青山貞一ブログ

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中国はオリンピック開催を延期し震災復興に全力を(3) 青山貞一

2008-06-08 02:13:00 | Weblog
 
 日本のマスコミは四川大震災などどこ吹く風で、連日、北京オリンピック関連のニュースを垂れ流している。とくに、この一週間は、スピード社の水着問題でスポーツ報道は舞い上がっている。いずれにせよ、日本では結局、特番を組んでいるテレビや日本のマスコミが営業第一であって、災害救助や震災からの復興などどうでもよいのだろう。

 容易に推定できるのは、復興に数10兆円の資金とかなりの歳月が必要になることだ。中国で景気の良いのは特別市や沿岸地域など限られた地域であって、内陸や山岳地帯の経済状況は決してよくない。

 (1)、(2)ですでに述べたように、四川省を中心に7~8万人近くの人々が亡くなる可能性が強くなっており、500万人が被災している。この現実を抜きに、北京オリンピックは語れないはずだ。さらに今後大雨が降れば30数カ所の地震ダムが決壊し、下流域の住民が呑み込まれる可能性は高い。

決壊迫り強制排水も=せき止め湖満水間近-四川大地震
2008/06/06-20:35 時事通信

【成都(中国四川省)6日時事】

 中国・四川大地震で四川省北川県の唐家山にできた巨大な「せき止め湖」が満水に迫り、中国政府の災害対策本部は6日、決壊の恐れが高まっているとして、水抜き方法を再検討し、土砂の排除など強制的な排水の検討に入った。

 中国中央テレビなどによると、対策本部は当初、決壊防止のため造った排水路による自然放水を想定していたが、爆破や土砂の排除を含めた強制的な水抜き策も検討。武装警察隊員がヘリコプターでせき止め湖の現場に入り、工事を進めている。7日未明までに水があふれる可能性があるという。

 温家宝首相は6日午前、綿陽市内にある決壊防止指揮部を訪れ、「直面する危険に対し、従来の方法か、新たな方法を取るか決断を急がなければならないが、最も重要なのは危険を回避することだ」と強調した。

 ところで、もうひとつ重要な問題がある。実はこれについてもマスコミはほとんど報道していない。それは四川省にある4~5カ所の核関連施設からの放射能などの漏洩問題である。

 四川省で瓦礫の中に埋もれた未回収の放射性物質は、当初32個のうち2個と発表されていたが、これが最近になって50個のうち15個に増えている。

放射性物質15個の回収出来ず、倒壊恐れで 四川大地震
2008.05.24 CNN報道、

中国四川省・映秀

四川大地震で、中国環境保護省の呉暁青次官は23日、被災地で15個の放射性物質が崩壊した建物のがれきの下に埋もれており、国家核安全局(NNSA)要員が回収を試みていると述べた。AP通信が報じた。

地震を受け、約50個の放射性物質ががれきの下敷きになったが、うち15個は、場所は特定したものの、建物がさらに崩壊する恐れがあって近付けず、確保出来ないという。

放射能漏れはない。この放射性物質の種類は不明。外国の放射能専門家らは病院や工場が研究用で使うものと推定。

中国政府は四川大地震の発生後、震源地となった四川省にある核関連施設はすべて無事と主張している。

 一方、6月2日の電気新聞によれば、「....原産協会は、5月12日の四川大地震の発生を受け、中国の原子力関係者・機関などに、原子力関係施設への影響などを問い合わせるなど、幅広く情報収集活動を展開。原産協会ホームページ上では15日から逐次、得られた情報を整理、公表してきた。

 これまでの情報を総合すると、嶺澳、大亜湾、秦山、田湾の既設原子力発電所は、基本的に中国東側の沿海部に立地することから影響がなかったとしている。また、聞き取り結果などから、民生用の核燃料工場をはじめ、原子力関係の研究機関も被害はなかった。

 ただ、中国の有力な重電メーカーの東方電気集団、東方タービン発電機有限公司が甚大な被害を被り、原子力機器製造工場では、死傷者も出るなど、大きな被害を受けたことを確認。医療行為や産業活動で使用するRIは、いくつかの病院や建物の崩壊により、がれきに埋もれ、未回収のものがあるとしているが、放射能漏れは起きていない模様だ。

 軍事用の核施設は、これまでの人民解放軍幹部の発言やモニタリングなどの結果、放射能の漏えいは検知されていない。しかし、安全保障上の理由などから、中国政府の提供する情報量が少なく、実態は把握できない部分も多い」ということで、中国は軍事機密を理由に実態を正確に公表していない可能性が高い。

 日本のマスコミはこぞって北朝鮮の核問題ではエキセントリックになっていたが、こと中国についてはなぜか腰が引けている。

 あれだけ巨大な地震に見舞われた四川省内に多くの核施設があるなら、当然、甚大な影響、被害が起きても不思議ではない。

 いずれにせよ、中国政府は四川大震災の復旧に全力を挙げるべきであり、各国はすぐ近くで、衣食住に事欠いている数100万人の住民をよそ目に北京オリンピックにうつつを抜かしていて良いのだろうか?

 国家社会主義国、中国に任せておけば、当然のこととして国威発揚のために四川大震災に手を抜いてでも北京オリンピックに資金を投入するだろう。

 現地では「四川大地震による豚肉の供給不足が深刻となっているという。四川省は、中国全体の11.6%にあたる5800万頭の豚を飼育し、年間2万5000トンもの豚肉を出荷しているが、今回、多くの養豚場や工場が損壊。大半の従業員も避難を強いられ、中華料理に欠かせない豚肉の流通が完全にストップしているのだ。北京五輪用に供給される至極のオリンピック豚の飼育施設も大打撃を受けており、選手の食事への影響も避けられない事態となっている」(出典:iza)とのことだ。

 しかし、当然のこととして、今必要なのは至極のオリンピック豚ではなく、欠食児童や一日一食にありつけない子供達に食事を提供することだ。

 そのためにも世界各国は、四川大震災復興のために北京オリンピックの延期を要望すべきではないか!そもそも今のオリンピックは、何から何まで商業主義に染まっている。

中国はオリンピック開催を延期し震災復興に全力を(2) 青山貞一

2008-06-01 13:59:16 | Weblog

 私はこの5月20日、下のあるように「中国はオリンピック開催を延期し震災復興に全力を!」という論考を書いた。

 その中で「四川大地震の現時点での死亡者数は4万人とされているが、おそらく今後、相当増えると思われる」と書いた。

 やはり、執筆後わずか5~10日間で死亡者数は大幅に増え、中国首相は8万人を超える可能性について言及している。事実、以前として行方不明者が公式発表で1万4千人、非公式には2万人以上いると見られており、最終的には死亡者は10万人を超す可能性もある。

5月13日:中国大地震、四川省だけで死者約1万人
5月14日:死者1万4000人超に 中国・四川大地震の被害把握進まず
5月14日:死者1万4800人生き埋め・不明2万7千
5月16日:中国の四川大地震の被害、死者3万2476人、
5月18日:犠牲者さらに増加し3万人超、負傷者22万人 四川大地震
5月20日:中国・四川大地震、四川省での死者数が3万9500人に
5月22日:中国・四川省で大規模な地震:死者は5万突破
5月22日:中国・四川大地震の死者数、5万5239人=四川省高官
5月24日:四川大地震の死者、8万人超える恐れも=中国首相
 関東大震災や兵庫淡路大震災と比べ、中国四川省大地震の特徴は、発生した時間から火災は少ないが、地形でみると被災地が山岳地帯に広がっていることで、傾斜地崩壊、土砂崩れなど、建築物や構造物の倒壊による被害が多いことにある。

 今後、地震によって出来た35箇所を超すダムの決壊による二次災害による被害も考えられる。また四川省には核関連施設も多数あり、自身による核関連物質の環境中への漏洩も危惧されている。北朝鮮の各施設問題であれほど大騒ぎした日本の政治家やマスコミは、なぜダンマリを決め込んでいるのだろうか?

 いずれにしても、四川大震災の結果、すでに避難者は500万人を超えており、必要とされる道路、学校など公共施設、家屋建設の数も空前のに達している。

 これに対し、当然のこととして中国や各国の救援部隊は必死の救援、復興努力に全力を挙げているが、救出から救援、復興には膨大な人力、技術力に加え経済力が不可欠なる。

 その意味でも、筆者が提案した「中国はオリンピック開催を延期し震災復興に全力を!」は重要なものとなるだろう。中国と言えばとかく全世界から批判の種となる人権、安全問題との関連でも、政府がオリンピック開催を急ぐ余り、被災者や当該地域のインフラ再建が遅れてはいけない。

 それにしても、テレビなどマスコミの論調を見ていると、オリンピック開催との関連で四川大震災について触れている記事は見あたらない。これはどういうことなのか?
 
 全国テレビキー局にいる知人に聞いてみた。

 すると、テレビ各局はそれぞれ大々的にオリンピック特番の体勢を組んでおり、民放ではそれに関連しスポンサーもついており、「オリンピック開催の延期」は言える状態にないとのことだった。

 最低でも北京オリンピックで期間中50万人以上の観光客を当て込んでいるのが中国政府や関係者だとすれば、日本のマスコミや企業も北京オリンピックの中継や特番をあてこんでおり、営業との関連で今更、「オリンピック開催の延期」などと言うのはもっての他ということである、というのである。

 実際、連日、放映されている日本のテレビは被害状況を伝えるだけで、オリンピック開催との関連に触れたものはほとんどない。