なんということだ……まさかそんなことが自分の身に起こっていたとは……
ぐぐっているとき、ふと「水からの伝言」に関するページを発見した。これは水の結晶が音やら文字やらによって姿形を変えるとかなんとかいうものだが、ボケが! 結晶の形状は温度と飽和水蒸気圧によって決まるって中谷氏がずーっと前に言ってるだろ! てか科学的実験もクソもないじゃないか、確率の問題でしかねえじゃねえか、ちゅーか水や何かが人間の意識とか言語によって全く別の様相を呈するんじゃ住みにくくてならんわ、そもそも良いものと悪いものなんてそれを認識する者によって相違するだろうに、美しいものと汚いものなんてそれを認識する者によって相違するだろうに、なんで「ありがとう」と書いたシールを貼り付けたビーカに入れてあった水(というか水蒸気)の結晶がその観察者にとって美しかったからといって(ry
などとニヤニヤしながら見ていたときだ。
ふと自分の精液を顕微鏡で観察することを思いついた。
なぜだかわからないが、たぶん「結晶を見る」という脱力しそうな行動の記録に感化されたのだろう。ついでにその結晶の観察実験も行なってみることにした。
マイナス二十度以下で一シーシーの水を凍らせ、三時間ほど待つのだそうな。そんで、マイナス五度ほどの環境で観察する。十の水は水道水、残りの十はシューベルトの魔王を聞かせた水道水。
結果は散々、空気の粒が見えるだけ。結晶以前の問題。サイト上に掲載されている情報でほんとにあってんのか? オイラのやり方が悪かったのか? でもめんどいのでもうやらない。
などと偶然の女神を罵倒しながらも、精液の観察をしようと思い立ったことを忘れていた自分を罵倒した。
それで、まあ大変なことになりました。
精子が見当たらない
そんな馬鹿な!
(見当たれよちきしょう)
元気よく蠢く我が子たちを認めたら、「そこには小宇宙が広がっていました」などと書いてやるつもりだったのに。だが、何度も何度も何度もシャーレの位置を変えて、倍率を五〇〇、一〇〇〇、一五〇〇(笑)とか繰り返し繰り返し切り替えて観察するも、やっぱり見当たらない……猛スピードで移動する我が偉大なる子供たちを見つめて、「感動した!」なんて言っちゃったりして、周囲の白衣を着た怪しげな連中にそのシャーレを見せて、逃げ回るやっこさんらを追いまわす予定だったのに……とんでもないショックに打ちひしがれた。まだ十代なのに。もしかしたら精子かもしれない物体(というのも、希望的観測が思い切り発揮していたに違いないから)をやっと見つけて、安堵しようとした瞬間、うんともすんとも動かないことに気がついてダブルショック。さらに「我が子か!」と思ったものがゴミだったことが判明してトリプルショック。なんということだ……マジで……
目の前が真っ暗だ……と思ったら視界はいたって良好だった。
でも正直かなり衝撃。非常に興奮していることが文面にも表れているものと思う。わたしは独り精神的な孤独の深淵の中に死んでゆくのか。仮にパートナーがいたとしても、どうしてこれを打ち明けられようか。巷のコンビニ先住民族たちは「えー、お前それ、中出ししまくりじゃん?」とかすっとぼけたこと抜かしてやがるが、ざけんなこのタンクトップ! と言いたい。どだいこのことの重大さは遊び大好きな連中には理解できないのだ。こういうことを言うと、「今まで言いたい放題言ってきた罰だ」などとほざく輩がいるが、それとこれとは話が別だ。客観的に観察したのちの、心的働きとしての状態・状況に対する価値観の程度は、観察する人によって変動する。こえは紛れもない事実だ。つまりそういったことはお門違いというものなのだ。それでなくとも、これは種に関する極めて重大な問題だ。生命の神秘を後世へと繋ぐことのできる人間の問題に関して、そもそも比べられるような、あるいは比べていいようなものではない(でも後で冗談にしそうだが(ぉぃ))。
とりあえず、「精液を調べるなんて、精子がどこにもいなかったらと思うと怖くてできねえよ」なんて至極まっとうなことを言っていた、某一分で今やろうとしていたことを忘れる男の主張を受け入れてやるべきだった。
わたしは目の前の暗黒に向かってわけのわからないことを叫んだ。そして両の拳をあげると、それを脚に叩きつけた――くりかえしくりかえしくりかえし。
だがまだだ、まだ終わらんよ! しばらく健康的な生活を送って、もう一度観察してやるのだ。もしかしたら、もしかしたら精子ちゃんが見つかるかもしれない。今回は睡眠不足のせいで注意力が欠落していただけかもしれない。自然という意味以外では信じてないけど神よ、チャンスを! チャンスを与えると言ってくれえ!
〃〃∩ _, ,_ ヤダ
⊂⌒( `Д´) ヤダ
`ヽ_つ ⊂ノ ヤダ
ジタバタ
_, ,_
〃〃(`Д´ ∩ < 無精子症ヤダヤダヤダ
⊂ (
ヽ∩ つ ジタバタ
〃〃∩ _, ,_
⊂⌒( つД´)< せめて一匹くらいいなきゃヤダー
`ヽ_ ノ ⊂ノ
ジタバタ
∩
⊂⌒( _, ,_) < 可愛い彼女もホスィ…
`ヽ_つ ⊂ノ
ヒック...ヒック..
⊂⌒( _, ,_)
`ヽ_つ ⊂ノ zzz…
∩ _, ,_
⊂⌒( ゜∀゜) < 夢じゃなかった!
`ヽ_つ ⊂ノ
えぇ、実話です。お見苦しい内容で申し訳ないな。皆さんも自分の精液を観察してみてください。絶望のズンドコを見られるといいですね。
でもな~、普段通りものっすご濃い精液だったんだけどな~まあ実際どうかなんて後でわかるだろうが。
しかし汚い話だな。ところでこれ(精子が見当たらなかったこと)、アニメや漫画の二次元世界にもっと踏み込めという神の啓示か何かでしょうか?
「放っておいてくれ! 子供なんて作れっこないんだ! だから――」
「だから、二次元の美少女世界に迷い込むというの? どうしちゃったのあなた!」
「どうもしていない! 神の啓示なんだ……ってチャモロが言ってた」
あ、どっと疲れが……