、競争力を無くした旧産業は市場から消え、その従業員は新たな産業へと転職して行くことになります。

ここで、デンマーク等の北欧は、その力を発揮します。

政府は、産業転換と転職を当然とみなし、労働者の休職中の給付と再教育システムを構築し、手厚く転職を支援しています。

米国や日本は、産業転換と転職について、自由競争として個人の責任に課し、セイフティーネットを設けていない。

この事が、米国の低所得者の不満増大による社会分断と日本企業の停滞を生んでいる。

北欧では、働いてからもキャリヤアップの為に勉強するのは当たりまえだが、日本人は学校を卒業すれば、勉強する人は稀です。

 

私が30年以上前、企業を訪問して驚いたのは、従業員200人ほどの企業(騒音計メーカー)が、世界に数ヵ所支社を持ち、世界相手に事業を展開していたことでした。

実は、北欧の企業の特徴は、小さいながらも世界を目指し、「1つのニッチな分野に深く特化している」点です。

従って、日本のように低賃金で仕事を貰う下請け零細企業は無く、メーカーは部品を下請けに出すことも無いと言うわけです。

北欧では、小学校を終えるまでに母国語以外に2カ国語を学ぶ。

また高校から大学等に進学する前に、外国や就業の経験を経て、進路を決める事を奨励している。

このような事が、事業の国際展開を支え、貿易額はGDPの65%にもなっている(日本は32%)。

 

 

* この帰結が、以下の成果を生んでいる

 

ニッチを目指す企業は多種小ロット生産になるので、従業員はベルトコンベヤー等に急かされずに仕事をする事になる。

この事も、人に優しい作業環境が実現出来る理由でしょう。

 

 

「 図10. 北欧の労働生産性は日本の1.3~1.8倍」

作業はのんびりしているように見えるが、生産性は高い。

この理由は、高付加価値商品を生み出しているからです。

つまり独創性のある、高く売れる商品を提供しているからです。

 

「 図11. 労働時間は短くなり、休日が増えるデンマーク」

賃金が高く、労働時間が短く、長期休暇が取れ、ストレスの少ない、働く人に取って夢のような国が北欧なのです。

 

ここでは要点だけしか長所とその理由を説明していませんが、実に細かく、幸福度を向上させるシステムを日々改善し続けられているのです。

それもこれも、地方と中央の政府、労働者代表と企業代表とがタッグを組んで、責任と変革を担っているからです。

 

 

これは私がスウェーデンの地方都市、カールスタッドを2018年6月初めに訪れた時の写真です。

平日の4時を過ぎて、街を歩いていると、仕事を終えた人々が、通りに溢れ出した。

上の写真の左、川沿いのレストランのテラスは、友人連れや夫婦らで満席になり、ビールを呑みながら歓談していた。

下の写真、若い女性達が水着姿になり、上の写真の数百m上流のウッドデッキで日光浴を始めた。

このような光景は北欧三ヵ国、いずれも同じでした。

 

毎日残業に追われている日本では考えられない光景でした。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

注1. フィンランドを除く北欧は、ヴァイキング精神(アイスランドのように全員が平等に国を治める)が息づいており、それが平等を重視する高福祉国家へと向かわせたと言えます。またヴァイキングは残虐な略奪者と言うよりは、生活の糧を得る為に、遠隔地との交易を目指した開拓精神豊かな航海士と言えます。また北欧はバルト海で大陸と隔てており、西欧からの干渉受ける事が少なかった。一方、フィンランドはロシアからの干渉や脅威に晒される中で、民族を事にするがスカンジナビア半島の北欧同士として、歩みを一にして来た。この事が、大戦後、共産主義では無い、自ら作り出した高福祉国家へと共に進ませ、現在に至った。大戦時、北欧はドイツやロシアの侵攻を受けたが、中立を唱えていたことにより、被害は軽傷で済んだ。また北欧は寒冷地の為、農作物に恵まれず、生活は苦しかったので、かつてスウェーデンから米国への移民が多い時代があった。こうして北欧は、技術優位、国際貿易、教育重視の政策を生んだと言える。

 

注2. 北欧は、近代以降、人道支援と中立を謳い、小国ながら西欧から独立を早くに認めてもらっていた。そしてPKO(国連平和維持活動)に積極的に参加して来た。また移民・難民の受け入れには積極的でした。かつ移民・難民の受け入れ体制(教育と就職)は西欧に比べ優れたものでした。しかしスウェーデンは、ここ10年の間にアジア(特に中国)からの移民が急拡大し、治安の悪化を招き、社会には不満が蓄積しているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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働くとは、何か 20

2025-03-01 08:55:45 | 社会

 

 

これまで日本の「働く人」の払った犠牲を見て来ました。

残念ながら、この犠牲を持ってしても日本経済の衰退を止める事は出来なかった。

今回は、日本経済を衰退させている元凶に迫ります。

 

* 先ずは良くなった所から

 

 

「 図1. 22年間で企業利益は約3倍増、内部留保は400兆円増になった」

グラフから22年の内部留保増(ピンク線幅)は約30兆円で、2024年の消費税総額は24兆円でした。

つまり、下々の国民が、せっせと上納した分がそっくり企業の内部留保になったようです。

貧乏人のひがみかな・・・

 

 

「 図2. 24年間で民間の金融資産は1.6倍になり2200兆円になった」

この内、企業の内部留保は600兆円ある。

この資産の内訳は、現預金が51%、保険・年金・定型保証が25%、株式+投信等が19%でした。

以前紹介したように、この20年間、実質賃金が10%ほど低下している中で、低所得層の国民ほど消費税の負担率が多いのにも関わらず、せっせとお金を貯め込んでいる。

 

 

* 実は、日本経済で良くなったのは、企業の利益と国民の金融資産だけなのです。

他のほとんどの経済・社会指標は悪化している。

救いは、治安や医療・年金保険、教育ですが、油断は出来ないでしょう。

 

 

* 悪い所を見て行きます。

日本の衰退がよくわかるはずです。

 

 

「 図3. 日本の累積債務残高/GDPは群を抜いて高い」

なぜこんなことに成ったのか?

 

「 図4. 日本は毎年、税収とほぼ同じ額を借金している」

このことで、世界でも飛びぬけて巨額の財政赤字が溜まってしまった。

ふつう、毎年30~60兆円もの財政投資(公共投資等)をすれば、その数倍もの経済効果が出て、好景気になるものだが、そうはなっていない。

こんな情けない経済になった原因を適切に説明し、対処法を提示出来た経済学者も政治家もおらず、無策のまま今日まで来た。注1

結果、国民の収入は減り続けただけでした。

 

 

「 図5. 他の先進国は経済成長を順調に遂げている」

今まで、行われたのは・・・

中曽根、小泉、安倍氏に代表される、緊縮の行政改革、効率化と言う人件費削減。

次いで、安倍氏の超金融緩和で起きた円安による輸出企業の高成績と物価高。

その挙句、国民は先進国から取り残された。

 

 

* 日本で何が起きているのか?

 

 

「 図6. 日本の国際競争力は凋落し続けている」

世界的に評価されているIMD(国際経営開発研究所)が、毎年、最新の調査データを収集し分析し、競争力を発表している。

 

最も悪い指標を幾つか、2020年度版の幾つかある項目の中からビジネスについて見ます。

起業家精神63位、企業の意思決定の迅速性63位、機会と脅威への素早い対応63位、ビッグデータ分析の意思決定への活用63位。

 

2022年度版のビジネス項目から

柔軟性と適応性、企業におけるデジタルトランスフォーメーション、企業の意思決定の迅速性の3指標で63位と最下位、生産性・効率性57位。

 

他にも政府、人材、インフラなどの指標があるのですが、最下位に近いのは上記のビジネス指標ばかりです。

ちなみに、飛びぬけて良いものを20220度版から幾つか挙げておきます。

科学インフラ8位、健康・環境9位、雇用2位ぐらいでしょうか。

 

指標全体から判断すると、日本の競争力を削いでいるのは企業が一番、次いで政府であり、経済状況は相応、唯一健闘しているのは、科学・教育・雇用でした。

如何に国民、「働く人」が健闘しているかがわかる。

 

 

 

「 図7. 日本の繁栄と衰退を象徴」

 

左は1989年、世界のトップに名を連ねたのは日本の大銀行でしたが、30年も経つと様変わりした。

何が起きたのでしょうか?

 

先ず、1989年の浮かれた様子を思い出してみましょう。

1989年、「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」で、大蔵省とその後に倒産する多くの大銀行との癒着が発覚した。

1987~1990年、日本の大企業がアメリカの企業や不動産を買収するニュースで賑わった。

1989年末、株価が暴落し、バブルが崩壊した。

 

結局、日銀の金融緩和と政府による金融業界の過保護が仇となって、巨大なバブルを招き、崩壊し、その後の衰退が始まった。

 

それでは、なぜ米国は飛躍出来たのでしょうか?

一言で言うと、米国は新しい産業を育てる民間の力がずば抜けているからです。

右の2022年の巨大企業は30年ほどで、ガレージから超巨大企業になり得た。

それはシリコンバレーに代表される起業を奨励・援助する風土です。

 

先ず、大学は天才を集め、次いで起業の手伝いまで大学で行う。注2

さらにベンチャーキャピタルが、開発・成功の評価を行い、巨額の資金を提供する。

ベンチャーキャピタルは成功の暁には、投資額の100倍の利益を得ることも可能です。

当然、創立時に関わった起業家や開発者も、持ち株を売れば莫大な利益を得られる。

これが現在、米国のAI開発競争でも、効果を発揮しています。

 

皆さん、気づかれたでしょうか?

現在、米国と世界を牽引している大企業トップの多くは開発者であり、技術者なのです。

一方、物づくりが得意と思われている日本の大企業トップのほとんどに技術者は居ない。

むしろ目に付くのは中央官僚の天下りでしょうか。

 

 

* 何が日本経済をダメにしたのか?

 

・ 政府は少子化を家族(女性)の問題とし対策を怠った。⇒高齢化で福祉負担が増え、労働力が減った。 

 

・ 政府の規制緩和(非正規拡大)、行革(公務員削減)、法人税減税に替えて消費増税。⇒大幅な賃金低下と大幅な消費減。

 

・ バブル崩壊後、政府は企業の意欲減退に延命策(金融緩和、円安、減税、非正規拡大)で応えた。⇒企業は、既存の設備と製品、海外生産拡大、人件費カットで、利益増を狙った。

 

・ 政府の巨額の財政赤字継続。⇒国民は不安になり、預金に専念しているので、消費が増えない。注3.

 

結局、政府が「働く人」を犠牲にし企業を護っているが、これが仇になっているのが現状ではないでしょうか。

 

 

* 以下に、幾らか証拠を挙げておきます。

 

 

「 図8. 日本の屋台骨と言われた製造業は衰退している」

製造業の付加価値が減っているのは、生産性が伸びていない事ともあるが、一番は、新製品(高付加価値商品)を生み出していないことが大きい。

つまり急いで、次の産業を生み出さないと生き延びることが出来ない。

しかし企業家は現状維持で、逃げ切ろうとし、政府も保護するだけ、これではかつての英国のように衰退するのも頷ける。

 

 

 

「 図9. 日本の企業は利益(赤線)を増やしているが人件費(緑線)は横這い」

人件費(緑線)が上がり売上が上がる時代はかってあった。

 

「 図10. 実質賃金が下がるばかりなのに、国民負担率(紺線)は上がるばかり」

 

 

 

 

「 図11. 潜在成長率はバブル崩壊以降、低下し続けている」

このグラフから、労働力、労働時間、全要素生産性(注4)すべてが、長期に減少していることがわかる。

特に企業による資本投入(設備投資)が著しく少なく、これが生産性低下や新規商品開発の停滞を生んでいる。

ここ数年は上昇の兆しが見えますが、先行きは不透明。

 

 

「 図12. 海外設備投資に比べ国内投資は減少傾向」

図1の内部留保や利益が鰻登りでも、企業は国内投資を増やさない。

企業は、海外への設備投資と金融投資で利益を上げる事に専念している。

このような状況で、首相自ら企業の海外投資を押し進める愚を行って来た。

安倍氏の60兆円、石破氏の150兆円等です(もっとも財界の意向を受けてですが)。

かつて英国が19世紀半ばから衰退し始めた時と同じ企業家の行動を政府が支援しているのですから、開いた口が塞がらない。

 

 

 

「 図13. 後ろ向きの設備投資が多い」

最も投資拡大しているのが維持・補修(黒⇒)で、成長に必要な研究開発や新製品等への投資(赤⇒)は減っている。

現在、日本の経営者は、昔のように利益を従業員に還元することは考えず、投資もせず、只々、企業に貯め込む事を考えている。

これでは「働く人」が一色懸命であっても、徒労に終わる。

 

 

次回に続きます。

 

 

注1.高度経済成長を終えてからの80年代以降、これまで日本は、公共投資による需要喚起策と逆戻しの緊縮政策(行革)を繰返したが、成功しなかった。次いで安倍政権がリフレ理論(手軽で大幅な金融緩和策)に出たが、今に至るまでデフレを解消出来ず、円安で庶民は喘ぐだけになった。現在、現代貨幣理論(MMT)を根拠に、さらなる国債発行で景気刺激策を唱える人だけが声を上げているが、日本政府は失敗続きで、手を打つことが出来ないでいる。ここまで来たら、日本の衰退を金融政策だけで止める事は不可能だと、そろそろ悟っても良いように思うのだが。ニューディール政策(賃金アップ)を行ったルーズベルト大統領のような傑出した人物が出てくれれば良いのだが。

 

注2. この大学はスタンフォード大学で、得意な電気・通信分野で、多くの開発者兼企業経営者を生んでいる。ベンチャーキャピタルは米国全土にあるが、カリフォルニア州に特に多く、この地域だけで日本のベンチャーキャピタルの資本提供の100倍は越える。

 

注3. 巨額の財政赤字はあっても、日本の民間(企業と家計)がそれに匹敵する金融資産を持っているから、現状は大丈夫と言われる。しかし景気が過熱し、インフレを止める為に、金利を2倍にしなければならなくなると、国債の償却が不可能になるかもしれない。またハイパーインフレが起きる可能性もある。

 

注4. 全要素生産性TFPは、経済成長(GDP成長)を生み出す要因のひとつで、資本や労働といった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因のこと。技術進歩や生産の効率化などがTFPに該当する。TFPは直接計測することができないため、全体の変化率からTFP以外の要因を控除した残差として推計される。

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働くとは、何か 19

2025-02-27 07:35:46 | 社会

 

働くとは、何か 19


前回は、日本が如何に貧しくなっているかを見ました。
今回は、国民の為に働く公務員の窮状を見ます。
ここにも日本の異常さが現れています。

かつて中曽根氏や小泉氏などが行革を唱え、正規の公務員が大量に減らされた。
行革が一段落した後の2019年、さらにユニクロの柳井氏は「日本の公務員を半減せよ」と吠えた。
2022年、財界の新浪氏は、都庁改革に関して「デジタル化による人員減への懸念に対して、邁進すべき!」と激を飛ばした。
大阪の維新も、そうだった。
現在、トランプとマスクは、さらに公務員削減を徹底してやっている。

皆さんは、どう感じているのだろうか?
素晴らしい! 怠惰な公務員を辞めさせ税金を節約すれば、国民は楽になるぞ!
当然だ! 生産効率を挙げて、不要な人は辞めて貰うべきだ!

おかしいぞ? 住民サービスが悪くなるだけではなく、なぜか日本経済が衰退し始めた時期と重なるぞ!


先ずは、実態を見てみましょう。


* 日本の公務員数は、目の敵にするほど多いのだろうか?

 

「図1. 日本の公務員数はOECDで群を抜いて最低!!」

国鉄民営化等の公共事業体を次々と民営化させ、公務員を大量に辞めさせた日本政府の手腕はOECDでトップレベルだった。
「公務員の仕事を、民間企業が肩代わりしているから、少なく見えるだけだ!」との指摘については、それを考慮しても少ないままであることが分かっています。注1

 

「図2. 日本の地方公務員数は、順次減り、今は横這いか」

 


「図3.  日本の国家公務員数は、大幅に減っている」

2001年以前、1985年に日本電信電話公社と日本専売公社、1987年に国鉄で民営化が行われた。
これにより民営化前に在職していた3社の計約73万人は、民営化とその後の合理化で20年後には30万人以上が退職していた。
図2の54万減と図3の52万減の計106万人と上記2公社の30万減で、計136万人が退職した。

ここで経済の悪影響を概算します。
18話で紹介しましたが、2回の消費増税5%で消費が10%減少していました。
これを参考に、136万人が全員転職し約20%減給となり、その後20年間勤めると仮定すると、これだけで毎年2兆円ほどの消費減少が続くことになる。注2
実は、残った人も大量に非正規化されているので、GDPの悪影響はさらに大きくなる。
つまり、公務員を減らし、給与を減らす事は経済に大きなマイナスになっている。

 

「図4. 一般職国家公務員の非正規職員が凄い勢いで増加し、37%越え」

 


「図5. 地方公務員の非正規化が進んでいる」
現在、地方公務員の非正規公務員数は74万人を越え、非正規化率は20%となった。

日本では、あらゆるところで「働く人」への虐めが、公然と行われ、かつ国民の中にも賛同する人が多い。
確かに、政官財と一部マスコミが結託して、国民を先導しているとは言え、実に情けない。
経済、世界、歴史に無知だと、痛い目に遭う好例と言えるでしょう。

 

* 公務員削減の何が問題なのか?

A. 公務員を大量に首切り、または非正規に替えることは、結果的に需要を減少させ、経済にマイナスになる。

B. 公務員によるサービスの質を低下させる。

C. 公務員各人への負担を高め、人権侵害にも至る。


* Aの「経済にマイナスになる」について

既に、簡単な試算でお分かり頂けたと思いますが、紛れもなく、悪い結果が出るのです。

よくある勘違いは、成功した経営者が、「組織を効率化し、余剰人を減らす」を良しとし、これを公共事業体にそのまま適用することです。
これは競争を原則とする一企業内では正しいのですが、国全体の社会経済を考慮すると間違いなのです。
大量の公務員の待遇悪化だけでなく、回り廻って国内経済さえも悪化させるのです。
一連の行革後、良くなるどころか悪化を深めただけでした。
2001年、経済学者の小野義之はその著書で、これら行革の弊害に警鐘を鳴らしていたが、聞く耳を持つ人は居なかった。
高率化は必要ですが、国としてやり方が間違っている。
残念ながら、日本の経済学者は一流では無く、政府が使うのは、米国に繋がっているか、媚びを売る者だけなのでしょう。


* Bの「サービスの低下」について

私はここ15年間ほど、幾つかの公共事業体に関わって来ましたが、現状は憂うべくものであり、とても未来を託せる状況ではありません。
私が見る多くの公務員の方々は、薄給に喘ぎ、やる気を喪失しているか、忙しさにかまけて、本来の住民サービスへと目が向いていない。
おそらく、地方自治体、第三セクター管理の公共事業体、学校教育等の現場に接している人は、職員の多忙さ、意識の低さ、給与の低さに気づいているはずです。

公務員削減の影響を拾ってみます。

2019年の台風に際して水害に見舞われた東北地方の被災地では、ボランティア不足で復旧作業が進まず、関係者たちが悲痛な叫びをあげていた。縮小された公共部門だけでは復旧作業を担いきれず、「ボランティア頼み」になっていた。

子どもの虐待事案に対する児童相談所の不適切な対応も目立っている。父親の虐待の末に亡くなった栗原心愛ちゃんの事件が起きた千葉県柏市の児童相談所では、一人の児童福祉士が、年間約43.6人を担当していた。
深夜に「家を追い出された」と児相に駆け込んで来た少女を、宿直の仕事を業務委託しているNPOの非常勤職員が、追い返すという信じがたい事例も発生している。

厚労省内部には、感染症対策を担う「国立感染症研究所」があるが、ここに所属する研究者は2019年には294人に減らされており、アメリカ疾病予防センター(CDC)と比べ、人員は42分の1、予算は1077分の1でしかない。(米国人口は日本の約3倍)

2020年にコロナが蔓延した時、トランプ政権は後手に回りました。
これは彼の無知も災いしているのですが、彼は就任時、既存の感染症対策室(仮称)を廃止していたので、コロナなどの未知の感染症の早期特定を逃してしまった事が災いしている。
共和党は、小さな政府を標榜しているので、どうしても手当たり次第に政府組織をカットすることになり、これは維新の大阪でも起きました。

 


「図6. 大阪の公務員数は全国最低から3番目」

 


「図7. 大阪府民はコロナで苦しむことになった」

大阪維新が病院の統廃合を行い、手薄にしてしまったのが災いした可能性が高い。
外国からの来訪者が多い事も一因でしょうが。

 

* Cの「公務員の負担増」について

 


「図8. 日本の公務員は少ない人数で多くの予算を扱い、かつ最も給与が安い」
青の棒グラフは、予算を定員で割った率で、各国に比べ突出して高い、つまり仕事量が多い。
黄色の折れ線は、予算を人件費で割った率で、また低い、つまり安い給与で働いている。


* 実は、もっと大きな問題が背後にある。

 

「図9. 日本の公的部門の総人件費は最低なのだが、なぜか財政赤字は飛び抜けて1位」

結果からみれば、行革は公的部門と公務員をスケープゴートにして、財政赤字削減をやったふりしただけで、「働く人」を苦境に追いやるだけでなく景気まで悪くしてしまい、拙いことにさらに赤字も増やしてしまった。

なぜこんな馬鹿げた事が、先進国では日本だけで起きたのでしょうか?

英国やフランス等のヨーロッパは組合が強くて、政府は公務員削減にほとんど手が出せなかった。
そこで公的部門の賃金を下げる方向に向かった、とは言え、日本より賃金は高いのが癪なのですが。
この点、日本では、歴史的、法的に労働組合が弱かったので、ごり押しが可能で、一気呵成に公務員削減と労働組合潰しを行えた。
結局、民営化への転換時に、弱い組合が、さらに解体され、組合は無抵抗になり、労働者政党も弱体化してしまった。
この事が、今に続く非正規化、男女の賃金格差、賃金低下を招き、消費減からGDP減への悪循環を生んだ。

ポイントは以下に要約できます。
日本では明治維新以来、軍事独裁色が強く、組合が育っていなかった。
戦後も、当初民主化を図った米国GHQだったが、数年後には共産主義拡大を恐れるあまり、労働運動を警戒し、自民党政府への資金援助と指導で、組合活動と労働者政党の弱体化を後押しした。注3
こうして日本は、悲惨な状況を一人背負うことになった。


次回に続きます。

 


注1. 『世界価値観調査』では勤務先に関する質問が含まれている。そのなかで、自分が「公的機関(Government or public institution)で働いている」と答えた人の割合――制度上の定義ではなく自己認識によるデータを見ると、日本は10.7%と調査対象58国中57番目となっている。

注2. 136万人の平均賃金380万が300万になったと仮定したら、収入減は-80万x136万人=約1兆円になり、減税時の乗数2倍として、2兆円の消費減となる。正確な試算では有りません。

注3 米国が日本の司法にまで関わっていた事例。1957年、デモ隊が米国軍事基地に侵入した砂川事件の最高裁判決は、被告を有罪とし、米国の駐留に対する違憲問題を避けた。この時の最高裁裁判長は判決を言い渡す前に、米国駐日大使と面会し、報告を行っていた。この時の総理は岸で、岸から佐藤の時代は、米国CIAから莫大な選挙資金を得ていた時代でもあった。

 

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働くとは、何か 18

2025-02-25 08:31:10 | 社会

 

これまで16話と17話で、日本の「働く人」の惨状をデーターを使い、海外と比べました。

今回は、経済的な面から、惨状を読み解きます。

これから、日本が如何に貧しくなっているかを確認します。

 

 

* 所得は伸びているのか?

 

「図1. ここ30年間、所得は横這いです」

 

これは二人以上の勤労世帯のデーターです。

実収入は若干増えているのですが、税金と公的保険料等(緑棒)が増えた事で、可処分所得(使える金)がまったく増えていないのです。

30年間にわたる実収入の落ち込みは、私達に何をもたらしたのか?

 

 

* 先ず、なぜ日本経済は我々の収入を増やさなくなってしまったかを簡単に見ておきます。

 

 

「図2. 一人当たりGDPの日本の順位(黒線)、は2000年から低下し続け、現在、世界の26位まで落ちた」

 

人々は、この間の順位低下、更なる没落を予想し、自信を無くしてしまっているのだろうか?

 

ただ単に、他の先進国が次々と日本を抜き去るだけで、日本の成長が鈍化しているとは言え、まだ豊かなはずだが。

 

面白いことに、順位が落ちた時期「赤」は人気の首相が活躍していた時期と重なる。

2000年~2007年は小泉氏と安倍氏の政権、2012~2017年はまた安倍政権でした。

2012年以降は、安倍政権の大規模金融緩和の結果として、為替が80から160円/$の円安となり、今まさに生活を直撃している。

順位低下に連れて、海外と比較して私達の収入や資産が目減りし、特に最近は海外の品物を買い難くなっている。

私にとって腹立たしいのは。ここ20年の間に、同じ内容の海外旅行費が2倍になった事です。

 

順位上昇期「茶⇒」は、80年代後半から起きたバブル景気が主因でしたが、91~93年にバブルが崩壊し、その後の救済処理が災いして、日本はいまだに衰退し続けている。

 

不思議な一致なのですが、順位が頂点になる直前の1987年は、行革を謳う国鉄民営化(JR誕生)の年で、これにより巨大労組・労働者政党(社会党)が崩壊した。

その後、日本の順位は横這いから衰退へと向かい、何かが瓦解し始めた事を暗示している。

言い換えれば、繰り替えされた行革は、日本を奈落の底に突き落としたのではないか?

切り捨て縮小型の行革(構造改革)は経済をダメにすると警告を発していた学者もいた。注1

ちなみに順位が反転上昇している2009~2012年は民主党政権でした。

 

 

* 所得が減っていく中で、何が起きているのだろうか?

 

 

「図3. 明確に格差が拡大している」

 

ジニ係数は、数字が大きくなるほど格差が大きくなり、0.5以上は深刻な状況と言われている。

格差拡大が始まる80年前半は、中曽根政権(82~87年)と重なるが、これは英米と軌を一にしていた。

この連載を見て頂いていると分かると思うのですが、日本はずーっと「働く人」に非情な国であり、さらに80年代から追い打ちが掛かっているのです。注2

 

 

* 日本の所得格差は、海外に比べて多いのか少ないのか?

 

 

「図4. 格差はアングロサクソンの米英とイタリアよりましだが悪い」

 

これは当然です、非正規が多く、正規・非正規や男女、企業規模別で賃金差が多い国なのですから。

 

ここで一つ質問です。

「今後、経済格差は縮小すると思いますか?」

イエス、ノー、横這い?

 

答えは、益々拡大します。

説明はいずれしますが、最大の理由は米国で共和党のトランプ政権が誕生した事です。

日本政府は、余程の事が無い限り、現状の政策を踏襲し、米国に従うでしょう。

 

 

* 金持ちと貧乏人の行く末は?

 

「図5. 日本の金持ちと貧乏人は共に、所得を減らしている」

 

既に見たように所得格差は拡大しているが、金持ちと貧乏人が共に貧しくなっている。

つまり、貧しい人はより貧しくなっていることになる。

しかし、所得上位数%については米国と同様に、より豊かになっているでしょう。

 

 

* 所得が減る中で、国民は消費を伸ばしているのだろうか?

 

「図6. 実に悲しいのですが、国民は消費を抑え続けている」

 

本来は、貧しい人ほど最低限の消費が必要なので、消費は減らせないはずなのですが、日本では異常な事が起きています。

2回消費税が上がっているのですが、その上昇分3+2=5%に対して、その2倍に相当する10%も、国民は消費を押さえる事になった。

これが安倍政権下でのデフレが止まない理由です。注3

 

 

* なぜ国民はここまで消費を減らしているのだろうか?

 

 

 

「図7. 国民は、消費を節約し、せっせと黒字(預金等)を増やしていた」

 

グラフでは収入は増えているが、インフレで相殺されているので、実際は実収入は増えていない。

その中で、増える非消費支出(橙色:税金・保険料)を支払い、将来の不安から黒字(緑、預金等)へと廻し、消費を押さえているのです。

これがデフレの正体です。

この黒字の内訳のほとんどは、元金保証の貯金で、証券投資は非常に少ない。注4

したがって、多くの国民は、日本の現実と将来を悲観しており、消費が増えず、結果的、経済が上向かないとも言えます。

 

しかし、現状で国民に楽観的になるべしと言うのは、酷です。

政府の「働く人」に対する追い打ちをかける過酷な仕打ち、産業界の癒着と腐敗構造が続く限り、国民が防御体制を獲るのは自然です。

一時、アベノミクスで言われた「インフレ期待が経済を好転させる」とした理論が如何に馬鹿げているか、もう理解しても良いのではないだろうか?(稀に起こる事もある)

きっと草葉の陰で、ほくそ笑んでいるだろう、「産業界・財界は円安で大儲けし、予定通り」だと。

 

 

* 格差が収まって来ているのなら良いではないか?

 

「図8. 2012年、相対貧困率は上昇していおり、米国に次いで高い」注5

 

これを見て、米国がまだ上にいるので少しホットしたでしょうか。

しかし、相対貧困率が上昇傾向にある事に注意して下さい。

このまま行けば、米国と同じような社会の分断が起きるかもしれません。

 

 

「図9. 2021年、現在の日本の相対貧困率は、米国を抜き、発展途上国に近づいている」

 

 

「図10. 2012年以降、相対的貧困率は低下しているが、子供9人一人が貧困」

 

別のデーターから日本の貧困率は酷い状態にあることが分かります。

2018年、日本のひとり親の50%が貧困状態にあります。

2021年、日本の17歳以下の貧困率は14%であり、G7で真中でした。

 

 

* 何が分かったのか

 

・ ここ30年間、所得が伸びず、税金・保険料が増える中で、国民は将来を不安視し、貯蓄に益々精を出すようになった。

 

・ 数々の切り捨ての行革、バブル崩壊と処理ミス、増税と無駄遣い、消費控え、円安が経済を衰退させている。

 

・経済格差は、今、落ち着いているとは言え、高止まりし、貧困が増大している。

 

・トランプの誕生で、経済格差はさらに拡大期に入るだろう。

 

実に、悲しい日本の姿です。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

注1. 「誤解だらけの構造改革」小野善康著、日本経済新聞、2001年刊。

 

注2. 80年代から、欧米中心にサッチャー、レーガンらの新自由主義経済が吹き荒れ、今に続いており、トランプ再選で、さらに新自由主義の完成に向けて、金持ち優先、それ公務員や「働く人」の切り捨てが、さらに酷くなるでしょう。

 

注3. 消費増税は消費を減らし、増税はその額の何倍かになってGDPを数年掛けて減らす事になり、これを乗数効果と言います。ここでは簡易に乗数を求めます。グラフから5%の合計消費増税により、数年後には消費は10%減になったので、乗数は2倍(マイナス)になっている。実は、消費増税分を政府が効果的使えば、そのプラスの乗数効果は先程のマイナスより大きいので、本来ならGDPは上昇に転じるのですが、長年そのようになっていない。残念ながら腐敗し不透明な政府では、どこかに消えて行ったか、仲間の懐にでも入ったのでしょう。

 

注4. ここ数年、NISAが普及し始めていますので、株式投資が増えるでしょうが、2025年現在、まだ僅かです。将来、増えて来ると、資産格差拡大と金融危機不安が増すでしょう。

 

注5. 相対的貧困率とは、国や地域における経済格差を測る指標で、所得が集団の中央値の半分に満たない人の割合を指します。

 

 

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働くとは、何か 17

2025-02-23 08:09:51 | 社会

 

前回は、日本の「働く人」の精神状態が如何に酷いかをみました。
今回は、その背景を読み解きます。

 

* 日本人は働き過ぎなのか?

 


「図3.各国共に労働時間は減っているが、日本の労働時間はまだ多い」

日本のグラフには2本あるが、時間数の少ない方を見て下さい。
日本はまだ、少ない国に比べ、5~17%長く働いている。


* なぜ日本の労働時間は少なくなったのか?

 

「図4.フルタイムの労働時間(青線)は横ばいだが、合計(黒線)は低下している」

労働時間の短いパートタイム労働者の比率(灰色棒グラフ)が1990年代から高まったことで、フルタイムとパートタイムの労働時間を合算すると、減少傾向に見えるだけです。
このグラフを見る限り、喜べる状況になったのでは無く、細切れに使われるパートタイマが増えているだけで、フルタイム者の労働時間に変化は無い。


* 皆さんは、休みを獲っているのだろうか?

 


「図5. 日本の取得率は最下位、支給日数(灰色の棒グラフ)は多いのだが」

日本ではよくある、本音と建前の食い違い!
ヨーロッパ先進国のように1ヵ月休むのは夢の夢か!


* 皆さんが休めないのは理由がありそうです。

 


「図6. 皆さんは職場に気を使って休めない」

これは日本らしい情景とも言えるが、単に経営サイドが、休める体制を準備せず、従業員の気遣いに甘えているか、押し付けているだけです。
先進国では、育児休暇等も含めで長い休職に備えて、職場の人員配置等を日頃から準備している。
私の現役時代、平日に1日でも旅行しようとするなら、上からかなり嫌がらせがあり、結局、定年まで、長期の旅行は行けなかった。
今は、少し良くなったようだが。


* 最近、アベノミクスのお陰で就業者数が増えて来た! 確認しましょう。

 

「図7. 2012年頃より就業者数が増えており、素晴らしい」

さらに凄いのは人口が減っているにも拘らず、就業者数が増加している事です。
実は、これには二つの側面があります。
円安が進むことにより、海外生産が増加から横這いに転じ、海外生産拠点が国内に少し戻りつつあることで、国内の就業者数が増えている。
これは一見良いように聞こえるが、円安で戻るような生産は、高付加価値生産を目指さなければならない先進国日本には、一時しのぎの麻薬に過ぎない、と考えるエコノミストもいる。
今一つは、労働時間が短くて、かつ低賃金の非正規雇用者が増えた結果、就業者が増えている事が大問題です。
このような詐欺まがいの、失策の礼賛はよくあるので気を付けて下さい!


* 就業人口が増えて、賃金は上がったの?

 

「図8. 日本だけが、世界中で珍しく実質賃金を下げている」

日本の一人当たりのGDPは、ここ30年以上ほとんど伸びていない。
この間、海外の多くの国は順調に成長し、日本の減速だけが目立ち、円安でさらに資産や貨幣の価値は落ちることになった。
こんな惨めな日本になったのは、安倍氏だけのせいとは言えないが、自民党の路線をさらに押し進めた結果と言える。


* 男女で非正規の割合は異なるの?

 


「図9. 40年間ほど、正規雇用は増えず、非正規(斜線部)だけが増えている」

低賃金の女性非正規増加が目立つが、これが日本の新たな問題、貧困の増加へと繋がって行くことになる。
残念な事に、非正規雇用率は増加傾向にある。


* 非正規雇用の多さは日本だけなのだろうか?

 


「図10. 非正規雇用率の多さは先進国で4位、平均の1.6倍も多い」

日本の労働条件・雇用状況で、海外より優れているものが見当たらず、最悪だけが目に付く。


* 日本の男女間賃金格差は、海外と比べ少ないのだろうか?

 


「図11. 男女の賃金格差は、韓国よりましだが、やはり酷い」

日本は正規と非正規、男性と女性で、労働待遇や賃金に差が大きい。
日本は、人権意識や民主主義が未成熟であり続けている。


* 男性の正規と非正規の賃金差はどのくらいだろうか?

 


「図12. 非正規と正規には雲泥の差があり、非正規の生涯賃金は悲惨」

労働時間が短い場合もあるが、同じ会社で同じ仕事、同じ時間働いても、これだけの違いがあるのなら、腹が立つと思うのだが。
なんと不条理か!
さらに悪い事に、非正規に酷い作業を与える事例も多い。
原発の廃炉処理等の命に関わる作業を、正規社員は拒み、非正規や下請け等にやらせている。
それを正規社員の組合が望むのだから、世も末だ!


* 女性の正規と非正規の賃金差はどのくらいだろうか?

 


「図13. 男性よりさらに酷い」

これら様々な差別賃金に加え、伸びない賃金、増える税金・保険料が重なり、生活が苦しくなる人が増えるのは当然の成り行きだ。
この事が、女性の未結率や母子家庭の貧困の増加に繋がっているのだろう。
次回、貧困率も見ることにします。


今回、労働時間の長さ、有給取得の困難さ、低賃金の非正規雇用者の増加、様々な賃金格差、どれをとっても日本は群を抜いて悪い。

なぜこんな事になってしまったのか?
・ 国民の権利意識が低いから。
・ 政府が「働く人」の為の政治をしていないから。
・ 労働者政党(立憲、国民等)が力不足だから。
・ 日本の腐敗構造が経済を衰退させているから。


いずれも正しいが、一つ明確のなのは、日本では労働組合が体をなしていない事が大きい。
言い換えれば、民主主義が成熟しないまま来た事が大きい。

 

* 日本の労働組合の影響力は?

 

「図14. 日本の労働組合と労働協約の達成率は、最下位に近い」


* 結論

既に見てきたように、明治以来、日本では民主主義が圧迫されると同時に、労働運動が迫害されて来たことが災いしている。
欧米に比べ労働党が育たなかったのも同様です。
この事が、日本の「働く人」を先進国すら入れないほど惨めにしているのです。


次回に続きます。

 

 

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働くとは、何か 16

2025-02-19 07:08:01 | 社会

 

* 今回は、日本の「働く人」の惨状をデーターから読み解きます。

既に、国鉄やJRの惨状を見て来ましたが、これは他の民間企業にも通じます。
多くの方は慣れてしまっており、その異常さに気付かないでしょう。
日本と各国との比較データーを見れば、驚きの姿が見えて来ます。

* 日本の「働く人」(国民)の惨状は以下の三つ
・職場のストレスが多い。
・生活に豊かさを感じられない。
・今も将来も幸福とは思えない。

おそらく麻生や竹中のような人なら、不満は贅沢だ、貧乏から抜け出すにはもっと頑張れと言うだろう。


* 先ず、満足度の推移を見ます。

 


「図1.日本では、一人当たりGDPが伸びても、満足感があまり増えていない」

1990年からGDPの伸びが鈍化しているのは、バブル崩壊の後遺症が長引いている為です。
2002年と2009年のバブル崩壊で失業率が高くなった為に、大きく満足度の低下が起きている。
結果的に、満足度は横這いになった。

皮肉屋は、「人は欲張りなので、物が豊かになっても満足しないだけさ」と言うかもしれない。
確かめてみましょう!


* 日本の幸福度は世界で何番目?

「図2. 世界幸福度調査で、いつも日本は先進国内には入れず、156ヵ国中50位辺り」

保守系マスコミは、この調査が欧米基準に偏っていると難癖を付け、この結果を否定しょうと懸命です。
また北欧を暗いイメージで語る傾向がある。
しかし、欧米と価値観が異るメキシコや台湾、カタール等は大概30位以内に入っており、北欧3ヵ国はいつもトップを独占している。
この調査は国連が行っており、GDP、社会的支援、健康寿命、自由度、寛容さ、政府の腐敗度から算出されている。


* 以下の二つのデーターから、日本は経済力の割に薄幸の国かもしれない。


* 日本の自殺が教えてくれる事。

 

「図3. 日本の自殺率は、先進国38ヵ国中6位と高い」

日本の自殺率は非常に高い。
この図は2019年のデーターだが、図5の茶線、最も失業率が低い年に当たる。
つまり日本では最も自殺率が低いはずなのに、順位が高いのです。
自殺は、経済不況(失業)や精神文化、社会の影響を受けるが、日本は以前から高い状態が続いている。


* 各国の年齢別自殺者数の違いから、日本の特異な状況が見えて来る

 


「図4. 日本の勤労世代は若年や老齢世代よりも自殺率が高く、他国と明確に異なる」

この図は2011年のデーターだが、図5の赤線、最も失業率が高い年に当たる。
これは、働き盛り世代に過度な精神的負荷がかかり、精神疾患(鬱等)を多発させ、やがて自殺へと至る事を示唆している。
以下に続くデーターはこれを補強している。
韓国で自殺が多いのは、高齢者です。


* 失業率の変化が教えてくれる事

 


「図5. 日本の男性失業率の変化」

この図で、2002年と2010年に失業率が前後に比べ約3%増えたが、図1の満足度も前後に比べ15%と大きく低下している。
欧米の失業率は4~12%と日本の2倍で推移しているが、図2で欧米の幸福度は日本より高い。
つまり日本では、図1が示すように不景気になり失業が増える事は「働く人」にとって大きな問題となっている。
おそらく、これは失業が長期にわたる事と、前職と同水準の再就職の困難さが家族を含め苦しめるのだろう。


* 日本では、男性の自殺が失業と関係している。

 


「図6. 失業率が男性の自殺率に強く影響している」

別のデーターから日本女性の自殺率は失業率とあまり関係が無い。
別のデーターからスウェーデンやイタリア等では、失業率と自殺率には相関が無い。
つまり日本の男性だけが失業や転職で過度な負担になる労働環境や社会構造になっている。


* 各国の失業率と自殺率から見えて来るもの。

 


「図7. 日本の低失業率と高自殺率が他国と比べ際立っている」

この図は2010年のデーター。
赤線は、図6の失業率と自殺率の推移を重ねて表示している。
赤線のように右上がりの直線は、失業率と自殺に強い相関があることを表しているが、この図だけでは他の国については不明です。
相関がなければ、失業率が増減しても自殺率は横の直線になる。


* 日本人は本当に失業に対して不安を感じているのだろうか。

 

「図8. 勤労世代ほど、失業に強く不安を感じている」

日本の勤労世代は異常なほど失業に不安を感じているが、なぜだろうか?
失業により、失業期間中の収入減、再就職の困難さ、たとえ再就職しても待遇確保の困難さが付き纏う。
日本の男性に失業による自殺が多い事を考えると、日本の雇用環境が他国に比べ劣っている事が示唆される。


* 失業(転職)を不安視する理由があります。

 


「図9. 日本は、他国と比べて転職後の賃金アップのチャンスが少ない」

これが、日本人が失業に対して強い不安を抱いている理由の一つでしょう。

 

* 日本人にうつ病は多いのだろうか。

 


「図10. 日本人のうつ病は年々増加し、男性は働き盛りでもっとも増える」

他の情報により、日本の精神疾患が他国より多いことが判明している。
また働き盛りの男性ほど、うつ病(精神疾患)が多い事は、男性の自殺率の多さの理由だろう。
女性は年齢と共に増加し、ほとんど減る事が無い。

 

* 日本では、仕事にストレスを感じる程度は他国と比べてどうだろうか?


「図11. 仕事にストレスを感じている日本人は31ヵ国中、男性2位、女性4位です」

つまり職場・仕事がうつ病を増加させている元凶であり、これが自殺を多発させ、幸福度や満足度の低下を招いていると言える。


上記11個のデーターから、日本人は先進国中もっとも薄幸と言える。

・「働く人」、特に男性は、他国より群を抜いて強いストレスや失業の不安を感じ、自殺することが多い。
・ 国連の幸福度調査において、日本は長年、先進国水準に入る事が出来ない。
・ ここ30年ほど、日本人の満足度は上がらず、精神疾患は上昇傾向にある。


* 問題提起

なぜ日本は失業率が低いのに、失業の増加に連れて自殺が増えるのだろうか?
これは日本特有の現象と言って良い。
様々な要因があるだろうが、おそらく最も災いしているのは、雇用形態でしょう。
これは、日本が企業内組合、御用組合が主であり、職業別組合が脆弱で、さらに年功序列が崩れている上に、首切りが容易になった事が大きい。
さらに現在、産業構造の変化が起きつつあるが、上記の理由で、日本ではこの変化に対応して「働く人」の転職がスムーズに出来ない。
これは、多くの場合、失業・転職が生活の低下を招くことになるからです。
こうして「働く人」が苦しむことになる。

「働く人」を簡単に首にする事で、産業構造の変化に合わせるべきだと上流国民は言うが、益々「働く人」が悲惨な状況に陥ることになる。
転職を促すのであれば、これに対応した雇用形態、労働組合、転職援助等が必須です。
この点でも北欧では進んでいるからこそ、幸福度とGDPが高いのです。


次回に続きます。

 

 

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働くとは、何か 15

2025-02-17 10:03:56 | 社会

 

今回も前回に続き、国鉄の暗部を読み解きます。

 


*前回見たように、国鉄と労組の対立には長く根深い歴史があった。

 国鉄と労組は、しばらく融和を模索する時が続くと、痺れを切らしたように、次いで激しい対立が起きる。
その度に、国鉄は労組から幾度も不当労働行為を訴えられ敗訴しながらも、懲りずに突き進んだ。
これを幾度も繰り返した末に、遂に政府の行革大号令の下、民営化・分割化で労組は留めを刺された。
JR西日本は、組合根絶の強硬派の国鉄幹部と日和った元労組が、占めることになった。
結局、徹底的に組合が潰されてしまうと、公営民営を問わず「働く人」は孤立無縁、過酷な職場で生きて行くことになった。

 

*皆さんは、気づいただろうか?

 JRは民間会社で、組合があり、組合活動も行われている。
しかし教育と称した虐待が進行している時、組合は個人的な問題だからとして救いの手を差し伸べていない(一部の組合は救援している)。
これはJRに複数の組合が存在するが、組合が全体的におとなしくなった事と関係する。
以前は民営化に反対する国労員が主に虐待されたが、今度は御用組合の組合員ほど、厳しいノルマから疲労困憊し自殺に至るようになった。
これは国鉄時代にもあった。
JRの意向に沿う御用組合員の多くは職場長を兼ねていることもあり、上の意向に逆らえず、中間管理職の悲哀を一身に背負う事になったからです。
元々御用組合は、経営側が出世を餌に組合員を取り込み、スト破りと他の組合の気勢を削ぐ為に作られたものです。
この手の問題は、現在、民間企業の多くの組合に見られる現象になった。

 


*この連載の13、14、15話から「国鉄・JRの問題」をまとめます。

 

1. 国鉄は、明治から大戦まで軍事独裁の風土があった。

2. JR、国鉄、運輸省のエリート官僚は、ノンエリートの「働く人」に対して冷酷だ。

3. 戦後も国鉄、JRの幹部は、組合を憎み、徹底的に潰すことを良しとして来た。
組合潰しが巧みな管理者は出世した。日勤教育等で虐待される者のほとんどは熱心な労組に属していた。

4. 残念ながら人間は、組織の中で権力側に居ると、権力側が嫌う者に対して冷酷になれる。
特に日本人は帰属意識(村意識)が強いので成り易い。
これは労働運動方針の異なる国労と動労の対立にも見られる。
ストレスが多い職場であれば、虐待で自己満足を得る人もいるだろう。注1

 


*日本の職場には、このような異常が罷り通っている。

*一番の元凶は、「働く人」の人権無視で、それを長期に亘り醸成して来た政官財です。

 残念なのは、経営者側の視点だけから公務員や労組をこき下ろして、悦に入っている市民が多く見受けられることです。
新自由主義を信奉する政党は、その代表格ですが、悲しいことに人気がある。

選挙で投票する時、流行りだとか、威勢が良いとかでは無く、少なくても「働く人」の側に立っている人を選んで欲しい。


次回に、続きます。

 


注1. 平凡な市民でも、一定の条件下で、権威に従い冷酷で非人道的な行為を行うことが心理実験で証明されている。ナチス下のアウシュヴィッツ強制収容所の所員等の心理を確認するために行われた。ミルグラム実験(アイヒマン実験)やスタンフォード監獄実験等がある。

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