ここ10年、何かにつけて憤ることが多くなった。
そのネタは世界に、日本に、私の周囲にもある。
私が憤りを感じている事
1. 先ず、「人間失格者トランプを大統領にするアメリカの愚かさ」について
a)アメリカ社会は、既に衰退を始め、正常に機能しなくなっている
現在、トランプの火種になっているエプスタイン疑惑が米国のマスコミやSNSで騒がしい。
これはエプスタインの遺した「少女らへの性的搾取顧客リスト」にトランプの名が記載されているかが、ポイントになる。
この人物は、かつてトランプと非常に親密な関係にあったが、2019年、独房で不審な死を遂げている。
この時期は、トランプの第一期目の只中にあった。
トランプは、彼との卑猥な交友関係を、10日ほど前に大手新聞社に報道されると、即座にその新聞社に1.5兆円の損害賠償訴訟を起こし、また民主党の陰謀があるとしてオバマ元大統領を国家反逆罪で訴えると宣言し、脅迫と目くらましを始めた。
また急遽、交渉と称してスコットランドへのゴルフへと逃げた。
さらに彼はゴルフ場で、スコアを誤魔化している所を望遠で撮られ、これは常習で有名なのだが、今SNSを賑わしている。
私が憤るのは、よりによってこんな低俗な人物を大統領に祀り上げる共和党と煽情される支持者が、アメリカに蔓延り、世界を危険にさらしていることです。
上記の状況と背景が知りたくて、ここ2年の間に、私は米国の13都市を1ヵ月かけて見て廻って来ました。
数人のアメリカ人とも意見交換出来た。
大都市では人種や貧富の差が様々な面、交通機関や住宅街に現れており、カナダのバンクーバーも同様でした。
確かに大都市では必ずホームレスを見ることになるが、彼らは市民から隔絶しているのでは無く、助けられ共存している様子も見えた。
旅行中、トランプが煽情していた対立や暴力的な状況に出会うことはなかった。
またアメリカを知りたくて、アメリカの経済、政治、歴史、宗教に関わる本を多数読みもした。
要点を述べると、アメリカ建国時から脈々と受継がれる反知性主義が、政府や権威を否定する土壌となっているとキリスト教神学者は読み解く(分かり難いが、エリートよりも無知な人間の方が信じられるらしい)。
多くの経済学者は、80年代に始まるレーガンの新自由主義が、経済格差を拡大させ、その結果、巨富による政治支配が蔓延り、多くの国民は、失望と不満を蓄積するようになったとする。
一部の経済学者やビジネス界隈に生きる人々は、大戦後に始まるグローバル化が災いしており、トランプはこれを逆転させるとしている。
一方、アメリカの政治史を見ると、繰り返されるアメリカの横暴、偏見、独りよがりが、トランプを生んでいると言える(「オリバーストーンが語るもう一つのアメリカ史1,2,3」「CIA秘録上・下」に詳しい)。
実例を挙げると、アメリカ政府は大戦後、数々の原爆使用未遂、赤狩り、CIAによる外国政府転覆、冷戦、ベトナム戦争を主導して来たが、これらに共通するのは、上層部(主に共和党、ビジネス出身議員、タカ派、軍部等)が共産主義、多国籍企業の利益や国益を損なう国等を敵と仮想し始めると、遂には予防的に徹底した破壊を望むことにある。
彼らは、他者を理解し融和を図る事は軟弱で恥ずべき、愚かな行為と考える。
さらに国民もこの敵視や糾弾する状況に異様に興奮して来た。
つまり、アメリカでは何故か、自ら敵を造り、その敵を徹底的に潰す事に喜び感じる国民性が作られてしまったようだ。
この事はアングロサクソンの民族性に起因するとよく言われるが、それだけでは無いように思う。
私は、この状況は大戦後に強くなったことから大国の驕りがあり、さらに新自由主義導入の悪影響だと考える(説明省略)。
つまり、上記の説明から想像できるように、トランプと共和党は、弱体化した共産主義に替え、陰謀論の民主党を操るディープステートと、強大化した中国、拡大した移民を、潰すべき敵に仕立て上げた。
そして、正に無知で型破りな非エリートのトランプが、強大な敵を倒す救世主となり、国民の半数は、アメリカの復活を夢見るようになった。
b)トランプの問題点
彼を礼賛する人も多いが、私は彼を国政に携わさせるべきでは無いと考える。
彼の人格は絶望的なぐらい危険。
欲望や感情のままに行動し、自制が効かない。
強欲で法を無視する習性(嘘を強弁する)。
現役ビジネスマンで富豪(成功したビジネスマンには社会性が欠ける場合がある)。
科学的で論理的なビジョンを持たない。
煽情と人心を操る事を得意とする。
そのような人物が大統領になれば
大国の力を背景に、将来の事や他国との繫がり、弱者の事などを考慮せず、力任せの政策を行う。
行動は、即時的な人気や利益が狙いで、手段を選ばず、その場限り。
ハニートラップ等に掛り、犯罪や破廉恥行為でゆすられ、自己保身に走り、自国や世界に災いをもたらす事を厭わない。もしイスラエルやロシアが、彼の異常な性癖の証拠を掴んでいたら、彼は脅迫されており、今のトランプの外交政策は納得出来る(エプスタイン疑惑とモスクでの変態プレー事件)。
c)トランプはアメリカだけでなく世界を劣化させる
アメリカが小国であれば問題なかったのだが、最大の経済大国、最強の軍事大国なのが災いしている。
今、彼は関税を武器に、他国に巨額な出資を強要している。
この恣意的な提案は、けっして取引では無い。
これは大国の経済力を背景に他国を脅迫し、提案はどちらの損出を受け入れるかを迫っているだけ。
通常の取引なら、利得もあるのだが、損しかない。
多くの国は、国民を守るよりも、産業や大企業の関税を避ける方向で提案を吞むことになる。
この結果、2つの事が起きるだろう。
アメリカの製造業の復活は期待通りにはならず、投資効率は悪いだろう。
また巨額の投資案件を引き受けざるを得なかった国々は、自国の投資が置き去りになり、経済にダーメジを与える。
掛かる関税は、双方に悪影響を与え続けるだろう。
しかし、更なる問題がある。
それは強権、独裁、ナショナリズムが世界を脅かすようになることです。
ここ10年以上、世界に独裁的な国家(独裁者、議会独裁制)が増えて来ている。
トランプが腕力を振るえば振るうほど、これが他国に波及し、世界はいがみ合い、悪化することになる。
これは歴史が示している。
19世紀の欧州による植民地獲得競争、20世紀からのヒットラー率いるファシズム国家の誕生、冷戦構造の拡大などです。
私が最も危惧することは、この事です。
2. 世界を救う唯一の手立て
おそらく、今のアメリカに自浄作用を期待出来ないでしょう。
だが二つの道が残されている。
a)トランプが自ら墓穴を堀って、大統領職を辞職する事です。
今、最も期待出来るのはエプスタイン疑惑を追求し、彼の醜態を白日の下に晒し、弾劾することです。
彼のこれまでの振る舞いからすれば、性犯罪や醜聞に手を染めている事は疑いない。
しかし彼は大統領職を利用して恩赦を乱発し証人を黙らせたり、証拠隠滅、捏造等、あらゆる手段を使うでしょう。
まだ共和党とFOXニュースは、トランプ擁護を続けている。
しかし、少し明るい前兆がある。
先ず、あれほど頑なMAGAの一部、またトランプサイドであったタッカー・カールソン、スティーブン・バノン、イーロン・マスク等が、批判に転じた事です。
FOXニュースを傘下に置くメデイア王のマードックは、これまで保守的で権力に迎合的だったが、新聞社WSJを通じて、トランプのエプスタイン疑惑を追求する姿勢を続けている。
既にトランプの支持率はエプスタイン疑惑発覚前で、既に37%に落ちている。
今後、さらに落ちるだろう。
共和党は、人気下落の只中で来年、中間選挙を迎えるので、トランプを見限らざるを得ないだろう。
疑惑が黒となれば、すぐにでも決着するのだが。
b)今一つは、世界がアメリカを見限り、団結し米国の横暴に対処することです。
今回の件で、アメリカは信頼に足りないことが明白になったはずです。
これはアメリカの政治史を振り返れば一目瞭然です。
残念ながら、日本(自民党)は戦後、アメリカ追従一辺倒でやって来ました。
隣国の中国とロシアを考えれば同情すべき点もありますが、これからは方向を変えるべきです。
先ずは、アジア、環太平洋、ヨーロッパと協力し、大国の横暴に立ち向かう事です。
今回は、各国は準備が充分でなく、個別に撃破されてしまったが、これから直ぐにでも始めるべきです。
米国の独裁色は、まだまだ払拭出来ないでしょうから。
日本が、明治維新を大きな混乱を招かず成し遂げたのは、雄藩が纏まり、幕府も愚挙に出ず、外国に隙を見せなかった事が大きい。
3.補足
a)愚かな人の見分け方
日本にも、第1期目からトランプの言動を礼賛し、「票が盗まれた」陰謀論を信じ、トランプを応援した巷の人だけでなく、著名人も多くいた。
是非とも、これら「愚かな」人々を忘れないで下さい。
所詮、これら著名人は、経済や政治に通じているようでも、トランプと同類で、非科学的、歴史を曲解し、国民を見る事が出来ない人々なのです。
優れた国のトップとは? 人気? 世界を救った? 国民と企業のどちらを富ませた?
おそらくその手の著名人には、外れた答えを持っているでしょう。
この手の人は、いつも居るので見分ける必要があります。
一言で言えば、ヒトラーを初期段階で見分ける眼力があるのが望ましい。
b)アメリカの闇からの教訓
闇とは、トランプを生む歪な社会になってしまった事を指します。
言い換えれば、民主主義制であった当時のドイツ社会が独裁者ヒトラーを生み出し、自国と世界を破壊に至らしめた事をさします。
かつて残虐さで知られた国―ヴァイキングのノルウェー、日中戦争の日本兵、ホロコーストのナチス等、の人々と今、接して見て、恐怖を感じる事は無いはずです。
もしそれらの根底に国民性があったとしても、残虐性では説明出来ないはずです。
やはり、その社会集団の凝集性や帰属意識の強さの方が、影響しているのでしょう。
それともう一つ、その社会が自らの歴史の呪縛に潰されて行ったように思います。
上記の三ヵ国の歴史にも、それが見られます(説明省略)。
翻ってアメリカを見ます。
歴史的な背景として、反知性主義、自由主義(税や規制からの自由)、これに加え、大戦後の軍事大国としての驕り、そして80年以降の新自由主義による格差拡大と金権政治、それに連れて報道も金権的になった。
さらに理由が分からないが、宗教のマイナスの面が際立つようになった。進化論を教えられない非科学的な教育、聖書の一部に偏執したハルマゲドンからイスラエル擁護等が、強く偏った世論を生むようになった。
こうして民衆は被害者意識を煽られ、自国優先で武力を頼り、あらゆる敵を生み出しては屈服させる事に、溜飲を下げるようになってしまった。
これを放置すると、アメリカ自身の没落に留まらず、世界を破局へと導くように思える。
アメリカはこれからも先端産業で世界を牽引して行くと思われるが、大きな金融危機が幾度もアメリカ発で起きているように、これについても自ら墓穴を掘るような気がする。
トランプ政権が存続するなら!
私達も、自国の歴史、1世紀程でも良い、振返って何が起きているか考えて下さい。
c)グローバル化について
現在、トランプサイドの政策論者は、グローバル化が災いを招いたと考え、これを逆回転させるべきだと言う。
この事について、少し考察します。
格差拡大とロストベルトの発生は、産業空洞化が招いたとしている。
産業空洞化は、確かに国内産業が賃金が安く、公害対策費が安い国に、ここ半世紀以上、移転し続けたからです。
また企業移転の目的には現地の資源収奪(地下資源や作物)が有りました。
当然ながら、これは主に米国に多大なメリットを与え、政府はあらゆる面でこれら多国籍企業を支援して来た。
これら多国籍企業は、現地で多くの問題や摩擦を生み出し、時にヨーロッパや国連は、世界的な規制を設けるるべきだとアメリカに持ちかけた。
しかし、アメリカ、特に共和党政権は、ほぼあらゆる規制(タックスヘイブン、地球温暖化、デジタル税等)に反対して来た。
本来、企業の自由競争と社会を維持する規制は、発展の両輪なのです。
また自国の産業空洞化には、本来地道な労使協調による政策が必要だったのです。
いつも国が発展する過程で労働集約型の低付加価値産業(低技術)は、低開発国に移行して行くものなのです(リカードの比較優位説)。
それでは、そこで働いていた労働者は失業に任せるだけなのか?
そうではありません。
ここで、北欧が以前からやっているような転職の為の職業訓練と休業補償が重要なのです。
北欧は、さらに経済界と労働界が協調して産業転換を押し進めもしているのです。
これらが機能してこそ、労働者の犠牲を回避しながら、高付加価値産業へと転換出来るのです。
残念ながら、米国共和党は労働組合潰しと税による弱者救済を嫌うので、上記の政策は望むべくもない。
結局、共和党が大企業や金融産業を優遇し、労働者を見捨てて来た事で、貧富の差が開き、今に至ったのです。
民主党政権期に、その反動を幾分是正しているのですが、大勢は悪化するばかりでした。
結論から言えば、グローバル化は民主主義と同じで、社会の必然です。
ただ米国のように、野放しにしといて、都合が悪くなれば、海外に移転している自国の多国籍企業を責めるのでは無く、自分より弱い国に犠牲を強要しているのです。
実に馬鹿げています。
まだこの手の話が信じられない人でも、これから起きる産業革命について考えればわかり易い。
実は、これまでの労働者の失業のある部分は、企業の海外移転だけで起こっているのでは無い。
ITの発達で、情報やサービスの分野では効率が向上し人出が不要になり、さらにインドや東欧、アフリカ等に個別にインターネット上で仕事を外注しているのです(90年代から)。
これも失業増大の理由です。
それに加え、これからAIの進化が、更なる大量の失業を米国で生むことになります。
おそらく、ここ20年ぐらいで職種により10~50%ぐらい、失業するでしょう。
対象者の多くは、現在、知的な職種に属している事になる。
こうなるとトランプの今の政策で、解決しないのは明白です。
誰を関税で脅し、ディールでどうして就業を守るのですか?
むしろトランプは、悪化させることでしょう。
なぜならAIをまったく規制する必要が無いと言っているのですから。
30年後に、もしトランプが生きていたならば「AIが間違いだった」と吠えているかもしれません。
一言だけ付け加えると、AIで新たな産業や職種が生まれるので、国内労働者をスムーズに、それに移行させる政策が必要になるでしょう。
これからはアメリカを頼らないことです。
徐々に、手を引くべきです。
1世紀以上前、英国は世界の覇者でしたが、やがて衰退し、米独日に抜かれてしまったのです。
これで終わります。