青山貞一ブログ

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オバマの真価を問う中南米諸国との関係修復 青山貞一

2009-04-20 23:06:42 | Weblog
 現地時間の2009年4月17日、カリブ海のトリニダードトバコのポートオブスペインで米州首脳会議が始まった。

 この会議は、ひさびさに北米、中米、南米、カリブ海諸国が一同に会する会議である。

 開幕式典で演説したオバマ米大統領は「上下の無い対等な関係構築に努める」と述べた。

 しかし、ノーム・チョムスキーMIT教授の言葉を借りるまでもなく、米国は歴史的に中南米、カリブ諸国を米国の裏庭とみなし、あたかも殖民地であるかのごとく扱ってきた事実がある。

 またJ.F.ケネディ大統領以来、米国はキューバを敵視し、キューバに対して経済封鎖を公然と現在に至るまで行っている事実もある。

 これら米国の中南米、カリブ諸国へのいわば「蔑視政策」は、前ブッシュ大統領において頂点に達していた。

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 これら米国のいわば蔑視政策に対し、中南米諸国は、反米・反帝国主義を掲げるヴェネズエラのウゴ・チャベス大統領がリーダーシップをとる形で、ボリビア、ニカラガなど反米急進派だけでなく、ブラジル、アルゼンチン、さらに穏健派諸国を巻き込む形で反ブッシュ包囲網を形成してきた。

 そのウゴ・チャベス大統領は、国連でブッシュ大統領を「悪魔」呼ばわりする一方で、フィデル・カストロ前キューバ革命会議議長らキューバ政府の立場をあらゆる公式の場で代弁してきた。
 世界各国にとって「悪魔」であったブッシュ政権から、米国では黒人初のオバマ大統領となったが、実は今回の米州首脳会議にもキューバだけが出席を拒否されていた。歴代、米国の大統領が拒否権を発動してきたからである。

 ところでこの会議で、オバマ大統領は「アメリカ政府はキューバと、人権・表現の自由、民主的改革など、幅広い問題について協議する用意がある」と述べ、長年対立してきたキューバに対し、「アメリカは新たな始まりを求めている」と呼びかけた。

 これに対し、変米の雄、チャベス大統領は、「米国よりキューバの方が民主主義がある」と持論を展開、民主化への取り組みの遅れなどを理由にキューバのOAS復帰を拒む米国を批判した。

 客観的に見て、ケネディー大統領がキューバへの経済封鎖を行ってこの方、米国の歴代大統領がとってきたキューバ敵視政策は、チャベス大統領の言を待つまでもなく、まったく時代にそぐわないものである。いわば旧ソ連との間での冷戦構造時代の歴史的遺物のようなものである。

◆青山貞一:米国の経済封鎖、オバマ大統領は封鎖解除を! 

 またブッシュ政権時代を見れば分かるように、米国は対外的に人権だ民主主義だと声高に叫ぶ割に、アフガン、イラクなど中東諸国にエネルギー新殖民地主義的な侵略を行ったり、キューバの東端にあるガンタナモ基地に多くのアフガン、イラク、パキスタンなどイスラム人を強制収容している。

 米国は世界各国から人権無視と厳しい批判を受けており、オバマ大統領はガンタナモ基地のこの刑務所の閉鎖を公約している。

 米国の建国の理念、精神がいくら立派で崇高であっても、現実に米国が中南米諸国でCIAや軍を使い行ってきたことは、国際音痴の日本人やジャーナリズムが知らないだけで、ブッシュ前大統領がいう「テロ国家」そのものであったといえる。

 その意味でチャベス大統領のいう「米国よりキューバの方が民主主義がある」という言葉は極めて現実味をもっており、同時に言葉の重さをもつものである。

 ただ中南米、カリブには今でも米国の裏庭、殖民地的な地域や傀儡政権的国家が多数ある。その意味で、反米、反グローバリズム、反国主義を旗幟鮮明にし、物言う大統領、チャベス氏の役割は一段と大きなものとなるだろう。

 一方、私見だがオバマ大統領の真価が本当に問われるのは、欧州、日本ではなく中南米、カリブなどの諸国との関係改善が可能となるかどうか、とくにキューバへの経済封鎖経済封鎖や敵視政策を大幅に改善できるかどうかにかかっていると思う。

ブッシュ前政権と違いアピール 米、中南米と融和姿勢東京新聞 2009年4月19日 朝刊

 【ニューヨーク=阿部伸哉】十七日にカリブ海のトリニダード・トバゴで開幕した米州首脳会議で、オバマ大統領の中南米外交が本格始動した。大統領は反米左派のベネズエラのチャベス大統領と握手を交わし、演説でキューバとの対話姿勢を打ち出すなど、ブッシュ前政権との違いをアピール。左派勢力の伸長が目立つ中南米で、米国の復権にどこまでつながるか注目される。

 会議の最大の焦点は、米国から約半世紀にわたって経済制裁を受け、事実上の除名処分を受けているキューバの扱い。公式議題ではないが、中南米諸国から制裁解除を求める声が高まっている。

 オバマ大統領は開幕式のあいさつで、参加国の期待に応えるようにキューバに何度も言及。「どの国も自分の道を歩む権利がある」とし、「米国はキューバとの新たな始まりを求める」と述べた。

 クリントン米国務長官も前政権の対キューバ政策は「誤りだった」と認め、政権の方針転換を印象づけた。

 キューバを社会主義モデルと仰ぐチャベス大統領は前日、首脳会議の最終宣言案を「米国の対キューバ制裁解除が盛り込まれていない」として拒否。緊張感が高まる場面もあったが、オバマ大統領は開幕式の前にチャベス氏と握手し、融和ムードを打ち出した。

 チャベス氏は十八日、中南米の植民地支配の歴史を記したウルグアイ人作家の著書をオバマ大統領に贈呈。米政権が中南米諸国への理解を深めることを期待したとみられ、オバマ大統領は笑顔でこれを受け取った。



米州サミット開幕 オバマ大統領「中南米と対等な関係」
【ポートオブスペイン(トリニダード・トバゴ)=檀上誠】北・中南米の首脳が一堂に会する米州首脳会議(サミット)が17日、当地で開幕した。開幕式典で演説したオバマ米大統領は「上下の無い対等な関係構築に努める」と述べ、これまで「米国の裏庭」とみなして配慮を怠ってきた中南米に対する政策の転換を宣言した。

 式典ではこれに先だちアルゼンチンのフェルナンデス大統領が「序列ではなく協調を基にした関係が必要だ」と指摘。オバマ大統領が応じた格好だ。

 オバマ氏は中南米各国の首脳が求めている対キューバ政策見直しについて「米・キューバ関係は新たな方向に前進できる」と発言。中米歴訪の直前に発表した在米キューバ人の一時帰国の緩和など、対キューバ政策の根本的な見直しに踏み出したことを強調した。

 開幕式典では、反米を掲げるニカラグアのオルテガ大統領が一時間を費やし、米国の歴代政権の中南米政策を批判する一幕もあった。オバマ大統領は「自分が生まれたころに起きたことまで、私のせいだと言われなくてよかった」とかわした。(13:12)

日経新聞


OAS宣言案に拒否権も=キューバへの言及に不満-ベネズエラ大統領

 【ポートオブスペイン16日時事】ベネズエラの反米左派チャベス大統領は16日、カリブ海の島国トリニダード・トバゴの首都ポートオブスペインで17日から開幕する米州機構(OAS)首脳会議で採択予定の首脳声明について、OASから事実上排除されたままのキューバへの言及に不満があるとして、同調する他の国と共に拒否権を発動すると語った。AFP通信などが伝えた。

 チャベス氏は「宣言は受け入れ難い。時宜にかなっておらず、まるで時間が止まったかのようだ」と指摘。さらに「米国よりキューバの方が民主主義がある」と持論を展開、民主化への取り組みの遅れなどを理由にキューバのOAS復帰を拒む米国を批判した。(2009/04/17-10:15)

時事通信

ぞろぞろ噴出「西松」疑惑 二階大臣捜査の行方は? 青山貞一

2009-04-11 01:07:13 | Weblog
 
 周知のように、東京地検特捜部は2009年3月4日に小沢代表の第一公設秘書をいきなり逮捕する「挙」にでたが、元東京地検特捜部の検事、郷原信郎教授は政治資金規正法との関係においてすら東京地検は公判を維持できないほどの「暴挙」だと言明している。

 なによりもこの問題は2006年時点の問題をこともあろうか麻生内閣支持率が10%前後に落ちた政権交代前夜に東京地検特捜部が行ったことだ。しかも、東京地検がリークする情報をNHK、民放、新聞を問わず、ことさら針小棒大に垂れ流し、あたかも小沢代表が個別具体の公共事業案件との間での賄賂・贈賄であるかの印象を国民に与えた。

 巷では、多くの識者らが東京地検特捜部がこの間行ったことは、小沢代表や民主党を標的にして、政権交代を阻止するための「国策捜査」ではないのか、との批判が数多くなされた。それを裏付けるかのように、もと警察庁長官だった漆間巌官房長官補が「東京地検の捜査は自民党に及ばない」という趣旨の発言を記者との懇談の場で発言した。

 かくして約一ヶ月、大マスコミはただ東京地検特捜部がリークする一方的な情報を識者のコメントすら付けず垂れ流した結果、政府・自民党が抱える膨大な問題はそのままで麻生内閣の支持率は20%台と大幅に上昇し、自民党支持率も大幅に増加することになった。

 ところで西松建設から表(政治資金収支報告書に記載されているカネ)、裏(政治資金収支報告書に記載されていないカネ)を問わず政治家に渡ったカネで件数で圧倒的に多いのは、自民党及び自民党系の政治家、知事である。

 他方、表の金額が多いということでいきなり秘書が逮捕された小沢代表ら民主党は、2名に過ぎない。しかも小沢代表が繰り返し述べているように、小沢代表に政治団体から分かったカネは政治資金規正法に基づく表からのものである。

 自民党の政治家の中で表で一番多かったのは、二階経済産業大臣だ。それ以外にも、自民党には総理経験者、大臣経験者、要職経験者がいた。またすでに辞意を表明している石川静岡県知事や東京地検特捜部に任意で取り調べを受けた直後側近が視察した村井静岡県知事らもいる。

 なかでも、現職の大臣である二階経済産業大臣については、早い段階から東京地検は小沢代表公設秘書をこともあろうかいきなり逮捕し、徹底的にあることないこと情報を一方的にリークしながら、表の件数で圧倒的に多い自民党代議士、とくに二階大臣を捜査しないのは不公平、不公正ではないのかという批判が巻き起こっていた。

 「国策捜査」と揶揄される今回の一件では、大マスコミは東京地検がリークする情報に圧倒的多くを依存し、自ら調査し報道することがなかったため、東京地検が年度末となり捜査態勢が代わり、人事異動が起きると、西松関連の政治家に係わる記事が著しく減少した。

 他方、知人の横田一氏(フリージャーナリスト)が3月中旬以降、和歌山県や大阪大阪府の現地に入り、二階経産大臣の周辺を独自に調査したところ、次々に状況証拠がでてきた。どうしようもない思考停止の大マスコミの一部は、横田氏の記事を受け追跡取材してゆくと、次々に疑惑がでてきた。

 それは西松から表でパーティ券を大量に購入してもらっている問題だけでなく、二階事務所の経費を西松に永年肩代わりさせてきた問題、すなわち他人名義の寄付や虚偽記載を禁じた政治資金規正法違反の疑い、さらに1999年以降、関空や羽田空港など大規模公共事業の受注を西松が二階大臣に働きかけていたことなどが判明してきた。

 言うまでもなく二階氏は、現在は経済産業大臣だが以前は運輸大臣もしている。すくなくとも小沢代表は野党代表であっても何ら職務権限がないが、二階氏はこの間、政府の中核を占める大臣を歴任してきた。

 下は最近の二階大臣を巡る西松建設疑惑の一部であるが、これだけ多くの疑惑がある二階大臣であるにもかかわらず、東京地検特捜部は小沢代表のときのように格段の捜査をしていないせいか、またリーク批判が巻き起こっているせいか、小沢氏のときのような連日連夜のリークはないようで、新聞、テレビもほとんど報道していない。

 今回の東京地検特捜部の恣意的、意図的なリークに加担し、一方で権力の座にる巨悪を放置し、他方で政権交代の芽を潰している大メディアは、自壊の道を歩むであろう!そうなっていないのは、日本国民が情報操作に弱く、ノー天気であるからである。

 東京地検と大メディア合作による政権交代潰しと言われないためにも、今後、二階大臣はじめ政権にいる政治家の疑惑を徹底的に捜査し、立件しなければならない。また「権力の犬」「権力者のポチ」と化している大メディアも、権力、権限がある政治家らを自らの足を使い調査し、スクープを連発しなければならない。

西松建設献金事件:西松建設側、羽田・関空工事で
二階氏側に受注希望 検察最終協議へ

 準大手ゼネコン「西松建設」を巡る政治資金規正法違反事件に絡み、同社が99年以降、二階俊博経済産業相側に関西国際空港や羽田空港関連工事の受注希望を伝えていたことが西松関係者の話で分かった。西松が二階氏の関連政治団体「関西新風会」(大阪市)の事務所費約2500万円を肩代わりした期間と重なっており、大型プロジェクト受注を目指し資金提供を行った疑いが浮上した。東京地検特捜部は来週にも、上級庁と最終協議に入る模様だ。

 西松関係者によると、同社が受注を希望したのは羽田空港の南東側沖合に4本目となる新滑走路「D滑走路」(2500メートル)を建設する再拡張事業と、関西国際空港に2本目の平行滑走路(4000メートル)と関連施設を整備する2期工事。

 羽田空港のD滑走路は、国土交通省が01年12月、正式に計画を表明し、設計を含めた全工事費は約5985億円。大手ゼネコン「鹿島」や西松建設を含む計15社の共同企業体(JV)だけが入札参加を申し出て、競争なしで受注が決まった。西松の受注分は約209億円に達する。07年3月に工事が始まり、来年10月に開業する見通し。また、関西国際空港2期工事は99年7月、着工。用地造成の発注総額は約5270億円で、西松も一部を受注した。

 二階氏は99年10月~00年7月、運輸相を務め「運輸族」として知られる。西松関係者は毎日新聞の取材に年間約280万円に及ぶ関西新風会の事務所費肩代わりを始めた99年ごろ以降、二階氏側に受注希望を伝えた事実を認めたうえで「二階氏の影響力に期待した」と話した。しかし、二階氏の事務所は「(受注希望は)ない」と回答した。

毎日新聞 2009年4月4日


西松建設提供の賃貸事務所、二階氏側が物件指定

 西松建設側が二階俊博経済産業相の関連政治団体の事務所費を補てんしたとされる問題で、二階氏の実弟が具体的な物件名を挙げ、事務所として提供するよう西松建設に要求していたことが3日、同社関係者などの話で分かった。当初同社が提供した物件は希望に沿わないとして、あらためて指定してきたという。

 西松側が、個人献金を装い、家賃相当額を二階氏側に提供していたことがすでに判明。東京地検特捜部は3日、他人名義の寄付や虚偽記載を禁じた政治資金規正法違反の疑いがあるとみて西松側からの事情聴取を再開。二階氏側への献金の流れについて本格捜査に乗り出したもよう。最高検などと協議し、立件の可否などを最終判断するとみられる。

 同社関係者などによると、二階氏の実弟は1999年ごろ、自分が実質的に運営する政治団体「関西新風会」に事務所を提供するよう西松建設関西支店に要求。西松建設本社の総務部が了承し、同支店が物件を用意。二階氏側がいったんこれを拒否し、改めて希望するマンションを指定してきたという。(07:00)

日経新聞 2009年4月3日


西松疑惑  「関西新風会」の届け出“住所”に
二階派議員の親族企業 会計責任者も献金も提供

 二階俊博経済産業相側に準大手ゼネコン「西松建設」が、同氏関連政治団体の事務所マンションを無償提供した疑惑で、同政治団体が自民党二階派の矢野隆司衆院議員(比例近畿)のファミリー企業と、人脈でも資金面でも密接な関係にあることが二日、本紙の調べでわかりました。

(写真)二階氏の政治団体「関西新風会」の事務所所在地とされた、ビルのフロア案内。同会の表示はありません=大阪市北区

 西松側から事務所の無償提供を受けたとされるのは「関西新風会」。同会は大阪府選管に、大阪市北区梅田にあるオフィスビル二十七階の「矢野興産内」を「主たる事務所」所在地として届け出ています。

 しかし、この住所に行ってみると、「関西新風会」の存在を示す表示はまったくありません。ビルのフロアの大半は、水道・ガス管製造整備大手の大成機工(矢野裕史社長、資本金約一億円)のオフィスが占め、フロアの一角に同社関連企業の矢野興産があります。

 矢野議員は、大成機工の元副会長で、現社長は親族です。同氏は矢野興産でも取締役でした。

 新風会が府選管に提出した資料などによると、同会の会計責任者には一九九〇年から大成機工の役員が就任しています。現在の会計責任者も同社元役員。大阪営業部長だった〇四年当時に新風会の会計責任者になっています。資金の出入りを管理する会計責任者は、政治団体の要職であり、同社と二階氏の関係の深さを示しています。

 大成機工は、二階氏が支部長の「自民党和歌山県第三選挙区支部」に〇七年に二十万円を献金。矢野興産も〇四―〇七年に毎年十二万円ずつ計四十八万円を提供しています。〇五―〇七年に行われた二階派のパーティー券も両社で計二百十万円分を購入していました。

 矢野興産の担当者は「(関西新風会の)事務所の住所が、この場所にあることは知らなかった。関西新風会が活動しているのを見たことはない」としています。

 「関西新風会」の実際の活動は、大阪市西区にあるマンションの一室で行われていたとみられます。西松建設は、関連設計会社に四千万円を同マンション購入費用として融資。設計会社が関西新風会と年間約二百八十万円の賃貸契約を結んだといいます。

 西松建設は、和歌山県第三選挙区支部に個人献金を装い年間三百万円を献金し、家賃を補てんする形で事務所を無償提供していたと指摘されています。

しんぶん赤旗 2009年4月3日

北朝鮮ミサイル迎撃騒ぎの裏に防衛利権あり!? 青山貞一 Teiichi Aoyama

2009-04-08 01:16:51 | Weblog
 
 日本政府は北朝鮮のロケット打ち上げに関連し、ことさら大騒ぎをしてきた。さらに4月4日、政府は誤報を発した。もとより何一つクロスチェック、ダブルチェックをすることもなく誤報を発したのだが、当然のこととして大メディアはそれを一方的に垂れ流した。

 麻生総理はじめ政府関係者は、この正規の大誤報をいわば笑ってごまかすようだが、そもそも北朝鮮の人工衛星であれ、弾道ミサイルであれロケットを本気で打ち落とすこと自体、果たして可能か?と誰しもが思うだろう。

 日本は米国ブッシュ政権のいいなりに、イージス艦2隻、迎撃ミサイル3基を目が飛び出るほどの高額で買わされてているが、やれもしないのに実勢配備した。

 しかし、4日の誤報でも明らかになったように、日本の迎撃態勢はお粗末そのもの、「鉄砲の弾を鉄砲で撃ち落とすようなもの」と鴻池官房副長官が述べたように、そもそも迎撃など技術的にも、まさに容易でなく、無理であろう。

 技術的に見ると、北朝鮮の銀河2号が日本上空を通過する10分後には地上から300kmを飛ぶことになる。イージス艦から発射されるミサイルSM-3の上昇限度は250kmまでだから、まったく届かない。さらに地対空誘導弾パトリオット、いわゆるPAC3の射程はせいぜい設置位置から半径20km程度。近くに落ちてきた破片を破壊することしかできない。

 その意味で言えば、4月5日、昼の北朝鮮の実験がそれなりに成功したことで、ホット胸をおろしているのは政治家を中心に日本の防衛族、防衛省関係者ではなかろうか?

 実戦配備し、もし日本の領空を侵犯したとして、それにPAC3で応戦し打ち落とせなければ日本政府は世界的に恥をさらすことになることは間違いないからだ。

 ところで今回の一件で極めて不可思議なのは、本来、極秘であるはずのイージス艦や迎撃ミサイルPAC3の配備場所などをマスコミに大々的に公開していることだ。

 本来、この種の場所は極秘でなければならない。なぜなら当然のこととして、もし戦争状態になれば真っ先に相手の攻撃を受ける場所であるからだ。

 岩手と秋田に地対空の誘導弾パトリオット実戦配備されるPAC3や関係車両数10台が国土幹線自動車道を北上する映像までテレビ各局は垂れ流していた。実勢配備されたPAC3もライブでテレビに映されていた。

 さらに麻生首相は国民に危機を煽りつづけ、非公開が大前提のミサイル破壊措置命令まで公開したのはなぜか?


 「『愛国』と『腐敗』、日米防衛利権の構造」の著者でジャーナリストの野田峯雄氏は、日刊ゲンダイのインタビューに答え次のように述べている。

 「政府は自ら実戦化した部隊をつくり、戦闘への備えを進めています。これが本気なら、PAC3配備という隠して当然の軍事行動について、なぜマスコミを集めて見せびらかすのか。原子力発電所の燃料運び込みですら、ダミーの車両を走らせる細心の注意を払っています。それなのに軍事機密はジャジャ漏れで偽装工作もしない。常識では考えられないことをやっているのです」

 そんな防衛のイロハにもとる配備を行ったのはなぜか?何でかくも政府・自民党は北朝鮮ミサイル問題で大騒ぎしたのか?

 それはいうまでなく、政府・自民党は北朝鮮の脅威を煽り続けることで、イージス艦やPAC3はじめ超カネ喰い虫のミサイルディフェンス計画、通称MD計画を推し進め、関係する企業、商社ともども8000億円になんなんとする防衛利権を掌中にしようとしているからに他ならない、と考える。

 野田氏は日刊ゲンダイのインビューに応え次のように述べている。

 「(MD)計画を推進する米国に両手を引っ張られ、日本は小泉政権の2004年度からMDに予算を付けてきました。その総額は、2009年度概算要求額を含めると8087億円に上ります。これに群がっているのが、日米の軍需企業群と政治家達。とかく政治家は安全保障とか憂国の情とかきれい事を並べますが、本当の動機は不純。北朝鮮危機は防衛利権で甘い汁を吸う連中に利用されているわけです」

 たとえばイージス艦は半径500km以内にいる敵の戦闘機、ミサイルを瞬時にキャッチし、迎撃ミサイルを発射する高性能レーダーを備えた戦艦と言われている。

 イージス艦は三菱重工で作られているが各種の設計図は米国から供与されており、その価格は三菱重工、アメリカへのライセンス料、商社に払う仲介料などで明細は明らかにされていないが総額で一艘あたり1,350億円とされている。

 おそらく野田氏が指摘する点は、百も承知のハズの新聞、テレビの大メディアは、利権問題にはまったく触れず、ただ日本政府の大本営的発表を垂れ流している。 

 誤報までそのまま垂れ流しているのは、分野は違うが小沢代表公設秘書にかかわる検察リークの情報の垂れ流し同様、まさに今の日本の思考停止、機能不全の大メディアの実態を如実に示していると言えよう。

 日本の経済も外交も実態は何も変わっていないのに、麻生内閣支持率がこの数日で10%以上も上がったと言うのだから、いつもながら「おめでたい国民」という他はない。まさに、政府・メディア合作の「情報操作による緒世論誘導」、いや、「政官業学報の癒着」が一層強固な物となっている。